恐怖症を患ったのでVtuberになって治していこうと思います 作:水永有軌
コラボ配信の企画を決めてから二日後、僕は微熱を出していた。
「あぁ、あつ」
体温としては37.2℃、普段が36.6℃だからほんとに微熱といった感じだ。
原因はなんとなくこないだの夢だろうと微熱が出たときに察した。普段の配信なら微熱が出たから休もうかと考えたが、今日は僕のライバー人生で初めてのコラボ配信だ。
せっかく企画を提案してくれた渉にも申し訳ないし、楽しみに僕らの配信を待ってくれていた視聴者の恐怖民たちにも申し訳ない。
だから僕はこれからバカなことをする。
「ははっ、後で岩世さんから怒られる覚悟をしないとな」
俺は微熱の状態で体調が万全ではないのにも関わらず、漣渉とのコラボをすることを決めた。
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『お前らぁ! 元気にしてるかぁ! 部活を始めるぞぉ!』
「うるさ」
『あ、もう出てきたな』
時刻は午後の八時、僕と漣渉はコラボを始めていた。
漣渉のライバーとしての姿は、半そでのユニフォームに短パンの体操服、そして頭に帽子をかぶっている。まぶしい、この姿をつい数か月前までリアル友達にいたのにどうしてこうなったのか。
あ、女性恐怖症が原因でしたね。ほんとにあいつら許さねぇ。
『なぁ、なんか顔が怖いんだけど』
「あ、ごめんなさい。ちょっとイラつくことを思い出しちゃいまして」
『ならいいんだが。よし、早速だが改めて挨拶だ。皆喜Live 所属のお前らの部長漣渉だ。そしてさっきから出てきているが今日のコラボ相手はコイツだ』
「部員の皆さん初めまして。皆喜Live所属で女性恐怖症を患っている天怖心です。今日は初めてのコラボ配信ですがよろしくお願いします」
配信コメント
:部長待ってたぞ!
:今日も部活動の時間だぁ!
:キタぁぁ
:ついに初コラボか
:今日はいったい何をやるんだい部長!
:いや、変なことをやるかもしれないぞ
:なんたって今日はあの天怖が来てるからな
:さてさてどうなるのやら
:大変なことになるに一票
:同期が凸してくるに一票
:二人の服が脱げるに一票
『おぉい今コメント打ったやつぅ! 俺らの服は脱げねぇぞ!』
「服が脱げたら最悪ですね。エッチです」
『なんだ、俺の筋肉見てみるか?』
「大変に遠慮させてもらいます」
配信が開始してから良い調子で進んでいる。
そう、配信は順調に進んでいる。俺自身の体調は正直言って悪化していた。
『それじゃあ、どんどん進んでいこー!』
「元気だなぁ」
『俺のとりえは元気と筋肉だ!』
「外で急に服脱いで筋肉を見せ始めるような警察に逮捕案件何てやめてくれよぉ、同期が公衆わいせつ罪で捕まりましたぁなんて聞きたくないからな」
『ふりか?』
「二度と外に出れなくなる覚悟があるならお好きにどうぞ」
『それは困るからやめておこうか』
配信コメント
:こいつら相性良くね?
:なんだろうな、この仲良し感
:俺らができてないことを体験しているような
:悲しいこと言うなよ
:なんでだろ、心がしゅんとした
:これ初対面なんだよな?
『あぁコメントで出たから言うが、俺と天怖の通話はこれが初めてだな』
「ですね、事務所内での初めてのフレンドだったので繋がった時、少し嬉しかったですよ」
『そう言ってくれたら嬉しいぜ。他の同期達も「もっと絡みに行きたいぃ」って嘆いてたからな』
「そうらしいですね」
『あれ、なんで知ってるんだ? 取締役から聞いたのか』
「いいえ、普通に配信見てたので」
配信コメント
:あの配信見てたのかよ
:じゃあ、結果的には同期全員集合していたのか
:一人喋ってないけどな
:5人で話してるところ見ていたいなぁ
:けど、一人は女性恐怖症だから厳しいだろうな
:そう思うと可愛そうだよなぁ
「コメント欄のみんな心配してくれてありがとう。けど、恐怖症に関しては多分少しづつ治していけると思うから頑張って行こうかな。それと僕も同期たちとは会話して見たいので、まぁまだ厳しいと思うけど」
『うぅぅぅぅ、ううぅぅぅううううう!』
なんかすごい泣き声が聞こえる。室内………はあり得ないだろうからこの音はきっと。
「そんなに泣くことかな、漣くん?」
『泣くだろ! 病気なのはしょうがないと思うけど! 近づきたいのに近づけないって心にスゲェくるだろうからさ! 俺はそんな同期のお前を見ていると泣いちまう!』
「あはは、心配……してくれてるのかな? ありがとう、心配してくれる同期がいてくれて本当に嬉しいよ。リアルだと恐怖症のことを伝えられてない友達もいるからさ」
『友人とかに伝えてないのか?』
「うん、伝えてないね。伝えたいけどそんなことできる余裕もないからさ、だから現状で僕の病気のことを知ってるのは家族だけかな。もしかしたら家族経由で知ってる友人もいる顔もしれないけど」
『メッセージアプリとかで連絡取れないのか?』
「恐怖症になる前に色々あってね、メッセージアプリのデータが吹っ飛んだんですよ。まぁその色々を伝えるってなるとこの時間全部使い切っちゃうし、時間もたんないのでそのうち何処かで話しますね」
『そっか、まぁそこらへんはいつか聞かせてくれるか?』
「話すことは別にいいけど、多分胸糞悪くなると思うよ?」
『は? 何があったんだよ』
「う〜ん、ネット上で言ったらちょっと垢バン一向聴かな」
『マジカヨ』
このことはマネージャーであるうちの取締役にも言ってない。だからこの配信を見ているのならばどこかしらで話す機会があるだろう。
いつ、どこで、誰に話すことになるのかは僕にもわからないけど、このことを話すことになるときは恐怖症が多少良くなっていることを願いたい。
そうでもないと、倒れてしまうだろうから。