F!みなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:野菜の神
「あんたが佐原?まぁ、Fクラスに1人だけいるのなんて佐原しかいないと思うけど」
「ん?そういう君は……Cクラスの伊吹さん?」
「知ってるんだ。まぁいいけど。ちょっと来て」
「自分これからちょっとジムに行く予定があってぇ」
「龍園が呼んでるんだしジムなんて後にして。連れてこなかったら私がどやされる」
おおぅ、手紙で呼んでも来ないからってとうとう無理矢理連れてくスタイルに変更したか。龍園から来いや。
自分はここで逃げたところでどちらにせよいつかはこうなるかと思い、胸ポケットに盗聴器ダミーのボールペンをつけながらついていく。
たどり着いたのはカラオケ。
広めの部屋であり、入り口には山田アルベルトが立っていた。石崎は不在である。現在、被害者をしているから不在なのだろうか。
「ん。こうして対面するのは初めましてかな。Cクラスとはあまり絡んでないし、初めまして龍園くん。自分Fクラスの佐原といいま」
「んなことは知ってる。まぁさっさと座れよ、佐原」
「人がせっかく挨拶してるのに。せっかちな人ですね」
自分は初対面の人相手には基本的に猫をかぶっている。人畜無害佐原君を演じて無闇な争いに巻き込まれないようにするためだ。
行動が原因で態度関係なく巻き込まれているが。
「まずはっきりさせたいんだが、あのよう実ラジオとかいうふざけた放送してんの、テメェだな?男のくせに気持ち悪い台詞回ししやがって」
「そんなことしてないよ」
あの放送読んでるのは一之瀬さんであって自分は何もしていないというのに。冤罪もよいところである。まぁ、セリフ作ったのは自分なのだが。放送したのも自分だが、そっちに関しては否定してないから嘘じゃない。あくまでも台詞回しを否定しただけだ。
「はっ、そう簡単には認めねぇか。まぁいい、お前が黒幕という前提で話させてもらうぜ?」
「なんでさ」
「状況的にお前しかやりそうな奴がいないんだよ」
「Fクラスだから?」
「そうだな」
「でも、それなら」
「んなことはどうでもいいんだよ、あくまでもこれは前提だ。この話題はここで切り上げて本題に入らせてもらう」
あまりにも強引すぎる。坂柳だってこういう無駄な話し合いを楽しむというのに。効率厨という奴だろうか。人は対話から始めて慣れ親しんでいくのが生態だというのに。
初対面でこれはなかなかに酷い。流石龍園。
「お前は敵か?」
「?質問の意図がわかりづらいね」
「意図なんてもんはわかる必要ねぇんだよ、ただ敵かどうかわかりゃあいぃ」
「ふーん。定義にもよるけど、敵じゃないよ」
「はっ、そうかよ」
抽象的な質問にしているのにはおそらくわけがあるのだろう。まぁ、事前に龍園にとって自分がどう思われる存在かと思考した時のことを思い返すと推測だが答えが二つ浮かび上がってくる。
龍園にとっての自分はFクラスという未だ謎多きクラスの一員。そして、クラス間闘争には関わっていない唯一のクラス。その上で、どこかのクラスと敵対するのか。Cクラスにとって有益となるか邪魔な存在となるかを判断したい。
そして、どれだけ知っているかは知らないが、自分は龍園が敵視している坂柳と繋がりがある。そしてBクラスとも親交があり、Dクラスにもちょくちょく出入りしている。
以前、椎名さんに聞いた限りでは、椎名さんとの関係はクラスメイトに知られている様子はないとのこと。となると、唯一Cクラスとはなんの関わりも持っていないこととなる。
龍園にとって、いちばんの不確定な存在はおそらく自分である。
これが一つ目。もう一つはよう実ラジオに起因するものだ。
前回の放送はされた時期、内容、それらがCクラスにとってのリアルとあまりにもリンクしていた。
つまり、自分はあの事件を認知して放送した可能性が高いと考えるのは当然の流れである。それを認知した上で放送したことはある種の挑発と取られても仕方がない。
まぁ、自分としては悪戯心で後先考えずにリンクさせていたのだが。面倒ごとに巻き込まれるくらいなら思いつきの内容にすべきではなかったか。
そして、おそらく今回の質問はその二つの意図が込められている。
「うん。で、話ってこれだけなのかな。質問には答えたし。自分、急ぎではないんだけど、この後ジムで汗を流す気でね」
「はっ、そう急ぐなよ」
さっき話を打ち切って本題とやらを始めたくせに。
「この紙にサインしろ、そうしたら返してやる」
「え、嫌だけど」
「ほう?この状況でそんなこと言うのか?」
この状況。つまり山田アルベルト、伊吹、龍園に囲まれた状態。言葉にされていないがつまるところグレーゾーンな脅しである。察しの悪い奴でもなければ察する潜んでいる暴力による脅し。しかし、音声として残ってもその音声を理由に追求はあまりできないもの。
「知らない人に囲まれたカラオケボックス。確かに気まずいよね。でもだからって得体の知れないものにサインする気にはなれないよ」
「しらばっくれる気か?実際にヤラれねぇとわからないってか?」
「うん。わからないよ」
ここで弱さを見せるのは1番ダメなところだ。目的をもって弱さを見せるのは良いが、ただ弱いとつけいられる。元々下には見られているとは思うが、虚勢であっても突き抜ける必要がある。
まぁ、龍園でもすぐに暴力に走ることはないと思うが。ただでさへ、暴力などの手口を把握されているかも知れない相手、証拠を掴まれる可能性は高いだろう。
今回の事件のマイナス分はたかがしれているので、ここで無理矢理自分を止める必要性はあまりない。
「さて、話も終わったようだし、自分は帰ろうかな」
「はっ、聞く気なしか。なら最後にこれだけは答えてもらうぜ。どこで知った?そして、どうする気だ?」
「その質問で意図的にはぶられている言葉はあるけど、帰りたいしその意味も勝手に汲み取って答えよう。とある木の頂上からは、綺麗に特別校舎の一方面の窓が綺麗に見える。そして、次のネタバレはしないでおくよ」
「……アルベルト、開けてやれ」
「yeah」
「ちょっ、龍え「黙れ伊吹」……」
山田アルベルトくんが開けてくれたカラオケボックスの扉を通り抜ける。いやったー自由だーっ。性に合わない演技してたけど暴力されなくてよかったー、いついかなる時でも暴力されても良いように対策してはいるけど、やっぱり暴力されるのは嫌だからね。
しかし、これでもうCクラスとは敵対が確定してしまったのではないだろうか。Bクラスに肩入れしつつも、基本公平に過ごしていくつもりだったのだが、残念である。
しかし、そうなったらそうなったでできる放送があるのでそれを流すこととしよう。正直、そのものを放送するのはあまりにも敵視されかねないかと思っていたが、もうこの際あまり変わらないだろう。
———龍の息吹劇場———
「あんた、佐原のやつ逃して本当によかったの?」
「かまわねぇよ。ここで下手に押さえつけるとリスクがあるからな。あいつの心が折れるまで暴力で沈めるのも手だったが」
「それにあいつ、よう実ラジオだっけ?あれの放送者なんでしょ?てことはあの放送内容的に事件のこと知ってるかもしれないじゃない」
「知ってるだろうな。あいつも言ってたろ、木の頂上からはよく見えるってよ。おそらく、俺みたいにカメラがない場所を利用する奴のことを考えて事前にカメラでも隠して仕掛けていたって考えれば辻褄はあう」
「はぁ!?それなら尚更こっちが不利になるじゃない。証拠も掴まれてるかもしんないんでしょ!?」
「今回の件が明るみになったとして悪質だと言われたとしてもポイントは100も引かれねぇだろ。こっちからふっかけたってのが事実として、こっちも傷は負わされてるんだからな。それ一つのためにあいつ1人を屈服させるのは釣りあわねぇ」
「確かにそうかもしれないけど、いいの?」
「まぁ、今回はそもそもこの学校がどう対処するかがメインだったからな。多少のリスクも許容の上だ。まぁ、舐められたままでいるつもりはねぇ。あいつはクラス間闘争に直接関与はしない存在とはいえ、介入はしてくるだろう、これからもな。この先も邪魔をしてくるなら、他クラスの奴同様に潰すだけだ」
やっべ。自分山田アルベルトの台詞familyとか印象的なのしか知らんし、台詞回しもできんから徹頭徹尾無言にさせとこ。