F!みなさん!よう実ラジオのお時間です!   作:野菜の神

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脅威の5200文字。この数字自体は小説を書く上での脅威ではまったくないが、この小説の中では1番多い文字数となる。おまけなのに。おまけなのに。おまけだからこそか。


おまけ 綾小路とドリンクバーにて

「ひれ伏すがいい。金のない貴様にこの我がファミレスを奢ってやろう感謝せよ」

「なんのキャラだそれは」

 

 それはなんともないある日の放課後。自分は予定のない綾小路とともに帰路を共にしていた。

 自分は歩きながらそんな綾小路に向かって腕を組みながら上から目線で綾小路を横目で見下ろす。

 

「ふっ、金の差という奴よ。風の噂によれば、貴様のポイントが残り0だと聞いてな」

「どこで聞いたんだそんな噂」

「違うのか?」

「違わない。この通り俺のプライベートポイントは空だ」

「くははははっ、無様、無様なりぃっ破産したか我ぇ!!くらははははははっがっ、げほっげほっ。むせた」

「合わないキャラしてるからだ」

 

 無様にもならないことをして失敗した。羞恥感に襲われつつも綾小路に背中をさすられてしまう。なんたる屈辱だろうか。いつかこの屈辱を晴らさねば。しかし、綾小路の背中をさする場面なんてどうやったらできるのだろうか。

 

「けほ、けほ。ん。ありがと。まぁ真面目な話、帰り道にファミレスとかいう高校生あるあるイベントをやってみたいと思って」

「あるあるなのか?」

「ボッチ青春知識皆無な貴様には難しかったか。あ、あとポイントにも余裕あるし、友に奢って恩を感じさせられる上に好感度も稼げてハッピーハッピーって算段よ」

「事前に言われたら好感度も上がらないと思うが」

「よいのだよ。所詮友達と飯を食べるための方便だし」

 

 事前に言うからこそ、正直な人だと好感度や信頼度を稼げる場合もあるとは思うのだが。この綾小路の場合はどうなのだろうか。そもそもこいつに純粋な好感度が存在するのかはたして。

 せいぜい自分も高校の友達という教科書でしかないのだろうか。自分とかいう転生した異端児を教科書にするのはお勧めしないのだが。

 

「それに聞いたよ?なんか須藤くん?あと他の誰か含めて3点分の赤点をとって退学しそうだったときに、堀北さんと一緒にポイント全部はたいてその上で他の人にも寄付を呼びかけたとか。わざわざクラスメイトのために身を粉にしたお前を労る会だよ」

「そうか」

 

 聞いた話では、なんと須藤は赤点二点を記録したらしい。山内は一点を記録したらしい。二人とも何やってんだか。原作より愚かになってんじゃないよ。自分を介した一之瀬さんによって通常より早く届けられたはずなのにどうしてそうなったのだろうか。もしや早めに配られたからと余裕を持ってサボっていたのか?

 

「ちなみに、どこぞの誰かさんみたいに奢った後、それを出汁にお願いしたりはしないから」

「……堀北のことを言っているのか?」

「そんなことないかもよ〜?そんな非道なことする奴なんているはずがないない……スペシャルランチ」ボソ

「お前どこでみてたんだ」

「食堂」

「そりゃそうだろうが」

「壁に耳あり障子に目あり空間の向こうに我ありよ……おい何手で体隠してる気持ち悪い」

 

 綾小路が服の上から体を隠すように手で胸元を隠した。こいつこんなことする性格かと思いつつも、その仕草が淡々としており、そして無表情の男であることも相まってそこはかとなく気持ち悪い。悪い意味ではない。いややっぱ悪い意味。

 

「いや、なんだか覗かれている気がしてな」

「お前の裸体なんか見たくもないんだが。コンパスで刺されたいのか?お?」

「やめろ。堀北になるな」

「おぉ、パワーワードでたな」

 

 そんな意味のない雑談を繰り広げていれらファミレスに到着する。

 2人席はなかったので4人掛けのテーブルへと腰を下ろす。現在四時という昼時でも夜時でもない中途半端な時間なので、客はあまりいない。

 メニュー表を開いた綾小路は顔を上げてこちらを見てきた。

 

「本当になんでも頼んでいいのか?」

「なんでもとは言ってない。2,000ポイントまで」

「うちのクラスの堀北でさえ3000のスペシャルランチを許容したのに。ケチ」

「なにをう?……まぁここで高いのなんてたかがしれてるから一セットだけなら上限無くしてやる」

「なら晩飯の分も食べる。このフェアでやってる黒木和牛セットドリンクバーつき3600」

「おいこらテメェ」

 

 前に来た時はここで1番高いメニューは2600円の大ボリュームハンバーグセットだったというのに。知らない間にメニューが追加されていたらしい。フェアを恨むことにした。

 まぁ、言った手前なしというのはダサすぎるし、懐には余裕があるので問題ないのだが。

 

「……まぁいいけど。どうせなら自分もそれで。あいや、ソースは違うのにするか。初月から続いて十万ポイント貰えている我の懐を見せつけてやろうではないか。感謝せい」

「おー」

 

 綾小路とソースは互いに違うものを選び、あとからシェアすることに決め店員を呼ぶ。店員に2人揃って頼めば、高校生なのに豪華な間食だなみたいな目を向けられながらも厨房に戻って行った。

 晩飯も含んでるのだが。まぁ、夜ご飯はパン一つくらいは食べると思うが。

 

「さて、頼んだということはドリンクバーをとりにいけるということ。ボッチでドリンクバーとかにいったことなさそうな貴様には、ドリンクバーの流儀を教えてやろう、取ってきたやるからまずはまっとけ」

「おい待て。何を勝手に俺を友達がいない奴みたいに」

「いるの?あ、高育に入ってからの友達はノーカンね。たとえば4バカの人らとか」

「……いや待て。3バカではなく4バカ?あそこに俺も含まれてないか?」

「というわけでドリンクバーを取ってきてあげるから待ってて」

「おい待て」

 

 ドリンクバーについた自分が一つのグラスに入れたのはコーラ カルピス モモ レモン ジンジャーエール。いうまでもなく混沌混ぜ混ぜカオスドリンクである。これをしないとドリンクバーは始まらないと言っても過言ではない。

 もう片方のグラスにはカルピスとメロンソーダを注ぐ。こちらは定番である。

 

 席に戻り、片方を差し出す。

 

「ほれ」

「……なんだこれは」

「飲んでからのお楽しみ」

 

 綾小路が謎の液体に戸惑いながらも決意を決めた様子で飲む。その瞬間に微妙に渋い顔をした。

 

「……なんだこの形容しがたい味は」

「コーラにカルピスにモモにレモンにジャンジャーエールを混ぜ合わせた混沌カオスドリンク」

「企業努力を踏みにじっているな」

「でもこれ結構メジャーな流儀よ?適当に混ぜ混ぜするドリンクバーの通称カオスドリンク」

「そうなのか?」

「うん。まじまじ。あ、こっちは普通にメロンソーダとカルピス混ぜた定番だし、カオスは自分が飲んどくよ」

 

 流石に自分が作ったカオスドリンクを相手に飲ませ続けるほどに自分は鬼畜ではない。まあ、最初から飲ませなければ良い話なのだが、そこはまぁ、悪戯である。好感度が下がる音がした。

 

「いや、別によかったんだが」

「もしやイタズラだと認識されてない?とりまこっちどぞ。そんじゃ自分はカオスドリンクを……うーん、まずいわけじゃないんだけど微妙で形容しがたく、ところどころそれぞれの味、それらの旨みはするけど混ざり合っていることでそれぞれが邪魔をしている。とくにコーラ」

 

 自分はなんとかそれを全て飲み干す。まぉ、カオスドリンクと言ってもまだマシな部類なので問題はない。ここに麦茶とかが入ってくると混沌ジュースは素晴らしきゲテモノとかする。カオスドリンクの曲者ランキングを作れば麦茶やココアが上位に来ると思っている。

 

「俺も取ってくる」

「んー」

「お前の分も」

「んん?何やらかすきだお前」

「お前と同じこと」

「……行ってこい」

 

 自分が最初にやらかしたのでやめろとも言えない。完全なる自業自得である。まぁ綾小路だし、理論的にスーパーうまいカクテルみたいなの作ってくるかもしれないので期待して待つ。

 いや待てよ、あいつ料理に関する知識とかはなくね?天才肌だからやり方さえわかればできるだろうが。まぁ期待しておこう。

 

 そんなふうに待っていてかれこれ5分。ドリンクバーにしては長くないだろうか。客もたいしていない時間帯であるので並ぶこともないと思うのだが。

 と考えてきたときかえってきた綾小路は五つの様々な色合いのコップを持った綾小路だった。そして、そのうちの一杯を渡される。

 

「……なにこれ」

「麦茶にココアとジンジャーエール、あと野菜ジュースを入れたものだ」

「マジもんのゲテモノじゃねぇか!?カオスドリンクの麦茶とココアは存在しちゃいけないものってのは常識だろ!?初めてに常識なんかないか。てかなんだ残りの四つ」

 

 個人的曲者ランキングトップ2が両方入っている上に、野菜ジュースという店によって全然異なる味わいになり予測できないもの。そしてジンジャーエールで炭酸が追加され、生姜の味がそれらにどう作用するからもはや想像できない。

 とくに麦茶とココアは二種類合わせる中では最悪に近い組み合わせだと思っている。

 

「お前がくれたドリンクを飲んだとき、他も混ぜたらどんな味がするのか興味が湧いてな。とりあえず全部の種類をこの4つのグラスの中にいれてきた。それぞれを残して飲んで最後に混ぜたら全てを混ぜたドリンクが完成する」

「馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの?そういやこいつ興味からコーヒーを4倍だか3倍だかに希釈して飲む馬鹿だったわ」

「そんなことしたことはないが。だが、それはそれで興味が湧くな」

「馬鹿野郎っ。飲んだことあるけど微妙な味になるからやめとけ」

 

 綾小路は好奇心旺盛で水筒に手を突っ込んでロケットパーンチとかいうピュアピュア少年だったことを思い出す。こいつの暴走を予見できずに教えてしまった自分の愚かさを恨む。

 ちなみに、コーヒーのティーパックを極限まで使い倒した結果生まれた極薄コーヒーを飲んだことがある。ぬるま湯の方がうまい。

 

「……はぁ、飲むとしても食う分の腹は残しとけよ。グラス4杯はなかなかに腹膨れるし。黒木和牛だぞ?自分も食ったことないレベルのお肉ぞ?腹一杯だと美味しく食えないからな」

「……あ」

「おい待て考えてなかったか?おい」

「……」

「せめてさぁ、入れるにしてもさぁ、全部同じグラスにしよ?なんで四つに分けて量も店の洗い物も増やした?……流石にこれ「飲み残しとして流すのは倫理的な問題がある気がするし……はぁ、半分は飲んでやる」

「いいのか?」

「世間知らずの馬鹿にカオスドリンクなんてゲテモノ教えたのは自分だよ、子の責任は教育間違えた親が取らんと。」

「お前は親じゃないだろう。だが、感謝する」

 

 2人でゲテモノドリンクを混ぜる分を除いてそれぞれ飲み干し、自分は味に苦しみながら、綾小路は味に興味などで心を躍らせたのちに単純にまずいなと口に出したりしていた。

 そしてその後全て混ぜたものを飲んだ後、綾小路からは単純にまずいと返ってきた。だろうな。

 

 その後に来た黒木和牛ステーキはセット3600円、単品3000円もするので当然と言えば当然だがとてつもなく美味しかった。カオスドリンクを飲んだ後ということもあり、余計に美味しく感じる。

 美味い油というのはやはり良いものだ。歳をとると満足に油を食えなくなるし、若いうちに食べれるだけ食べておくべきかもしれない。

 

「美味いな」

「このステーキ一枚でスペシャルランチに匹敵するからな。厳密にはソースとか付属のポテトとかもついてだけど」

「これ一枚でか」

「うん。あ、綾小路。ほれ、約束のシェア。口開けろ」

「ん」

 

 その後は互いにソースをシェアしたりして食べ終わり店を出る。腹一杯になり、満足満足と量までの道を歩く。夕焼けが高育の街を照らし上げていた。

 

「なぁ、佐原」

「ん?なによ綾小路、あらたまって」

「ありがとな。初めてファミレスに来て、初めてドリンクバーというものを体験した。黒木和牛を食べたのも初めてだ」

「……素直に感謝するお前ってなんか新鮮」

「俺をなんだと思ってるんだ」

「んー。達観してる系厨二病」

 

 さらに言えば事なかれ主義とかいってる典型的なタイプ。さらに言うと事実的にえげつい過去持ってるタイプ。あれこれ厨二病というよりおいたわしい系では。

 

「厨二病?なんだそれは」

「無知乙」

「?」

「……厨二病は思春期によくある魔法とかそういう特別なものに憧れたり、自分を物語のキャラだと錯覚したり演じたりする、一種の病気みたいなもん。大概黒歴史……この流れだとこれも知らないな。恥ずかしい記憶として残る」

「なるほど」

「無知乙は無知とお疲れ様を略した乙。ネット用語でそんなことも知らないんだープークスクス、みたいな皮肉が存分に含まれてる。いや、今回に限っては会話にネット用語とか持ち出してきた自分が悪いすまん」

「いや、問題ない。それに、これからも使ってもらっても構わない。知らない言葉は新鮮だからな」

「……そっか。ならよかった」

 

 やはり自分には綾小路とかいう事勿れ主義の厨二病のことは理解できそうにない。どういう思考回路をしているのだろうか。ニコニコの一部謎動画とかボーボボ見せたらどんな感想になるか試してみたい。

 

「まぁ、ファミレスなんていつでも行けるしまたいこうや椎名さんでも誘って。ポイントは自分で払えよ?今回奢ったのは特別だから」

「あぁ」

 

 綾小路の情緒育成計画は果たしてうまく行っているのだろうか。存分に友達という教科書に慣れていれば幸いなのだが。あれ、教科書ってことはどっかで必要なくなって捨てられるってことでは?軽井沢みたいに。軽井沢みたいに。

 まぁその時はその時だろう。




希釈されたコーヒーって実際作者飲んだことがあるんですよねぇ。一つのインスタントコーヒーをなるべくたくさん飲むために。

今回の話はセリフを書いた後に地の文を追加するスタンスでやっています。
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