F!みなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:野菜の神
13
綾小路から須藤暴行事件について何か知らないかと、聞かれたりしつつ、日は流れる。
「佐原くんなら、何か知ってるんじゃないかな。須藤くんの事件のこととか、真相とか」
「んー?まぁ知ってるけど」
「あはは、やっぱり知ってるんだ。あの放送内容的に偶然だとは思ってなかったけど」
「そりゃね」
今回はカラオケではなく一之瀬さんの部屋にご招待されている。カラオケでも良いが、もう何度も行っていてるし、カメラがない、人に見られないという条件なら部屋でも良いのでは?カラオケ分のポイントも減らないし。となったらしい。
まぁ、確かにそうである。密会といえばカラオケという印象があったからそうしていたが、別にこちらでも問題はない。
「その、どれくらい知ってるのかな。知ってるかもしれないけど、私はDクラスに協力することに決めてるんだ。だから、もしも知ってることがあるなら教えて欲しいし、証言もして欲しいの。お礼もする。まぁ、お礼って言ってもポイントなんだけど。もしポイントが必要ないなら他のことでも。あ、でも私は佐原くんに貸しが」
「ん〜、ポイントは別にいいかなぁ。あと、他のことも。あと、自分が勝手にあげた恩?に対する貸しは気にしなくていいよ。友達でしょうが」
「っ!……そっか、ごめんね。佐原くんにも考えがあるのにお願いしちゃって。もしかしたら証拠とかも持ってて事件解決に運べるんじゃないかなって思ってさ」
「証拠はあるよ」
「あるの!?本当に!?」
一之瀬さんのベッドに座らせてもらい、もらった紅茶とカステラを食べながらも事実は述べる。普段午後ティーしか飲まない自分にとって、紅茶パックでいれた紅茶というのは新鮮である。温度も違うし。カステラの甘味との調和も素晴らしい。甘味と紅茶は合うとはよく言われるが、真である。
「まぁ、一之瀬さんに言われるまでもなくなんらかの形で公開はする予定だったし、Cクラスの勝利に終わることはないから心配してもらう必要はないよ」
「あ、そうなの?よかったぁ。あ、もしかしてよう実ラジオで?」
「うん。あ、今回も機械音声だし、それに録音するものもないから今回は何もしなくていいよ」
よう実ラジオを放送することに決めたのには五つの理由がある。
まず一つ目。どうせCクラスと敵対するんならわかりやすく敵対しようという考えのもと。
二つ。好奇心。
三つ。証拠を持つ敵対している自分と、証拠でなくとも部分的にそれに近い佐倉さんが結びつけられないために。もしも自分が何もしなければ、自分が知った本当の理由が佐倉さんから教えてもらったからと推測されかねない。
四つ。謎に坂柳が本来の放送権分のポイントである五万ポイントを楽しみにしていますとか言って渡してきたこと。なんか圧を感じた。
「え、本当に?」
「うん。今回のことに巻き込むのは少しね。あ、あと今後も大丈夫かな」
「え……」
「こっそり練習してた自分の読み上げ技術もそこそこできてきたし、ゆっくりスタイルの放送もするし」
「あ、うん……そっか」
地の文ではこちらの話を続けるが理由の五つ。なんらかの手法で事件解決に協力してくれた場合、それが有効な強力でありそれを行ったのが自分であったと判明した時に貸し一つという提案をされたこと。これ綾小路にもよう実ラジオ犯人自分ってバレてるだろ。まぁ、綾小路に貸しはうまいし。
単純に協力したら貸し一つという単純な条件でない理由。それはおそらく、自分がよう実ラジオで間接的に解決に協力する場合、自分はそのことを隠しているからこそ通常の貸一つでは自分への得にならないからだろう。
……?友達で貸し借りは気にしないって?確かに一之瀬さんにはそう言ったが、そもそも前提が違う。
一之瀬さんは性格的にこちらの了承なく貸し借りを作ってしまうのが問題なのであり、取引の上での貸し借りならもらっておくだけだ。つまり、今回一之瀬さんの頼みを受けた上での貸しなら快く受け取った。
ちなみにだが、たまたま佐倉さんが綾小路に渡した玉護っちを持っていたことを見かけたのである。そのことに関して綾小路に聞けば、あれは佐倉が持つべきと判断したと言っていた。
理由を詳しくはいえないが、彼女は不審者に縁があってしまったらしい。紙袋被った不審者と遭遇したとか。ついでに、そのせいでより大胆にカメラをぶつけたのでSDカードが破損していたとか。復旧できるレベルでらあるらしいが時間かかるとか。なんてこった。
紙袋マンめ、なんてことを。ストーカー男と変態という意味度は同類ではないか。
そのときは内心で謝罪しながら護身用ミニ虫除けスプレーを佐倉さんに渡しておいてと綾小路に渡した。
会話は会話、思考という名の解説地の文を分けて行っておれば、会話の方で一之瀬さんが不自然に黙っていることに気づく。会話が続かないとか、話題がないとかいう雰囲気ではない。なにか下を向いていて暗い雰囲気である。
「……」
「ん?どしたの?」
「あ、ううん。大丈夫」
「……あ、なるほど。よう実ラジオの報酬の話ね。欲しいなら今後も原稿、とはいかなくても情報くらいなら事前に譲るよ?あ、でも4月のSシステムほど影響出る暴露はもう多分ないと思うけど」
「あ、そうなんだ……でも、そういうことじゃなくて」
「?」
何やら暗い気配をしている一之瀬さんに首を傾げる。理由が全く思い当たらない。唯一思い浮かんだよう実ラジオの音声を担当してくれる場合の報酬に至っては直々に否定される。
「その、私と佐原くんの関係ってよう実ラジオが始まりとも言えるじゃん?だから、何か寂しくて」
思ったよりも切実というか、実利に関係のない理由が出てきて困惑する。いやまぁ、たしかにそうである。
「あー……あーね?うん。なるほど、別に一之瀬さんが必要なくなったからとかじゃないよ?ただ、これからが少し問題が発生してくることがあって。自分これから本格的にCクラスに狙われる可能性があるんだよね。それに巻き込むかもしれないのはあまりよくないでしょ?」
自分が一之瀬さんを今回切ったのにはいくつか理由がある。まずひとつめは自分でもできるくらいにまで読み上げ力が向上したこと。単純に1人でできるようになった。
そして大きな理由が先ほどのべたCクラスの懸念だ。クラス間闘争がある分、どちらにせよBクラスはCクラスの敵だろうが、わざわざこんな形で目をつけられる必要はない。
「……え?あ、たしかに、証拠なんて放送したらCクラスはよう実ラジオを敵って思うし」
「うん。それに自分龍園から放送者ってバレててね。まぁ龍園のみにならず生徒会長。言葉にされてないけど坂柳とか綾小路にもバレてるんじゃないかな」
「え、坂柳さんとかはまだわかるけど綾小路くんにまで?」
「ん?あー……まぁあいつと1番仲良いし、勘もいいんでしょ。それにFクラスが犯人って考えの人結構いるしね」
「まぁ、たしかに。私は最初から知ってるからピンとこないけど、知らない人からしたらわかりやすいのかな」
「さぁ。自分が把握してないだけで結構な人にはバレてると思うよ?Bクラス内の人も。もしかしたら一之瀬さんとの繋がりもバレてるかもね。もしBクラス内でバレたら素直に白状していいよ」
「うん。わかったよ……あ、その、大丈夫なの?Cクラスに狙われるって」
しれっと、話題がすり替わっていたことに気づいていなかったが一之瀬さんの言葉で思い出す。よう実ラジオ卒業から一之瀬さんが卒業する話からすり替わっていた。
「うん。問題ない。なくはないけど対応はできる。対策はするけど向こうが何かしてくるとしても、下手に動けばリスクがあることはわかってるはずだし」
「そっか……でも、それなら私もよう実ラジオに巻き込んでもらっても構わないよ。一度乗りかかった船だし、多少リスクがあっても」
「一之瀬さん自身はいいかもしれないけど、その結果Bクラスが目の敵にされるのは避けたい。Fクラスとかいう、クラス間闘争に含まれていないクラスだから狙うにしても向こうのリターンはまだ少ないし、それに自分1人だけだから対策も立てやすい。Bクラスだとこうはいかない」
事実、わざわざCクラスがFクラスというか自分を狙う旨みはあまりない。もしも、自分が積極的にCクラスに利敵行為をとっていたのなら潰す方向になるだろうが、潰したところで自分というマイナスがなくなるだけなのだ。
それに、証拠を押さえるということを強調した本人である自分に何かを仕掛けるのはそれそのものがリスクとなる。
それに対してBクラスは、人数も多いしお人好しなので正直言えば穴が大量にある。わざわざ余計ないざこざを入れ込む必要性はない。まぁ、もともと狙われているが。しばらくBクラスはDクラスを主戦場にしてほしいものだ。
「うーん、もうすでに因縁つけられたりしてるんだし別に……うん、でもそうだよね。もっとひどくなっちゃうかも。私1人が良くてもみんなを巻き込んじゃうか。うん、ごめんね佐原くん。私、降りるよ」
「ん。これまでありがとね我儘聞いてもらって」
「いやいや、私もたくさん助けられたしお互い様、むしろもらいすぎたくらいだよ……でも、勘違いしないでほしいな。私と佐原くんは友達、それは変わらないからね。いつでも頼って欲しいし、よう実ラジオのことでまた手伝って欲しいことがあったらなんでも言って」
「ん、了解」
というわけで一之瀬さんは離脱します。とはいいつつも、タグに名前があるくらいなのでよう実ラジオやってようがなかろうが多分出てきます。