F!みなさん!よう実ラジオのお時間です! 作:野菜の神
「というわけだ佐原くん。証拠を持っているなら渡してもらえないかしら」
「どういうわけで自分なの?堀北さん」
「また説明しないといけないのかしら。あなたがあの放送をしている人でしょ?」
「訳がわからないよ」
「そう。だとしても関係ないわ。持っているのならくれない?無論、お返しはするわ」
「自分は持ってないよ」
「ならあの放送はなんだというの」
「どうって言われても、そもそもの話。自分は証拠を持っていないんだから渡すも何できないよ」
「……そう。ところで佐原くん、あなたうちの綾小路くんと仲がよかったわよね」
「ん?それはそうだね」
「彼に免じてはくれないかしら」
「だから、自分は本気で証拠持ってないんだって」
堀北さんにダル絡みされているのをどうにか嗜めつつ、どうやって逃げるかを思考する。逃げるだけならば可能だ。問題は今後も付き纏われると面倒臭いということ。まぁ時間の問題だとは思うが。
「……そう。あくまでもそういうのね」
「いやいや、自分ここまでで一度も嘘ついてませんが?証拠を持ってないよ」
「ひとつ聞きたいのだけど、あなたはどこかのクラスの味方なのかしら」
「自分はクラス単位での意味の味方はいないよ?作る気もあまりないかな」
「BクラスとAクラスとはそこそこに仲良くしているとは聞いたけど?てっきり高いクラスの味方でいると思っていたのだけど」
「あれは単純に仲良くできる人が多いだけ。民度の問題。その証拠に平田や櫛田、綾小路とは普通に話してるでしょ?」
「……それを言われたら反論できないわね」
堀北さんもDクラスには思うことがあるらしい。らしいというか普通にあるだろう。少し経ったあとならまだクラスに対して思い入れも生まれるかもしれないが、まだ序盤も序盤である。そんなのはないだろう。
まだ綾小路による堀北育成計画は始動していないし。
「少なくとも、今回Dクラスに味方する気はないということね?」
「まぁスタンスとしてはそうだね。今回自分が誰かの味方かって言われたらいはするんだけど、須藤助ける目的では一切ないね」
「そう」
「じゃ、自分そろそろ行っていい?」
「待ちなさい」
堀北面倒くせー。証拠を持っていないという点に関しては本当だというのに。いやまぁ、クラウドから引っ張り出してこればあるのだが、面倒だし、自分が堀北に渡すつもりはない。
どうやって退けようか、あのことは流石に言えないしと考えていれば、スマホからアラームが鳴るとともにGPSが表示される。
この信号は、綾小路が佐倉さんに渡し玉護っちのようだ。
「ごめん堀北さん、急用出来たからまた後で」
「っ!待ちなさい佐原くん!」
その場はとりあえずと離脱し、GPSの方向へとダッシュで向かう。
一応綾小路からもしもの時のためにと佐倉さんのGPSの緊急機能を共有させられていたが、功を奏したらしい。それとともに綾小路のGPSも表示されたので、自分も表示させておく。
位置的には自分の方が近いので、現場へと急行する。無線イヤホンでハンドレス通話をし、綾小路と連絡をとると、すでに現場には学校配属の警備員に連絡はしたらしい。
現場に駆けつけ、その近くで息を殺して気配なく近づく。
綾小路はもう少し経てば来る頃合いだろう。それまで待機すべきか先に突入すべきか。
しかし待機を選ぶ。下手に早く飛び出してもやることはない。自分一人であの変態を取り押さえられる確信はない。ジムで鍛えてるし予想以上に成長が早いとはいえ、もしかしたら武器を持ってるかもしれない相手の制圧をする自信なんてものはない。
経験だって、たまに綾小路の首を締め上げたりはするがその程度である。綾小路が本気で抵抗していないのは自明なので、本気で拘束から抜けようとする人間というのをまだ知らない。
今の所武器も何も持っていなさそうである。もしも、何か取り出しそうにポッケに手を突っ込んだり、素手で暴行に及ぼうとしたらその瞬間に駆け出すが。暴れる気もなければ佐倉さんには悪いが言葉で精神汚染されるくらいは許容してもらうしかない。
内容が明らかにダメなものになってきたり、状況によっては介入するが。
しかし、耳を傾けて聞いている会話の流れ的に、佐倉さんは押し倒されそうである。押し倒されたら助ける難易度が上がるのでそろそろ助けに入らないとダメだろうか。
というわけで自分は気持ち悪いことを佐倉さんに言っている変態に後ろから気配を殺して近づき、頭に固定具付き改造紙袋を被せ、首に固定する。変態二代目紙袋マンの爆誕である。
次回覆面で行動することがあればと用意しておいたものだ。前回風で紙袋が飛ばされかけたし。
その上で、虫除けスプレーを中に噴射しその上で紙袋の中に入れてある爆音防犯ブザーも起動する。
不意に視界を防がれる、密封というわけではないがそれに近い状態で噴射された虫除けスプレー、さらにそんな中頭のすぐ近くでなった防犯ブザーにより怯んだ犯人をころけさせ、ついでに金的もしておく。
動揺している佐倉さんを走れるか聞けば腰が抜けかけていた様子。どうにか防犯ブザーを止めようとしたり紙袋破こうとしたり股間押さえたりしながらも立ちあがろうとする無駄にたくましい犯人。そんな犯人の腹を蹴り、再度転倒させ金的をした後にポッケからナイフが転げ落ちる。
狂気の回収か佐倉さんを逃すのを先にすべきかと思考するが、しゃがんだりして拾う時間は惜しいとナイフを逃走方向とは逆に蹴飛ばし、遠くにやってきた佐倉さんに肩を貸す。
綾小路の頼みで来たと話しながらも、半ば強引に佐倉さんと走る。途中で一人で走れるまで立て直した佐倉さんを走らせ逃げ道へ行かせた。
自分は犯人のことを確認しながら逃げ道に立つ。逃げ道の物陰に潜みながら様子を伺う。
このまま逃げられるのは厄介なので、警備員が来るまではどこにも行かせたくないのだが。
一応、この状況の記録はしてあるので電気屋の配属記録などからも割り出せるだろうし捕まえられはすると思うのだが、雲隠れでもされたらたまったものではない。
実害を出した犯人が行方不明となれば、綾小路が常日頃から佐倉さんの隣を歩きでもしなければ、佐倉さんはまともに外出もできないだろう。この学校の監視カメラの量で雲隠れできるかはさておき、外の世界に逃げられれば厄介。
そうこうして十数メートル離れたところから様子を見ていると、犯人は紙袋を破った。後ろ側にあった視界のための穴を広げて破ったらしい。何気に高い紙袋なので、掴無場所がないと破れなかったようだ。
仮に、二代目紙袋マン作戦が成功してなければ容赦なく顔面に虫除けスプレー噴射して少しでも怯んだところに水筒での全力殴打の予定をしていたが、そっちの方が確実性はあっただろうか。殺しかねないけど。制圧するというのは殺すよりも難しい。
自分にも十分な部の心得があればはだかじめとかでもしたかもしれない。本部さんが武蔵にやってたやつ。また綾小路にでも教えてもらおうか。ついでに綾小路に漫画布教して漫画空想技術を覚えてもらった上で実演してもらおう。
自分は犯人の様子を眺める。一応、追いかけてきたら逃げる心つもりだ。応戦はできるとは思うが、やって得はない。佐倉さんが逃げ延びたのなら別にいい。
一応、追いつかれそうな時は虫除けスプレーに、フラッシュ機能が強化しまくられた不良品のカメラに水筒に第二の爆音兵器などかますつもりではあるが。
しかし、自分が逃げるまでもなく警備員が駆けつけてきたことで犯人は逃亡を始めた。しかし、逃亡した先に哀れ綾小路がいたので容易く鎮圧されておわってしまった。
「どけぇっ!」
とか言いながら胸ポケットの折りたたみナイフを綾小路に向けたのが運の尽きである。何本持ってんだあの変態。
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あの後は綾小路に合流をして佐倉さんはすでに逃したこと、本来は待つつもりだったけど押し倒そうとしていたことから動いたことなど、経緯を説明した。
なぜそんなに豊富な装備を持っているのかと訝しみの目を向けられたが、全て生活用品ですが?で誤魔化しておいた。まぁ、誤魔化しはすぐにバレたので暴力しそうな奴に狙われてそうだからと言っておいた。つまるところ自衛グッズである。
綾小路の連絡のもと、佐倉さんと合流すれば感謝をされた。こちらは様子見をしていたことに関して謝罪をし、許された。
さーて。とりあえず各クラスのリーダー陣に佐原の存在がバレていることになった。