琉球エージェントの死遊戯紀行2   作:アヤ・ノア

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ここも、オリジナルの展開を入れています。
鬼は立ち回りの部分が大きいけど、デスノートじゃないので直接対決で行けます。


第5話 凍てつく地獄花火大会

「新たな任務だ。凍り鬼三兄弟と呼ばれる鬼の一群が現れた。

 現地に向かい、これらを迅速に討伐しろ」

 

 司令官・糸村一の冷徹な指令が、作戦室に響き渡った。

 モニターには、異常な吹雪に閉ざされた場所が映し出されている。

 どうやら、未来予知によって映し出されたものらしい。

 

 今回の任務に選ばれたのは三人。

 部隊の指揮を執るリーダーの阿藍。

 道具を自在に生み出す創造の能力者、理々庵。

 そして、地水火風の四大元素を操るエージェント、仲宗根毬藻だ。

 

「氷の鬼か。僕の火の元素で、跡形もなく溶かしてあげるよ。

 それにしても、こんな寒い場所への任務なんて、僕の抜群のスタイルが凍えちゃうじゃないか」

 

 毬藻は豊かな肢体を誇示するように、身体を軽く伸ばしながら言った。

 抜群のプロポーションを持つ彼女は、

 戦闘服の上からでもその美しい曲線がはっきりと分かるほどだ。

 

「無駄口を叩いている暇はない。

 氷の硬度を測り、それに最適な鉄の質量を計算する……もう構築の準備はできている」

 

 理々庵は感情の起伏を感じさせない声で淡々と言い放つ。

 その瞳には、既に敵を冷酷に排除するための戦術回路が浮かんでいた。

 

「二人とも、油断するなよ。三兄弟というからには、

 統制の取れた連携攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

 毬藻は元素を操る超能力での広範囲の牽制と火力の供給。

 理々庵は俺達の防御の補強と、隙を突いた武器での狙撃を頼む」

 

 阿藍が毅然とした態度で二人に指示を出す。

 

「了解だよ、リーダー。光の速度に遅れないように、僕も元素を使うとするさ」

「指示は頭に入った。私の鉄は、どんな氷よりも硬く鋭い。いつでも行ける」

 

 阿藍が中心に立ち、二人に手を差し出す。

 光の粒子が三人の身体を包み込み、空間がぐにゃりと歪んだ。

 

「目標――テレポートを開始する」

 

 次の瞬間、作戦室から三人の姿が完全に消失した。

 人と鬼の狭間で戦うエージェント達の、新たな過酷な戦いが幕を開けるのだった。

 

 凍り鬼三兄弟の足取りを追う阿藍、理々庵、毬藻の前に、

 突如として二体の餓鬼と一体の鬼蟲がその姿を現した。

 その現場には、偶然にも大翔、章吾、有栖、総一朗が居合わせており、

 突如現れた鬼に、総一朗は身を硬くしていた。

 

「僕達の邪魔をするなんて、いい度胸だね」

 毬藻が豊かな肢体を揺らしながら不敵に微笑むが、阿藍は既に光の銃を構えていた。

 鬼蟲は自らの速度を過信しているのか、不気味な羽音を立てて余裕の態度を崩さない。

 

「消えろ」

 阿藍が冷徹に言い放つと同時に、光の速度で放たれた弾丸が鬼蟲の巨体を一撃で撃ち抜いた。

「な、なんだよ、今の……!」

 塵となって消滅するその圧倒的な力を見せつけられ、総一朗は目を見開いて驚愕する。

 

「物質創造――拳銃」

 理々庵の手に銃器が瞬時に出現する。

 彼女が躊躇なく引き金を引くと、放たれた弾丸は餓鬼の脳隔を正確に貫き、一撃で倒した。

「残るは一体だね! 風の元素よ、集え!」

 毬藻が鋭く手を振ると、激しい突風が渦巻く。

 餓鬼の不規則な動きに一瞬だけ手こずったものの、

 毬藻が風の刃を叩きつけると、それも一撃で消滅した。

 

 超能力者達のあまりの戦い振りに、総一朗は完全に腰を抜かして雪の上にへたり込む。

 その情けない姿を見下ろし、阿藍は光の銃を消しながら冷淡に言い放った。

「足手まといだ。怯える暇があるなら、No.16にでも守ってもらえ」

 

 翌日の木曜日。

 阿藍は単身、さらなる情報収集に奔走していた。

 鬼の残滓に少し手こずりながらも、何とか凍り鬼に繋がる情報を入手する。

 だが、その帰還の道中、執拗な鬼蟲と鬼の待ち伏せに遭い、再び戦闘へと突入した。

 

「構築――拳銃!」

 理々庵がすぐさま武器を生み出して発砲するが、

 今回の鬼蟲の外殻は硬く、打ち砕く事ができない。

「チッ、硬いな……!」

「焦るな、理々庵。敵の攻撃パターンは見えている。戦闘を長引かせたらいいんじゃないか?」

 阿藍が冷静に状況を分析し、指示を飛ばす。

 鬼蟲が一同を襲ったが、阿藍達は強靭な精神力でこれに耐え切った。

「今度はこちらの番だよ! 燃え上がれ!」

 毬藻が火と地の元素を激しく操り、鬼達を瞬く間に危機的状況へと追い込んでいく。

 逆上した鬼が太い腕を振り回して殴りかかってくるが、

 阿藍はその鋭い攻撃を光の速さで見切って容易くかわした。

 

「あの鬼が精密なロボットだったら、手加減の必要もなくて遠慮はさらになかったのに」

 理々庵が不満げに呟く。

 しかし、琉球の殺鬼軍たる彼らに、鬼への慈悲など元から一滴も存在しない。

「一気に叩く!」

 理々庵は重厚な鉄のハンマーを創造し、鬼の脳天へ力任せに殴りつけた。

 肉の砕ける音が響く中、阿藍が追い打ちをかけるように極大の光を放つ。

 

「まとめて消えてしまえ!」

 毬藻も四大元素を奔流の如く操り、鬼蟲もろとも周囲を爆砕した。

 しかし、死に体の鬼蟲が最後の力を振り絞って不快な精神波を放ち、

 エージェント達を激しく撹乱する。

「頭が、割れそうだよ……!」

 阿藍と理々庵は何とかその精神汚染を踏みとどまったが、

 感覚の鋭い毬藻は激しい混乱に陥ってしまった。

 その隙を突き、残った鬼が理々庵へ猛然と襲いかかる。

「くっ……!」

 直撃を受け、理々庵は吹き飛ばされて少しピンチに陥る。

 しかし、彼女は執念で立ち上がり、迫る鬼蟲の顔面へ拳銃の引き金を絞った。

 阿藍がすぐさま連撃で続こうとするが、別の鬼蟲が肉の壁となってそれを阻む。

「退けぇ!」

 阿藍は気合と共に鬼の因子を爆発させ、立ち塞がる鬼蟲を力ずくで突破した。

 正気を取り戻した毬藻が水を激流へと変えて残る鬼蟲を完全に押し流して撃破する。

 

「本当に、これでよかったのかな……」

 しかし、鬼の凶暴さを突きつけられた毬藻は、胸の奥で割り切れない後悔の念を抱いていた。

 そして、未だ残る鬼が、満身創痍の理々庵に向けて最後の突撃を仕掛ける。

「しつこい……。流石に疲れた」

 理々庵は激しい息切れを覚えながらも、最後の精神力を振り絞って新たな刃を創造し、

 その身を以て鬼を真っ二つに切り裂いて討伐を完了した。

 

 二日後の土曜日。

 理々庵、毬藻、阿藍は、命懸けで得た残りの情報を精査し、

 凍り鬼の明確な居場所を突き止めていた。

 桜ヶ島では今夜、花火大会が行われるらしく、不穏な喧騒が遠くから響いている。

 

 しばらく島を探索していた彼らの前に、ついに冷気を纏った凍り鬼三兄弟が姿を現した。

 しかし、そこにいるのは二人だけだった。

 

「兄者、こいつらだ……! だが、何故二人しかいない?」

 阿藍が眉を潜める。

 凍り鬼の長男が、憎悪に満ちた目をこちらに向けて吠えた。

「貴様ら、白々しい真似を! オレ達の愛しい弟は、

 大場大翔という人間のガキが使った『封』の呪符によって倒されたのだ!」

「オレ達の弟の敵討ちだ! ここで全員、凍り付けにしてやる!」

 次男も激昂し、周囲の温度が急激に低下していく。

「大翔が……? 身に覚えがない話だな。

 だが、お前達が鬼である以上、ここで倒す事に変わりはない」

 阿藍が静かに銃口を向ける。

「指示を」

「分かっている。行くぞ!」

 阿藍をリーダーとし、三人は凍り鬼兄弟の討伐へと動き出した。

 

 だが、兄弟の繰り出す氷の異能は凄まじかった。

 絶対零度の冷気が阿藍の視界と自由を奪い、彼を瞬く間にピンチへと追い込む。

 さらに、凍り鬼の使役するしもべが、混乱の残る毬藻の精神を執拗に追い詰めようと迫った。

 

「惑わされるな!」

 阿藍が身を挺して毬藻の前に割り込み、その攻撃を肩代わりする。

 そして、阿藍は光の力でしもべを即座に焼き尽くそうとしたが、

 背後から放たれた凍り鬼兄弟の氷結攻撃が彼の精神を激しく削り取った。

「がはっ……! だが、これしき……!」

 阿藍は何とか耐え抜き、しもべに対して痛烈なダメージを与える。

「下がれ! 物質創造――ショットガン!」

 理々庵がすかさず散弾銃を具現化させ、しもべに向けて容赦のない乱射を浴びせた。

 肉片が飛び散る中、毬藻が恐怖を振り払うように叫ぶ。

「火の元素よ! その全てを焼き尽くせ!」

 激しい劫火が荒れ狂い、凍り鬼のしもべを完全に消滅させた。

 

「よくも、よくもしもべを!」

 怒り狂った凍り鬼兄弟が、再び阿藍に向けて凶悪な氷の異能を放つ。

 阿藍は咄嗟に光の障壁を展開して直撃を防いだが、

 冷気は障壁を透過し、彼の肉体に浅くないダメージを刻み込んだ。

 息を荒くする阿藍の脳裏に、これまでの孤独な戦いの記憶が過る。

 鬼を殺すためだけに存在し、力を使えば使うほど鬼へと近づいていく己の運命。

 彼は一瞬、深い後悔の念に囚われそうになった。

「ぼさっとするな! 死にたいのか!?」

 理々庵の鋭い叱咤が響く。

 彼女は巨大なハンマーを創造すると、凍り鬼兄弟の横面に、豪快に、力任せに叩きつけた。

「ぐあぁっ!?」

「僕だって、ここで足を引っ張るわけにはいかない……!

 何か、この状況を引っ繰り返すアイデアを……!」

 毬藻も必死に思考を巡らせ、反撃の好機を伺う。

 しかし、凍り鬼兄弟は完全に頭を血に上らせ、その体内に莫大な力を溜め始めていた。

「全て凍れ! 極氷の洗礼だ!」

 凄まじい冷気の波動が放出され、阿藍の肉体を直撃する。

 極限の寒さが彼を衰弱させ、その膝が屈しかけた。

 だが、阿藍の心は折れていなかった。

「俺達の戦いは、ここで終わるわけにはいかないんだ!」

 不屈の意志で立ち上がった阿藍が、溢れ出る光の波動で周囲の冷気を強引に吹き飛ばし、

 最悪の危機的状況を打破してみせる。

 

「よく耐えた――槍構築!」

 理々庵は少し距離を取り、

 間合いを活かして創造した鋼鉄の長槍を凍り鬼兄弟の肉体へと深く叩き込んだ。

「燃えろ、燃えろぉっ!」

 毬藻も火の元素を極限まで引き出し、容赦ない炎の追撃で凍り鬼兄弟を焼き焦がしていく。

 

「おのれぇ……! 人間風情がぁ!」

 凍り鬼兄弟はさらなる冷気を練り上げ、再び阿藍へと放った。

 辛うじて軽傷で済ませたものの、激しい衝撃が阿藍を襲う。

「リーダーとして、こんなところで負けるわけにいかない……!」

 阿藍は自身の誇りと仲間の命を背負い、再び立ち上がった。

 全エネルギーを込めた光の力が凍り鬼兄弟を貫き、理々庵が創造した槍が、

 さらに致命的なダメージを与えて彼らを激昂させる。

 

「僕だって……続いてみせるよ!」

 毬藻が自分も戦果を挙げようと、必死に元素を操って攻撃の構えを取る。

 しかし、限界を迎えた凍り鬼兄弟が最後の防衛本能で展開した

 巨大な氷のバリアを目にした瞬間、彼女の心の中で何かが弾けた。

 圧倒的な絶望感と、いつ自分が鬼になるか分からないという根源的な恐怖。

 毬藻はその場にへたり込み、大粒の涙を流して泣き出してしまった。

「嫌だ……! あんなの、僕の力じゃ壊せない……!

 こんなはずじゃなかったのに、こんなはずじゃなかったのに!」

 凍り鬼兄弟はその隙を見逃さなかった。

「無防備だぞ!」

 凶悪な冷気の追撃が、泣き叫ぶ毬藻を容赦なく襲う。

「毬藻を狙わせるか!」

 阿藍が激しい光を放って兄弟の注意を引きつけ、

 自身の肉体を限界まで酷使しながら攻撃を続けた。

 しかし、どれほど手傷を負わせても立ち上がってくる鬼の予想以上のしぶとさに、

 阿藍の心にも初めて明確な恐怖が兆し始めていた。

 

「――ごちゃごちゃと、五月蠅い」

 そこに、冷徹な声が響いた。

 理々庵がその場に、超長距離用の巨大なライフルを創造していた。

 銃口はまっすぐに、凍り鬼兄弟の眉間を捉えている。

「これで、終わりだ」

 引き金が引かれ、放たれた弾丸が氷のバリアごと凍り鬼兄弟の肉体を完全にぶち抜いた。

 

「覚えてろー! 次こそは必ず貴様らを殺してやるからなー!」

 凄まじい断末魔の叫びを残し、凍り鬼兄弟は這う這うの体で地獄へと逃げ去っていった。

 

「……随分と、苦戦したな」

「だが、任務は完了した」

「あはは……あんな鬼なんか、二度と出てほしくないね~……」

 静まり返った雪原で、阿藍が大きく肩を揺らしながら息を吐く。

 理々庵は具現化したライフルを静かに消滅させ、淡々と答えた。

 毬藻は涙を拭い、未だ震える声で何とかいつもの調子を取り戻そうと呟く。

 

 その様子を遠巻きに見ていた大翔、悠、葵、章吾、有栖、銀華、総一朗の面々は、

 その壮絶すぎる戦闘の結末に、それぞれ息を呑んで呆然としたリアクションを見せていた。

 大翔達はエージェントたちの尋常ならざる圧倒的な力に言葉を失っている。

 しかし、その静寂の中で、銀華だけが、誰にも聞こえないほどの小さな声で、ぽつりと呟いた。

 

「……これが……同族殺しですか……?」

 彼女の鋭い視線は、鬼の力を以て鬼を狩る、美しくも歪んだ三人の背中に注がれていた。




エージェント達は本名をなるべく知られたくないのです。
それもまたデスノートっぽくしたいのですから。
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