【レオーネ視点】
帝都に特殊警察イェーガーズが設立された。どうやら対ナイトレイド対策らしいが、近隣の盗賊退治や帝都の治安維持もしているそうだ。
こちらとしては多少仕事のしがいがなくなる気もするが・・・まぁ、いくらでも帝都にはクズがいる。
シェーレとマインを襲った”セリュー・ユビキタス”もあのイェーガーズに配属されたそうだ。
・・・あの戦いであの二人も自分の力不足を自覚したらしい。
詳しいことはわからないが、やはりカッパーマンがあの戦いに乱入して救ってくれたとかなんとか。
「本当に悔しい!あの河童男がいなかったら・・・シェーレを助けられなかったなんて。本当にむかつくわ!」
「そこにむかつかなくても・・・」
「あの自称正義の味方もむかついてるけど、私自身にもむかつくのよ!」
「自分に?そりゃまたなんでだよ」
「・・・シェーレが死にかけたのも、私が怪我したのも実力不足だったからよ。だからシェーレは助けてもらったけど私は断ったの。この怪我は戒めよ。もっと強くならないといけない」
アカメも随分と真面目だけど、マインも真面目だよなぁ。
真面目というか・・・プライドが高いって感じだけど。
シェーレはカッパーマンに助けられたから怪我も治癒してるらしいけど、今回のことで本格的に鍛錬するらしい。といっても、かなりドジをやらかすから失敗してるみたいだけどさ。
・・・マインとシェーレだけじゃなくて、ブラートとタツミも鍛錬をしているらしい。
任務でブラートも死にかけたのだが、そこでまたカッパーマンに救われたそうだ。
「はっはっはっ、マインも早く怪我を治せよ」
「当り前よ!・・・ブラート、あんただって鍛錬は必要でしょ?」
「そうだな。もうインクルシオはタツミを持ち主と認めたし、俺は俺でもっと鍛えておかないとな」
「あいつにインクルシオが使いこなせるのかしらね」
「それはタツミ次第だが・・・あいつは伸びるぜ。俺よりもな」
***
数日後、ナイトレイドの非番の日がやってきた。
せっかくの休みだから帝都へと戻ってきた。帝都のスラム街に来るとみんなが出迎えてくれるし、久しぶりにマッサージ屋で稼ぎたいってのもある。
・・・スラム街が少し騒がしい
何か来ているのだろうか?まさかまた貴族(くそ野郎)だろうか?
「なぁ、なんか騒がしいけどどうしたんだよ」
「あぁ!レオーネじゃないか!久しぶりだな」
「久しぶり・・・で、質問に答えなよ」
「それがよ、あのカッパーマンが来てるんだよ!」
「・・・あいつが?」
少しスラム街の中を進むと、人だかりが出来ていた。
どうやらカッパーマンがスラム街の人々の怪我や病気を治しているらしい。金が無くて病院にも行けない連中もいるし、安い賃金で働かされて怪我をするなんてざらにあるから、そりゃあ満員御礼にもなるだろう。
カッパーマンの皿の水ってのはすごい治癒力があるらしい。亡くなってすぐなら蘇生もできる・・・
・・・本当に帝具以上の力があるのだ。
「・・・これで良し」
「ありがとう!カッパーマン!」
「いやいや、大丈夫さ・・・そろそろ水を足さないとな」
そう言いながら彼は近くに置いてあるバケツの水を被った。どうやら頭の皿が乾きそうになったらしい。
・・・本当に河童、なのだろうか。確かに皿の水が乾いたら倒れてしまうっていう逸話があるが・・・
「さて、と・・・私はそろそろ行くとするよ」
そう答えてカッパーマンが立ち上がった。
「ちょっと待ちな!」
「・・・レオーネ君?」
「このスラム街を案内してやるよ!」
「は?」
カッパーマンを引き留めて、スラム街を案内してやった。
本人は「私が来るのを待っている民が・・・」と慌てていたがそんなのは関係ない。
「あんた、ずっと世界中飛び回ってるんだろ」
「そうだが・・・」
「休みなく飛び回ってるってことは、あんた・・・ちゃんと”人”を見てないだろ」
「どういうことだ?」
「あんたさ、人を救うのが目的なんだろ?」
「・・・そうだな」
「それでもさ、私から見ればあんたはそれが”手段”になってるように見えてるんだ。人を救うのが目的じゃなくて、人を救うのが手段になって正義の味方が目的みたいな。そういうの嫌なんだよ」
「・・・それは、そうかも、しれないな」
否定されるだろうと思っていたのだが、カッパーマンは案外あっさりと認めた。
このままだと話しにくいから、適当なところに腰かける。
「・・・私は正義の味方が好きだった。それに間違いはないし、嘘ではない。けれど私が今の姿になったのは正義の味方になりたいからじゃない」
「へぇ、じゃあ誰かにやとわれてるとか?」
「・・・死にたく、なかったからだ」
その答えを聞いて、返答に困った。理由を聞きたい気もするが、あまりにも深刻そうにしている。表情はわからないまでも、空気でわかる。
「私は覚悟していたように見えて、実際はまるでできていなかった。死ぬかもしれない程度の、そんな軽い気持ちだった。実際の死は・・・とても重い、苦しい、そういうものだ」
「・・・つまり実際に死にかけたところを正義の味方になったってこと?」
「そういうところだ。私はきっと運が良かったのだろうが、私は死ぬことから逃げてしまった。本来ならば・・・人間として生きるならば、死ぬべきところだった」
「・・・」
死ぬべきところ・・・ね。そんなもんあるわけないのにな。
チャンスがあって生きたくて生きるならそれはいいことなんじゃないだろうか。
少なくとも、助かる方法が目の前にあったらそれに縋ってしまうのは仕方ないことだろう。
「正義の味方になる。だからこそ正義の味方として生きてきた。・・・そこにきっと、終わりはないのだろう。苦しいとは思わない、悲しいとは思わない、もともと人を助ける仕事をしていたのだ」
「・・・」
「・・・・・・一つ言えるならば、終われないことはとても怖いことだね」
カッパーマンはそう言って立ちあがった。
どうやらそろそろ人助けの仕事に行くらしい
「・・・それ、さ。そのスーツ。脱ぐ方法あるんだろ」
「・・・あぁ」
「どうやったらいいの?」
「・・・愛する者の口づけ、だそうだ」
「なんだそりゃ」
「ははっ・・・まぁ、古来からそういうものだろう。だってこれは・・・呪いなのだから」
そう答えてカッパーマンは飛んで行ってしまった。
まだまだ詳しいことはよくわからない。
それでもなぜか、あの正義の味方を人間に戻したくなった。
ロッドバルト「次回あたりからさらに加速していきます。お届けできるのは未定になりますがね。それでは失礼いたします」