正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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ロッドバルト「ブドーさんが守りたいのは皇帝陛下なのか国なのか…それとも、自分が守りたい現実なんでしょうか。いえいえ、どう感じるかは人それぞれですし、答えなんて本人しか……いえ、本人すら分からないものですよ」


※今回はアカメが斬る!零のメラ様がいるため、レズ表現があります。苦手な方は注意して下さい


オールベルグ編
大将軍と暗殺者


この国の大将軍家に生まれた人間にとって、家訓は守るべき教えであり、破ることは信念を折ることに等しいことであると教育されていた。

 

 

それは現在、帝国の大将軍であるブドーも例外ではない

 

 

幼少期から跡継ぎとして徹底した修行を課せられ、それを見事にこなしてきたことは将軍家に所属する誰もが彼を賞賛した。

 

「さすがは大将軍家の跡継ぎですな!」

「お強いです、さすがは将軍家の御子息。これは頼もしい限りです」

 

皆が皆、彼の家と彼の在り様を認めていた。

それだけの実力も才能も、家柄も、ブドーはすべて兼ね備えていた。

 

禁欲的なまでに生活を律し、瞬く間に軍の中でも頭角を現した彼は近衛兵を率いる大将軍としての地位を確立することとなる。

 

彼の政治色を排した武人としての生き方を否定する者ももちろんいたが、その声をかき消すほどに彼は強く、帝都を守護する大将軍として君臨したのだ。

 

 

 

だが、ブドーにとっては大将軍の家柄も地位も家訓もただの柵でしかなかった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

自宅の屋敷にて、ブドーは朝刊を読みながら不愛想な顔を更に顰める。

帝国の新聞は、定期的にカッパーマンの活躍を取り上げている。そして時にはカッパーマンを追いかけて帝国中を駆け回る特別取材班を結成するほどなのだ。

 

今朝の新聞も、カッパーマンの帝国での活躍や民間人のインタビューが掲載されていた。

 

「旦那様、何かありましたか?」

 

メイドに指摘されるが、彼は「なんでもない」と答える。

 

 

「(またカッパーマンが活躍したのか。あぁ!羨ましい!あんなに積極的に帝国を守っているなんてなんて妬ましいのだ!!!!)」

 

 

・・・なんでもなくはなかった。

 

 

そう、彼は・・・帝国の大将軍と言われたブドーは、正義の味方に嫉妬していた。

 

 

 

 

 

「(まったく、何が大将軍だ。役職なんて邪魔でしかない。帝国や帝都を真に守るにはそんなものは必要が無い。宮殿の警護と近衛兵の鍛錬だけをして、肩書だけの存在に意味など無いだろう!!)」

 

内心、とても憤慨しながら彼は宮殿の廊下を歩いていた。

 

彼は以前から、カッパーマンのように帝国中を行脚しながら帝国の平和を守りたいと常に思っていたのだ。

 

皇帝にも訴えかけたが、革命軍や反乱の恐れや暗殺者の侵入の可能性がある以上・・・他の役人や貴族が満場一致で却下し続けている。

 

「(今日こそ、陛下に訴えよう。あのオネストも説き伏せる・・・革命軍の進軍と地方での反乱もあるのだ。帝都に籠っているわけにはいかぬ。)」

 

そう決意して、いつも通りに彼は執務室に入った。

 

 

「っあ、だ、大将軍・・・」

「・・・あら、邪魔が入っちゃったわ」

 

 

執務室で半裸で睦みかけている侍女と、もう一人の女性がいた。

 

「す、すみません!!」

 

侍女はすぐに服を整えて素早くブドーの横をすり抜けていった。

 

「・・・・・・執務室で淫らな行為を慎め。」

「あらぁ、大臣や役人たちがしていることと違って私のは愛がある行為よ?」

 

 

女性・・・いや、帝国に雇われた【暗殺組織オールベルグ】の頭領・メラルド=オールベルグであった。

 

少し前にオネスト大臣が皇帝やブドー将軍に紹介されたのだが・・・こうやって宮殿内でも平気で女性をナンパしたり、朝っぱらから淫らな行動をこっそりとやっていたり・・・

 

メラルド=オールベルグは、伝説の暗殺組織の頭領という実力がある代わりに、少々困った悪癖を持っていたのだ。

 

 

「・・・まったく。カッパーマン対策で雇われたのなら、その対応に忙しいはずだろう」

「忙しいわよ。河童化が解けてる子たちが、帝都や帝国上で調べてくれているもの。それに暗殺者は静かに待つものよ」

 

そう答える彼女にブドーはそのまま少し沈黙した後に、彼女へと言葉をかける。

 

「・・・どうして、帝国に力を貸したのだ。オールベルグは権力に与しない暗殺組織だと聞いたが」

 

 

そう、暗殺組織オールベルグは【すべての人間に死は平等に訪れる】【依頼料はとるが、権力や国に屈さない】という、古くからある組織として有名だ。

 

 

「カッパーマンへのリベンジの為よ。一度、カッパーマンに河童にされて、暗殺組織として信用を無くしたもの」

 

 

静かに答えた声は、殺意が感じられた。

 

「・・・本当にそれだけか?」

 

ブドーは何か引っ掛かりを感じて彼女へと声を掛けた。

 

「あら、男に教える義理は無いわ」

「先ほどの言葉からは、復讐以外の何かを感じた」

 

その言葉にメラルドは幾許か時間をおいて静かに答えた。

 

「・・・・・・あの正義の味方は不老不死。それは、オールベルグの信念とは真逆のもの。だから昔から、オールベルグはあの正義の味方と何度も戦ってるの」

 

「・・・信念のためか。納得した」

 

ブドーの言葉を聞いたメラルドは「それじゃあ私はさっさと別の子でもナンパするわ。それじゃあね」と、部屋から出て行った。

 

執務室に残されたブドーはため息を吐いて、少し散らかった書類などを適当に片づけた。

 

 

「(・・・正義の味方も大変なものだな。何度も暗殺組織を戦って止めているのはとても羨ましいが)」




ロッドバルト「今回はここまでです。さぁ、次回は誰が語り手になるんでしょうね。それではまた次回」

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