帝国内部で暗殺組織オールベルグが復活し、帝国を雇い主とした。
そんな情報を未だに得ていないナイトレイドの一行は、帝都近郊のアジトへ戻るためにキョロクから移動していた。
イェーガーズや帝国軍などからの奇襲の可能性も考慮し、南回りでの旅路となる。
遠回りにはなるのだが、安全に帰るためには必要だろう。
「おいしいところを全部カッパーマンが持っていくよなぁ。暗殺経験や戦闘経験は積んでるけどさー」
「おいおいイエヤス、それはそうだが・・・結果的に任務が達成されているんだぜ?そう考えれば結果オーライってやつだ」
愚痴るイエヤスをブラートが嗜める。
少し先では危険種がいないかをシェーレとスサノオが確認している。アカメやラバックも合わせて周辺の確認をしているようだ。
先のボリック暗殺において、イェーガーズとボリックの私兵との戦闘の折りに負傷したナイトレイドのメンバーが多いのだ。
先陣を切って戦っていたレオーネやブラート、タツミやイエヤスはイェーガーズのウェイブとセリュー、コロの二人と一匹による防衛戦線で数か月程度の傷を負ったのだ。
セリューとコロは帝都警備隊での活動実績によって情報があったものの、ウェイブの情報が無かった。
・・・それもそうだろう。彼はボルスやクロメのように革命軍にマークされているわけでもなく、セリューやスタイリッシュのように諜報部隊からの情報にも記載されていない帝具保有者なのだ。
それでいて本人の実力もエスデス将軍に太鼓判を押されるほど・・・
苦戦しても仕方ない。
特にタツミとイエヤスの二人は帝具がない状態で彼の攻撃を防ぎ、攻撃を何度も仕掛けていったのだ。彼ら二人の疲労もそれなりに溜まっている。
「みんなー、近くに村があるみたいだから寄っていかないー?」
アカメたちと共に、先に進んで危険種や賊などがいないかを確認していたサヨが、後方にいるタツミたちに声を掛けてきた。
食料は危険種を狩っていたが、水分などの不足はやはりあるだろう。
物々交換にはちょうど良いだろう。
「ふむ・・・狩っていた危険種の肉や毛皮と足りないものを交換しよう」
ナジェンダもそう判断して、メンバー全員で村に寄ることにした・・・の、だが
「死ね!死ね!いいから教えろよぉおおお!あいつらの味方なんてすんじゃねぇよ偽善者!!!」
「・・・」
村の広間で、髪の毛を振り乱した女性がカッパーマンに何度も刃を突き立てていた。肉が裂ける音、刻まれ叩かれる肉の音が響く。
地面には飛び散った血液が赤く染め上げているが、カッパーマンの体そのものは刺し傷はあるようだが、カッパーマンは倒れていない。
・・・村人たちは遠巻きに見ているようだ。まぁ、止めようと思っても止められるものでもないだろう。
「なっ、何してんだよ!!」
タツミが駆け出して女性を引きはがし、イエヤスも「何やってんだよ!」と止めに入った。
「離せ!離せ!そいつはっ、そいつはただの偽善者なんだよ!!」
女はまだ錯乱しているようだ。
シェーレやサヨはカッパーマンに怪我がないか心配になったらしい。
だが彼は「すぐに治る。心配は無用だ」と短く返した。
タイミングが良かったのか、村人たちもナイトレイドの面々やカッパーマンにも近づいてきた。
・・・レオーネがカッパーマンに声を掛けようとしたときには、彼はすでに助けを求める人間がいる場所へと飛んで行ってしまった。
村にある集会所を宿泊できることになったナイトレイドの面々は、先ほどの光景がいったいなんだったのかを村の長に尋ねることとなった。
「カッパーマンさんを偽善者って言ってましたが、何か悪いことでもしてしまったのですか?」
シェーレに尋ねられるが、村の長はこれを否定する。
「・・・この村は10年ほど前まで盗賊団に何度も襲われておりましてな。カッパーマンはその盗賊たちを退けて河童にしてしまいました。我々も彼女も、カッパーマンに感謝いたしました」
「よくあることじゃないか。じゃあ、さっきの女性は盗賊団の身内か何かか?」
ブラートの質問に対して、村の長はこれも否定する。
「あの女性は、盗賊団に夫を殺されておりましてな。ちゃんと村の一員です」
「それならなぜカッパーマンを襲うような真似をしたのですか?精神的に病んでいる様子はありましたが・・・」
ナジェンダの言葉に関しては・・・村の長は少しの間沈黙し、意を決したように話し始めた。
「・・・あの河童化は、人の愛を知ることで解けるそうです。女性の夫を殺した盗賊の一人が、違う村で呪いが解けて、その村にいた女性と結婚していたそうです」
「それって・・・いいことじゃないの?」
サヨは村の長に尋ねるが、彼は首を横に振った。
「・・・自分の夫を殺した男が、幸せに暮らしていることが許せない。そう、言っております。ですが殺そうとしたのをカッパーマンに止められ、件の元盗賊の男は妻と共にカッパーマンが避難させたそうです」
その言葉にナイトレイドの面々は何も質問ができなかった。
村の長も彼らの気持ちを慮ったようで、更に言葉を続ける。
「・・・自分を不幸にした相手を、徹底的に叩きのめさないと、恨みなんて晴らせないのですよ」
その言葉に空気がどんよりと重くなる。
暗い空気の中でレオーネが村の長へと話しかける。
「正義の味方に縋っておいて、自分の都合が悪くなったら偽善者扱いか」
「・・・・・・呪いに不備があるのは正義の味方の責任でしょう」
「責任も何もないだろ・・・いけすかない奴をぶっ飛ばすのはいいと思う。許せないならそれでいい。復讐をするのも、割り切るのも好きにやりゃあいいさ。でもさ、責任転嫁するのは違うだろ」
その言葉に、村の長も答えない。
「・・・あの女だけじゃなくて、この村の奴らみんなあんな態度とってんだろ。攻撃するか、助けにも入らないか」
「・・・あれぐらいの攻撃で死ぬような正義の味方ではありません。それに彼は正義の味方でしょう?武力を持たない我々を助けるための存在なんです。更正しているにしても、悪党を庇うようなあちらにも問題があるのでは?」
村の長の発言にレオーネは何も答えずに、呆れたようにため息を吐いて「もう寝る。喋るのも疲れた」と仲間たちに言葉をかけた。
ナイトレイドのメンバーも村の長へ感謝しつつも今日は休むことにした。
ロッドバルト「次回はもう少しオールベルグの方々が出るかもしれません。・・・え?アカメ本編の話しかしらない?随分と怠惰ですね~・・・と、言うわけで未見の人の為にもなるべくわかりやすいようには描写をしていくことにしましょう」