正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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フラグは立てるもの


飛んで火にいる獅子と河童

______________ナイトレイドのアジトにて

 

 

キョロクから戻ったナイトレイドの面々はゆっくりと休養することができた。戦いの傷もそうだが、何よりもこれからの革命軍の進軍に備えて・・・

帝都での決戦を予感しながら、更に修行を重ねる者、精神的にリフレッシュする者、いつも通り過ごす者・・・各々が時間を潰していた。

 

 

「お前たち、革命軍の諜報部隊から帝都の現状に関しての報告がきた」

 

 

ナイトレイドのボスであるナジェンダはナイトレイドのメンバーを全員集めて、報告書の中身を語り始める。

 

「まず、秘密警察ワイルドハントという組織が出来たらしい」

「秘密警察・・・?イェーガーズとどう違うんだよ」

 

イエヤスの質問にナジェンダは報告書の内容と絡めながら返答する。

 

「リーダーはオネスト大臣の嫡子シュラ、メンバーは3人いるそうだ」

「大臣の息子っていやぁ、かなり荒っぽかった気がするな。帝都で暴れてるのか?」

 

「いや、ブラート・・・それが真逆らしい」

 

ナジェンダも少し困惑しているらしい。何度も報告書を読み返している。

・・・信じられない、といった表情をしつつも続きを話し始める。

 

「どうやら、スラム街などで慈善活動をしているらしい」

「嘘だろオイ、なんで大臣の息子がそんな・・・」

 

「ただ、怪しいところは無かったらしい。例えば薬物が入っているとか、そのあとに誘拐するとか・・・とにかく、まるでカッパーマンが普段している活動のようだったと報告があった」

 

「なにそれ。怪しいところが無いっていうのが怪しいわよ」

「そうでしょうか・・・?」

 

マインの言葉にシェーレは「きっと良い人なんじゃないですかね」と続けるが、マインは納得していないらしい。

そりゃそうだ、オネスト大臣の息子で、なおかつ帝国から離れる前にはそれなりに悪評があったのだから。

 

「イェーガーズも警備をしているらしい。帝都の治安は良いみたいだが・・・まだまだ掃除すべき”ゴミ”がいることに変わりはない」

 

「とにかく、情報収集もしたいわよね。ワイルドハントやイェーガーズの動向も気になるもの」

「おお!さすがサヨだな、俺もそう思ってたんだよ!」

「イエヤスは相変わらず調子がいいな」

 

タツミたちがいつも通りの掛け合いをしている中、レオーネが挙手をする。

 

「じゃあ私、帝都で情報収集してくるよ」

 

 

 

 

________________同時刻、帝都宮殿にて

 

 

 

「・・・慈善活動だなんて、いったいどういう風の吹き回しなんですか?」

 

オネスト大臣は向かい側に座っているシュラに対して、半ば呆れたように尋ねた。

もっと成長するようにと外に出した息子が、旅に出る前と違う行動をしていたのだから・・・しかも、自分があまり好かない方向性で。

それは気になるだろう。

 

「あー?そりゃまぁ、俺の目標がちぃと変わったからな」

「変わった?」

 

「親父を越えたくて仕方なかったがよ、俺の今の目標は親父よりもっと上・・・正義の味方ってやつと肩を並べることにな」

「・・・」

 

その言葉に『心底うんざりしている』表情を浮かべるオネスト。しかしシュラは気にしていないらしい。

 

「越えるならハードルが高いもののほうがやりがいがあるしな」

「・・・旅に出したのは間違いでしたね」

 

「その答えは予想済みだぜ?なーに、ちょいと目標が高くなっただけだ」

「・・・・・・」

 

オネスト大臣は機嫌が悪くなる一方だが、シュラは正反対に上機嫌である。

何かを吹っ切れたような、そんな雰囲気だ。

 

「親父も越えて、カッパーマンの奴と並べるぐらいになるつもりだ」

「戯言はいい加減にしなさい。本当に呆れましたよ」

 

「でも、良い人材は連れてきただろ?ドロテアのことを気に入ってるみてぇだし」

「確かに彼女は腕のいい錬金術師ですが、それとこれとは別です」

 

「まー、ナイトレイドは捕まえるって」

「・・・」

 

 

 

 

_____________数日後

 

 

帝都は夜闇に包まれていた。遊郭のある区画は明るく照らされているものの、一般市民が暮らしているエリアは住民たちが寝静まっている。

遊郭やスラム街の見回りを死ながら、レオーネは帝都を歩き回る。

 

イェーガーズの噂やワイルドハントの噂をそれとなく、酒を飲みながら聞いて回っているのだ。

 

「(・・・どちらにせよ、帝都の治安を維持している、か・・・)」

 

噂は本当らしいし、革命軍の諜報部隊の報告も間違いではない。

出来れば武器や帝具の情報を引き出しておきたかったが、そればかりは仕方ない。

 

そろそろアジトに戻るべきかと誰もいない静かな夜道を歩くレオーネの前に黒いフードの人物が3人現れる。

・・・レオーネも殺気で気が付いていたのだろう。驚く素振りもなく「なんだいあんたら」と声を掛けた。

 

「・・・カッパーマンと親しいそうですね」

 

フードを脱ぎ捨てながら、四本腕の女・・・カサンドラがレオーネへと尋ねる。

 

「なんだい、カッパーマンの知り合いにしちゃあ・・・殺気が駄々洩れじゃないか」

「隠すつもりがないからな」

 

レオーネの言葉に、金髪の女・・・ギルベルダがフードを脱ぎ捨てた。

 

最後の一人であるスズカが「ふふふ、しかも歩き方も普通の一般人とは違うみたいだし、いったいどういう職業の人なのかしらねぇ?」と言葉を投げかける。

 

「カッパーマンを倒すために、少し捕まってもらいましょうか」

「多少痛めつけてもいいよな、ドラ」

 

「・・・あまり無理はだめですよ。メラ様に叱られます」

「うっ、それは確かに嫌だな」

 

3対1という不利な状況

・・・レオーネはライオネルを発動させた。

 

スズカに関してはアカメから聞いていたのだ。そう、羅刹四鬼が関わっている・・・つまりは、目の前にいるのは帝国側の人間だと判断した。

 

無論、危ないなら逃げるつもりだ。

こんなところで死ぬつもりはない

 

 

 

「・・・へぇ、あたしを連れていこうって?できるもんならやってみろよ」

 

 

 




次回「そうだよな、やっぱりお前はこういうのは絶対来るよな」

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