正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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飛んで火にいる獅子と河童【到着と離脱】

 

「っちぃ!ちょこまか逃げやがって!」

「ほんと素早いわね!」

「・・・避けられますね」

 

「誰が当たるか!」

 

3対1という状況下においてレオーネは防戦一方になっていた。

帝具を所持し、使っていながらも帝具を所持していない人間相手に防戦一方であるが・・・それも仕方ない。

 

「ほらほらぁ!これならどうよ!」

「スズカさんでしたか、攻撃が邪魔です・・・当たりますよ?」

「そうだぜ?こっちに任せろよ」

 

「あら、当ててもいいのよ?」

「貴女の趣味に付き合う暇はありません」

「そういうのはメラ様に怒られるからな」

 

「・・・あいつら、余裕ぶりやがって・・・」

 

暗殺者として教育・特訓をされてきた怪力の持ち主である、ギルベルダ

同じく、暗殺者としての教育を受けてきた4本腕でチャクラムの使いである、カサンドラ

そして帝国最高の拳法寺である皇拳寺の壮絶な修行を重ねてきた羅刹四鬼の一人、スズカ

 

対してレオーネは、それなりに鍛えたとはいえ元々はスラム街出身の人間である。

ナイトレイドに入ってから鍛えてきたとはいえ、彼女たちとは大きく違う・・・あくまでも、一般人より多少強かったことからナイトレイドに入った帝具所有者だ。

 

「っ、くそ・・・やっぱ難しいよなぁ」

 

攻撃をなんとか避けているものの、やはり向こうの手数があまりにも多い。近接に長けたギルベルダに、チャクラムを筆頭に暗器によって遠距離攻撃を仕掛けるカサンドラ、そしてオールマイティに対応できるスズカ。

 

攻撃に転じる隙が中々もって生まれないのである。

 

レオーネの攻撃は主に素手による戦闘。

遠距離攻撃とは相性も悪いし、スズカのような自分の体を自在に操作できるタイプも相性が良くはない。

ギルベルダとなら近距離で攻撃しあえばあるいは・・・だが、無理に近距離での戦闘に持ち込むと、残りの二人から攻撃されるだろう。

 

・・・傷を負わせれば御の字だと思っていたレオーネであったが、傷すら負わせることができない。

 

 

 

「そこで戦っているようだが、危ないからやめなさい」

 

 

 

レオーネが撤退しようと思った直後、空からゆっくりとカッパーマンが降りてきた。

 

「レオーネ君じゃないか。こんな町中で喧嘩は危ない。夜も更けてきたから早く帰宅するといい」

「あのなぁ!この状況でよくそんなこと言えるな!」

 

真面目な戦闘を”喧嘩”と称して仲裁に入るカッパーマンにレオーネは思わずツッコミを入れてしまう。

 

・・・その間に、いくつものチャクラムがカッパーマンに飛んでくるが、カッパーマンは素早くチャクラムを全て素手で掴んだ。

 

「・・・おや、カサンドラ君にギルベルダ君、それにスズカ君じゃないか」

「・・・止められましたか」

「現れやがったなァ、正義の味方さんよぉ!」

 

殺気を露わにするカサンドラと、ゴキゴキと拳を鳴らすギルベルダ。

それに対してスズカは少し笑みを浮かべながら「お久しぶりぃ、正義の味方さん」と声を掛ける。

 

「元に戻れたようで何よりだ」

「・・・何が”元に戻れたようで何よりだ”ですか。貴方が河童にしたんでしょう?」

「ったく、相変わらずむかつく野郎だな」

 

カッパーマンの態度に更に殺気を強める二人。

 

「お前には恨みがあるんだ。オールベルグの名にかけて、今度こそ始末させてもらう」

「始末は無理ですよ」

「ふふっ、カッパーマンの本気の攻撃なんて楽しみだわ・・・」

 

「私は戦うつもりはない。・・・レオーネ君、とりあえずここは撤退しよう」

「アンタに言われなくてもこっちだって・・・」

「私が抱えよう。すぐに離脱する」

 

そう言いながらカッパーマンは素早くレオーネを横抱き(いわゆるお姫様抱っこ)して飛び上がった。

ギルベルダたちも追いかけようと、屋根の上を登るが・・・カッパーマンは空を飛べる。すぐさま彼女たちが目視できない上空へあがり、そこから逃げ去ってしまった。

 

「ほんとあいつ逃げ足だけは早いな!!」

「・・・そうですが、やはりあのレオーネと呼ばれた女性とは顔見知りのようですね」

「ビンゴってところね。しかも帝具所有者だなんて・・・これはエスデス様にいい情報(おみやげ)ができたわ」

 

 

 

 

レオーネを横抱きして、夜空を飛ぶカッパーマン。

今日は天気も良いようで、星も綺麗に見えている。

 

「レオーネ君、怪我をしているようだね。後で皿の水でも飲むと良い」

「・・・・・・別にいいって。てか、どこまで飛ぶつもりなんだよ」

 

「ナイトレイドの本拠地まで送っていこう。怪我をしている女性を一人で帰らせるわけにはいかない」

 

被り物をしているカッパーマンの表情は分からないが、レオーネはその横顔を眺めてわざとらしくため息を吐いた。

 

「あのさぁ、そういうのよりももっとこう、”君が心配だからだ”みたいな気の利いたことはいえないのかよ」

「もちろん心配しているが、言葉が足りなかったかね?」

 

「そういうのじゃなくて、だな・・・本当に博愛主義者だよなぁ。もうちょっと女扱いしてくれりゃあいいだろ。ほらほら、お礼に胸でも揉ませてあげようか?」

「かまわない。人を助けるのは正義の味方として当たり前だからだ」

 

レオーネの言葉に対して、照れるわけでもなくスッと答えを返すカッパーマン。そんな彼の態度にレオーネは少し苛立ちを感じる。

 

「なんだよ、もっと照れるとかないのかよ」

「・・・正義の味方にお礼も何もいらないからね。人を助けることに見返りを求めてしまえば、それはもう中立ではなくなってしまう。気持ちは受け取るつもりだ」

 

「・・・・・・あーあ、もうちょっと人間らしくすりゃあいいのに」

「・・・正義の味方を辞めるときが、もしもあればね」

 

 




さりげなくフラグを増やし続ける作業

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