正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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ロッドバルト「人間とはどんな選択肢を選んでも基本後悔するそうですよ。後悔をしない選択肢なんてないのです。ただ、後悔したそのあとの行動次第でどうとでもなりますよ」


「だったら、なんとかすりゃあいいだろ?」

帝都に訪れていた冬もあと少しすれば終わりを迎えていた。まだまだ肌寒い日々が続くが、それでも春の足音が聞こえ始めるといったところだろう。

 

革命軍とその思想に賛同した者たちが、帝都近辺に集まり始めている。

春を迎える前には帝国軍と革命軍の最後の戦いを迎えることになるだろう・・・

 

 

_____________ワイルドハント詰所にて

 

「ったく、帝都から逃げる奴もいると思ったけどなぁ」

「あまり不安そうな声もないのが・・・」

 

エンシンとイゾウはスラム街での配給を終え、ソファに座って休んでいた。

シュラが宮殿からくすねて・・・もとい貰ってきていた豪勢な食べ物や酒を食べながら雑談に興じていた。

 

「どこもかしこも【何かあればカッパーマンが助けてくれる】ってよ。逃げる奴がほとんどいねぇってのが気持ち悪いよな」

「逃げる者は冷静な判断だ・・・じきにここは戦場と化すだろう。何も影響がないわけではない」

 

「カッパーマンに全部丸投げする連中が多いよなぁ」

「それだけ、この帝国において【正義の味方】がどれだけ民衆からの支持を集めているかということだな」

 

そこまで話すと、エンシンは酒を一気に飲み干した。

 

「---っかー!ったく、この国はカッパーマンが王様ってことかよ」

「それより性質が悪い。憧れと言えばよいだろうか、憧憬の類というのは感情の中でも厄介だからな」

 

「あーん?んだよそれ」

「他人への憧れというものはな、他人の中に自分の理想を見出す行為だ」

 

イゾウの言葉にエンシンは酒をあおりながら、耳を傾けた。

 

「理想というのは”そうあってほしい”という人の願い、自分にはない完全なものだ。そんなものを他人に見出すとどうなると思う?」

「あー・・・・・・いやわかんねぇな。んなこと考えたこともねぇよ」

 

「極端に言えば、相手を崇拝してしまう。・・・それこそ、神様のようにな」

「・・・うっへ、気持ち悪ィな」

 

彼の言葉にエンシンは苦々しい顔をしながら、酒のツマミを頬張った。

 

「この帝国の民衆にとってはカッパーマンがそうなんだろう。誰であろうとも助けて救い出す英雄・・・権力者も貧乏人も関係がない、誰であろうと助けるのは中々できないことだからな」

「そうかねぇ・・・」

 

そんな会話をしていると、シュラとドロテアが詰所に戻ってきたようだ。

いつものように出迎えようとするエンシンとイゾウだが、どうやらいつもと様子が違うらしい・・・

 

ドロテアが手酷く酔って泣いているのをシュラが背負って帰ってきたようだ。

 

「ひっく・・・うぇ、妾、妾はぁ・・・なんじゃアイツ、ほんとうに怖かったんじゃからなああああ!!」

「ハイハイ。事情は聞いたから対策考えような~」

 

「・・・どうしたんだよ。ドロテアにしてはめちゃくちゃ酔ってないか?」

「何かあったでござるか?シュラ殿」

 

エンシンとイゾウに聞かれたシュラは、小さくため息を吐きながら苦笑いで返した。

 

「あー、それは今から説明するわ」

 

 

 

 

「シュラの親父に頼まれた兵器の改造してたら皇帝陛下に脅されて・・・」

「兵器を更に改造して化け物にしたと?」

 

「らしいぜ?」

「うっ、う・・・長いものに巻かれただけじゃが、さすがにあれは妾も・・・」

 

シュラがドロテアにあったことを二人に説明した。それで、その話をドロテアが自棄で酒をあおりながらシュラに伝えたのだ。

ドロテアとしては別に悪事の一つや二つをやるのも良かったのだが・・・

 

「・・・まぁ、さすがにとんでもなく罪悪感が湧いたんだとよ」

「へー、ドロテアにもそんな感情があったのかよ」

 

「ひっぐ、あとで一発鳩尾を殴る・・・」

 

エンシンの軽口に泣き上戸になったドロテアがぼそっと小さく呟く。

そんなやりとりに少し笑みをこぼしながらイゾウがシュラへと話しかけた。

 

「それでシュラ殿。どうやら皇帝陛下殿はカッパーマン殿に対抗するつもりのようだが、どうする?」

「どうするもこうするもねぇだろ。ドロテアが関わってる時点で俺たちがなんとかしたほうがいいだろ?おもしろそうだとは思うけどよ」

 

ニヤリと、悪戯を思いついたような子供のようにシュラが笑い返した。

 

「おーおー、さすがはやんちゃしてただけはあるよなぁ」

「シュラ殿からしたら、至高の帝具とやらで蹂躙する様も面白いのだな」

 

「そりゃあ元々はそうだぜ?あの皇帝陛下が親父に黙ってここまでやるのも面白いけどよ」

「・・・うう・・・じゃが、止めるのじゃろう?」

 

ドロテアの言葉に「もちろん」とシュラはすぐさま返した。

 

「それに俺たちがカッパーマンの危機を救ったってほうが、どう考えても面白いだろう?」

 

「・・・確かに違ぇねぇな。あの正義の味方に借りを返してやれるなんてな」

「江雪で斬れぬものだが、護衛ならばいくらでも食事ができる。」

「・・・・・・すまぬな、妾もさすがに止めなければ気が済まん。というか純粋に悔しいのじゃ!」

 

・・・・・・ワイルドハントのメンバーもシュラに賛同した。

 

「そんじゃ、あの至高の帝具を動かす前に俺たちも作戦を立てるぜ」




ロッドバルト「次回あたりから恐らく決戦です。お楽しみに」

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