正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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ロッドバルト「さぁ、カッパーマンの真骨頂が早速披露されますよ」


帝都編
「頭の皿は乾かしても」


帝国歴1024年・・・なんて始まりは定番すぎてそろそろ読者も飽き飽きしているだろう。とはいえ、基本的に事が起こるのは決まってこの年なのだ。例外もちらほらとあるわけだが・・・

タツミ・サヨ・イエヤスの3人は故郷の村のために帝都へと目指す旅の途中であった。

「あー、それにしても帝都に早く着かねぇかなぁ」

「イエヤスったら焦ってるわねぇ・・・多少ゆっくりでもいいのよ。安全に行かなきゃ」

「あはは・・・そういやさ、このあたり河童が多いよな」

タツミの視線の先・・・川沿いに小さな1頭身ほどのカッパが何匹か集まっていた。

 

帝国全土、いやこの世界では一般的に認知されているカッパ・・・

およそ1000年前から存在が確認されており、また不老不死とも言われる不思議な存在だ。危険種に食われても腹の中で生きていたとも言われ、またどんなに痛めつけても傷が回復する・・・

数百年前までは不老長寿の薬とも称されたが、どうやら食べるのには向いてないらしい。

 

「おっ、そうだなぁ・・・うちの村でもちらほら見かけたが、本当になんだろなアレ」

「さぁね。まぁ、でも数が減ったり増えたりしてるらしいし、不老不死ってのも嘘かもしれないわよ?」

「あのさ、カッパって言ったら・・・カッパーマンもいるかな?」

 

「おっ、あの正義の味方か。俺、生で見たことないんだよなー」

「噂じゃ世界中飛び回ってるらしいからね。村長が小さい頃に見たことがあるぐらいでしょ?」

「俺さ、あぁいう正義の味方って憧れるんだよな!」

 

彼らがそう話していると、前方の雑木林から武装した男たち数人が現れた。何かの軍事訓練や、危険種を狩っている雰囲気でもなく・・・あまり、良くない雰囲気の大人たちだ。

 

「おいおいボウヤたちぃ、危ないなぁ」

「俺たちみたいな山賊に狙われちゃうぜぇ?」

「おっ、そっちの嬢ちゃんは上玉じゃねぇか。げひひひっ、これは楽しめそうだぜ」

 

どうやら山賊・・・らしい。自ら山賊と名乗る山賊もどうかと思うが、タツミたちは武器を構える。人間を相手に戦ったことが無いとはいえ、彼らもそれなりに鍛えてきた身だ。

・・・なにより、これから軍人を目指しているのだ。人を殺す覚悟もできている。

 

「ここで実践たぁ、俺たちは運が良いよな」

「馬鹿言わないでよ・・・油断せずに行くわよ」

「あぁ、分かってる」

 

「おんやぁ、このボウヤたち、俺たちに勝つつもりでいるらしいぜ」

「あほらしいよな?大人の怖さってやつを見せてやろうぜ、兄弟」

「そうだよな・・・まずは坊主どもからぐっちゃぐちゃにしてやろうぜ」

 

緊迫する中、互いに様子見に入った・・・その時

 

「待ちたまえ」

 

突如、上から声が聞こえた。

タツミ達も山賊たちも上を見上げて硬直してしまう。

そこには・・・一人の男、いやカッパが空中を浮かんでいた。真っ赤なマントをはためかせ、明らかに被り物らしきものを被った男だ

 

「見たところ、そこの3人組は山賊と御見受けする・・・そんなことはやめなさい。人を襲うことは、人の迷惑になる」

 

迷惑どころか悪事なのだが、彼は丁寧な物言いで、空から地上へと舞い降りる。

 

「う、うるせぇ!なんだてめぇ!」

「おい、まさかこいつ噂のカッパ野郎なんじゃ・・・」

「あの正義の味方かっ!?」

「いかにも、私はカッパーマンと名乗っている」

 

その言葉にタツミは身を乗り出して反応した。それもそうだ・・・村長から何度も聞かされた正義の味方が、自分の目の前にいるのだから。

だが、サヨとイエヤスに小突かれて再び剣を構えて警戒をする。

 

「もう一度言おう・・・こんなことはやめなさい」

「うるせぇ!おい!こんなカッパ野郎なんてぶち殺してやる!」

 

リーダー格の男の一声で3人がかりでカッパーマンに襲い掛かる。しかし・・・瞬きの間に、カッパーマンは彼らを通り過ぎる。あまりにも一瞬の出来事・・・タツミ達も何が起こったのか分からなかった。

 

一瞬の間に、カッパーマンは彼らを通り過ぎ・・・彼らの頭に、カッパの皿を被せていた

 

「なっ・・・」

 

リーダー格の男が何かを言おうとした瞬間、3人の盗賊が・・・

 

1頭身のカッパの姿となった

 

「えっ・・・!?」

「ちょ、ちょっとこれ、あのカッパと一緒!?」

「ど、どういうことなんだよ!?」

 

驚くタツミ達に、カッパーマンは振り向いて彼らに近づいた。

 

「私の頭の皿を被せると、カッパの呪いが降りかかるのだ」

 

やけにシリアスそうにとんでもない発言をするカッパーマン

とりあえずカッパーマンの頭の皿を被った瞬間にカッパになることだけは理解できた3人は、一歩だけ引いて身構える。

カッパーマンは怯えるタツミ達に弁明するかのようにこんなことを言い始めた。

 

「ははは、安心してくれ。私が皿を被せるのは悪人だと思った人間だけさ」

「ほ、本当かよ・・・」

「カ、カッパになるのは嫌よ・・・?」

「・・・あ、あの、なんでそんなことを?」

「戦えば私が勝てるだろう。しかし、勝つだけなら正義の味方でなくともできる。私は・・・私が思う正義を実行しているだけだ」

 

カッパにすることの何が正義なのだろうか

そんなことを思ったであろうタツミ達を見越して、更にカッパーマンは続ける。

 

「カッパの呪いは、愛を与えられ、愛を知ることで元に戻る。彼らが真に更生したら・・・人間に戻るのだ。それまで彼らはカッパのまま、不老不死の身体で生き続ける。彼らが彼らなりに苦難を乗り越え、その中で自覚することが大事だからね。」

「更生って・・・」

「結構強制よね、それ・・・」

「・・・すごいな。悪い奴のこともちゃんと考えてるんだ」

 

カッパーマンの思想に引いてしまうイエヤスとサヨ。しかしタツミだけは彼の正義に理解を示した。

 

「私にできる範囲にはなるがな、少年・・・他者から見れば、そこの少年少女のように疑問に思うかもしれない。しかし、その疑問こそ大事にすべきだ」

 

カッパーマンはタツミ、そしてイエヤスとサヨに視線を合わせる

 

「私は私の考えた正義を行使しているだけだ。君達には君達が求める正義を目指すと良い。正義は・・・他人の行動ではなく、自分の心が決めることだ」

 

そう言って、カッパーマンはまた浮上し始める。

 

「それでは少年少女、気を付けて旅をするんだぞ。心の皿だけは乾かさないようにな!」

 

「あっ・・・ありがとう!カッパーマン!」

「・・・変な正義の味方だなぁ」

「心の皿って何よ・・・」

 




ロッドバルト「カッパーマンの頭の皿の秘密が初っ端から出ました。さぁ、次回からはいよいよ原作沿い予定ですよ!・・・死亡者ゼロなので、カッパ無双にはなりかねませんがね」

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