正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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河童の手で水を掬い上げても水は落ちる


両者は対峙し、正義の味方は果たし状を受ける

革命軍と帝国軍が布陣を敷く。帝国軍の背後には帝都を守る城壁、そして大将軍ブドーと将軍エスデスの二人が前衛として出陣していた。

 

帝国最強と名高い二人の同時出陣に帝国軍の士気は高まっていた。

 

だが、革命軍は怖じ気づくことはない。

奪取し、集めた帝具の数々を装備した元将軍たちや周辺国の援軍など、猛者は揃っている。

 

何より、インクルシオを身に纏ったブラートと帝具人間のスサノオを引き連れたナジェンダも前衛として出陣していた。

 

・・・残りのナイトレイドは、帝都宮殿への侵入及び暗殺のためにすでに帝都へと潜り込んでいる。

 

「ボス、とりあえず時間までは持ちこたえよう。俺も帝国最強相手にどれだけいけるか・・・」

「そうだな。あのワイルドハントの話が本当ならば・・・皇帝の兵器は、我々だけでは倒せないだろう」

 

「手伝ってくれると思うか、天下の大将軍に帝国最強が。」

「さぁな。だがブドーだけなら・・・帝都を守護しているんだ、一時休戦ぐらいはするだろう。」

 

「男気があるとは聞くからな。そのあとはまた殺しあいだろうが」

「それが戦争だ。私もあまり気は進まないがな。」

 

ブラートとナジェンダが話しているうちに互いの軍の帝具使いが危険種を操り、戦場へと呼び寄せていた。

そろそろ始まるだろう戦いに、ブラートはしっかりとノインテーターを握った。

 

「さて、いくぜ」

「あぁ、開戦だ!」

 

 

 

____________帝都内にて

 

それぞれナイトレイドのメンバーは二人一組で帝都宮殿に潜入していた。

 

タツミとアカメ

シェーレとマイン

イエヤスとラバック

サヨとレオーネ

 

重要な四人の外道官僚、そしてオネスト大臣を暗殺するためである。

カッパーマンの乱入も予想されるが、それも利用できるならば利用する・・・というのが最終的な判断となった。

 

サヨとレオーネの二人も帝都から宮殿へと入り込み、見つからないように進んでいく。

 

帝都前での決戦のためか、宮殿内部はかなり人員が少なくなっている。

さらにレオーネはライオネルによって肉体を強化されており、嗅覚や聴覚で人がいないルートを選びとっていた。

 

「ねぇ、大丈夫かしら」

「なにがだ?」

 

「その・・・ワイルドハントの情報。もし本当なら、皇帝陛下が一番危ないんじゃないの?」

「さぁな。その時はその時さ。本当かも分からないしね~」

 

レオーネの答えにサヨは「信じてないんですか?」と尋ねてみる。

 

「レオーネさん、相手の様子である程度嘘かどうかわかるんでしょう?」

「そりゃあ、嘘をつくと呼吸がはやくなるとか・・・ライオネルならそういう細かいところに気が付くし」

 

「じゃあ、皇帝陛下が兵器を改造したのは本当だったと?」

「そこは本当だと思うけど。でも、皇帝がなんでそんなことするか分からなくてさぁ」

 

皇帝陛下は幼く、オネスト大臣の傀儡だと言われている。

自分で政治判断がくだせないはずの少年が、どうして兵器を改造させたのか・・・レオーネはひっかかっていた。

 

革命軍や帝国軍とは関係のない理由

それがあるような気がしてならなかった。

 

「(ただの野性の勘ってヤツだけどね)」

 

「理由ってことですか?革命軍に勝ちたいから・・・とか?」

「それなら元のスペックで充分じゃないか。なーんか引っ掛かるんだよね」

 

そこまで言うと、急にレオーネは立ち止まった。サヨも続いて立ち止まる。

 

「敵ですか」

「殺気がする。それに・・・虫の羽音か?」

 

「虫・・・?」

「っ、くる!」

 

サヨを掴んでレオーネはその場から避ける。

数瞬後に大量の虫が天井から落ちるように襲いかかってきた。そして、すぐに方向転換するとレオーネたちを追いかけるように向かってくる。

 

「なっ、なにあれ気持ち悪い!?」

「知らないって!あんな小さいの、埒があかない!逃げ切る!」

 

サヨの武器は弓、レオーネは近接戦闘メイン。

虫の大群のような、小さな生物を相手にするには不利なことは明白だ。

 

レオーネはサヨを抱えて撤退し、仲間と合流するほうへと切り替える。

 

「(ここはマインか。パンプキンの薙ぎ払いなら効率がいい・・・)」

 

 

「あら、可愛い女の子が二人もいるわね」

 

 

殺気の正体

その持ち主が二人を強襲した。

 

 

____________帝都内部、とある建物の屋上にて

 

時を同じくして、カッパーマンは帝都にある建物の屋上にいた。

戦場へと向かう途中、自らを呼ぶ声が聞こえたからだ。

 

「スズカ君か。どうしたんだ?申し訳ないが、君を痛め付けることはできないよ」

「初手で先手打ってきちゃうなんて・・・いつかは絶対にしてほしいけど」

 

「悪いができない」

「つれないところも興奮するわね・・・!っと、そうじゃなくて。伝えたいことがあるの」

 

スズカの言葉にカッパーマンは身構える。

カッパスーツを身に付けてから得た直感が、彼に警告するのだ。

 

「ナイトレイドの人間二人、弓矢使いと、金髪の帝具使いを人質にしたわ」

「・・・私に人質か。いや、誘拐ならば助けるしかない。」

 

少しだけ、心が動く。

ナイトレイドのサヨとレオーネ・・・特にレオーネが人質となったことに彼の胸は傷んだ。

 

「誘拐っていうか、交換条件よ」

「交換条件?」

 

「オールベルグのメラルドと帝国軍最強のエスデス将軍、この二人相手に本気の戦いをすれば解放するってね。」

「!」

 

 

「貴方の本気、見せてもらうわよ」

 

 


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