正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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平成最後の更新


エスデス将軍は戦闘に参加し、シコウテイザーは起動する

__________少年の話をしよう。

 

 

少年が生まれたのはとある大帝国の皇族。皇帝陛下の息子として生を受けた。

その頃から、帝国は腐敗が進んでいたし、地方でも帝都でも貴族や特権階級が自分たちの思うように過ごしていた。

 

もちろん皇帝はそれを良しとしたわけではない。

良心的な文官たちや官僚となんとか是正しようと努力していた。

努力だけで変えれるようなものではないが、少なくとも国を治める人間として出来うる限りのことをしようとはしていたのだ。

 

結果的には暗殺されたので、つまるところは全てが水泡に帰したわけだが。

それも世の常、努力をしたところで、尽力したところで、何も残らぬこともあるのが世の中だ。

 

・・・そんななかでも、少年は幼少の時から正義の味方に憧れた。

帝国を中心に人々を助け、守り、救いの手を差し伸べる最高のヒーロー。

 

彼のことを記載している新聞も雑誌も、彼は全て集めてこっそりと楽しんでいた。

その趣味を知っているのは良心と数少ない側近の従者だけだ。

 

・・・彼も分かっていたのだ、国を統べる側の自分が正義の味方に憧れてはしゃぐことが子供じみていることぐらい。

両親も従者も口には言わなかったが、正義の味方に憧れることをあまり良しとはしなかった。

 

「それもそうだろう、皇帝は国を治めるものだ」

「国を治めるものは、正義の味方にはなれない」

 

・・・そのうち彼は、新聞や雑誌、周囲の人間の言葉で気が付いてしまった。

 

民衆はみな、正義の味方であるカッパーマンに希望を求めている。

いつだって助けてくれて、いつだって救ってくれる・・・そんな正義の味方を誰もかれもが頼りにして、心の支えにしていることに

 

皮肉なことだが、正義の味方の情報を集め、正義の味方カッパーマンについていろいろなものを集めていた彼だからこそ気が付いてしまったのだ。

 

 

この帝国に必要なのは、皇帝じゃなくて正義の味方なのだと

 

 

・・・だが、絶望したわけでも失望したわけでもない。

 

 

だってそれは

 

 

「余も、そう思っていたのだから」

「カッパーマンがどれだけすごいか、どれだけのことをしてきたのか」

「彼にこの国を任せたら、きっと良い国になる」

 

 

___________彼すらも、正義の味方にすべて託したかったのだ。

 

 

___________自分が憧れた、正義のヒーローに

 

 

 

 

 

「正義の味方には敵が必要だ、そうだろう?」

 

起動したシコウテイザーの中で彼は誰に問うわけでもなく呟いた。彼がいるコックピット、その周囲に兵士に捕まっていた官僚が何人も触手のようなものに絡めとられている。

本来のシコウテイザーの機能ではない・・・ドロテアが改造していたものを、さらに改良、いや「改悪」した代物だ。

 

「だが、カッパーマンは完ぺきな正義の味方には・・・英雄にはあと少し足りない」

 

官僚たちのうめき声も嘆きも罵倒も、まるで聞こえないかのように彼は語る。

 

「英雄には、敵が必要だ。そう、巨悪とでも言えばいいだろうな。だが誰も彼もそれに足りない。きっとお前たちのことも、オネストのこともカッパーマンは救ってしまうのだろう」

 

それこそが正義の味方たりうる理由。

それも分かっている。だからこそ皇帝も彼に憧れて、好きになった。

 

でも足りない。完璧な英雄となるためには・・・敵を倒さないといけない。

 

「だから余が、カッパーマンにとっての悪になることにしたのだ。余がこのシコウテイザーで暴虐の限りを尽くせば、カッパーマンは余を倒すだろう?そうなれば・・・次に国に必要とされるのは革命軍じゃない、カッパーマンだ」

 

「・・・このクソガキっ・・・ここまでイカれていたなんて・・・!!」

 

オネストの罵倒に皇帝は悪意を含んだ笑みで返した。

 

「あぁ、お前がそれを言うのか、オネスト」

「あの正義の味方を完全な英雄にするだの世迷言を!ここまで馬鹿だとは思いませんでしたよ・・・!」

 

「好きに言えばいい。お前たちはカッパーマンが余から救う人質になるんだ。・・・最も、その後に河童にされるかもしれないが、それは余の知るところでは無いがな」

 

・・・皇帝は、悪事を働いていた官僚たちが憎いわけでは無かった。

少しは失望したが、それでもカッパーマンが誰でも救うのだから・・・きっと彼らのことも救って、彼らもいつかは自らの行いを反省するのだろう。

 

「・・・さて、覚悟を決めよう。最高の悪役になろうじゃないか」

 

 

 

 

__________同時刻

 

 

「将軍、オールベルグの頭領がカッパーマンと戦闘を始めました」

「わかった。私も向かうぞ」

 

軍を指揮していたエスデスは部下に任せ、自らはカッパーマンが戦っている場所へと向かう。

スズカはついていきたかったが、それよりも先に伝令という大事な仕事がある。

 

「はーぁ、さっさと決着つけてくれないのかしら」

 

彼女にとっては帝国が存続しても滅亡しても、どちらでもかまわなかった。

そもそもそこまでのこだわりが彼女にはない。負ければ逃げるし、勝てばそのまま勤めるだけなのだから。

 

そんな彼女のボヤキの直後、轟音が響く。

 

「なっ、なになに!?」

 

・・・帝都宮殿方面、そこに巨大な人型の何かがあった。




狂信者で狂人で、正義の味方に憧れる少年の話
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