正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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ロッドバルト「いやぁ、更新が遅れてますね。中々仕上げられないようですが仕方ありません。今回の視点は1話目に出てきた某少女です」


「正義の味方は誰も殺さない」

セリュー・ユビキタス、20歳

母親は雑貨店を営んでおり、父はそれを手伝っている。

元々、私の父親は帝都警備隊隊長をしていた。数年前まで現役だったものの、持病のために惜しまれながらも退役した。しかし今でも父は時折帝都警備隊の人たちの稽古をとったり、後進の育成を手伝っている。

私はそんな強くて正しい父の背中を見て育ってきた。

【正義は悪に屈さない】

その教えを守って、私は帝都警備隊に入隊した。元々父が功績を残していたためかやっかまれることもあったけれど、それでも私は正義のために毎日頑張っている。

それはひとえに、父親と同じく帝都の人々を悪の魔の手から助けたいからだ。

 

父やオーガ隊長に鍛えてもらった格闘術と武器の扱いのおかげで、数々の悪人を捕まえてきた。戦闘においての経験値も同僚と比べると格段に違うだろう。

帝都での悪人の検挙率は上がってきているとオーガ隊長には聞いた・・・けれども、それ以上の悪人が帝都、いやこの帝国に蔓延っている。

その悪を打ち砕くために、もっと私は強くならないといけない。悪人に虐げられる弱者を守るために私は負けてはいけない。悪人がいるだけで、周りの人たちが不幸になってしまう。

 

・・・そう、そうなのだ。

 

だから私はそのために、悪人を許してはいけない

 

悪人にはどんな理由があろうとも裁きを下す

 

情状酌量の余地なんて考えていたら、助けることのできる誰かを助けることができない。優しくしても改心しない悪人が再び悪事に手を染めるかもしれない。そうなった時に後悔するのは絶対に嫌だ。

もしもそうなって、悲劇が広がるならば・・・最初から悪人は全て殲滅すればいいじゃないか。一度悪に手を染めてしまえば、何度でも間違えてしまうのだから

 

 

 

「だから私は、貴方の正義とは相容れません」

 

私は目の前にいる正義の味方カッパーマンにそう答えた。

 

場所はとある貴族の屋敷・・・目の前にはナイトレイドもいた。何度か戦ったことのある彼らよりも、私は真っ先にカッパーマンに対して宣戦布告をしたのだ。

周囲には小さなカッパが何匹もいた。おそらくはこの貴族の住人達だろう・・・

 

ナイトレイドは貴族を狙う悪人だからともかく、カッパーマンがこの貴族の屋敷の住人をカッパにしたということは・・・きっとこの貴族たちは何らかの悪事を働いていたのだろう。

 

なんで断言できるのかといえば・・・私は、彼に助けてもらったことがある。

 

それからずっと彼について調べた。

一度たりとも、善良な市民を巻き込んだことは無い、と・・・誰も彼もがそう答え、記録に残している。

嘘かどうかは確かめることはできないが、少なくとも何度も何度も、帝都警備隊が捕まえようとしていた悪人をカッパにしてきた。もちろん、中には帝都警備隊が与り知らぬものも数多くあったという報告も上がってきている。

 

「貴方のその行為は、悪人を生かしている。愛を知れば更生できる?そんなことありません。人間は、いえ、悪人は何度でも間違いを犯します。だから私は、その憂いを無くすために悪人は全て倒すものだと思ってます」

「・・・」

「そこのナイトレイド達も、このカッパにされた貴族たちも全て・・・このセリュー・ユビキタスが打ち砕きます!」

 

帝具であるコロと共に武器を構えるとナイトレイド達が身構える。しかし、カッパーマンは微動だにしない。

 

「それが君が思う正義ならば、そうなのだろう」

 

「なっ・・・何言ってんだよ!?」

 

カッパーマンの言葉に、ナイトレイドの緑色の髪の青年が慌てたようそう言った。

 

「人にはそれぞれ、自分の正義を胸に秘めている。だから私は君の正義は否定しない。それもまた真実だからだ」

「・・・そう思うなら、貴方はなんで悪人にチャンスを与えているんですか!?私の正義を否定しないなら、なんでっ・・・」

「それが私ができる正義だからだ」

 

彼はそう答えて真っ直ぐに私を見つめてくる。

被り物越しでも分かる、真剣な言葉に少しだけ武器の構えを緩めてしまう。

 

「私が志すものは、誰も彼もが幸せになることだ。老若男女、民族も貴賤も、善悪も関係なく、皆が幸せに暮らすために“全てを守る”ことが私の正義だ」

「・・・全部なんて、無理に決まってる」

「あぁ、無理かもしれない。しかし私はそれを正しいと思っている。だから私は・・・悪人を殺すことはしない」

「・・・」

「正義の味方は、誰も殺さない。私はそう思っている」

 

誰も殺さない、なんて。それこそ詭弁だ

・・・人を殺した悪人に対しても同じことなのだろう。

でもそれは・・・それは、被害者の気持ちを度外視しているじゃないか。

 

「・・・正義の味方にしては、歪んでますね」

「・・・誰しも歪みは抱いている。私も君も、そしてナイトレイドの君たちもだ」

 

カッパーマンはそう答えてふわり、と空中に浮かんだ。

 

「それでは私はまた行くよ。まだまだ正義の味方を求める声が聞こえるからね」

 

そう言って彼はすぐに去ってしまった。その隙にナイトレイド達も撤退してしまったらしい。

・・・私としたことが、ついカッパーマンを見送ってしまった。

・・・父を助けてくれた時と同じように

 

だけど、次に会ったときからは敵同士だ。

正義の味方を名乗っていても、それは私の正義とは相容れないのだから

 

 




ロッドバルト「原作のセリューさんとはまた少し違う歪みですかねぇ・・・次回は誰のターンでしょうかね?気が向けばカッパーマン以外の視点もあるかもしれません」

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