カッパーマンについての記述はおよそ千年前にまで遡れる。帝国という国が建国されるあたりに現れたらしく、それからずっと人々によって語られまたは文献に記述されていた。
もちろん、被り物をしているので千年間同じ人物とは限らない・・・名前を継いでいるのだろうというのが帝国内での通説である。
また、一部の目撃者たちや実力者はカッパーマンが人間を河童にする能力があることを知っている。
若き頃のブドー大将軍をも降したこともあるらしく、また将軍になったばかりのエスデスも彼に挑んだものの、軽くいなされて逃走を許してしまったらしい。
そのため、帝国軍や革命軍は互いにカッパーマンを味方に引き入れようとしているようだ。
もちろん、革命軍所属の裏部隊・・・ナイトレイドでも本部から「できることならば勧誘すること」と命令されている。
タツミ、サヨ、イエヤスの3人はナイトレイド・・・ひいては革命軍に所属することとなり、こういった情報をボスであるナジェンダから聞くこととなった。
「それでも人間をあの河童にしちゃう不思議な力は怖いわよね」
「そうだよなぁ・・・気を付けないといけないな」
「若かったとはいえ、田舎でも有名なブドー大将軍を倒したこともあるんだろ?やっぱ将軍級かぁ・・・まだまだ遠いぜ」
「なによ、普段は大口叩いてるくせに」
「そりゃ数年ありゃあ俺だってもっと強くなるさ!でもよ、あの大将軍だぜ?将軍級なら俺だってまだしも、大将軍なんて10年ぐらいはないとな」
ナイトレイド本部にてサヨとイエヤスが鍛錬場で休憩をしながらカッパーマンについて話していた。
タツミはそんな二人の会話を腕立て伏せをしながら聞いていた。
「・・・俺ももっと強くならないと」
タツミは小さく呟いて、更に腕立て伏せを続けた。
ところ変わって、ナイトレイドの厨房
現在は食事係のアカメと手伝いとしてマインが今日の晩御飯を作っていた。今日も肉が多めの食事であり、今はその下ごしらえを二人でしていた。
「本当にカッパーマンのやつ、正義の味方って言うわりには帝国軍を助けてるときもあるわよね。そう思えば西の王国とかバン族も助けてたって話だし」
「仕方ない、助けを求める人間を助けるのがあいつなんだ」
「それでも依頼された悪人を悉く河童にされてたらそりゃいらつくでしょ!?あれじゃあ正義の味方っていうよりは悪人の味方じゃない!」
「・・・人間は何度でもやり直せると、言っていたからな」
アカメの言葉に愚痴っていたマインは沈黙してしまう。
眉間にしわを寄せつつアカメへと視線を向けた。
「そういえばアカメ、帝国にいたころに何度か会ったらしいわね」
「あぁ、何度か助けられたこともある」
「・・・クロメのこととか、頼まないの?」
「・・・」
マインの質問にアカメは答えない。作業をしていた手が止まってしまう。そんな様子を見ながらもマインは更に続けた。
「あんたが帝国から抜けるときや、今だってそうよ。あのお人好しの正義の味方に頼めばクロメを無理やり連れだせることだってできるじゃない」
彼女の指摘は的を得ている。
帝国軍ですら手を焼いているカッパーマンなら、強固な帝国宮殿の守りすら突破できるだろう。
薬物で強化されている暗殺部隊であっても無理やり連れだすことは可能だ。
実際に盗賊のアジトなどから人質を救出したという話も数多くある。
「・・・クロメのことは、私の責任だ。抜けるときは私の力不足でクロメを連れだせなかった。それにあいつにそれを頼むのは・・・何か違う気がする」
「何よ。プライドが許さないとかそういうこと?」
「頼んでしまえばきっと楽だろう。簡単に叶えてくれるはずだ。でもそれは・・・違う。なんでも頼ってしまうのは良くない。少なくともこれは私とクロメの問題なんだ」
「・・・あんた、本当に真面目よね」
アカメの言葉にため息を吐きながらマインは答える。
だが、アカメのそういう真面目すぎるところをマインは買っているのだ。むしろ、彼女がこうして真面目過ぎるからこそ、こうして革命軍を選んで帝国を裏切ったのだ。
民衆のことを、国のことを考えて、仲間たちのいる・・・妹のいる帝国よりも志を選んだ彼女を、マインは誇らしく思っている。
「クロメのことはなるべくあたしやボス達も協力するわ。だからそんな顔しなくていいの。ちょっと意地悪言っちゃってごめんなさいね」
「いや、かまわない。私もたまに考えることだ。・・・それに、きっとクロメも同じことを考えているだろうから」
「さすがにそれは・・・無いでしょ?」
「クロメのことなら分かるからな。ただ私と同じように考えてもいるだろうな・・・自分の手で、取り戻そうとするはずだ」
「似たもの姉妹ね」
「・・・そうだな」
「それにしてもカッパーマンのやつ、今も誰か助けてるのかしら」
「そうだろうな」
__________西の王国辺境にて
「くしゅんっ」
「風邪ですか?」
助けたばかりの女性・・・コスミナがカッパーマンに声を掛ける。
「いや、病気にはならない体だから違うだろう。さて、そろそろ私は出かけるよ」
「あ、あの・・・また、会えますか?」
「縁があれば会えるだろう。君は早く家族たちと西の王国から逃げると良い。私が紹介した村ならばきっと受け入れてくれるはずだ」
「ありがとうございます!」
「それでは・・・さらばっ!」
ロッドバルト「今回はやや番外編に近いですね。次回はもちろん、別Sideになります。もちろん皆様の予想通りでしょうが・・・また機会があれば!ですね。時間がとれたら、あとは語れる内容があればでしょう。それではまた次回」