1972年、日本帝国は米国が新規開発した新概念対BETA兵器である戦術歩行戦闘機「F-4ファントム」の導入を決定した。
しかし、欧州戦線の激化、アサバスカへのBETAの落着ユニットの落着もあり帝国向けのF-4輸出枠が取り消しになってしまう。
だがこの確率世界の米国は帝国との関係性を軽視していなかった様で、代替案としてノースロック社が空軍パイロットの機種転換用に開発した「T-38タロン」をまず
さらにライセンス生産の許可と帝国技術者の米国での教育の受け入れと、かなり融通をしていた。
これはアサバスカ事件が起こった事で、米国内でもBATE脅威論がかなり強くなっており、いつBATEの東進が始まるか分からない状況で、もしBATEに長距離渡洋能力があった場合、日本帝国の陥落が即ハワイや西海岸のBATE上陸の危機になってしまう。
なので、帝国軍や帝国軍需企業を支援する事で帝国を「不沈空母」に見立てていた様である。また今後戦術機運用にシフトしていくであろう在日米軍の兵站部品を帝国内でも調達できる下地も作りたかった様だ。
そのような政治的要請もありながらこの確率世界での日本帝国初の二足歩行兵器「74式戦術歩行練習機 若鷹」は生まれる事となる。
「で、コイツが戦術機って奴な訳だ」
東富士演習場に搬入された「若鷹」を前に巌谷榮二は未だ強化装備を着慣れていない部下たちの前に立って大仰に言う。
彼を含めた四名の教官役の人間は既に米国内のテストセンターで今の所の最新の衛士教育を受けて国内に戻り、本日は帝国国内での初めての実機訓練である。
無論彼らの他に在日米軍に配備予定の米軍軍人も臨席している。
「ここにいる国内訓練一期生は陸海空軍に近衛軍から集められた猛者であることは疑っていない」
巌谷は齢三十に届いていない。実際訓練生の中には歳上もいれば、原隊では明らかに階級が上の人物もいる。だが、当然この特別編成教育隊では彼が階級関係なく指揮官である。
「だが、この新概念兵器の前に過去の成績や実績は全て捨て置け」
これは彼が米国テストセンターで痛感したことである。
「我々は教官含め全員で「戦術歩行戦闘機」と言う今後の正面主装備の運用方法を確立しなくてはならない。」
「所属階級関係なく忌憚の無い意見考えを出してほしい」
全員が今後の期待と不安が入り交じっている表情だった。
「どうだったんだ。初回の実機訓練は?」
その日の夜、巌谷は格納庫で自身の機付長で整備班の教官でもある篁祐唯と個人的な情報交換も兼ねて話していた。
「まぁ俺たちの時と変わりは無いさ。強いて言うなら陸軍機甲科出身が「コイツは背が高すぎる」ってぼやいていたが」
「仕方ないさ。そもそも
二人とも無意識に若鷹を見上げる。鋼鉄の巨人は物言わず、静かに、だが確かな存在感を持って佇んでいる。
「
「機体が来ずに74式長刀だけ納品されて来るなんて洒落になってないよ」
「まぁ実際この件もあって国産化の話が加速してるそうだ。メーカー各社にも照会かかっているっていう話だ」
「俺たちはコイツで日本を護れるのかね?」
巌谷は少しおどけて祐唯に笑い掛ける。親友にしか見せない少しの弱さのつもりだった。
「やるしか無いさ。」
祐唯は若鷹の脚部にまでゆっくり歩いて装甲を撫でる。
若鷹は何も言わなかった。