ミアレシティで夜な夜な開催されているバトル大会・ZAロワイヤル。願いを叶えられる権利を求めて、多くのトレーナーがバトルに明け暮れている。
「やった、今日も勝ち!」
今バトルゾーンで勝利をおさめた女……セイカもそのひとり。といっても彼女の場合叶えたい願いはなく、MZ団としてZAロワイヤルに参加しているだけなのだが、それでも類稀なバトルの才と生粋の負けず嫌いで勝ち上がり、現在はFランクである。
「見つけたぞ!」
「なに!?」
勝利に浮かれている間に、気がつくとセイカはトレーナーたちに囲まれていた。
「なんですか、勝負なら1対1で…」
「うるさい!俺たちはみんなお前に負けたんだ!今更手段なんて選んでられるか!」
「そうよ、いきなり現れてあたしたちのランクアップを邪魔して!」
「いつの間にかFランクまで上がってるらしいじゃないか!」
「なっ……」
顔は覚えていないが、どうやら皆セイカにバトルで負け、逆恨みしている者ばかりなようだ。皆で結託して、セイカへの恨みを晴らそうとしているらしい。
(どうしよう、いくらこの人たちがわたしより弱くても、こんなに数の差があれば……)
「かかれー!!」
「ひっ……」
一斉に、ポケモンたちが襲いかかってくる。セイカが思わず目を閉じた、その瞬間だった。
「アブソル、つじぎり!!」
「!?」
セイカを庇うように、アブソルが現れる。そして屋根の上から、誰かが降りてくる。
「……負けたなら、素直に相手を尊敬するべきだ。まして逆恨みしてこうやって囲むなんて…卑怯だ」
「な、なんだお前は!?」
月の光を浴びて、鮮やかな銀髪が輝く。ストリート系のパンクなファッションは、その少年の強さを表しているよう。
「お前たちのような人間に名乗る必要はない。アブソル、バークアウト!」
「ぐっ……」
「逃げる」
「きゃ!?」
トレーナーたちが怯んだ隙に、少年はセイカを抱えながら身軽な動きでその場を離れた。
「……大丈夫?」
「あ、はい……あの、助けてくれて、ありがとうございました」
「ん、ならいい。」
先程までの鋭さは何処へやら、今の少年はどこかぽやぽやしている印象を受けた。
「きみ……Fランクのセイカ、だね。知ってる」
「え、えーっと、あなたは……」
「あ……オレはカズミ。オレも、ZAロワイヤルに参加してる」
「そうなんですね…!」
「多分、また会うことになる。じゃあ、また」
「え、え?」
ゴージャスボールをセイカに渡して、カズミは去っていった。何が何だか分からないまま、セイカはホテルZに戻ることにした。
「おかえり、セイカ!ZAロワイヤルはどうだった?」
「それがね……」
MZ団の面々に、セイカは襲われたことを話した。カズミという少年に助けられたことも。
「なにそれ、ひどい!逆恨みにも程があるよ!」
「全くだぜ!」
「カズミ、カズミ……どこかで聞いたことがありますね」
「え、ピュール本当?」
ピュールはスマホロトムを軽く操作すると、若干驚いた顔でセイカたちの方を向き直った。
「やっぱり!彼、ZAロワイヤルの上位ランカーですよ、それもCランク!」
「Cランク!?そんな強い人なの!?」
「ええ、しかも参加者の中でもかなり有名な方らしいです。彼について語るサイトなんかもあったりしますよ。『銀髪の貴公子』だとか……」
「うん……納得。すごくカッコ良かったし」
それから少し話をして、セイカは自室に戻った。
さっきの出来事を思い出す。颯爽と現れて、自分を助けてくれた少年・カズミ。見た目もそうだが、振る舞いがとてもカッコ良かった。まるで、本物の王子様のような……
「って、わたし何を考えてるんだろ。いけないいけない……」
ドキドキしつつも、セイカはひとまず眠りについた。夢の中で、アブソルと一緒に街中を駆ける銀髪の王子様を見たとか。
「ただいま戻りました、ユカリさま」
「あらおかえり、カズミ。遅かったわね?」
「今日は…トラブル。女の子が襲われてた」
「まあ!それは大変。もちろん助けたのよね?」
「もちろん。人々を助けるのがセレブの役目」
「うふふ、そうよ、それでいいの。さすがわたくしの忠実な犬。さあ、跪いて」
カズミが、ユカリの前に跪く。ユカリは、カズミの顎を軽く撫でる。そして彼の額にキスをする。
「あなたはわたくしのもの。わたくしの犬に相応しい振る舞い、褒めてあげるわ」
「はい、ユカリさま……」
カズミ
ZAロワイヤル上位ランカー。ただし理由はユカリさまのため。
セイカ
ご存知主人公。まだFランクに上がったばかり。
ユカリ
カズミのご主人様。
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