縛りには管理人がいる   作:I'mあいむ

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縄は蠢く

 

 

縛りって、おかしいと思わないか?

 

呪力は分かる。けど縛りってなんだよ。なんで制約を作ったら自分の能力が上がるんだよ。おかしいじゃないか。

呪力はただのエネルギーじゃねえのか。攻撃力を下げてスピード特化、スピードを下げて防御特化、これなら分かる。時間外労働ってなんだよ。自分一人だけの約束事で、なんでそんな概念的な調整が出来るんだよ。

どうしたって納得できない。第三者が居る。必ず縛りを作り出した奴が、管理者が居ると、俺はそう思っていた。だからだろうか。

 

 

「おう宿儺。教えてくれよ、お前の契闊とやらを」

 

「フッ、痴れ者め」

 

 

俺は縛りそのものとなった。

 

◆◆◆

 

初めまして。縛りです。

色々あって呪術廻戦の縛りに成りました。縛りです。今後ともよろしく。普段は縛りの管理や調停をやってます。元々は転生者で、この呪術が存在する世界に産まれたんだけど。まあ、成り行きというか時代の波ってやつで、今は縛りやらせてもらってます。

この世界には呪いもあれば呪霊とかいう化け物もいる。そんな奴らと呪い合い、殺し合い、その果てに東京壊滅。そんな中で主人公が頑張って頑張る話。それが呪術廻戦って物語。その中に登場する特有のシステム。守らないと罰を受ける約束事。それが縛り。

自然の摂理みたいな顔をしてるけど縛りは人工物だ。そもそも人間が考えたような変な概念だし、誰かが管理しなきゃ成り立たない。そこで縛りを整理したり、細かな縛りの内容を叶えるために試行錯誤するのが俺の役割ってわけ。人間は結構無理な縛りを通そうとしてくるし、複雑すぎて俺の技術じゃ難しいのもあるし、そこら辺世界との交渉次第だったりするし。正直大変なのだ。その点呪霊は感覚的に俺の存在も知覚してるみたいだし、意志疎通が取れる特級の奴らは楽で良い。一応言っておくが俺は人間の味方ではない。人間が作ったものではあるが、しかし縛りという概念は一種の現象だ。かの黒い火花のように、どんな存在にも平等に微笑むのである。

 

それにしても最近は暇だ。ここ数十年の呪術界は停滞しており、俺がやれることなどシン・陰流の新しい門下生に与えられた悪質な縛りの管理のみ。第二次世界大戦の凄惨な時代を過ごしてから、日本には有力な術師は生まれていない。あの時は国民の苦しみが凄まじい呪霊となって蔓延っていた。そのせいで時代を牽引した術師達が根こそぎ死んだ。残ったのは今の時代に続く脆弱な者達。第一次オイルショックなんかでそれなりの奴らは台頭してくるだろうが、今のところは夜蛾正道や禪院直毘人ぐらいのものである。つまり今はホントに暇。逆に、あと十年もすれば一気に忙しくなる。そう遠くない未来には五条家にアレが生まれるだろうし、その次は羂索の息子。呪いの歴史に名を刻むような鬼才共の宝庫だ。平安の再来と言われるのも無理はない。こう、もう少しバランスというか…手心を加えるとか無いんだろうか…。

まあ、やることも無いし暇だから良いさ。どうせ半分不死身の身。体もほぼほぼ天元と変わらない。寿命なんぞ無いようなものだし、存在そのものが概念の化け物だ。殺されれば死ぬが、まあ大丈夫でしょ。まだまだ若いもんには負けません。

因みに俺の縛り歴は約2000年。弥生らへんからやっているから正確にいつ頃からかなんてのは忘れたけど、まあ大体そのぐらいだった。あの時は結構大変で

 

「ん?」

 

何だ?今何かおかしな気配がしたような…

 

「いや絶対何か……」

 

しかし特に誰かが戦ってるとかも…うーん……

 

「……ああ、成る程」

 

西暦19xx年 12月31日

爆発的な経済の発展も鳴りを潜めた年の暮れに

 

「天与呪縛ね」

 

天から呪われし子が産まれた。

 

 

 

◆◆◆

 

19xx年 xx月xx日 禪院家

 

 

「そんで、君は天から呪われたって訳。まあ、天というより世界そのものから逸脱したバグだわな」

 

まっ暗な牢の中で、変なおっさんが話しかけてきた。

 

「ふーん…で、誰だよあんた」

 

「ん?俺?」

 

黒い服…たしか喪服と呼ばれているものを着た男。全身真っ黒で、きっちりとした七三分けに無精髭が生えた顔。そんなおっさんが、いきなり目の前に現れて呪霊の群れを祓った。

 

「俺は縛りだよ」

 

「縛り?」

 

「そうそう、呪術師共が使う縛りそのもの。そして君を縛ってる鎖そのもの。それが俺」

 

家の連中が時々言ってる縛り。おっさんは自分自身を、その縛りだと言った。よく分からないが、何となく俺は、そこに納得出来る気がした。

 

「それが、俺みたいなのに何の用だ」

 

「いや何、可哀想だと思ってね…」

 

「は?なんで?」

 

可哀想、と言う割には哀れみの目は向けられていなかった。寧ろそれは、何処かバツが悪そうで、縛りのくせして随分と人間臭かった。

 

「ほら、君の天与呪縛ってさ。俺のせいでもあるから」

 

「…ふーん、あっそ」

 

自分の顔を指しながら眉をへこませる姿に、俺は責める気にもならなかった。何となく、俺の縛りはこいつのせいでも無い気がしたから。

 

「それで、何かしてくれんの?」

 

「おっ、興味持った?んじゃあ教えてあげましょう」

 

こいつは怪しい男だ。その仕草も口調もとても胡散臭いが、けど俺の人生で初めて、俺の味方になってくれるかもしれない、そんな期待を抱かせてくれる存在だった。

 

「禪院甚爾君、俺が君を鍛えてやるよ」

 

「へぇ…面白そうじゃねえか」

 

差し出された手を取って、ボロボロの体で立ち上がる。引かれた手に誘い出されれば、まるで光が差したように見えた。

 

こうして俺は、縛りのおっさんと出会った。

 




何となく前からあった疑問を解消するために書きました。呪力ってそういう性質のものと言われたらそれまでなので、スマソ。続く予定は無いゾ
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