畜生から妖狐、そこから神目指す   作:インテリアタマツヨスギキツネ

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チクショウ!ほんわか系で誰も悲しまない小説が書きたいのに!手が...!手が止まらねぇ!!!


心という器はうんちゃらかんちゃら

 

 

 よだれ子は変わった。

 

 何が契機となったかは分からないがよだれ子は、なんというか....性根が変わった?という表現が当てはまった。

 

 朝は、前のように早起きをしなくなった。でも、昔のよだれ子のように昼まで寝ることはなく、至って一般的な時間に起き始めた。

 

 移動も俺の背中に乗らず、自身の足でトイレに向かったり、父親の元に向かったりとまるで独り立ちを始めた子供のようだった。

 

 妖怪退治は、今までと変わらず俺に跨り、目的地につけば俺が睨むかキャンプファイアーにするかの二択。変わった点は、俺が睨んで小鬼を塵にしても不機嫌にならず、すぐに家に帰ろうとするようになった点だろうか。

 

 最後に一番の驚きポイントだが、よだれ子が俺の肉を食べなくなったのだ。

 

 大丈夫か!?急に食べなくなったのってどっか病気なのか!?嫌だぞ!よだれ子が老衰以外で死ぬの!最後まで生きて、満足して死んでくれよ!頼むぞ?

 

 肉を食べなくなったよだれ子を心配するように近寄れば、曖昧で綺麗な笑顔を浮かべながらただ自身に割り当てられた食事を食べるだけだった。でも、悪い感情は来てないからな。大丈夫か。

 

 久しぶりに肉を十割食えたせいか毛繕いも捗るもんよ!カァァァッペッ!

 

 そんな毛繕いをする俺をよだれ子は、ただ曖昧にされど複雑に微笑むだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不満!我不満!不満也!

 

 最近よだれ子が俺を頼ってくれないのが不満!昔のように背中に張り付いて欲しいと思うし、肉もよだれ子が食っていいから、俺に構って欲しい!

 

 べ、別に昔のあの子や小狐達を幻視してるわけじゃないぞ!.....嘘!普通に甘えてくれなくなったから寂しいって思っただけ!あの子や小狐達みたく甘えて欲しい!

 

 でも、よだれ子は全部自分でやるようになったせいで俺が活躍できるのが妖怪退治の時だけ..........よだれ子の部屋で待機してる俺がやることといえば尻尾を毛繕いするぐらいだけだ。

 

 こ、これが独り立ちか......あの子もあのまま育てていればこんな風に独り立ちしていたのだろうか.......あぁ!やめやめ!感情に浸るのは良くない!既にあの子は亡くなってる!あの子とよだれ子を同一視するのは良くない!

 

 .........悪い、やっぱ辛えわ。

 

 嫌じゃ、嫌じゃ!いつまでもよだれ子の面倒を見たいのじゃ!よだれ子を甘やかせて構ってもらいたいのじゃ!いつか死ぬその日まで隣で輝きが見たいのじゃ!

 

 でもそろそろ、中学二年生ごろの年齢だし...........独り立ち......か、

 

 なんか俺、人間に関わるたびに少しでも側に居ようとするのなんなんだろ。あの子をあの集落に預けた時も頭の片隅で拾われないことを祈ってたし、拾われた時も安堵感と残念感があったし。

 

 古墳の時も、あのお偉いさんに身柄を狙われたらすぐに違う場所に逃げればいいのに、ダラダラとあの場所にいたし。

 

 それで今回も、よだれ子の独り立ちが嫌すぎて駄々捏ねてるし......

 

 あーあ、せっかく無心で毛繕いしてたのに変なこと考えてしまった。あんなに嫌だった毛繕いも最近じゃ無心になるために積極的にやっている。その度、庭に毛玉がベチョるが。

 

 早く、夜が来ないかなぁ。いまじゃ唯一、よだれ子と関われて外に出れる最高の時間帯だ。そのお陰で尚更、夜が好きになった気がする。でも、雨の夜は嫌い。乾きずらいから。

 

 さて、天気予報がないから今日の夜は雨が降るか分からない。唯一の楽しみが雨で台無しになるのは本当にやめて欲しい。よだれ子も風邪ひきそうだし。この時代の風邪は大病だからな。お薬とかないしな。

 

 ...........舐めきっちゃったかぁ。まだまだ外は明るいし、やることがないなぁ。三代欲求がないとこんなに狐生がつまらなくなるのか。やっぱ、眠気とか空腹はあった方がいいよ。性欲は知らん。

 

 とりあえず、よだれ子が帰ってくるまで目を瞑って擬似睡眠でも楽しむかぁ......なんか、変なところに楽しみを見出してるの完全に長生きしすぎたジジイみたいになってる。お、俺はまだぴちぴちの狐じゃ!

 

 尻尾を枕に楽な体勢へと体を変え、目を瞑る。

 

 最近は、よだれ子が不機嫌じゃなくなって休憩しやすいや。何をあんなにイライラしていたのだろうか。

 

 その疑問も心を休める為にすぐに消えていく。

 

 今、狐が夢見ているのはどうすればよだれ子と深く関われるのか。それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よだれ子は変わってしまった。

 

 俺と一緒に寝ることはなくなり、妖怪退治も行くことは無くなった。

 

 俺と違う部屋で起きて、その部屋で何かの勉強をして、綺麗に食事をし、そのまま眠る。最近は、それの繰り返しで俺と最後に触れ合ったのもいつだったか思い出せない。

 

 俺は、元よだれ子の部屋でずっと目を瞑り続けてよだれ子がいつかこの部屋に来るのを待っている。

 

 一度、よだれ子に会いに行ったことがあるが、彼女は手に持っていた木簡からこちらに視線を合わせ、曖昧で複雑な微笑みを浮かべ、そのまま木簡へと視線を戻した。

 

 そんなよだれ子を見た俺は、よだれ子がいる部屋に入ることができずに、今もよだれ子がここにやって来るのを願いながら待つだけだった。

 

 もう何度、日が上り下りを繰り返し、もう何度、雨が降り止んだのかさえも分からない。唯一、分かるのはよだれ子が俺のいる部屋にやって来なかったということだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体に突如として痛みが走る。

 

 感じたことのない痛みに思わず獣のような鳴き声をあげてしまう。

 

 目を開けて、ぼんやりとした視界が次第に鮮明となり、複数の人が俺を囲っているのが見えた。

 

「⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」

 

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」

 

 何か喋っているのが聞こえるが、言葉が分からない俺には、なんの状況判断の情報になりえなかった。

 

 他にも貴族のような服装をした者が多数おり、その中にはよだれ子の父親や..................よだれ子もいた。

 

 誰よりも前に出ているよだれ子は、俺に向かって手のひらを向けており、この体に走る痛みはよだれ子が引き起こしているのが分かる。

 

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故?

 

 纏まらない思考がただその二文字を機械のように吐き続ける。

 

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故?

 

 この痛みの下手人がよだれ子だという事実を受け入れられない。

 

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故?

 

 俺を苦しめる理由が一片たりとも分からない。

 

 何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故?

 

 よだれ子が泣いているのが理解できない。

 

 ともかく、この痛みから俺は逃げ出したかった。全身を炎で焼かれているような痛みから逃げ出したかった。頭をカチ割られるような痛みから逃げ出したかった。目をくり抜かれるような痛みから逃げ出したかった。

 

 俺は、身体中を蝕む痛みを無視するように全力でその場から逃げ出した。

 

 追撃が来ると思っていた俺の思考とは裏腹に何もやって来ず。俺はそのまま山奥に逃げ切った。

 

 山奥の中で幻痛に苦しみながら思う。今回の思い出は、忘れられないだろう。

 

 よだれ子と一緒に寝たこと。

 

 よだれ子と肉の奪い合いをしたこと。

 

 よだれ子と一緒に山中を駆け走ったこと。

 

 よだれ子に裏切られたこと。

 

 最後に見えたよだれ子の泣きそうな顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある飛鳥時代のお話。

 

 この陰陽師の家系は、とある豪族との取り引きでこの国にやって来た渡来人であり、天皇に仕え、世に蔓延る妖怪を退治していた。

 

 しかし、優秀な陰陽師であってもこの国、全ての妖怪を退治するのは骨が折れる。

 

 そこで彼は自身の愛娘を他の豪族と婚約させることにした。

 

 しかし、この国の豪族が、よその国からやって来た人間とそう簡単に婚約するはずがなかった。

 

 そこで陰陽師は、自身の娘に恐るべき狐の妖怪を退治させ、娘の有用性を豪族達に知らしめた。

 

 その力を目の当たりにした豪族達は、我先にと求婚し、国一の豪族がその娘を娶った。

 

 娶られた娘は、その豪族の子を産み、陰陽師となる子供を沢山育てました。

 

 これがこの国の陰陽師の母の話。

 

 彼女は、その後も何不自由も無く幸せに過ごしましたとさ。

 

 めでたし、めでたし。

 

 





 ちょっと、横になりますね..........
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