畜生から妖狐、そこから神目指す 作:インテリアタマツヨスギキツネ
短いです。
飛鳥時代から時は登り平安時代。
滅びかけた都は新たな場所に移し替えられ、繁栄し、それに伴い違う国と繋がり様々な情報が日本へと入り込んだ。
情報は武器。扱い方を間違えなければ身を守る道具となる。
されど、扱い方を間違えれば取り返しのつかない惨劇が起きる。
ここに情報の扱いを誤った馬鹿者が一人、とある管理された墓前にやってきていた。
「......なるほど、これが禍忌が封印された岩か。なんと厳重な封印。これが二百年前のものだというのだから驚きものだ」
馬鹿者は岩に触ると何かを呟き始める。
それと同時に岩が次第に割れ始め中から悍ましい妖気が溢れ出す。
「お、おぉ!なんと強大な力......!私が従えるに十分足り得る...,..!」
そして、遂に岩は完璧に真っ二つに割れ、中からは九本の尻尾を持った一匹の狐が現れる。
寝起きであろう狐は、目をしばしばと世界に慣れさせるように瞬きし、封印を破った馬鹿者へと視線がいく。
「禍忌よ、封印を破り貴様は解き放ったのは私だ。私にしたg.........」
馬鹿者が畏れを抱かず近づくという大それた行動を取った。取ってしまった。
馬鹿者の頭は既にこの世から無くなり、次いで体も飲み込まれこの世から消えた。そして、静寂で満ちる。
狐は周りを流し見し、立ち上がると自身の体を変化させ、一本の尻尾を持った小さな狐へと変身した。
そして、一匹の小さな狐は森へと消えていく。
そこに残ったのは真っ二つに割れた大岩と、誰かの墓だけだった。
「........チッ!何故、大火事がこうも連続で.....間が悪い!」
一人の女官が誰にもいない場所で舌打ちをしながら都で起きている大火事に悪態をついている。
「あと、もう少しで懐に入れたのに.......!」
彼女は、違う国からこの国にやってきた女官であり、最近は上皇のお気に入りとなったお陰で悠々自適に暮らせる.......はずだった。
上皇は、都を騒がせている大火事の対処に追われ女官なぞに構っている暇などなかった。
そのことに腹を立て苛立っている女官、藻女の舌打ちは止まらない。
「それに陰陽師共も煩わしいこと上ない.....!何が禍忌よ.....!そんな昔に封印された妖怪になんて構っていられるわけないでしょ.......!兵を出せだなんて厚かましいにも程がある......!私の正体が悟られたのかと思ったでしょう........!ちゃんと許可を取ってから部屋に入りなさい.......!」
何故か慌て出した陰陽師共の願いを叶えられるほど、この国に余裕はない。すぐに火事を消さなければ経済や人に大きな禍根が残ってしまう。
そのことを理解していない陰陽師共の態度に藻女の舌打ちと貧乏ゆすりが酷くなっていく。類稀な美貌が怒りで醜悪になる。彼女は舌打ちをした後に上皇の元へと歩き出す。
「このまま陰陽師共が政治に口出ししてきては堪らない、今回のことを上皇に伝え、政治舞台から消えてもらいましょう」
美しい美貌に見合わない汚い笑いが響く。
彼女の足取りはいつの間にか軽くなっていた。
燃える都の真ん中で一匹の狐が散歩のように軽やかに歩く。
人々の悲鳴を受け取る耳はくるくると上機嫌に回り、肉が焦げる匂いを感じ取った鼻はヒクヒクと嬉しさを隠しきれないように動く。
狐の目的地は特にない。
人々の短く濃い人生の叫びを耳で、人々の美味しそうな肉が焦げる匂いを鼻で、人々が苦しみ泣き悲しむ表情を目で見たかっただけ。
そうただそれだけだった。
自身に満ちる妖気に満足しながら歩いていると、突如として人形の紙が体に突き刺さる。
なんだ?と目線を向ければ三人の陰陽師が狐に向かって数多の式神を放出していた。
狐は忌々しそうな表情をしながら狐火を操り式神を全て燃やし尽くし、ついでにといった軽い感じで一人の陰陽師が炎に巻かれもがき苦しみ動かぬ肉塊となった。
なんとか炎を避けた二人の陰陽師の内、女の方は覚悟ができていないのか過呼吸となり、式神の操作がまともに出来ず、地面にうずくまるように倒れた。
うずくまった陰陽師を見た最後の一人は、せめて情報を伝えなければとうずくまった陰陽師を抱えてその場を離れようとする。
ドスッ!
男の背中から女の腕が生える。口から出た血が女の顔を濡らす。
男が最後に見た女の顔は、まるで何かに取り憑かれたかのような表情だった。
狐の力で狐憑きとなった彼女だが、生かされる理由はない。
男を貫いた手の親指で自身の両目を潰し、掻き回し、抉り出し、脳みその重要器官が壊れた瞬間、女は快楽の表情のまま生き絶えた。
狐は歩き続ける。理由もなく歩き続ける。ただ歩き続ける。
その先に終着点などないことを知りながら。
ところ変わって禍忌が封印されていた大岩。
真っ二つに割れた大岩の中央に小さく呼吸する一匹の狐が寝ていた。
幸せそうに、まるで寝ることが至上の幸せだと言わんばかりに眠り続ける。まるで楽しかった思い出を振り返るように。狐を邪魔するものはいない。
ただ、その場にあるのは、その狐を見守るように佇む一つのお墓だけだった。
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でも人畜生は言いすぎじゃね?解せぬ。