畜生から妖狐、そこから神目指す 作:インテリアタマツヨスギキツネ
目が覚めたら変なとこで寝てた件。
真っ二つになった岩を見るに俺はもしかして孫悟空だった....!!?な訳ないか、狐モチーフの孫悟空なんて願い叶えてくれる龍神がいても誰も見てくれないし人気も出ねーよ。
ガチガチに固まった体をほぐすように立ち上がり、辺りを見回すが真っ二つになった岩によく似た岩がもう一つあるだけでこの場所の手がかりになりそうなものは何一つない。
少し懐かしいと感じる岩に後ろ髪引かれる思いをしながら鬱蒼とした森の中を歩き始める。
なんだかあの頃に戻った感じがするなぁ、と感慨耽る。
あの時は、事態を把握できてなくて行き当たりばったりで歩き回ってたなぁ.....幼虫を食べて腹を満たしてたのが懐かしい......それで山の中を歩き続けて漸く人に出会......
「..............」
「...............」
..............俺と目があったな!これでお前とも縁が出来
ドスッ!
「............ヒェ」
地面に突き刺さる人形を模した紙。そしてそれを両手に複数持っている目の前の人間。その目線の先には怯える一匹の狐。
Q.何が始まるんです?
A.狐狩りだ。
逃げるんだよォォォォォォォォォ!!!!人間を背に全力で走り始める。明らかに紙が出していい音じゃないんだけど!?それを投げる人間も頭おかしいんじゃないのォ!?
お、親方!前から紙ぐえぇ!?
前から飛んできた紙を避けようと横にずれた瞬間に木の根っこに脚を引っ掛け思い切り地面と熱烈な抱擁を交わす。
すぐに体勢を立て直して走り出そうとするが、全身を囲う人形が俺の体をチクチクとその場に押し止まらせる。何この紙、限界までガチャ凸した性能してんだけど。
俺がなんとか逃げ出そうとするが、すぐにこの紙の持ち主がやって来る。へ、へへ、狐は食べても美味しくないですよぉ?
「.......貴様、あの場で何をしていた。答えろ」
寝てただけですけど。逆にあそこで何か出来んのか?ていうか狐が喋れるわけねーだろ。あたま沸いてんのか?
なにも喋らない俺に相手はなにを思ったのか人形をジリジリと狭めてくる。訂正!あたま沸いてる!狐が喋れるって思い込んでるメルヘンな人間!現実を沸いた頭で湯煎してるせいで頭がメルメルヘンヘンしてる!
何も喋らない狐とその狐を虐める人間。これ教訓の物語に出来ません?狐虐めると縁が悪くなるよって。
と、ここで少しの違和感を思い出す。
あれ?俺、喋れる?
最初に脅しの一撃を喰らった時の反応が「........ヒェ」だ。どう考えても狐の喉が出せる音声じゃありませんね。ちゃんと人間、現実見てたわ。頭も沸いてなかったわ。
「あ........」
試しに「あ」と呟けば人形が首元スレスレに狭まり、首を動かせなくなる。喋らせる気あります???
「妙な真似はするな、何か動きを見せれば貴様の式神を破壊する。良いな?」
?????????????
式神ってなんすか??意味不な情報で蹴りかかってくるのはボクシングのルールで禁止すっよね?俺、誰かの式神なの??いつのまに??
ていうか、この状況で「式神とはなんぞや?」って聞いたらすぐにハリセンボンにされそう。え?状況打開出来なくね?
後は言わんでも分かるやろ?詰みや。死ぬで俺。
狐生の厳しさに思わず咽び泣きそうになっていると、突如として近くの茂みが揺れ始め小さな小鬼の群れが人間に襲いかかった。
「チッ!」
小鬼の群れを対処するために俺の拘束に使っていた人形を全て小鬼に向けて射出する。
事態を把握できては無いが今のこの状況が千載一遇の大チャンスということが分かった。
小鬼の群れが次々に黒い塵に変わっていくのを横目に俺はその場から走り出した。
尻尾が二本でクソ雑魚でも妖狐だもの。みつを
どうも、尻尾が二本しかなくてチャッカマン程度の狐火しか出せないクソ雑魚狐こと俺だ。
あの場所からなんとか逃げ出し、お腹が空いたのでいつもの感じで鹿に襲いかかった結果、思い切り蹴られて意気消沈している。
そんで現在の俺の容姿を確認したところ、熊並みの巨体だった体は本当の狐並みの体になり!七本あった尻尾は二本になっていた!嘘だろ。
尻尾が二本!?毛繕い楽じゃんやったー!と喜べるはずがなく。常に側にあった尻尾が五本も無くなっているという現実を直視したくない。
人間で言うところの髪だ。禿げたら困るじゃん?俺も尻尾が無くなると困るんだよね〜
ならばどうするか。
髪がないなら植毛すれば良いじゃない。パンよりケーキ好きの姫さんも似たような名言を言ってたし、俺も尻尾を新しく生やせば良いんすわ。
というわけで脳内検索!
OK!Noomiso!俺の尻尾が増えた時の場面を教えて!
もしかして:墓参り、“アレ”退治
ふむふむ........なるほど完璧な参考内容っすね〜!増えた理由が分からないという点を除けばよぉ〜!!
本当に何がきっかけに尻尾が増えるのかこれが分からない。だが、その二つを行えば尻尾が増えるというならやらない手はない。
というわけで墓参りにイクゾー!
迷った!(クソデカボイス)
最初の森を把握できてない時点で地理を把握できてないのに墓地がどこにあるか分かるわけない。あたりまえ体操すぎる結果に思わず笑ってしまいそうだ。てか、笑った。
乾いた笑いで自分を嘲笑しながら歩き続けて一日。漸く、人の影を見つけた。遭難回避ッ!
沈んだ様子の人々を観察すればどうやら人が亡くなったらしく、多数の死体の周りで人々が泣いている。
子供が死体に抱きついているのを横目に俺は、生きている人間の様子を確認すれば、体に火傷のような跡が複数あり、おそらく火事で亡くなったのだろうと推測できる。
体が火傷で痛いはずなのに彼らは泣いている。自身も火傷が原因で死ぬかもしれないのに死を悼み泣いている。
.........俺みたいな奴が本当に墓参りなんてしていいのだろうか。
俺のような赤の他人が、勝手に人の死を悼んでもいいのだろうか。見たことも話したことも死んだ理由も分かってない奴に死を悼まれていいのだろうか。
それどころか人ではない畜生、それも妖の類に自身の死を悼まれるのはどう感じているのだろうか。そして、妖の類に死を悼まれているのを知った家族はどう感じるのだろうか。
やっぱり人の死を悼むのは人でなければ駄目なのだろうか。
.............なんか、久しぶりにシリアスな考えが思い浮かんだな。こういう考えは哲学の部類だと思うし、狐の脳みそでどれだけ考えても答えは出ない。
なら、自分が正しいと思ったことだけすればいいか。
悩み行動しなければ、良いことも悪いことも起きない。行動あるのみ。
俺が彼らの死を悼んで何が起きるかなんて後でいくらでも知れるだろう。
でも、出来れば良いことが起きてほしいなぁ?
...........これは、あまりにも、あんまりじゃないか。
俺の目の前には死体が山のように築き上げられ幾つにも放置されている。
大火事が原因か火傷を負った死体が多数あり、火傷の傷口から蛆虫が湧き、腐った匂いが充満している。
............これが彼らの弔い方というのは理解している。仏教の教えの鳥葬や風葬が行われているのは知っている。
でも、でも!こんなの、こんなのあんまりじゃないか........
命を燃やしきり輝きを終えた肉体がこんな雑に捨てられて言い訳がない。いや、俺が許せない。彼らが放った輝きの骸がこんなに雑に適当にぞんざいに扱われていいはずがない!
この光景では意味があるのは生きている者だけのように思えてしまう。そんなの駄目だ。死んだ者にも意味があるはずなんだ。なくてはならない!
でも、この時代が死んだ人に構っていられるほど平和じゃないのは理解している。いつでも生きている者に意味が優先される。それは分かってる。
だから、俺が代わりに彼らに意味を与えよう。
この世に生まれ死ぬまでの間にあった意味を失った者に俺は新たに意味を与えよう。
彼らの死に意味があることを!
彼らの死が無意味じゃないことを!
彼らの意味が誰かの意味になれることを!
俺は与えよう。彼らの意味が無駄にならないために与えよう。ただ与えよう。
例えこの先に終着点が無かろうが俺は意味を与えよう。
誤字報告感謝ァ!
評価感謝ァ!
感想感謝ァ!
ここすき感謝ァ!
死体に意味ってあると思う?