畜生から妖狐、そこから神目指す 作:インテリアタマツヨスギキツネ
なんか尻尾が一本増えてるんですが...なんこれ。
意識すれば2本とも動かせるし木に触れれば触っている感覚もある。まじでなんなんだコレ。
思い浮かべるは妖狐だが、妖狐が確認されるのは奈良時代の仏教と共に入ってくることで伝わるはずだ。明らかに推定縄文時代に妖狐は明らかにおかしい。弥生から古墳ぐらいに田の神の使い的な話もあるがまだ弥生時代に入りかけている縄文だ。
明らかにおかしい。
でも俺こそが縄文時代に妖狐が存在する生きたデータになっちゃってる感じっすね!
ンンンン!反論したいが俺の存在に論破されるぅ!
他のデータとして同族がいれば確認とか出来るんだが今は冬だから同族は皆、山の奥深くにいるんだよな。俺?異端。
...まぁ、尻尾が増えたからなんだよ。って話だから気にせずいつも通りに生きればいいや。
お腹も空いたし狩りするか。
尻尾が増えてから俺の中の何かが変化した。
これまで集落の人間が死に埋葬されようが興味無く放って来たというのに尻尾が増えてから死人が埋葬されるたびに埋められた場所に無性に行きたくなるようになった。
こんなことは今までなかったのに気付けば渡来人くんに供えた同じ花を贈り彼らの死を悼んでいた。
こんなこと今まで無かったというのに。
でも、悪い気持ちは無い。これまでして来なかった行動に困惑しているだけ。
集落の人も俺が真夜中に花を贈っている所を見ているが何もせずにただじっと俺を見つめるだけで何もしない。
とにかく、俺の中の何が変化したのか分からないが、気持ち悪さが無いならどうでもいいや。
例え理由が分からないとしてもその行動に納得したのだ。意味など求める方が死んだ彼らに迷惑だろう。
人が死んだら悼む。それだけだ。
あれから数十年が過ぎた。
俺は狐をやめるぞー!渡来人───!というわけで狐を超越した妖狐になった。尻尾も二本から三本に増殖してるから恐らく最終的に平安末期に日本にやってくる玉藻前のように九尾になるのだろう。
なんか九尾って聞くと玉藻前のせいで女性を思い浮かべるんだよな。俺もTSした方がいい?いや、安易なTSはとある界隈の琴線に触れるからやらない方がいいだろう。ていうか自認男だからやりたくねぇ。
さて、話が喋る機関車並みに脱線したが元に戻そう。
あれから数十年が過ぎ、あの集落は滅びた。
正しくは合併されたっていう表現だが渡来人くんが築き上げたあの集落はいとも簡単に他の集落に無いことにされた。
その事について特に何も感じることはなかった。無駄な殺しとかしてないからかもしれないが。
合併されたことで移住する事になった彼らについて行くように俺も追いかけると明らかに弥生ッ!な集落が姿を現した。
彼らが集落に入って行くのを見ながら俺はとある土地に強く惹かれていた。そこの土地には何も無いのに何故かその場所に行かなければという使命感が湧き上がって来た。
だが、その場所は集落の中。侵入するしか方法はないが渡来人くんの集落の人以外が俺を見つければ尻尾が三本ある珍しい狐だっ!と殺しにかかってくるはずだ。
俺はまだ狐鍋にされたくないし何より妖狐が鍋にされて死にましたとかダサ過ぎる死因は絶対に嫌だ。せめて盛大に死にたい。
......いや、やっぱり死にたくない。
こちらFOX...潜入を開始する。ダンボールはないが稲穂が俺の姿を隠してくれるだろう。それに真夜中だからバレへんバレへん。
昼の間に見つけておいた獣が一匹入れそうな穴に顔を突っ込み集落に侵入する。見張り台にいる人間以外は寝静まっておりめっちゃ簡単に辿り着けた。ひょ、拍子抜け...
そして俺が辿り着いた場所だが、恐らく墓だ。
他の地面と違う色に一度掘り起こされたのか少し柔らかい地面。そして何より俺がここに強く惹かれたこと。
俺はどうやら誰かの墓にお参りしないといけない狐らしい。
何故急にこのような狐になったかは分からないが納得してるからいいや。無駄な気付きは無駄な行為を作る。
さて、ここにやって来たからにはお参りしないとな。生憎、贈り物の花は無いが閉眼するだけで許してくれ。
目を瞑り彼らを悼む。この行為が死者の彼らに何を齎すのかは分からないが俺が納得するからやらせてもらおう。
それはそうとして死人オオスンギ。
次の日の朝、尻尾が五本になってました。
次の進化先予定だった四本目が飛ばされて私は、悲しい...(ポロロン)
なぜ彼らの死を悼むと尻尾が増えるのかは分からないが俺的には尻尾が増えるのはやめて欲しい。とあるゲームみたくB連打するだけでやめれるなら俺はボタンが潰れるぐらい押すだろう。
尻尾が増えるのが嫌?なんで?可愛いじゃん。とか思ってるやつは一回狐になってから言え。そんで絶望しろ。毛繕いの大変さに。
三本でも大変なのに五本だぞ!?朝起きてから昼まで尻尾舐め続けるんだぞ!?腹が自身の毛でパンパンになるわ!
はぁ....思わずため息が出るが納得したのならやり通さなければ。
それはそれとして尻尾五本は、狩りの時に目立つからマジで邪魔。そこんとこは納得できない。マジで。
しかも尻尾が増えるたびに体も一回りデカくなって来てる気がするんだが。今じゃ成熟した猪よりも体がデカいのは納得できない。か、可愛さが売りだったのに...もう、猛獣じゃん...
そのせいで人間にもバレて集落全体があわあわしたのは面白かったが完全武装した人間が森に入って来たのはめちゃんこ怖かった。殺しにかかってくるのはルールで禁止っすよね。
幸いにも渡来人くんの集落の人たちが全力で庇ってくれたおかげでハンターが放出されるのは防がれた。マジナイス。
それどころかなんな俺専用の扉らしきものが墓地近くに作られたのは本当に嬉しい。お陰で花の贈り物ができるようになって我感謝。
あの見つけた穴、尻尾がつっかえて入れなくなってたんだよね。本当に尻尾邪魔だなぁ。
ここの集落の長の柔軟な態度に感謝しながら死んでいった死者を悼んで行く。死んだ彼らがまた生まれ変わってこの世に生を受けれるように。
この集落での俺の立場は何なんだろうか。
昼は森で狩りをして生活し夜は墓地で寝る。そして朝になったらまた森に出かける。そして、etc...
人間は俺を見かけても何もして来ない。まぁ、それもそうだろう。夜に死人の目の前で目を瞑ってる狐なんて関わってる暇なんてないだろう。彼らは生きるのに必死だ。
人が集まれば出来ることは増えるが食糧の消費も増える。人手はいくらあっても困らないどころか人手は常に足らない状態なのだ。親が死んだとしても子は明日を迎えるために働かなければならない。
過酷だがこの時代を生きるには働かなければならない。
そう思うと、妖狐生もそこまで悪い生活じゃないかもしれない。代わりに狩りキツイよ、貯蓄ないよ、休み無いよ!な収益がその場限りの超不安定生活だ。
やっぱそこまで良い生活じゃ無いや。
さて、話を戻すが、俺の今の状態は墓地だけとはいえ土地を借りている状態なわけだ。土地代を払わずにずっとそこでキャンプしてる感じ。俺が人間の立場なら何だこの害獣と思わずにはいられないだろう。
なら、俺が目指すは共生関係。うぃんうぃんな関係を目指して行かなければ。
俺が彼らに出来ることといえば鼠を食い殺すことだろう。
弥生時代には鼠を喰ってくれる狐を田の神の使いと崇めたという歴史がある。なら、限りなく弥生に似たこの集落で鼠を食いまくれば対価を払えれるはずだ。
俺は穀物を食い潰す鼠を食い殺し、人間は俺に土地を貸し出す。
完璧な共生関係。Win-Winの例文として使えるだろう。
それじゃあ早速、鼠どもを腹の足しにしていこうか。
...勘違いされないように慎重にだが。
数日前、子供は忙しいと言ったな?アレは嘘だ。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
「●●●●!」
あの日から穀物を食い荒らしていた鼠を食い殺したことでこの集落の人間は俺を信用したらしく、大人たちは目が合えば会釈をし、子供たちは恐れずに尻尾やら体やらを触りにくるようになった。
お陰で俺の周りには常に子供達がついて回るようになった。ていうか赤ちゃんを俺の側に置いて農作業に励まないでくれ。少し信頼が重いんですが。
任せられた赤ちゃんを尻尾で包み込み揺かごの役目を果たしながら子供達と遊ぶ。最近の流行りは俺に跨って少し、早めの速度で走ることが流行だ。
子供では到底出すことができない速度だからか何度もねだってくるので順番に走り続けている。
そのせいで外に狩りに行けなくなったが夜に紛れ込んで来る鼠を食うだけでも腹は満たされるので意外と完璧な共生関係が築けている。
たまーに、他所からやって来た人間に驚かれて悲鳴が轟くがすぐに慣れてしまう。適応能力高くね?
お陰でいつも好調な体調は絶好調を迎えて今なら何でもできそうな万能感に満ち溢れている。その万能感も子供をあやすのに使われてるが。
保育場扱いに些か、ん?となるがやることは変わらない。
子供達の面倒を見て、鼠を食い殺し、死者を悼む。
例え、周りの環境が変わったとしても俺は死者を悼む。それだけは絶対に変わらない。
.....昔はこんな考え持ってなかったんだがな。
ある日、俺は渡来人くんの墓に再びやって来ていた。
来た理由は、なんとなくというあやふやな理由だが、まぁ、なんだ、理由がなくてもいいだろう。てか、どんな理由を作ればいいんだよ。寂しくなったとか?それこそ一番あり得ない。
死者を悼んだのなら悲しんだり寂しがったりするのは終わり。死者がいつまでも他人の心を覆っていてはいけないのだ。だからこそ悼んで彼らを終わらせる。
まぁ、忘れ去るのは良くないことだけど。
さて、久方ぶりにやってきた元集落だが、開拓されていた地面からは雑草が伸び伸びと生えており、人の痕跡は限りなく少ない。
渡来人くん達の墓に至っては死体が養分になったせいか他のところよりも雑草が背高く伸びている。
それを見ても俺は何もしない。雑草も抜かなければ、閉眼もせず、花も贈らない。
....あーあ、なんか最近ふざけた言動とかできてないなぁ。常に死者のことを考えてるとか俺、おかしいだろ。それもこれも全部お前のせいだぞ渡来人くん。
お前のおかげで俺いまめっちゃ満足してる。
ありがとう。
ゆっくりと森の中を歩いている中、何か嫌な感覚が体を突き走った。獣の第六感的な言葉で表現できない嫌な感じが。
そして次第に嫌な気持ちになる。悲しくて、苦しくて、怒りが沸いてくる。
俺は感情に任せるように全速力で森を駆け走る。狐の身だというのに嫌な汗が流れるような気がした。
そして、漸く辿り着いた集落は燃えていた。
体を突き動かす怒りを無理矢理抑え込み下手人が退却するのを待つ内に怒りは鎮まり冷静に集落に帰還した。
食料が貯蓄されていた建物以外は全て燃やされ炭となっており、中から人骨らしきものが沢山出てきた。
子供たちは長の建物に集められて殺され燃やされたらしく子供達の大量の骨が一つの建物から出てきた。子供達の中央には赤ちゃんの人骨もあった。
集落中を歩き回るが誰一人とて生きているものは居なかった。
あんなに渦巻いていた怒りが彼らを見ても一滴たりとも湧かない。
死者をがこんなに居るのに悼む気持ちになれない。
あんなにやってきた閉眼が出来ない。
俺の目の前を走り抜ける鼠を目で追うのをやめて、俺はその集落から森へと帰った。
こんな小説を読んでくれてることに感謝!