俺を助けたのは金髪ドリル!? 俺の命の恩人は誰だ!?   作:パスカルDX

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第四話「金髪ドリルが四人もいる国なんて聞いてない!」

第四話「金髪ドリルが四人もいる国なんて聞いてない!」

 

 

 旅を始めて数日。

 

 最初は見知らぬ者同士だった五人も、今ではすっかり打ち解けていた。

 

 ……いや、少なくとも俺はそう思っている。

 

「一刀ー!」

 

 朝っぱらから元気いっぱいの声が森に響く。

 

「こっちっすー!」

 

「またどこ行ったんだ!」

 

 荷物をまとめていた俺は慌てて立ち上がった。

 

 声のする方へ向かうと、元気娘が木の上からぶんぶん手を振っている。

 

「そんな所で何してるの!?」

 

「鳥の巣を見つけたっす!」

 

「降りてきなさい!」

 

「あと少しで届くっす!」

 

「届かなくていい!」

 

 その瞬間。

 

 バキッ。

 

「……あ。」

 

 嫌な音がした。

 

 枝が折れる。

 

「落ちるっすーーーっ!」

 

「うわぁぁぁ!」

 

 俺は反射的に走り出した。

 

「危ない!」

 

 どさっ!

 

 両腕で受け止める。

 

「ぐえっ!」

 

 衝撃でそのまま後ろへ倒れ込んだ。

 

「いってぇ……。」

 

「助かったっす!」

 

 元気娘は俺の上で満面の笑み。

 

「ありがとうっす!」

 

「いや、無事ならよかったけど……。」

 

「一刀、下敷きになってるっす。」

 

「見れば分かる!」

 

 その様子を見ていた穏やかな少女が駆け寄ってくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「た、多分。」

 

 身体中が痛い。

 

 それでも元気娘が怪我をしていないなら、それで十分だった。

 

「無茶ばかりするんじゃないわ。」

 

 小柄な少女が呆れたように腕を組む。

 

「反省したっす。」

 

「本当に?」

 

「半分くらいっす!」

 

「半分しかしてない!」

 

 俺は思わず突っ込んだ。

 

 すると元気娘は首を傾げる。

 

「じゃあ七割っす!」

 

「増えた!」

 

「えへへっ。」

 

 笑ってごまかしている。

 

 全然反省していない。

 

 そのやり取りを見て、お嬢様風の少女がため息をついた。

 

「怪我をしたら治療費がかかりますわ。」

 

「そこ!?」

 

「薬も安くありませんもの。」

 

「一貫してるなぁ……。」

 

 お金の話になると、本当にぶれない人だ。

 

 穏やかな少女は苦笑しながら俺の腕を見る。

 

「あっ。」

 

「どうした?」

 

「擦りむいています。」

 

 見ると腕から少し血が滲んでいた。

 

「本当だ。」

 

「動かないでください。」

 

 少女は慣れた手つきで薬草を取り出し、傷へ当てる。

 

「ちょっと沁みますよ。」

 

「いててっ。」

 

「我慢してください。」

 

 優しく包帯を巻いてくれる。

 

「はい、終わりました。」

 

「ありがとう。」

 

「いえ。」

 

 柔らかな笑顔。

 

 癒やされるとは、きっとこういうことを言うのだろう。

 

 それを見ていた元気娘が口を尖らせる。

 

「ずるいっす。」

 

「何が?」

 

「私も手当てしてもらいたいっす!」

 

「怪我してないでしょ。」

 

「じゃあ転ぶっす!」

 

「転ばなくていい!」

 

 俺が止めるより早く。

 

 ずべっ。

 

「いたっ!」

 

「本当に転んだ!」

 

「ほら怪我したっす!」

 

「自作自演じゃないか!」

 

 穏やかな少女は困ったように笑う。

 

「仕方ありませんね。」

 

「やったっす!」

 

 嬉しそうに手当てを受ける元気娘。

 

 ……擦り傷一つない。

 

「怪我、ありませんよ?」

 

「えっ?」

 

「ありません。」

 

「…………。」

 

 元気娘は自分の手を何度も見る。

 

「本当っす。」

 

「でしょう?」

 

「じゃあもう一回転ぶっす!」

 

「転ぶなぁーーっ!」

 

 森中に俺のツッコミが響き渡る。

 

 小柄な少女は額に手を当て、お嬢様風の少女は静かに肩を震わせて笑っていた。

 

 こうして今日も、一刀たちの賑やかな旅は続いていくのだった。

 

 元気娘が「もう一回転ぶっす!」と言い出してから十分後。

 

 結局、転ぶことは小柄な少女にきつく止められ、一行は再び街道を歩いていた。

 

 森を抜ける風が心地よい。

 

 鳥のさえずりが聞こえ、のどかな旅路が続く。

 

「平和だなぁ……。」

 

 一刀は思わず空を見上げた。

 

「そうですね。」

 

 穏やかな少女も空を見上げる。

 

「こういう日が続けばいいのですが。」

 

「何かあるんですか?」

 

 一刀が尋ねると、穏やかな少女は少しだけ困ったように笑った。

 

「いえ。」

 

 それ以上は何も言わなかった。

 

 その横では――。

 

「一刀!」

 

 元気娘が何かを抱えて走ってくる。

 

「見つけたっす!」

 

「今度は何?」

 

「きのこっす!」

 

 両手いっぱいに色とりどりのきのこ。

 

 赤、青、紫、黄色。

 

「……。」

 

 一刀は嫌な予感しかしなかった。

 

「それ……食べられるの?」

 

「たぶん!」

 

「その『たぶん』が一番怖い!」

 

 元気娘は胸を張る。

 

「大丈夫っす!」

 

「根拠は?」

 

「色がきれいっす!」

 

「逆に危ないよ!」

 

 穏やかな少女も青ざめていた。

 

「そ、それはやめた方が……。」

 

「美味しそうっす!」

 

 お嬢様風の少女がそっと口を開く。

 

「もし毒でしたら。」

 

「うん。」

 

「薬代がかかりますわ。」

 

「やっぱりそこなんだ!」

 

「無駄な出費ですもの。」

 

 ぶれない。

 

 本当にぶれない。

 

 すると小柄な少女が元気娘の手からきのこを取り上げた。

 

「全部捨てなさい。」

 

「えぇ~!」

 

「却下。」

 

「絶対おいしいっす!」

 

「その自信はどこから来るの。」

 

「勘っす!」

 

「信用できない!」

 

 一刀も全力で頷いた。

 

     ◇

 

 昼頃。

 

 一行は川辺で昼食を取ることにした。

 

 一刀は薪を集める。

 

 穏やかな少女は鍋を用意する。

 

 お嬢様風の少女は食材を確認している。

 

 元気娘は――

 

「魚取るっす!」

 

 服をまくり上げ、川へ飛び込もうとしていた。

 

「待った!」

 

 一刀が肩を掴む。

 

「また?」

 

「任せるっす!」

 

「任せられない!」

 

「魚なら得意っす!」

 

「網もないのに?」

 

「気合っす!」

 

「気合万能説!」

 

 元気娘は腕まくりをすると、真剣な顔になった。

 

「そこっ!」

 

 ばしゃん!

 

 川へ飛び込む。

 

 水しぶきが大きく上がった。

 

 数秒後。

 

「取れたっす!」

 

 嬉しそうに掲げたものは――

 

「魚じゃなくて長靴!」

 

「…………。」

 

 川上から流れてきた古い長靴だった。

 

「食べられないっす。」

 

「当たり前!」

 

「惜しかったっす!」

 

「惜しくもない!」

 

 皆が吹き出した。

 

 笑い声が川辺に響く。

 

     ◇

 

 昼食を終え、再び歩き始める。

 

 やがて街道の先に、大きな城壁が見えてきた。

 

「おぉ……。」

 

 一刀は思わず立ち止まる。

 

 今まで見た村とは比べ物にならない。

 

 巨大な城壁。

 

 行き交う商人。

 

 武装した兵士たち。

 

「大きな町ですね。」

 

「ええ。」

 

 小柄な少女が静かに頷く。

 

「もうすぐ着くわ。」

 

「ここが目的地?」

 

「そう。」

 

 元気娘は満面の笑みを浮かべる。

 

「帰ってきたっす!」

 

「帰ってきた?」

 

「……あ。」

 

 思わず口を押さえる元気娘。

 

「何か言った?」

 

「何でもないっす!」

 

 慌ててごまかしている。

 

 怪しい。

 

 ものすごく怪しい。

 

 お嬢様風の少女が咳払いをした。

 

「もうすぐ皆さんに紹介できますわ。」

 

「皆さん?」

 

「ふふ。」

 

 意味深に笑うだけ。

 

 一刀は首を傾げた。

 

「結局、この人たちって何者なんだろう……。」

 

 旅の途中では一度も素性を語らない四人。

 

 だが、この大きな城へ近づくにつれ、門番や町の人々が彼女たちを見る目がどこか違うことに、一刀はまだ気付いていなかった。

 

 彼の「金髪ドリルの恩人探し」は、新たな舞台へと足を踏み入れようとしていた。

 

 

 

 巨大な城壁を前にして、一刀は思わず口を開けていた。

 

「で、でかい……。」

 

 高くそびえ立つ石造りの城壁。

 

 大きな城門。

 

 その前では槍を持った兵士たちが行き交う人々を確認している。

 

 今まで立ち寄った村とは規模がまるで違う。

 

「ここって、本当に大きな町なんだな。」

 

「町というより都ですわ。」

 

 お嬢様風の少女がさらりと言う。

 

「都?」

 

「ええ。」

 

 それ以上は教えてくれない。

 

 相変わらず意味深だ。

 

 元気娘は待ちきれない様子でその場をぴょんぴょん跳ねていた。

 

「早く帰るっす!」

 

「だから、その『帰る』って……。」

 

「しまったっす。」

 

「もう遅いよ!」

 

 口を押さえる元気娘に、俺は思わず笑ってしまった。

 

 隠し事が苦手すぎる。

 

     ◇

 

 城門へ近づくと、武装した門番がこちらへ歩いてきた。

 

「止まれ。」

 

 低い声が響く。

 

 一刀は少し緊張して立ち止まった。

 

(やっぱり検問か。)

 

 しかし次の瞬間。

 

 門番の顔色が変わる。

 

「お、お帰りなさいませ!」

 

「え?」

 

 門番たちは一斉に片膝をつき、頭を下げた。

 

「お帰りなさい!」

 

「長旅、お疲れ様でした!」

 

「……え?」

 

 一刀だけがぽかんとしている。

 

 元気娘は慣れた様子で手を振った。

 

「ただいまっす!」

 

 穏やかな少女も微笑みながら会釈する。

 

「戻りました。」

 

 お嬢様風の少女は軽く頷き、小柄な少女は当然のように門をくぐっていく。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 一刀は慌てて追いかけた。

 

「何でみんな敬礼されてるの!?」

 

「何ででしょう。」

 

 穏やかな少女が微笑む。

 

「いや、知らないの!?」

 

「ふふ。」

 

 笑ってごまかされた。

 

     ◇

 

 城門を抜けると、一刀はさらに驚くことになる。

 

 広い大通り。

 

 立ち並ぶ店。

 

 活気あふれる市場。

 

 どこを見ても人、人、人。

 

「すごい……。」

 

 現代のテーマパークに来たような気分だった。

 

「見て回りたいっす!」

 

 元気娘は今にも走り出しそうだ。

 

「駄目よ。」

 

 小柄な少女がぴしゃりと言う。

 

「先に戻る。」

 

「えぇー。」

 

「後で。」

 

「分かったっす。」

 

 珍しく素直だった。

 

「偉いね。」

 

 一刀がそう言うと、元気娘は照れ臭そうに笑う。

 

「たまにはっす!」

 

「たまになんだ。」

 

     ◇

 

 大通りを歩いていると、町の人々が次々と四人へ声を掛けてくる。

 

「お帰りなさい!」

 

「ご無事で何よりです!」

 

「お疲れ様です!」

 

 皆、笑顔だ。

 

 一刀はますます混乱する。

 

「人気者なんだね。」

 

「まあねっす!」

 

 元気娘は得意げだ。

 

「えっへん!」

 

「褒めてないよ?」

 

「褒められたっす!」

 

「前向きだなぁ。」

 

 その様子に周囲の人々も笑っていた。

 

     ◇

 

 やがて、一行はひときわ大きな屋敷の前へ到着する。

 

「ここ?」

 

 一刀が見上げる。

 

 門だけでも普通の家が何軒も入りそうな大きさだった。

 

「今日からここがあなたの居場所よ。」

 

 小柄な少女が静かに言う。

 

「え?」

 

「しばらくここで暮らしなさい。」

 

「えぇっ!?」

 

 驚いていると、門がゆっくりと開いた。

 

 中から侍女たちが整列して現れる。

 

「お帰りなさいませ!」

 

 全員が一斉に頭を下げた。

 

 一刀は完全に固まる。

 

「えっと……。」

 

 誰か説明してくれないかな。

 

 すると元気娘が笑顔で俺の肩を叩いた。

 

「ようこそっす!」

 

「どこへ?」

 

「私たちのお家っす!」

 

「…………。」

 

 数秒、思考が止まる。

 

「え?」

 

「お家っす!」

 

「いや、こんな豪邸が!?」

 

「そうっす!」

 

「うそぉ!?」

 

 あまりの規模に声が裏返った。

 

 穏やかな少女がくすりと笑う。

 

「驚きましたか?」

 

「驚くよ!」

 

「普通はそうですわ。」

 

 お嬢様風の少女まで楽しそうだ。

 

 小柄な少女だけが落ち着いた様子で門をくぐる。

 

「立ち話も何だから入りなさい。」

 

「は、はい!」

 

 一刀は慌てて後を追う。

 

 まだ知らない。

 

 ここが乱世に名を轟かせる大国「魏」の中枢であることを。

 

 そして、この四人が魏の中でも特別な立場にいる少女たちだということを。

 

 さらに、自分がこれから彼女たちの運命を大きく変えていく存在になることも――。

 

 その全てを知らぬまま、一刀は豪邸の門をくぐった。

 

 彼の「金髪ドリルの恩人探し」は、ここから本当の意味で始まるのだった。

 

 

 

 

 

 




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