「ぷはははは! で、付き合ってたった5日で振られたのかよwww」
花巻は俺が奢ったスパゲッティを咀嚼するのも忘れてゲラゲラ笑い転げている。
「しかもまっつん何その頭wwドストレートなのにワックスでテカテカwwわざとでしょそれ、完全に風呂入ってないサラリーマンの再現度100%www」
及川がファミレスのテーブルをバシバシ叩きながら涙目でのけ反っている。
俺は人生初彼女と過ごす予定だったファミレスの4人席で、今、猛烈にいつもの3人からバカにされていた。
花巻の野郎、俺が呼び出したら速攻で及川と岩泉も呼びやがったのだ。
俺は無言で貫禄の意味を調べ始めた。
貫禄…何事にも動じず、どっしりと構えている様子。
人によっては「太っている」「偉そうだ」という意味の皮肉やからかいとして受け取られる場合がある。
体型を気にしている方などには使わない方が無難。
…ああ理瑚、お前が欲しかったのは彼氏じゃなくてパパだったのかよ。
俺がパパに抜擢された理由は、これか。
この「顔』、なんだな。
「松川。振ってくれる相手がいるだけ幸せじゃないか。」
腕組みをして、妙に説得力のある深い声で岩泉が言った。
「岩泉……お前が言うとガチすぎて痛いからブーメランやめてくれ…」
あぁ、マジで消えてぇ。
つい数時間前、「俺は今から彼女と初デートだ!」と、後輩たちにまでドヤ顔で自慢したってのに。
明日どういう顔して体育館に行けばいいんだ。
金田一あたりが気まずそうに俺から目をそらす瞬間が今から予見できる。
「ま、そんな女、別れてよかったって思えばいーじゃん?これで部活引退までは、バレーが恋人で生きていこうぜ!お前には俺たちがいるからよ!」
急に花巻が謎の友情ブームをかましてきたせいで、俺の涙腺は羞恥心なのか感動なのか、自分でも分からない理由で決壊しそうになった。
「よし!友情のお祝いとして、今日はまっつんの奢りだ!」
「調子に乗るな及川ぁ!と言いたいところだが、松川、今日だけは俺からも頼む(肉食べたい)。」
あーあ、及川と岩泉まで俺に奢られる気満々じゃねーか。
ワックス代と、理瑚が残した手付かずの飯代と、こいつらの追加注文だけで今月の俺の財布はスッカラカンだ。
誰か俺の前に現れてくんねぇかな。
俺の顔(老け顔)じゃなくて、俺の皮を剥いで、中身の「普通の男子高校生」としての俺を見てくれる女の子。
俺はすっかり冷めてしまったチーズハンバーグの横で、付け合わせのじゃがいもの皮を、意味もなくめくり続けていた。
俺の淡すぎる青春の皮は、中身の芋が露出するよりも早く、あっけなく剥ぎ取られて終わった。