副産物の定義   作:ゆずみかん#HQ

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副産物の定義③

「お、おい北!どっから突っ込めばええねん!まず彼女!?いつのまに恋人できとんねん!てか、顔とか声とか体つき褒められることの何が悩みやねん!全男子高校生が泣いて喜ぶことを『悩み』とか言うなや!全男子高校生を敵に回すで!あと、誕生日は彼女と過ごさんかい!」

 

治が「アラン君、最後のは今聞かんくてええ。」とツッコミへのツッコミ役を務めた。

衝撃の事実にも屈せず突っ込み続けられる精神力をもつアラン君には、心底脱帽だ。

最後の蛇足さえなければ。

 

「彼女は1週間前にできた。3組の星岡翠音に告白されたんや。勉強は嫌いやみたいやけど、明るくて真っ直ぐで、大好きな軽音にちゃんと向き合っとる、ええ子やな思って受け入れたんやけどな…。」

 

あのマシンガン突っ込みにひとつひとつ丁寧に返す北さんもさすがだ。

 

星岡翠音...確か、3年生の軽音部で、「人気アイドルグループ・キツネっ子のカリンちゃんに似てる!」って噂の先輩だった。

その人が、北さんに告白。

それの一体どこが悩みなのか。

 

「俺を作るのは毎日の行動であって、結果はただの副産物に過ぎんと思っとる。けどな... 顔って...ただの副産物やない?俺が生まれたという結果の一部でしかないやん。」

 

沈黙が落ちた。

治がポテトを落とし、侑と銀の顔がひきつる。

 

「翠音は毎日のように『信介の顔が大好き!毎日幸せ!』とか、『信介の声は安心感の塊!ずっと聞いていたい!』とか、『身長は私のドストライクやし!筋肉の付き方も最高や!』って言うてくれんねんけど……それってなんか、副産物が俺の地道に作り上げてきたもんよりもずっと価値あるものに見られとるってことやろ?俺は俺自身をちゃんと見て欲しいねん。俺の中身は俺の顔に負けてまうんか、その程度の価値しかないんかって思うとなんか悲しくてな……それで気がつけばカメラで自分の顔の価値について自問自答してしもて、他のことに手をつけられてなかったわ。すまんな。」

 

あまりにも次元の違う悩みに、ついにアラン君も完全にフリーズしツッコミを入れられなくなっている。

 

「悩みすぎて、家族にも相談したんや。でもそしたら、ばあちゃんは『信ちゃんについに結婚相手が見つかった』って花見でもするように喜ぶだけやし、姉ちゃんには『贅沢な悩みや』って呆れられて取り合ってもらえんし、弟は俺の顔をじっと見て『兄ちゃんが良いパーツ全部持っていったせいで、俺には彼女なんかできんねん』って何故か逆恨みしてくるし……もうどうしたらええか分からんねん。」

 

北さんは嘘偽りなく「真剣な悩み」を淡々と語った。

だが、聞いている俺たちは、もう悟った。

彼は「顔や声、体つきなどの元々持っているもので好かれること」に困り果てるという、普通の男子高校生なら喉から手が出るほど欲しい贅沢な悩みを抱えていること。

そして、「自分がイケメンである」ことを息を吐くように自慢し、全人類からのヘイトを稼ごうとしていることに、一切気づいていないことに。

彼自身が自分や他人の容姿の良し悪しに一切関心がないのが、余計にタチが悪い。

 

「それはちゃうで!」

 

ふと背後で響いた高い声に、全員が振り向く。

そこにいたのは...まさかのキツネっ子のカリンちゃん!…ではなく、星岡翠音さん本人だった。

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