僕が死ぬしかないじゃない!〜世界滅亡エンドを阻止するために全力自己犠牲ムーブしてたらヒロインたちが過保護で激重なヤンデレになってた〜   作:朧 泡沫

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第3話 逃れられない

  幻獣人。

 ドラゴン、フェンリル、グリフォンやクラーケン。

 伝説と謳われた生物の血筋を持つ者たちの総称だ。

 

 彼らは各々が種の特性を受け継いでおり、それは外見のみに留まらず『炎の息を吐く』『雷を操る』『大地に花々を咲かせる』などの特殊能力──種族特性と呼ばれる力を有している。

 

 また一部の例外を除いて身体は頑強であり、鉄塊が衝突した程度ではビクともせず、食材を切る刃物では傷一つ付けられない。

 天性の力と頑丈さ。

 故に、彼らが荒事を起こせば被害はしばしば大きくなり、街のものが壊れるのはもはや日常茶飯事。

 そんな事情もあり、大工や土木業者、機械屋などは職に困ることはないと言われている。

 

 そして、そんな幻獣人の中でも特別と呼ばれる──13種。

 多くの者から『王』と呼ばれる者たちが、世界の何処かに存在している。

 

     ◇ ◇

 

「あの~……二人とも~?」

 

 僕たちが暮らす小さな屋敷を後にし、今日の仕事場に向かっている最中。僕は外に出た瞬間から僕の両腕を強く抱きしめ、戦場に身を置いているかのような目つきで周囲を警戒しているメルルとムムナに声をかけた。

 

「街を歩いているだけなんだから、そんなに周囲を警戒しなくても大丈夫だよ?」

 

「フォリア先生は警戒心や危機管理がまるで足りていません!」

 

 街中は比較的安全なのだから、そこまで肩に力を入れなくても。

 と思った僕の声掛けに、メルルが即座に反論した。

 

「街中が比較的安全なのは、あくまでも一般的な幻獣人の基準です。通常よりも遥かに低い肉体強度を持つフォリア先生には当て嵌まりません。クソ雑魚マジ雑魚ガチ雑っ魚なんですから、フォリア先生にとっては外の全て危険です」

 

「肉体強度が低いのはわかったから、雑魚を連発するのは止めて貰えないかな。男として、心に来るものがあるんだ」

 

「え、そんな、フォリア先生にそんな趣味が……う、うぅ、どちらかというと攻められるほうが趣味なんですが、わかりました。私、頑張りますね」

 

「変な勘違いしないでよね」

 

 心に来るってそういう意味じゃねぇからな?

 

「メルルの言う通りだよ~。フォリアの身体は本当によわよわな上に、ものすごい利用価値があるんだから。悪い人たちはみ~んな、フォリアの身体に興味津々なんだよ?」

 

「ムムナまで……大袈裟過ぎる」

 

「「過ぎじゃない」」

 

「……はい。僕は1000年に1度のクソ雑魚です」

 

 ここまで言われたら認めるしかなかった。

 確かに僕は一般的な幻獣人と比較して、肉体の強度が異常と言えるほどに低い。

 それこそ、そんな脆い身体では数ヵ月以内に事故で死ぬ、と何度も言われて来たほどに。

 

 また腕力も弱く、女性どころか子供にすら力負けしてしまう。

 ひ弱、非力、脆弱。その気になれば3歳児ですら僕を制圧することが可能だろう。

 

 でも、だからといって……そこまで言うことないじゃないか……っ。

 弱いとわかっているなら、せめてもう少し労わってほしい。雑魚なりに頑張ってるんだから、僕。

 

 なんて、心の内でシクシクと悲しむ僕のことなど全く気にも留めず。

 二人は僕の護衛を継続しつつ、見事な連携を決めていた。

 

「メルル、右斜め後方のフードを被った男。建物の裏からジッとフォリアのことを見てるよ」

 

「問題ありません。既に把握済みですし、いつでも石化できます。それよりもムムナ。左の露天商が此方をチラチラ見ながらどこかに電話をしています」

 

「みたいだね~……まあ、でも大丈夫。あの人にはフォリアを襲う気はないみたいだから。情報くらいは送らせてあげよう。来たらぶちのめすけど」

 

「ついでに石にしましょう。不届き者にはおしおきです」

 

「いいね~。いつか石化した悪人共を飾った展覧会でも開こうか」

 

 淡々と恐ろしい言葉を連ねる二人に、僕は恐怖すら抱いた。

 怖い、怖いよ。何ていうか、怖い。もうちょっと言葉を選ぶと、やっぱり怖い。

 年頃の乙女が使う言葉じゃないよ、さっきから。

 

 ま、まぁ、守ってくれること自体はありがたいんだけど……もう少し肩の力を抜いても良いと思う。いや本当に。今の彼女たちは周りの全てを敵として認識し過ぎだから。言っても聞かないと思うので、何も言わないけど。

 

 僕は半ば諦めの境地に至りながら、早く到着してくれ、と心の底から願った──その時。

 

『──不死鳥を発見』

「え?」

 

 不吉で不穏な機械音。

 驚いた僕が咄嗟に足を止め、音が聞こえたほうへと顔を向けた──瞬間。

 

「させな~い」

 

 亜麻色の巨大な翼が僕の全身を包み込んだ。

 ムムナの仕業だ。彼女が左腕を自らの種族のそれに変化させたのだ。

 

 カラン。 

 一拍遅れて響いた金属音。下を見ると、鋭利なナイフが転がっていた。

 なるほどどうやら、飛来したそれから僕を守ってくれたらしい。

 

「……ありがとう、ムムナ。あとで抱きしめてあげるよ」

 

「やったぁ♪」

 

「わ、私だって簡単にナイフくらい弾けたんですからね!」

 

「早い者勝ちだよ~。あ、じゃあフォリアの護衛任せた」

 

 もう片方の腕も翼に変化させ、突風が起こるほどの力強さでそれを羽ばたかせたムムナは宙に浮かび上がった。

 

「私は逃げた犯人にお灸を据えてくるから」

 

「ちょっ、危ないよ!? 何もそこまで──」

 

「心配し過ぎだよ、フォリア。忘れたの? 私たちは幻獣人の頂点──『帝王種』なんだからね!」

 

 その言葉を最後に、ムムナは高く飛び上がり、何処かへ飛んで行ってしまった。

 幾ら帝王種と言っても、相手は物騒な武器を装備しているのだ。怪我でもしたら大変なのだけど……。

 

 心配する僕を抱き締め、メルルが言った。

 

「大丈夫です。ムムナは強いですから。大船に乗ったつもりで、待っていてください」

 

「……うん。そうだね」

 

 少なくとも僕よりも強いし、大抵の者よりは強い。

 種族としての強さが桁違いなのだ。余計な心配はせずに、待っていよう。

 頭の片隅に燻る不安を振り払い、僕はムムナが飛び去っていた方角を見つめ続ける。

 きっと大丈夫だ。

 何せ、彼女の種族は──。

 

     ◇ ◇

 

「ねぇ、おじさんたち。フレスヴェルグって知ってる?」

 

 フォリアの元を飛び去ってから、僅か十数秒。

 ナイフを投擲した犯人だけではなく、その仲間と思しき十数人を捕らえたムムナは家屋の屋上に彼らを集め、見下ろしながら言った。

 

「伝説の大樹の頂上に住む怪鳥でね? 死者の魂を食べるの」

 

 ペロリ。

 唇に舌を這わせ、言葉すら失っている男たちに告げる。

 

「私はそんな恐ろしい力を持つ種族でね? 当然、その種族特性を受け継いでるの。『魂喰らい』って言うんだけど、何と魂を食べられた人は……輪廻を巡ることもできず、永遠に暗闇の中を彷徨うことになるんだって」

 

「た、助け──」

 

「私が言いたいのはそれだけ。大好きな人が待ってるから、もうやるね? 何か人数が少ないような気もするけれど……いいや。それじゃあ──いただきます」

 

 全身を淡い白光で包んだムムナは次の瞬間、巨大な恐ろしい怪鳥の姿となり──罪深き襲撃者たちの魂を、問答無用で食い散らかした。

 

     ◇ ◇

 

「は~い、お待たせ♪」

 

 数分後。

 やけにスッキリとした表情で戻ってきたムムナは着地した勢いのまま、僕に両腕を回して抱き着いた。

 

「しっかりお灸を据えてきたよ~。もう二度と悪さができないように」

 

「本当に大丈夫? 怪我は?」

 

「もう、本当に心配症だなぁ」

 

 クスクスと笑い、ムムナは笑った。

 

「ご覧の通り。傷一つございません。あ、信じられないなら脱ごうか?」

 

「いや、いいよ。そこまでしなくても」

 

「それもそっか。今夜も一緒にお風呂に入るんだし、その時に確認すればいいもんね」

 

「入らないからね……あのさ、メルル、ムムナ」

 

 僕は改まって、二人に言った。

 

「僕を心配してくれる気持ちも、大事に思ってくれることも、凄く嬉しいよ。でも、だからといって、あんまり危険な真似はしないでほしい」

 

「いや、別に危険ってほどじゃ……」

 

「そうですよ。私たちは大抵の人たちよりも強いですし」

 

「でもだよ。二人は戦いに慣れているわけじゃない。万が一のことだってあり得るかもしれないんだ。だから、無理しないで」

 

「「……」」

 

「それに、大丈夫」

 

 これを教えれば、二人も安心してくれるだろう。

 そう考え、僕は微笑んで告げた。

 

「僕のことを護ってくれる人は……他にもいるからさ」

 

 立ち止まり、僕は肩越しに背後に振り返った。

 完璧に景色に溶け込んでいる。目立つ人物はいない。

 でも、確かにいる。僕の視界には映っている。陰から僕のことを護っている……あの子が。

 

 いつもありがとう。

 微笑み、僕は心の中で感謝を伝えた──と。

 

「浮気……」

 

「ですか……?」

 

「え、浮気って何──痛たたたたたたッ!」

 

 ミシミシ。

 二人は強めていた僕の腕を抱き締める力を更に強め、低い声で僕に言った。

 

「えぇ、えぇ。わかっています。わかっていますよ? フォリア先生はと~っても優しくて、格好良くて,神秘的で、理想的で、幻想的な男性であることは。他ならぬ私も、貴方の魅力に惹かれた一人ですからね」

 

「でもでもでも? 私たち以外にも同じように脳を焼いちゃった子がいるのは初耳なんですけど? なんで隠してたの? やましいことした? 手を出しちゃったとか、手を出しちゃったとか、手を出しちゃったとか」

 

「三択じゃなくて一択じゃないか……ないないない! そんなことはないよ! やましいことはないし、手を出した事実もない!」

 

「じゃあ、どうして隠していたんですか?」 

 

「隠していたつもりはないんだよ。ただ、話をする機会がなかっただけで」

 

「「……」」

 

 ジー……。

 二人は疑わしい視線で僕を見つめ──否、二人ではない。

 三人だ。ここから遠く離れた場所から、凄まじく鋭い視線が向けられているのを感じる。宿るものは……嫉妬。

 

 あー……これは今夜、二人が寝た後、サービスしてあげないといけないな。

 陰から僕を護ると言ってはくれたけど、実際、あの子は大の甘えん坊だし。日頃の御礼も兼ねて、沢山サービスしてあげないと。

 

 僕は脳内の予定表に『夜:ハイパーよしよし甘やかし』の文言を追加。

 同時に、いつまでも疑いの視線と質問を向けてくるメルルとムムナに必死の弁明と真摯な説明をしながら、目的地までの道を歩き進んだ。




フォリア君をグチャグチャにするプロットができましたわ~♪
申し訳ないですの! 読み返したら内容が薄かったので、追加させていただきましたわ
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