ROMANCE MEMORIES   作:誤字る小説家鈴木

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こんにちは!初めましての人は初めまして!鈴木です!
初めましての人しかいないから初めまして!鈴木ですっ!!!
鈴木なんですッ!!…あれ、私は鈴木なんです?


第一章:新米冒険者の珍道中
幸運の紫陽亭


「だーかーらー!冒険に行くったら行くの!」

「そう。なら、お隣に回覧板持ってってくれる?ついでに、お酒も買い足して来てね」

「そんなの冒険じゃないやい!あたいは冒険者になるんだよ!?」

 

 木製のカウンターを挟んで言い合う少女が2人。そんな彼女たちの様子を酒の肴にして笑う荒くれ者たち。

 東の大陸と南の大陸の境界線に跨るように位置するローレル王国。その一角にある交易都市スカイラインは、文化の交差点と言われる程に、多種多様な種族が訪れる活気ある街だ。よく整備されたなだらかな道路からは馬車が、澄んだ海が綺麗な港からは船が、様々な物品と人々を連れて来る。今では広大な空き地となっている場所からは、かつては飛行船が飛び立っていた。

 スカイラインにもたらされる品々の中でも、最も価値があり人気も高いのが情報だ。ピンからキリまで何でも集まるその中には、隠された財宝や王族のスキャンダルまで、嘘か本当か分からない噂が何でも流れてくる。そんな噂話にロマンと一攫千金の夢を見た冒険者たちが、今日もこの街を訪れる。

 彼らが生活するための活動基盤である街の宿屋の一つ『幸運の紫陽亭』では、今日も名物である姉妹喧嘩が繰り広げられている。

 

「マスター!ミートパイのおかわりくれ!」

「はーい!リラ、おつかいは任せたわよ」

 

 この宿は昼から賑わっている。宿のマスターを勤める青髪の女性は愛想良く注文に答えて、さっきまで言い合っていた少女へ指示を飛ばす。

 

「いーやー!冒険するのーっ!!」

 

 指示を受けたリラと呼ばれた少女はマスターと比べ、その言動や一回り小さな身長から幼く見える。普通に立っていてはカウンターで遮られて目を合わせられないので、薄紅色の髪を振り乱してピョンピョン跳ねて抗議する。髪から覗く、ほっそりしながらも丸みを帯びた特徴的な耳から、彼女が人間とエルフのハーフである事が分かる。尤も、残念極まりない言動が、理智の象徴たるエルフの要素を台無しにしているのだが。

 

「冒険者リラへ、納品依頼(クエスト)を発注します。前金が余ったら好きに使っていいからね」

「ホント!?お菓子買ってもいい!?」

「ええ。お釣りは好きに使いなさい」

 

冒険者という言葉に惹かれた少女は、マスターから10Gを受け取ると、それを握り締めて駆け出した。

 

「嬢ちゃん、お使い(クエスト)頑張って来いよー!」

「嬢ちゃんじゃない!ライラック・シリンガーだ!呼びにくかったらリラでもいいよ!」

「リラっ!前見ないと転ぶでしょうが!それと、ちゃんとお財布使い使いなさい!」

「はいはい。行ってきまーす!」

 

酔っ払いの激励に見送られ、マスターから愛称を使いつつ嗜められたライラックは、元気よく走っていく。

 

「いつもリラちゃんは元気だねえ」

 

 そんな一部始終を微笑ましく眺めていた魔術師風のローブを着た女性が、頬杖をついたままマスターへ声をかける。カラカラとグラスに入った氷を鳴らすのは、追加の酒を注いでくれという合図だろう。気安い雰囲気から、ここの常連である事が伺える。

 

「血は繋がってませんけどね、目に入れても痛くない可愛い妹分ですよ」

 

 女性の合図に応えて、笑顔で酒を注ぐマスター。

 

「ほんっとうに可愛くって、目よりも今日は私の寝室に連れ込んで、ぐひょひょ……」

 

 その笑顔は濁りきっていた。聞かないほうがよかったかと後悔する女性だが、もう遅い。その後、追加注文の声がかかるまで、トリップしたマスターにより妹の可愛いところを聞かされ続けるのだった。彼女はおつまみのミニトマトを食べて、その甘酸っぱさだけを意識して現実逃避していたと言う。

『幸運の紫陽亭』には、ある不文律がある。マスターの前で、ライラックのいない時にその話をするな。ルールを知らず、あるいは酔いで忘れてしまい途切れる事のない変態じみたトークを聞かされ、精神を病んだ客は数知れない。

 

「ただいまーっ!!重かったよー」

 

 常の賑わいで溢れる宿の木扉を、いくつかの食材や酒瓶を抱えたライラックが勢いよく押し開けた。

 

「あら、随分沢山買って来たのね。そんなに沢山のお金は渡してないと思うけれど」

「みんなオマケしてくれたんだ!えっとね、それでね……」

 

 聖母のような微笑みを浮かべ、酒瓶を受け取ったマスターは、さらにライラックが背負う籠のベルトを外す。屈強な冒険者でも、こんなに軽々と片手で山盛りの食材と酒瓶の山は抱えられないだろう。愛のパワー恐るべし。だいぶ歪んだ愛だが。

 一見すれば微笑ましい光景だが、それに気付いた客たちはドン引きしている。当然ながらライラックがその事実に気付く事はなく、楽しそうに自分のポーチを漁っている。そして可愛らしい包装がされた小箱を取り出した。

 

「んジャカパーン!マカロン買って来たんだ。後で一緒に食べようね!」

「ええ、食べましょう。食べるわ。夜になったら私の寝室にいらっしゃい」

「えへへー、約束だからね?」

 

 お前それ、別の意味の食べるじゃねーだろーな?なんてツッコミができる者は、いくら勇敢な冒険者たちと言えどいはしない。誰だって自分の命は惜しいのだ。むしろそう言った危機管理能力こそ、冒険者の必須スキルと言える。

 

「なーなー。依頼(クエスト)もこなしたし、これであたいも一流の冒険者だろ?今度は、街の外に出てもいーい?」

「ダメよ、外は危険がいっぱいだもの。1人のうちは、街の中でできる事にしておきなさい」

「むー。じゃあパーティを組んだらいいんだな!?」

「ええ、勿論。だけど、貴女とパーティを組みたい人が い る の か し ら ?」

 

 マスターが呟いた瞬間、彼女とライラック以外の客全員が体感温度が下がったかのような錯覚を覚える。止まらない冷や汗と震え。まるで大きなナニカに頭を抑え付けられているかのような恐怖とプレッシャー。

 この日、宿で昼食を取っていたとある冒険者の男はこう語る。「あ……、ありのままあの日起こった事を話すぜ!ちょっとした採取クエストに連れて行ってやろうって立ち上がった瞬間だ。俺は椅子から立ったと思ったら、いつの間にか座っていた……。な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。重力魔法だとか殺気だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 

「みんなー、あたいを冒険に連れてってくれよー」

 

 駄々っ子のように声をあげるライラックだが、誰もそれに答える事はできない。首を縦に振るなら胴体と泣き別れすると思え。言葉などなくても、マスターのおどろおどろしいオーラがありありとそう伝えて来るからだ。

 

「そこの美人なおねーさん!一緒に大冒険をしよう!」

 

 たった一人だけ状況をまるで理解していないライラックが、我関せずとカウンターに突っ伏して縮こまるローブの女性に抱きついた。

 

「ひゅい!?私かい!?」

 

 密着して声をかけられていると言うのに、確認なんていらないだろう。だが女性は、そんな間抜けな返答をするしかできなかった。

 

「リラ、お客さんに迷惑かけちゃいけないでしょ?ごめんなさいね、わたしの(・・・・)リラが面倒をかけてしまって。ねえ、泥棒猫(おきゃく)様?」

 

 女性は歴戦の魔法使い(ソーサラー)だ。動く死体(レヴナント)の大群を自慢の魔法で焼き払った事もある。接近戦が苦手ながらも蛮族の武人(ダークトロール)を相手に1対1で生き延びた事だってある。その名声は、この街を飛び越えて城下町にまで届く程だ。だが、それでも。

 

(お母さん、仕送りできなくなってごめんね……)

 

 女性は自らの死を悟った。マスターのハイライトを消した2つの眼が、どんな魔物よりも何よりも恐ろしい。体は呼吸を止め鼓動は弱まり、思考は活動を停止する。彼女は目の前の事態への対処を諦め、過去へ過去へと歩んで来た人生に思いを馳せた。

 

「あっ……!あのね、リラちゃん……!」

 

 それは走馬灯と呼ばれると呼ばれる現象である。死期を悟った人が人生を総ざらいするようなフラッシュバックを起こすこの現象が起きる理由は諸説ある。その中でも有力な1つは、目の前の困難に対応する方法を脳が必死で検索しているという説だ。女性自身は生きる事を諦めたが、彼女の頭脳は足掻き続けたのである!

 

「私、『冒険してはいけない病』なの!!!」

「ええっ!?冒険者なのにかーっ!?」

「これはファッションよ!実は農家だったの!!!」

「ええぇぇええっ!!なんだってーーー!?」

 

 あまりの事実(?)に大声で驚くライラック。ツッコミどころしかないカミングアウトを聞き、吹き出した客たち。それを合図に重圧を引っ込めたマスター。女性の必死の足掻きは、なんとその命を繋ぎ止める事ができたのだ!

 ここは冒険者の宿『幸運の紫陽亭』。5枚の薄紫の花弁を持つ花が描かれた看板が目印だ。仲良し姉妹の心温まるやりとり、美味しい料理、客たちの楽しげな喧騒が名物。今日も様々な情報と依頼、そしてそれを求める冒険者たちがやって来る素敵な宿屋だ。

 

(お母さん、実家に帰って畑仕事を手伝うね……)

 

 約1名のSAN値は消し飛んだのだが。




鈴木です。

みなさま、こんな駄文を見てくださって誠にありがとうございます。ダラダラと山なしオチなしの腐れ小説を書き殴っていく次第でございますので、お暇な時にまたお目汚しに来て頂ければと願う次第です。
今後は後書きに設定等を書ければいいなと思うのですが、まだまだ始まり立てと言う事で、設定もクソもございません。暫くは寂しい後書き欄となりますが、ご容赦くださいませ。

以上、田中でした。
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