なんか、ライラックさんのハーレム物じみて来ました。そんな風にするつもりは、全くなかったのですが…。もっとお話が進めば、色々なキャラ同士の絡みを書けると思います。とりあえず1章は、こんな感じで許してください。
「この娘は!勝手に村を飛び出して、連絡一つ寄越さずにっ!!」
「だから、悪かったって……」
小一時間程互いの舌を舐め合っていた物だから、外套を纏う女性の唇は赤くエロティックに腫れている。そんな彼女を地べたに正座させ、懇々と説教をする夫妻がいる。
「オマケに帰って来たと思ったら、他所様の嬢ちゃんに怪我させるとはどういう事だべ!!」
「えへへ……」
「聞いてるだか!?」
「ひいぃ!!ごめんなさいっ!」
それぞれ鍬と鎌を握り、火がついたような勢いで怒り散らす二人は、まるで金剛力士像のようだ。
真面目に謝罪しようとする女性だが、指を絡めて繋いだ手をにぎにぎするライラックのせいで、どうしても気が緩む。思わず零れた照れ笑いを、夫妻は目敏く見付けて説教が終わらない。まさに無限ループ。
「そうだ、治療しないと!悪いけど、お説教は後だよ!!」
「おいこら!話はまだ終わってねえべ!!」
勢いよく立ち上がった女性は、愛しい少女を抱き締めて、この場を離れる。
「まあ待て。私も回復魔法には覚えがあってな?何よりその半妖魔とは、先約があるんだ。横から攫われるのは、気に食わんな」
「おっと、こりゃあ領主様。ウン百年と日照ったアンタにゃ縁のない話かも知れないが、恋ってのは突拍子もないモンだろう?泥棒猫はアンタの方さね」
「そんな年寄りじゃないわ!ただの魔法に憧れていた小娘が、立派な火事場泥棒に成長したじゃあないか!?」
女性の行く手を阻むのは、サンブリテニアだ。威圧感を振り撒きながら睨まれるも、女性は一歩も引かない。彼女たちの姿に、周囲は強大な龍と虎を幻視した。
「【ヒール・ウーンズ】。どこか痛いところはある?」
「ううん!ありがとっ、ネモ!」
「仲間なんだから、こんなの当たり前よ」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!?」」
「あんたら放っといたら、いつまで経っても話が進まないでしょ」
そして龍と虎の戦いは、鬼人の手により始まる前に終わらせられた。投擲に使ったダガーも回収し、服以外はすっかり元通りになったライラックが女性の元に歩み寄った。
「ねえねえ、何でオリーブはこんなとこにいたの?」
「ん?ああ、ちょっとした里帰りさ」
外套の女、名をオリーブ・エウロパエアと言うのだが、彼女は『幸運の紫陽亭』の常連である。少女の問いには、ぼかして答えた。本当のところを言うと、冒険者を引退して村に戻って来たが、何も言わず飛び出した手前、中々素直に帰る事もできず、不審者スタイルで村の様子を伺っていたのだが、彼女の名誉の為にも伏せておく。
「そうなんだ!じゃあ、一緒に(カチコミに)来てくれる?」
「うぇっ!?ああ!(生涯を)共にしようじゃないか!!」
「わーい!やったーっ!」
掛け違えにも程があるやりとりをする、ライラックとオリーブ。熱烈なキスをした上に恋人繋ぎで指を絡めて来る少女が悪いのか。あるいは年端もいかない少女に、ガチ恋してしまう女性の方が悪いのか。
ともかく、すっかり登った朝日に照らされ、蛮族が根城にしている遺跡までもう少しとなった一団は最後の休息を取っていた。
「何で男って、こんなにも肩身が狭いんだろうね?」
「あれは彗星かな…?いや…違うな。彗星はもっとこう、バァーって動くもんな」
「フラン君、もう朝方だから星は見えないよ……?」
そんな中で、隅っこに体育座りしているのはフグリとフランクリーだ。青年は死んだ魚のような目を、未だ精神崩壊している少年に向けている。
そんな彼らを放って、ある者は精神を統一し、ある物は自身の得物をチェックする。山登りで消耗した体力をたっぷり癒し、彼らは遺跡へと辿り着く。
「せんぱ〜い。山菜とお肉だけなんて、私飽きちゃいました。魚釣りに行きましょうよ!さかなっ!」
「ダメに決まってるだろ?俺たち、見張りの任務中だぜ?」
彼らはボガートと呼ばれる、蛮族の一種だ。見た目はゴブリンと似通っているが、その身体は鍛えられ、何より知性がある。女のボガートを見れば銃をホットパンツのポケットに差し込んでいて、男の方はよく手入れされた
「だって見張りって言っても、こうして一日中日向ぼっこしてるだけじゃないですか」
「そりゃ俺だって、人族と戦ってみてえけどよ。今回は隠密なんだし、敵と会わなけりゃそのほうが——」
男の言葉は続かなかった。高速で飛来した巨大な何かが遺跡へ衝突し、豪快な破壊音を立てたからだ。
「ご機嫌よう、お客様方。遺跡には扉がないものだから、つい乱暴なノックになってしまったわ。荷物をまとめる用意はよろしくて?」
腕を振り抜いた体制から優雅にスカートを摘み、サンブリテニアが尋ねた。それなりの防御魔法に守られている筈の遺跡は、大きな突撃槍が突き刺さり外壁が大破している。
「うっひょう!強そうな侵入者っ!コイツを倒せば、俺の名声もドラゴン登り!?さっそく挑ませてもらうぜーッ!!」
「フンっ」
威勢よく小剣を抜いて、駆け出す男のボガート。そんな彼を、領主は軽く腕を振り吹き飛ばした。彼は空の彼方に吹っ飛んで行き、その姿すら見えなくなる。
「【RUNE BULLET】。……って、間に合わなかったか。侵入者が来たって報告も、この様子なら必要ないよね」
女ボガートは銃弾を指先に挟んで弄びながら、肩を竦めて侵入者たちを見やる。
「先輩って危なっかしいからさ、あの人と一緒のトコに飛ばしてよ」
「分かった。善処しよう」
「あ〜れ〜」と彼女の情けない悲鳴が遠くなっていくのと反比例して、けたたましいサイレンが遺跡から鳴り響く。
『侵入者だ!野郎共、出会え出会ええっ!!』
魔導具により拡張された焦りを含んだ甲高い声が響くと、慌ただしい足音が遺跡の入り口に向かう。
現れたのはボガート、
「遺産!ビンゴか!!」
思惑通りな事に領主が舌打ちする。まるでそれが合図かのように、砲門が激しく発光する。
「遺産?頭の悪い人族と一緒にされては困るな!これらは、儂が丹精込めて作り上げた魔導兵器じゃ!撃てえっ!!!」
兵器の操縦席からは、ちょこんととんがり帽子が覗いている。それを持ち上げ身を乗り出したのは、グルグル眼鏡をかけた紫髪の白衣の女性。見たところ、種族は
「アォンッ!!」
領主の隣に、巨大な老狼が降り立つ。魔力を含んだ遠吠えは魔砲と衝突し、その勢いを衰退させる。
「ぐぅ……ッ!?」
勢いを殺したと言っても、まだ威力は一小隊を吹き飛ばして余りある程。それを領主は、あろうことか生身で受け止めた。
「なっ!?魔法も使わず受け止めたじゃと!?おい!お主、生きておるか!?」
「何で敵に心配されねばならん。こんな花火で怪我をする程、ヤワではないさ」
「花火じゃとお……?」
爆炎に包まれて尚、未だ健在。いくつか擦り傷を作った領主は悪態をつきながら、口に溜まった血を吐き捨てる。誰が何をしたのか知らないが、地面に着く前に、それは消えてなくなった。
「はあ……、とってもまろやか……!お嬢様、挨拶はこのくらいで宜しいかと。お客様のお相手は、まずわたくしが」
「鼻どころか、口にも血が付いているじゃないか。体調が悪いのに無理などしなくていい」
「いいえ。寧ろ、グルメ細胞がレベルアップしているのを感じますわ」
音もなく現れた従者が、主の傍らに侍る。彼女が自身の周囲にばら撒くのは、無数のナイフ。手に持つは古めかしい懐中時計。
「【仮初の生命を宿し、忠誠を見せよ】【ナイト・オブ・ナイツ】」
そっと呟くと、シャクヤクのマナがナイフに移り、激しく発光する。そのまま意識を持ったかのように、蛮族の集団を襲い始めた。
「金属性の操作魔法か!やはり魔法は、かっちょいいのう!!いいなあ、憧れちゃうなあ!」
仲間が悲鳴を上げていると言うのに、瓶底メガネの奥で瞳をキラキラさせる白衣の女性。そんなトンチンカンな彼女を無視して、領主は叫んだ。
「例の作戦で行く!頼んだぞ、貴様ら!!」
「【万物の根源たる土よ!ああ、母なる大地よ!我らを守りたまえ。外敵を拒む絶対の防壁を!】【エアデ・グロース・フェストゥング】!!」
領主へ答えるように、オリーブが素早く詠唱する。それはかなり高位な、土属性の造形魔法。それにより生み出したのは、高く分厚い土の壁。地面から迫り出す壁によって、蛮族たちは分断された。
「頼んだよ、私の愛しいお姫様」
防壁の上を走って行く冒険者たちを見上げて、オリーブは呟いた。
お疲れ様です、鈴木です!
いよいよ1章の山場!ムラーノ村の住民と、蛮族たちが激しくぶつかり合います!…ぶつかり合ってしまうんです。
サンブリテニア様やシャクヤクさんの描写を盛りすぎて、主人公たちが入り込む余地が見つからないんですけど!!鈴木は一体、どうすれば!?いや、マジでどうしましょう…?
何も思い付きません。暗中模索の鈴木です。