ROMANCE MEMORIES   作:誤字る小説家鈴木

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こんにちは、鈴木です!

実はオリーブさんは、ポッと出のキャラではありません。ライラックさんと同じく、1話から登場している古参キャラです。
はい。フヨウさんにSAN値直葬されたあの人です。何で里帰りしたらガチバトルする事になったのかは、本人が一番疑問に思っています。


潜入調査

「おりゃ!鍬攻撃っ!!」

 

 農夫が二つの鍬を両手で振るう。一撃ごとに生まれる剛風は、蛮族たちを吹き飛ばす。硬い地面に両方の鍬が突き刺さり、農夫に大きな隙が出来る。様子を伺っていたコボルドの群れが、飛び込んで来た。

 

「おりゃあっ!」

「キャイン!?」

 

 しかし鍬とは本来、地面を掘り返して耕す農具だ。捲り上げられた土石が天然の散弾となり、コボルドたちは悲鳴と共に気を失う。農夫の鍬攻撃は、二段構えの技なのだ。つまり、この一瞬を狙っていた蠍蛮人(スコーピノイド)の毒針の刺突は対応できない。

 

「全く、あんたはそそっかしいんだから。ちゃんと周りを見なさいな」

「いんやあ、お前がいるから暴れられるんだべ」

 

 しかし、針が彼まで伸びる事はなかった。蠍蛮人の上半身、その頭部が鷲掴みにされ引き寄せられる。無防備に晒された首筋は、まるで収穫される稲穂のよう。そこに、命を刈り取る冷たく固い感触を覚える。

 

「稲刈斬!……なんてね、ちょいと刃を当てただけだよ」

 

 圧倒的な死の予感を感じた蠍蛮人は、泡を吹いて意識を手放した。

 

「うん。あそこは大丈夫そうね」

 

 蛮族共をバッタバッタと張り倒す両親を見て、オリーブが呟く。持ち前の剛腕で、魔導兵器とがっつり組み合うサンブリテニア。自在にナイフを操り、動ける敵の数を減らすシャクヤク。他の村人も同じく、獅子奮迅の活躍を見せる。

 

「グルル……!」

「ガウ、ガフ……」

 

 やや劣勢になっているのは、ウルフの集団だ。離れた場所から次々と弓を放つボガートたち。老狼の咆哮で矢を撃ち落とすも、連射性能は弓矢とは比べ物にもならない。どうにもならない数の暴力を相手に、さしもの若きボスですら情けなく尾を下げている。

 

「グラエナァ!!」

「ポ、ポチエナぁ……」

 

 オリーブにウルフ語は分からないが、恐らく母が息子へ叱咤したのだろう。彼女自身、実家にいた頃は似た経験があったので理解できた。

 

「【理智、即ち加護。加護、即ち護り】【アイアン・シールド】」

 

 巨大な防壁を作った時とは違い、やや淀みのある詠唱。彼女の杖から煌めくマナ。それがウルフの身体を覆うと、銀の毛並みが光沢を帯びる。鉄と同じ硬さを持った身体が、飛来する矢を弾き飛ばす。

 

「行って!支援魔法は得意じゃないんだ!」

 

 人族はあらゆる環境に適応し、そこで文明を発展してきたからか、造形の魔法を得意とする。しかしそのハンデを負っても、戦闘に充分すぎる支援魔法を使いこなし、土火金の三属性を操るオリーブはかなりの才能を持った魔術師と言えるだろう。彼女の手により鋼の肉体となったウルフが、ボガートの弓兵団を行動不能にするまでに大した時間はかからなかった。

 

「ねえ、リラ。この先に、何があると思う?」

「どうだろうね?でもきっと、すっごい事が待ってる気がする!」

 

 ネモに答えながら、興奮した様子で土壁の上を走るライラック。彼女たちの背を見ながら、フグリはサンブリテニアの言葉を思い返していた。

 

「侵略の要地としては、些か街に近過ぎる。これでは戦の準備を整える前に、憲兵か冒険者に見つかるのがオチだ。……ならば、奴らの目的は遺跡その物か?」

 

 遺跡を目前にした休憩の時、彼女はふと呟いた。誰に伝える訳でもなく、無意識に思考が声として出ていた。そしてハッと顔を上げると、自分を追従する冒険者たちを呼び集めた。

 

「予定変更だ。私が陽動として暴れてやるから、貴様らは一足先に遺跡に潜入しろ」

「蛮族との正面対決じゃなかったのかい?また急にどうして?」

 

 ヤケに真剣な眼差しで告げる彼女へ、フグリが疑問をぶつけた。

 

「遺跡には、何かあるのかも知れない。それも人族と蛮族のバランスを崩しかねない、とびっきりの厄ネタだ」

「厄ネタって……。そんなに危険な物なら、もっと強い人が行った方がいいんじゃないの?」

 

 急に漏らした不穏な言葉へ、反応したのはネモだ。

 

「おいおい、情けない事を言ってくれるな。未知の物を解き明かすのは、冒険者(きさまら)の専売特許だろう?」

「うんっ!あたいたちに任せてよ!」

「ちょっと、ライラックさん?」

「こおら、リラ!勝手に決めるな!!」

痛たた(いひゃひゃ)っ!?離せよお(ひゃふぁへひょお)っ!!」

 

 領主が上目遣いで挑発すると、即座にライラックが食い付いた。兄妹の少女への扱いは実に手馴れた物で、それぞれ左右の頬を引っ張って、勝手な行動をする彼女を窘めた。そんなじゃれ合いを見ながら、領主は続ける。

 

「恐ろしいのならば、無理にとは言わん。だが自由に動かせる駒は、お前たちしかいないのだ。他に調査を任せられそうな者は、蛮族共を抑える為に埋まっているからな」

「いいわ、その作戦に乗りましょう。って言うか、蛮族との正面対決のほうが荷が重いわ。それに、リラもこの調子だしね」

「遺跡に隠された謎のお宝かーっ!?ワクワクするねっ!」

「うーん……。断るつもりは元々ないけど、いよいよ、駆け出しがやる依頼じゃなくなって来たね」

 

 肩を竦めて、諦めたように笑うネモ。瞳を輝かせて、今すぐにでも走って行きそうなライラック。そんな彼女の首根っこを掴んで、飄々とするフグリ。彼らの様子を見て、領主は満足気に頷いた。

 

「よろしい。遺跡は貴様らに任せた。ならば、フランクリーも連れて行け。これで狩人として、それなりの探索と隠形はできる」

「お姉様、オレは蛮族を抑えなくていいのか?」

「いらん。戦力不足だ」

「おい!?」

 

 最後にフグリが領主とその弟のやり取りを思い返していると、彼らは土壁を走り抜けて遺跡に空いた大穴へと辿り着いた。

 

「それにしても、でっかい槍だなー。なあー、フランならこれ使えそう?」

「オレはお姉様ほど馬鹿力じゃねえよ。支援(バフ)があれば少しの間ならいけるけど、こんなデカい得物抱えた潜入捜査があるかよ?」

 

 無造作に転がる巨大な突撃槍を、興味津々といった様子でペタペタ触るライラック。そんな彼女にツッコミながら、フランクリーは眼下の戦いを苦い顔で見る。

 

「不味いな……。押され始めてる」

『敵は少ないですよ!囲んでやっつけちゃいましょう!重装トロール部隊は相手に張り付いて!魔法か弓が使える人たちは巻き込んじゃっていいから、じゃんじゃん攻撃!』

 

 村人たちは最初こそ勢いよく蛮族を吹き飛ばしていたが、彼らは小さな村のそのまた少数の精鋭たち。数の暴力に抑え込まれて、劣勢を余儀なくされている。

 魔導具で拡張された耳障りなキンキン声により指示が飛び、蛮族の兵団は統率された動きで敵を追い詰める。

 

『ひょええええっ!?ちょっとグリキネさん、その強すぎるロリっ子止めてくださいよお!?』

「分かっておるわ!耳障りな声で騒ぐでない!!今こそ、グリキネ・スプラウトの魔導科学の真髄を見せてくれようッ!!」

『このアホーっ!!ロボット合体させたら、誰がインチキメイドと巨大ウルフの相手するんですかあ!!!』

 

 そんな中でも、獅子奮迅の活躍をする者たちがいる。5mを超える合体パワードスーツを相手にしても、一歩も引かないサンブリテニア。

 消えたと思ったら、また別のところへ瞬時に現れるのはシャクヤクだ。現れた瞬間、部隊長クラスと思われる豪華な装備をした蛮族を気絶させる。飛び回るナイフも合わせて、彼女によって小規模ではあるが、蛮族の部隊に混乱が生まれた。

 戦場を分断する土壁すら足場にして、風のように駆け回るのはウルフの女帝。恐るべき魔法使いとして真っ先に排除されたオリーブを咥えて、回復魔法を使える者の元まで一足に運ぶ。

 女傑たちの奮戦により要所要所で有利に立ち回れているが、大局を見ればかなり押されている事が戦場を俯瞰しているとよく分かる。

 

「蛮族がやってるみたいに、私の声をみんなに聞かせられないかな?」

「ネモ、あれをやるつもりだね?……なら遺跡の最上階から指示を出してるみたいだから、そこに行ってみようか」

 

 ネモの発言を汲み取り、パーティの方針を提案するフグリ。そこにフランクリーが待ったをかける。

 

「でもお姉様は、蛮族の目的を抑えに行けって言ってたぜ?そっちも放っとくと、ヤバいんじゃないか?」

 

 四人は顔を見合わせる。自分たちを心配して目的を後回しにした事を知れば、サンブリテニアは怒り狂うだろう。誰もが領主の姿を想像して、顔を青くした。

 

「なら、ネモとフグリは上を目指して。あたいは、下の方に探索してみるね!フランはどーする?」

「一番危なっかしい奴を、一人にできるか。オレもお前に着いてってやるよ」

「うん。人数を減らすのは怖いけど、そうしよう。お互い、戦闘は避けていこうね」

 

 兄妹と少年少女は二手に別れ、遺跡の階段を進んで行く。

 

「どこだー!お宝〜!?返事しろーっ!!」

「バッキャロウ!?叫ぶ隠密があるかーっ!」

 

 兄妹は下方から聞こえてくる漫才に、かなりの不安を覚えて、足取りが重くなった。




お疲れ様です!鈴木です!

多vs多の戦闘は書いていて楽しいです!鈴木はワンピや24のような、複数の視点からストーリーが展開していく表現が大好きです。なのですが、鈴木の表現力で分かりやすく書けるんでしょうか…。頑張りますので、お楽しみに!

sideとか言う禁呪に手を出そうかと悩む鈴木です。
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