あれ…?敵側のメインキャラに、女しか出てないような?
と言うか、気づけば女キャラばっか登場してます。ノリに任せてかいてたら、いつの間にかこうなってました。イケおじを書けるようになりたい鈴木です。
『うん、この先に司令官がいるね』
シャクヤクによってまるで大丈夫じゃない事が行われる少し前、霊体となったフグリはネモの元へ戻って来ていた。そして、肉体へ入った兄が意識を取り戻す。
「それは声で何となく分かってたけど、どんな感じだったの?」
「部屋の中は彼女一人だよ。ただし、手に持つタイプの魔導具で指示を出してる。奪い取るには、戦闘は避けられなさそう」
兄妹はこれまで幽体離脱の偵察や、浮遊霊を操り蛮族の注意を引く事で、一切の戦闘を起こさずここまで進んだ。彼らはそっと、少しだけ司令室になっている部屋の扉を開けた。
「はあ〜、ちょっとしかいないのに人族がヤケに強いなあ……。ムゥダンさんは別行動しちゃうし、もうグリキネさんのだらしないお腹に顔を埋めて寝てしまいたい……」
疲労困憊な様子の女性が黄昏ていた。長身な彼女の背からは蝙蝠のような羽が生え、黒い矢印のような尾が体調を表すように萎びている。
「
「お兄ちゃん、落ち着いて。静かに観察しましょう」
驚愕する兄の口に手を当てて、彼の顔を覗き込む妹。金の瞳に見詰められた彼は、コクコク頷いて落ち着きを取り戻す。彼らは再びドアの隙間から、中の様子を伺った。
「だいたい、何で私が現場指揮なんてやらされてるんです?皆さんの命を預るなんて、緊張で吐きそうですよ!!私はインドアな事務仕事をしてる方が、性に合ってるのに!何です?ムゥダンさんって美女が吐く所でしか満たされない、鬼畜上司だったんです?そもそも、上司が上司なら部下も部下ですよ。グリキネさんは、魔法ヲタクの研究マニアですし!ペンタスさんは、自分の出世しか考えてないですしぃ!二人とも、中間管理職って自覚がないんですかねえ!?はあ……、タプタプのお腹につかりながら、ロリちっぱいチューチューしたい……。ああ、もうムゥダンさんでもいいや。デカっぱいイケメン上司と、禁断の関係も悪くないなあ……。寿退社って、幸せな響きですよねえ……」
出るわ出るわ愚痴の嵐。特に後半が最低すぎる。全く息継ぎをしないままにマシンガントークを続け、最後に大きな溜息をついた。今のところ彼女へは、肺活量以外には恐ろしい点は見受けられない。
兄妹は遠い目をしていた。今から、あんなのと戦うのかと。と言うか、勝ってしまったら、彼女のメンタルは無事で済むのかと。今まで出会ったどんな敵よりも弱そうなくたびれた悪魔に、ある意味度肝を抜かれていた。
「私は
愚痴の中に泣きが入って来た、悪魔改め淫魔の女性。酒でもやっているのだろうか。頬を紅潮させた彼女からは、甘ったるくてクラクラする香りが漂っている。甲高い声を聞いていると、まるで脳を直接愛撫されているかのように安心してしまう。
余りに無警戒で無防備に、無意味で無軌道な言葉を続ける物だから、兄妹は理解が遅れた。彼女はとっくに二人の存在に気付いている。青ざめた彼らは、肉食獣のようにギラつかせた彼女の視線に射抜かれていた。
「こんにちは、仲良し兄妹の冒険者さん。私はヤリス共和国、調査兵団、大佐。メリア・アルストロ。二つ名は【夢幻】なんて大層な物を、国から頂いてしまいました。これも全て、いつも無茶振りばかりするムゥダンさんの陰謀ですよお!いじめないで!お姉さん、悪い淫魔じゃないですう!……名乗らなくっても聞こえていたけれど、そんなのお姉さん悲しいです。どうせ、放っておけば勝手に終わる戦いです。お互い無理はせずに、ここでゆっくりしませんか?ねえ、フグリ君にネモちゃん。ほら、お姉さんは何でも知ってます。何も隠さなくていいので、入って来てくださいな」
慈母のように微笑む彼女を前にして、兄妹は冷や汗が止まらなかった。ゴブリンならば簡素な武器が、ウルフならば爪や牙が。武器と言われる物がなくても、例えばサンブリテニアならば圧倒的な強者のオーラに気圧された。これまでに彼らが出会って来た者たちは、その強さが何となく理解できた。
だと言うのに目の前のメリアからは、何も感じない。これだけ視線を絡ませていると言うのに、彼女からは強さも弱さも思いも矜恃も、何もかもを感じない。それがひたすらに恐ろしくて仕方がない。
兄妹の本名を言い当てた女がニタアと不気味な笑みを向けると、青い顔で身を震わせる彼らは弾かれたようにドアを開けた。
「ネモ!あの作戦で行こう!」
「ええ、分かったわ!」
「ネモちゃんが前に出て、フグリ君は即座に幽体離脱!無敵モードになったフグリ君がひたすらネモちゃんを強化して、さらにお姉さんを妨害!ネモちゃんはオーガスの身体能力を活かして、フグリ君のメイスを振り回すんですね!即興にしては、上手いですよ。お姉さんが士官学校の先生なら、君たちに花丸あげちゃいます。ですが作戦とは、敵に知られた時点で、意味がなくなってしまいますね?その点を考えるなら、お姉さんを相手に作戦を立ててしまった事がバッテンです。それにその作戦だと、フグリ君の身体が無防備になってしまいますよ?まあ、君自身はそこも織り込み済みですよね。ですが、ネモちゃんの気持ちも考えて上げてください。全く……。他人や目的のために一生懸命になれる人は素敵ですが、自分の事を大切に出来ない人は、お姉さんは苦手です。もっといい作戦を、お姉さんと一緒に考えてみましょうか」
勢いよく飛び込んだ兄妹を歓迎したのは、メリアの止まることのないマシンガントークだ。そこに老狼のような魔力も、サンブリテニアのような威圧も含まれてはいない。彼らは知る由もないが、シャクヤクのように詠唱を隠す技術を使っていた訳でもない。ただの親しみを込めた声色に、二人は停止を余儀なくされたのだ。
思考を読まれていた。オリーブがライラックとの戦闘で見せた、経験則による先読みなどでは断じてない。敵を倒すためのビジョンを、兄が妹に黙っていた秘め事を、全てが丸裸にされ女に言い当てられてしまった。
「思考を読んでいる?まさか、そんな大層な物ではありませんよ。ただ夢淫魔は、種族の特徴として人の欲望が聞こえるんです。これから冒険者を続けるなら、覚えていたほうがいいですよ?あ、冒険者と言えば、お姉さんをどこかの宿屋に口利きして頂けませんか?これはオフレコですが、お姉さん、軍を抜けたいと思ってまして。本当にオフレコですよお?ムゥダンさんってば、ハチャメチャに怖い人なんですから。あの人の体術が炸裂したら、お姉さんなんてバラバラになってしまいます。怖くて震えてるお姉さんは、初々しい冒険者のお二人に癒されたいのですが、どうでしょうか?」
またもや兄妹の考えを読んだメリアのお喋りは止まらない。休戦を促す彼女の言葉に、二人は黙って頷くしかなかった。
「ねえフラン、足音がするよっ!」
「ああ、オレも聞こえてる。こんな所に一人って事は、まず味方じゃねえだろうな」
最上階が不穏な空気に包まれている頃、地下ではライラックとフランクリーが階段を駆け下りていた。二人とは違う足音が、遺跡のさらに奥底から響いて来る。
「あれ?止まった……?」
「こっちは、喋りながら来てんもんな。そりゃ気付くか。さてリラ、どうするよ?」
「おーいっ!そっちに誰かいるのー!?」
「何やってんだ、このアホウ!」
「痛ったあーいっ!?」
下方へ大声で呼びかける少女。よく反響する声に肝を冷やした少年は、咄嗟に彼女の頭を引っぱたいた。
フランクリーは自他ともに認める紳士だ。本来なら、彼が幼い少女に手を上げるなんて決してありえない。一重に、大ボケをかましたライラックが悪いのだ。
「何するんだよ!このバカフランっ!!」
「二重の意味でうるせえよ、このアホウっ!だいたい、こんな事しても答える訳ねーだろ!?」
「はーい、いますよーっ!」
「おいおい、マジかよ……」
言い切った途端に、反例が現れた。げんなりする少年を他所に、少女が飛び跳ねて喜ぶ。
「わぁっ!やっぱり人がいるんだ!?おーいっ、今からそっちに行っていーいーっ!!」
「はあっ!!お前、本気じゃねえだろーな!?」
「はーい!待ってますねーっ!」
「あんたも、律儀に答えんなあっ!!!」
顔も知らぬ相手へツッコむ少年。三人分の大声が反響して、地下は大変うるさくなっている。
「もう!フランったら、こーいう地下でおっきな声出すと、さんけつ?とか、じくずれ?とかで危ないんだよ!?これだからシロートは!」
「納得がいかねえよ!!コノヤロウっ!!」
こんなボケ幼女を相手にしても、手が出るのをグッと堪えた少年は、代わりにうっすら泣いている。それを優しいと言えばいいのか、可哀想と言えばいいのかはともかく、少女は彼を置いて走り出した。
「フランっ、美人な感じの声だよ!?お姉さーんっ!!今行くねーっ!」
「やっぱバカだろお前!?いいや、お前はバカだ!こんなん罠に決まってんだろ!!」
「いやあ!美人だなんて、照れますよお!」
「アッハッハ!これ、罠って感じじゃねーや!?チクショーめっ!!」
目をハートマークにした少女は、涎を垂らして加速する。慌てて追いかける少年の目には、すぐに背中すら見えなくなった。
「ぜぇ……ぜぇっ!あいつの思考回路、一体どーなってんだ……!」
途中でスタミナが尽きた彼は、少しでも先を急ごうと地下を進む。あんなのでも仲間なのだから、未知の相手に一人にする訳にもいかないと、必死に足を回転させる。最早紳士を通り越して、聖人の域に達しそうな少年の鼓膜を、少女の甲高い悲鳴が貫いた。
「クソが!?やっぱ、罠だったんじゃねえか!」
似合わない舌打ちをしながら、彼は一気に階段を駆け下りる。途中で何度も転んだが、持ち前の頑強さに任せて、それすら加速に利用する。階段の終点まで辿り着くと、勢いそのままに扉を蹴破った。
「リラぁッ!大丈夫か!?」
「きゃ〜っ!すっごく高いよお!!」
「ははは、身長には自身がありますからねえ」
そして盛大にズッコケた。少年が見たのは、ライラックともう一人。人民服とチャイナドレスの間の子のような衣装に身を包んだ、2m程の身長をしたバツグンなスタイルの女性だった。赤い髪を腰まで伸ばし、サイドを編み上げてリボンで飾っている。そんな彼女は、朗らかな笑顔で少女を高い高いしている。もちろん戦闘になどなっておらず、少女は全身で喜びを表していた。
「おい、リラ……。その人はどちら様で?」
「んっとね!とっても美人さんだよっ!」
「見りゃあ分かるわ!クソボケえっ!!」
「あははっ、二人ともお上手ですねえ」
照れ笑いをして、勢いよく空気をはたく女性。緩みきった空気によって、少年も警戒心を解く。なんだ、この人は敵じゃないのか。もしかして、一人で調査にやって来た冒険者なのか?と、余裕が出来た心に疑問を浮かべた。
「私は【虹龍拳】の
「わあーっ!ムゥダンさんったら、すっごく偉いんだねっ!?」
「いえいえ、それほどでもないですってば」
右の拳を左の手の平で静かに包み、優雅に敬礼する。彼女の発言を全く理解していない少女は、目をキラキラさせて褒め讃えた。呑気なやり取りをする彼女たちを無視して、少年は胸いっぱいに地下の淀んだ空気を吸い込む。
「敵どころか、ラスボスじゃねえかあああああああああああああっ!!!」
お疲れ様です!鈴木です!
ムゥダンさんやメリアさんの階級は適当です。鈴木は軍事に明るくないので、ワンピを雑にパクっています。おかしな所があれば、土下座しながら訂正しますので教えてくれると嬉しいです。