フグリ君たちが頭脳戦、ライラックさんたちがガチバトル。と、書き分ければいいなあと思っている鈴木です。
どちらもできるだけギャグは挟まないようにしたいと思います!本当ですよ!?鈴木だって、やる時はやるんです!鈴木のドシリアスをお楽しみに!
「いやあ、こうしてお話できてよかったですよ。お姉さん、戦闘は疲れるから嫌なんです。戦いなんてやめて、お茶でも飲んでいる方が有意義だと思いませんか?お姉さんは、そう思います。まあ残念ながら、お姉さんの周りはそうじゃないみたいなんですがね……」
沈んだ気持ちを表すように、メリアの周囲の空気が淀む。彼女と向かい合う形で座っている兄妹は、それを見て苦笑するしかない。
「ええと。ならどうしてメリアさんは、蛮族たちの司令官なんてしてるのかな?」
「お姉さんだって、やりたくないですよおっ!!なのにムゥダンさんが、嫌がるお姉さんを前線へ連れて行くんです!あの人、才能マニアで人を見る目はあるんですが、個人の感情なんてお構い無しなんですよ!?お姉さんは、被害者ですっ!!うわあああああんっ!!!」
フグリが何となくした質問に、彼女は勢いよく食い付いた。恐ろしい勢いで放たれる愚痴の嵐。飲み屋で酔った客のように、テーブルに突っ伏して大泣きしてしまう。
そんな情けなさの極みにある彼女だが、兄妹にとっては敵兵の総司令を務める大ボスだ。本来なら今すぐにでも取り押さえたいところなのだが、彼らにそれはできない。
彼女は心の欲望を読み取る能力を持つと言い、実際に部屋に乗り込む前に打ち合わせた作戦を見事に言い当てた。
「そう泣かれると、望んでたお話もできないわよ?ほら、愚痴なら聞いてあげるから起きなさいよ」
「ぐすっ……。ネモちゃんは優しいですねえ……。フグリ君もいい子ですし。……そうだ!いっそお二人とも、お姉さんの部下になる気はありませんか?ここまで戦闘を起こさずにやって来た貴方たちの実力ならば、優秀な斥候になる事は間違いなし!それに、フグリ君には優秀な作戦立案能力があります!将来的には、お姉さんが前線に出ずに済むようになるのでは!?」
「いや、斥候もお兄ちゃんの呪術があってこそよ?勧誘するなら、お兄ちゃんだけにして頂戴」
「待って!何か僕、売られそうになってる!?」
「いえいえ。ネモちゃんはオーガスじゃないですか。倒れにくい回復役は、貴重ですよ?先程の作戦も抵抗なく受け入れていたのが聞こえましたし、その気になれば前衛もこなせるのでは?うちの神官隊に入れば、イッキに隊長クラスになれますよ!!さあっ、お姉さんを一般町娘に戻す為だと思って、是非とも入団を!!」
「ここまでオーガスなのを褒められたのは、初めてだわ……」
「うん……?何か引っかかるような……」
身を乗り出して鼻息荒く勧誘するメリアに、顔を引き攣らせて背けたネモ。捲し立てる言葉の中に、微かな違和感を覚えたフグリが考え込む。
彼が冷静さを取り戻し、違和感に気付く事が出来たのは妹のお陰だ。彼のブーツに僅かにかかる体重。踏む訳でもなく蹴る訳でもない、素知らぬ顔でそっと靴を当てるだけのその感触が、自分に何かを伝えようとしているのだと思い至らせた。
(ネモが話を引き出して、僕が彼女の能力の秘密を暴く。……って事でいいんだよね?)
穏やかに、然して不気味に微笑む強敵。彼女の真意を探るべく、彼の頭脳は回り始める。
「人族の社会では、オーガスは生きにくいでしょう?これまでも、云われない差別や迫害を受けたのでは?その点、ヤリスでは安心ですよ!お姉さんの国は、完全実力主義ですからっ!!魔法が使えない
「確かに、お兄ちゃんは可愛いものねえ。村の宴会でも大ウケだったし」
「あの話は、やめてくれないかなあ……」
「ほうほう。何やら面白そうなお話の気配っ!?ネモちゃん、お姉さんにも教えてくれませんか?」
「頼むから、やめてくれえっ!!」
顔を真っ赤にして、黒歴史を語られまいと話を遮るフグリ。彼の中で違和感は益々大きくなる。
(もしかして、メリアさんの能力って……。いや、だとしても疑っている事がバレたら拙い。揺さぶるにしても確証を得てからだ)
ネモとメリアは旧知の友のように、宴会での話で盛り上がる。彼女たちに舐め回すように見詰められ、女装姿を想像されたフグリは、一筋の涙を流しながら水面下で思考を続けた。
「むにゃ……。あれ?あたいったら、寝ちゃってた?」
「はい。おはようございます、リラさん」
「お前、よく敵の背中で眠れるなあ……」
一方、地下を探索するライラック。トリモチから脱出した彼女は大幅なマナ消費により、歩きながらウトウトしていた。見兼ねたムゥダンにおぶられ遺跡の廊下を進み、たった今目覚めたところだ。
「ムゥダンさんは敵じゃないよー。それに、背中がおっきいから安心するー」
「あはは、困ったなあ……」
「むぅ……っ!」
まだ寝惚けた様子の少女は、気の抜けた声で背中に張り付き甘えている。母に寄り添う子猫のような態度に、ムゥダンはつい苦笑してしまう。そんな呑気な彼女たちを見て、頬を膨らませてむくれるフランクリー。
「ああ……。よかったら、代わりましょうか?」
「いらねえよっ!?」
彼の気持ちを察して、いらない気遣いをしてしまったムゥダン。彼女の提案を却下して、少年は顔を赤くしながら大股で歩いて行く。
再び夢の世界に誘われた少女を背負いながら、ムゥダンは彼を追いかける。彼へ生暖かい視線を向けながら。そして彼女は、いい事を思い付いた。
「フラン君、疲れていたら言って下さいね?体力には自信があるので、子供2人背負ってもなんて事ないですから」
「お前さあ……、オレたちが敵だって自覚あるか?」
「あははー、そうでしたねー」
少年の初々しい恋心を見ていて、つい後押しをしたくなったムゥダンに、そんな自覚など欠片もなかった。呆れた少年の目に射抜かれて、図星を突かれた彼女は目を泳がせる。
「ですが無防備な相手に意地悪する程、私は堕ちていません。今ならリラさんも気付かないでしょうし、気が向いたら声をかけて下さいな」
「……、考えといてやるよ」
「ふふっ、本当にやりにくい人たちだ」
照れてそっぽを向いてしまった少年に追従する。静かに響く2人の足音に混ざるように、彼女の呟きは誰にも聞こえる事はなかった。
「あたい復活っ!ありがとね、ムゥダンさん!」
「いえいえ。疲れが取れたようで、よかったですよ」
「そりゃあ、あんだけ熟睡したらなあ」
「フランさんも、気持ちよさそうな寝顔だったじゃないですか?」
「なっ!?お前!言わないって約束だろ!?」
ムゥダン1人の探索が進んで、目覚めた子供たちを優しく起こす。彼らの意識が覚醒したのを確認すると、彼女は目付きを鋭くした。
「お、おい……。お前、どうしちゃったんだ?」
「さて、お二人とも。この先に私たちの目的があります」
「へえーっ!どんなお宝なんだろうね!?」
豹変した彼女に対して困惑する少年。剣呑な雰囲気を感じていないのか、少女は目をキラキラさせてムゥダンに尋ねる。
「御伽の大英雄、勇者アレキサンダーですよ」
「はぁっ!?何千年前の話だよ!?そもそも存在すら、眉唾モンだろ!」
「いいえ。彼の実在を保証する文献は、僅かですが残っています。ここに眠っているのは彼自身か、あるいは彼の武具か、はたまた魔法を伝授する書物なのか。それについては分かりませんがね」
「わあぁっ!本当にいたんだ!?ねえ、フラン!!すっごいねえ!!!」
興奮冷めやらぬ様子ではしゃぐ少女だが、少年は彼女に答える事ができない。それよりも、冷淡な口調で話すムゥダンが気になって仕方ない。何でそんなに他人行儀にする?どうして自分たちから距離を取る?
「均衡を維持している、人族と蛮族の勢力差。それを崩すのに、これ以上の物はないでしょう。さて、幸いにも此処は大広間。
奥へ進む通路を塞ぐように、彼女が立つ。放たれた
「引き返すのならば、追いはしません。トラップも粗方排除しましたから、安全に進めますよ。戦うのでしたら、相応の覚悟を持って挑んで来なさい」
「分かった!お宝を賭けてのケンカだねっ!!」
少年が有無を言わずに踵を返そうとした瞬間、少女の元気な声が遮った。彼女は好戦的にニヤッと笑い、両手に二振りのダガーを光らせる。
「バっ、バッキャロウ!?相手の強さが分かんねえのかっ!!」
「分かるよ。ムゥダンさんは、すっごく強い人だよ。でも相手によって勇気を出したり引っ込めたりするのは、かっこいい冒険者じゃないんだっ!!!」
声を荒らげた少年に、負けじと少女も声を張り上げる。彼女の言葉にハッとして、彼の震えは収まった。
「それに、あたいとフランがいたら、どんな相手だってへっちゃらだよっ!!」
「いいぜ!やってやるよ!!オレは勇敢なドワーフ!サンブリテニアお姉様の弟なんだっ!!!」
少年少女は、眼前の敵を見据える。視線を受けて、ムゥダンは目を閉じて朗らかに笑った。
「貴方たちが、勇気ある人でよかった。これで、私の拳も鈍る事はなさそうだ」
拳を握り、構える。それだけで大きく増した圧力にも屈さず、彼らは嘗てない強敵へと走り出した。
お疲れ様です、鈴木です!
ほのぼのルートで進んでいたライラック組ですが、ここから本気で戦います!くだらないギャグなんて、挟む余地はありません!
ただのシリアスじゃないです。ド級のシリアス!ドリシアスだ!!