しばらく更新できませんでしたが、エタってはいません!多分エタらないと思います…。
「やっぱコイツ、
「だよね……?今まで会った人たちとは、全然違うけど」
フランクリーとライラックは顔を見合わせる。話題の渦中にいる女性は検診衣を来た後、眉間に皺を寄せて考え込みながら、周りをキョロキョロと見渡している。
マザーマシンから産まれた事も、身体の一部に機械部品が使われている事も、魔導生物の特徴と一致している。
だが、彼らは他人に敬意を持って接する。少年が思い浮かべた屋敷のメイド長などは、彼の認識からすればその最たる人物だ。しかし、女性からはその様子は見受けられない。
「ここはどこ?私は誰です……?」
「変わり者の魔導生物さんなんだね……」
「それも相当な、な。とりあえず戻ろうぜ。コイツも放っとく訳にも行かないしさ」
少年に促されるままに少女も歩き出す。しかしその動きは止まった。少女の服を指で摘む女性。その力は弱々しく、指先が震えている。
「分からないのは怖いです。おチビ、私は誰です……?」
瞳も同じく不安に揺れていた。身体は少女よりもずっと大きいのに、まるで親に縋る泣きそうな子供のようだ。
少女は暖かな両手で、服を摘む手を包む。揺れる瞳と視線を合わせて、にっこり笑う。
「あんたはカトレア!あたいの従者だよっ!ごめん!!知らなくなんてなかった!!!」
女性はずっと自分が何者かを聞いていた。それなのに、知らないと言って突き放した。それを少女は深く後悔した。目と手の震えが止まり、まん丸の目を見開いて少女を見つめる女性。腕から力が抜けて、少女の手を滑り落ちる。
「カトレア。カトレア……。ありがとです、おチビ」
一文字ずつ確かめるように呟いてから、緩く笑った女性改めカトレアは、絵画から抜け出した天女のよう。その美しさに放心した少女は、ただ棒立ちになっていた。
「カトレアねえ。『CA-L』だから、カトレアか?また安直な……」
「しょっ、しょうがないでしょ!?気の利いた名前なんて、思いつかなかったんだからっ!」
耳元で囁く少年の声で、やっと我に帰った。少女は彼に言い返して、掴みかかる。少年も血気盛んにそれに答えて、売られた喧嘩を買う。
「何してるです。早く来るです、おチビズ」
「「まとめられたぁっ!?」」
いつの間にか前を歩くカトレアが、面倒くさそうに声をかける。その呼び方に怒る少年少女だが、気にした様子もなくツカツカと歩いていく。彼らは訂正を求めながら、その背を追いかけた。
「もういいだろ!?降りてほしいんだぜ!」
「ぐへへ……、よいではないかぁ……っ!!」
「うわあああんっ!変なとこ、触んなあああっ!!」
ネモの歌声が響く戦場。その上空では、ペンタスが身体をまさぐるシャクヤクを振り落とすべく、箒のスピードを上げる。
被害者が可愛らしい反応をする程、加害者の鼻血の血量が増える。勢いは加速度的に増し、加茂家の相伝術式の奥義並みになっている。猫娘の涙がキラキラと宙を舞い、変態の鼻血が幾何学模様の軌跡を作り空を彩る。
吟遊詩人の歌によって力を増した人族とウルフが、蛮族を薙ぎ倒す。戦況はガラリと変わり、決着の時は近い。
「フゥーハハハハハ!この勝負にも、終わりが見えて来たようじゃなっ!!」
「……フン、そのようだな」
方や高笑いで、方や苦々しげに舌打ちをする。5mを超える純白の
彼女たちの周囲では
「悪いね、領主サマ。ドジっちまったよ……」
「気にするな。ここからは本気で暴れる。巻き込まれたくなければ、もう退っていろ」
「今更、本気を出すじゃとお?マナの防御があれば、お前さんなんぞ怖くないわい!!魔術師が倒れた今、戦士のお前がどうすると言うのじゃっ!?」
コックピットから敵を見下ろし、勝ち誇るグリキネ。彼女の操る魔導鎧はマナのシールドを展開し、物理攻撃の衝撃を散らしてしまう。
サンブリテニアはオリーブとの連携によって、鎧へダメージを与えて来た。しかし、今は相棒のオリーブの力を借りる事はできない。ならば、彼女の取れる手段は1つだ。
「【我々の敵が雄叫びを上げている。我らは破滅するべきだと】——」
「神聖魔法じゃとっ!?お前さん、
力を抜いて、祈りを捧げる。闘える者が自分しかいないのならば、自分が攻撃と魔法の両方をこなせばいい。それがサンブリテニアが出した答えだった。
魔術師らしくない、一心に祈る姿。それを目の当たりにしたグリキネは、敵の使う魔法の正体に気付く。
「やらせはせん!やらせはせんぞお!!」
「【彼らに対する答えは、ただひとつ】——」
頭部バルカンによる弾幕の嵐!無防備にそれを受け、ちぎれ飛ぶ紅いドレスの端切れはまるで鮮血のようだ。身に纏う物を剥がされて行き、領主の美しい肢体には、彼女には似合わない青黒い痣が浮かんでいる。
「この化け物が!落ちろ!!!落ちろおッ!!」
半狂乱になりながらも、マナを最大限にまで圧縮した砲身を掲げる。
「ダメだ!領主サマ、逃げろっ!!!」
今までにないその熱量を感じたオリーブが、顔を蒼白させて叫んだ。
「撃つぞ、撃つぞ、撃つぞぉぉぉおっ!!」
これまでの魔砲は、ただの威嚇射撃だ。当たれば大怪我は免れないだろうが、それでも命に関わる程の威力ではない。
この砲撃こそが、グリキネ・スプラウトが生み出した魔導兵器本来の力。引き金を引けば容易に人体を焼き尽くす凶器を向けている事に、彼女は恐怖と緊張が混じった咆哮を上げる。稲妻のような悲鳴が湧き上がり、光線が襲いかかる。
「【我々は生き続ける!】」
熱と光に晒されながらも、領主は一歩も退かなかった。潤沢なマナを持つがマナ操作を苦手とするドワーフにとって、高速詠唱や並行詠唱はそもそも取る事が出来ない。故に、彼女は全ての攻撃を耐え切るか、詠唱をキャンセルして唱え直すかしか選択肢を持っていないのだ。
怠さと痛みに苛まれる身体を引き摺り、オリーブは必死に手を伸ばす。喉を裂かんばかりに領主を呼び、目からは涙が零れ落ちる。そして、その全身に活力が漲った。
「【マイン・カンプ】そう叫ばなくても、聞こえているぞ」
軽く振って土煙を弾き飛ばしたサンブリテニアの両腕は、肘から先が溶けて消えている。全身が焼け焦げ、腹部は消滅し、残った腹斜筋のみで上半身を支えている。
オリーブが息を呑んだのは、見るも無惨な光景への恐れや悲しみからではない。体積を大きく減らした領主の表面が蠢き、骨が、臓器が、肉が構築される。焦げた細胞が剥がれ落ち、瑞々しい肌へ置き換えられる。ちぎれ飛んでしまった筈の紅い布片が、次々と領主の産まれたままの姿を隠していく。
自分も神官だからこそ、オリーブには領主の回復魔法の規格外の性能が正しく理解できた。誰が見ても瀕死どころか生きている事が不思議な状態の身体を、逆再生の映像のように完治させてしまった。それどころか非生物であるドレスすらも、元通りにして見せた。そして領主の魔法の範囲は自身のみならず、彼女のマナの光は山の全てを包んだ。例え、街の教会の