6話も書いていると言うのに、ウルフのウの字も出てません。うー☆しか出てません。クエスト進捗率0%から、まんじりとも動きません。多分次回辺りから、本格的♂に進められるかと思います。6話まではそれに向けて、役者が出揃う回でございます。
それでは、ムラーノ村での異変解決に関わる、勇敢な少年に登場して頂きましょう。拍手とケツドラムでお出迎え下さい!
「まだかなー?この村はどんなとこなんだろ?」
時は戻って、村の入口から屋敷へと農夫が走っている頃。ライラックは全身でワクワクした気分を表して、辺りを見回している。
フグリが本を読み耽り、ネモが静かな寝息をたてだして、ライラックの肩に一匹の蝶が止まった。
「うん?お前、どーしたんだ?」
それに気付いた彼女が話しかけると、蝶は畑の方へと飛び去ってしまう。
「おーい、待てよー」
空を舞う蝶をトコトコ追いかけるライラック。小説と夢の世界の中にいた兄妹は、彼女の足音に気付く事はなかった。
彼女が自分の身長を軽く超えるトマト畑に迷い込むと、簡単に蝶の姿を見失ってしまう。顔を上げてよく実った赤い果実たちを見ていると、口からは涎が溢れ、お腹が物欲しそうに抗議する。昼食を味気ない冒険者用の携帯食料で済ませた彼女にとって、目の前の光景はサキュバスの誘惑にも等しい光景だった。
「いけないいけない。人が育ててる物を盗ったら泥棒だよな」
伸ばした手を下ろして袖で口を拭うと、もう一度名残惜しそうにトマトを見てから歩き出す。
「ぼ〜けん♪ぼ〜けん♪ぼ〜けんだ〜♪」
仲間に無断で離れた事など綺麗さっぱり忘れて、周辺の探索を始めた。
畑を抜けると、木製の簡素な一軒家が見える。家の扉を軽く叩いて、元気よく声をかけた。
「ごめんくださーい!誰かいますかー?」
「はあい、どなたー?」
返事が返って来て、軽い足音が聞こえる。その後すぐにドアが開き、中年の女性が現れる。
「あたいはライラック、ライラック・シリンガー!何か食べさせてくれると嬉しいなっ!」
「あらあら、お腹が空いてるのかい?」
満面の笑みで挨拶とお願いを同時にこなすライラックへ、女性は微笑ましそうに笑いかけた。
「おーいーしーっ!」
「はははっ、気持ちのいい食べっぷりだねえ」
女性がライラックを招き入れると、テーブルの前に座らせ、真っ赤なトマトがいくつか盛られた笊を持ってきた。
「今日収穫したばかりのを、川に漬けといたのさ。よーく冷えてて美味いだろう?」
「うんっ!ありがとね、おばちゃん!」
「いいってことさ!娘もトマトが好きでねえ、お金だけ送って来て顔も見せないで何やってるんだか……」
調味料すら付けていないただのトマトだが、冷えた赤い果肉は、持ち前の甘酸っぱい爽やかな味わいを一層際立たせる。
「ぷはー!ごちそーさま!」
「はいよ、お粗末さま。ところであんた、外から来たんだろ?一体何しにここに来たんだい?」
「あっ、そうだ!えっとね……」
女性に尋ねられて、答えようとしたその時。
「おばさん、こんにちわー。お裾分けだよー」
よく肥えた猪を片手で持ち上げ、山菜がたっぷり入った籠を背負った少年が現れた。輝く黄金の髪をサイドテールに纏め、紅く光る眼は宝石のようだ。臙脂色のジャケットとハーフパンツが上品に彼を飾り、胸元の黄色いジャボが可愛らしく胸元を彩る。背はライラックよりも小柄で線も細く、目の前のワイルドな光景はとてもチグハグだ。
「おんや弟様、大収穫じゃないか」
「へへっ。これくらい、オレなら軽いって」
「へ?弟って、こいつおばちゃんより年上だろ?」
そんな光景にも女性は慣れた様子で、少年に声をかける。にやけた彼へ、ライラックが疑問をぶつけた。
「ん?お前、この村のやつじゃないな」
「うん!ライラック・シリンガーだ!呼びにくかったら、リラでもいいよ!」
「そっか。よろしくな、リラ!オレは領主の弟、フランクリー・スカーレット!じゃあオレも、フランでいいぜ!」
「よろしくなー!フラン!」
波長が合うのか、すぐに意気投合した少女と少年。がっしり握手したろところで、少女があっと声を上げた。
「ドワーフの友達って初めてできたよ!嬉しいな!」
「オレもエルフなんて初めて見たぜ」
「あたいはハーフだけどね!カーチャンはもっと耳が長いんだよ!」
ところで、エルフとドワーフの関係を言い表すならば、まずこれを語らなければならない。
「へえ。お前、冒険者なんだ」
「うん!今日は依頼のために来たんだよ!なのにあいつらったら、迷子になっちゃってさあ」
「ふーん。ホントに冒険者なの?なんか弱っちそうだな」
「……ほえ?…………、なんだとお!!」
水と油、犬と猿、勇者と魔王。これらに並べられるように、エルフとドワーフの組み合わせは挙げられる。つまり、はちゃめちゃに仲が悪い。
水中を自在に泳ぐエルフと、炎を気にせず活動できるドワーフ。高身長で俊敏なエルフと、鈍足な代わりに剛腕を持つドワーフ。エルフはマナ操作の名手と言われるが、ドワーフほど魔法の防御に優れた種族はいない。
まるで競い合うように互いの苦手分野ばかり伸びている彼らは、種族単位で不倶戴天の敵同士なのだ。
「なんだよ?」
「あんたみたいな、
「なっ!?お前、それは
「知らなーい。やーい、チービチービ」
ライラック130cm、フランクリー125cm。人はこれをどんぐりの背比べと言う。互いに涙目で睨み合う小さき者たち。そんな二人を女性は楽しそうに見つめる。一触即発の空気の中、家の扉が勢いよく押し開けられる。
「おっ、ここにいたかぁ!えがったえがった。ほれ、行くぞお」
「あっ、さっきのお兄さ——わあああぁぁぁぁ!?」
村の入口で出会った農夫が家に入ってきたかと思うと、彼はライラックを抱き抱えて走り去ってしまった。エクストリーム幼女誘拐の発生である。
「あら、あなた……。行っちゃったわ」
「相変わらず、そそっかしい旦那さんだなー」
女性は夫へ声をかけるが、既に彼の背中すら見えない。そんな彼に呆れる少年。
「もう!せっかく弟様が美味しそうな食べ物を持ってきてくれたのに、お礼も言わないなんて!行くよ、弟様!」
「ふえっ!?オレはいいから——わあああぁぁぁぁ!?」
女性は少年をガシッと抱えると、魔導モービルも斯くやという勢いで走り出す。当然、少年が狩って来てくれた山の恵みも持って行く。目まぐるしく変わる景色に、少年は堪らず絶叫した。
「以上!迷子になったお前らを探してた、あたいの冒険譚だよっ!」
「「迷子はおのれじゃーい!!」」
「
屋敷の応接室にて話し終えたライラックの両頬を、兄妹が引っ張り上げた。
「お前、元気だなあ……」
シャクヤクの膝を枕にソファに寝っ転がるフランクリーは、かなりグロッキーな様子だ。それとは正反対に、枕にされたメイドは恍惚の表情を浮かべている。
「悪いなシャクヤク、迷惑をかける」
「いえ、役得……ではなく、これも勤めですわ」
「シャクヤク……、背中撫でてぇ……」
「ありがとうございます!!!ではなくて、畏まりました、弟様」
それはもう締りのない笑顔と気味が悪い笑い声を漏らしながら、優しくフランクリーの背を撫でる。鼻の穴には、いつの間に持って来たのやら丸めたチリ紙が詰め込まれていた。
領主は出来たメイドだとしか思ってないし、兄妹はもはや彼女に関して考える事を放棄している。ライラックとフランクリーは、よく分かっていないようだ。そんな片割れであるライラックが、少年を見下ろして呟いた。
「うーわ、弱っちい」
「んなあっ!?」
口元に手を当て、これでもかと煽る少女。カッとなった少年は勢いよく起き上がり、メイドの顔面に額をぶつけた。彼女の鼻から、勢いよく鼻血が吹き出る。
「シャクヤクー!?」
「お嬢様、お気になさらず。これは怪我ではなく、自前ですわ」
「それはそれでどうなのよ」
悲鳴を上げたサンブリテニアへ、シャクヤクは冷静に答えた。流石に堪えきれなかったのか、ツッコミを入れるネモ。
「その血の量、洒落になってないぞ。本当に大丈夫なのか?」
「ええ、私は正常に作動しております。絡み合うロリショタを見れば、後100年は生きられますとも」
「いや、
「うん?シャクヤクさんはマギナイツだったんですか?」
ついでに説明しておくと、ライラックとフランクリーは取っ組み合いの喧嘩をしているだけで、如何わしい事など何一つしていない。シャクヤクのフィルターを通すと、そう見えないようだが。
「うふふ……、小さな子は素晴らしい……!」
魔導文明って実はろくでもないんじゃ、と訝しんでしまうフグリだった。
鈴木です!あひるじゃなくて鈴木ですッ!!
拙作では人名を植物、地名を車から取っています。理由はありません。何となくです。ムラーノ村は、鈴木のネーミングセンスが覚醒していると思います。今のところ、1番のお気に入りです。
何故にこんな面倒極まりない縛りをしているかと言うと、少し前にお花屋さんへ行く事があったからです。たまたま見かけた花が、フランクリー・スカーレットと言う真っ赤な薔薇でした。「これだ!」と思いました。身体に電流が走り抜けたかのような、衝撃を感じました。拙作にパクリキャラがやけに出てくるのは、フラン君がきっかけなのです。
え?車はって?友人にレイ〇ースをおすすめされたからです。めっちゃ面白いですね、レ〇アース。