こんにちはの人も鈴木です!!
こんばんはの人は田中なのです。
「きしゃああああ!」
「がるるるるるる!」
「リラ、いい加減にしなさい」
「フラン、お前もだ」
唸り声を上げて威嚇し合うライラックとフランクリー。それはまるで、野良猫と野良犬の縄張り争いのようだ。いつまでも終わらない喧嘩に、見かねてネモとサンブリテニアが止めに入る。
「本当にごめんなさい。まさか僕の仲間が、こんなにも弟さんと相性が悪いなんて」
「気にするな。こんな小さな村だ。子供も少なく、フランには中々友達ができなかったんだ。それに、相性はいいように思えるがね」
「お姉様!何言ってんだよ!オレとこいつは友達なんかじゃない!」
「ふえ……っ?」
姉の発言に食ってかかった弟。それに続いて小さく驚愕したのはライラックだ。
「あたいとお前は友達じゃないの……?」
「はぁ?おい、何泣いてんだよ!?」
翡翠のような目の端からポロポロ涙を流す少女へ、少年は慌てて駆け寄った。
「さっきのは違くて。勢いで言っちまったっつーか……、ホントはそんな事思ってないっつーか。ッ……!とにかく泣き止めよ!」
「だって、……だってえ!友達じゃないって言ったもん!!」
「あわわ、どうしよう!?」
「大人が割って入る事じゃないさ。黙って見ていろ」
焦るフグリを、サンブリテニアが手で制する。しばらく少女と少年のやり取りを観察していると、駄々っ子のように泣きじゃくる少女へ、少年が手袋を外した右手を差し出した。
「ほら、握手!お前も手を出せ!」
「……へ?あくしゅ?」
「そうだよ、仲直りの握手!そしたら、もっかい友達!分かるか!?」
「うん!あたいとお前は友達っ!!」
差し出された手を両手で握って、はじける笑顔でブンブン振るライラック。さっきまで大泣きしていた事など、もう忘れたようだ。
「何なんだよ、お前。調子狂うなあ……」
「ははは!勇敢なドワーフも、泣く子には敵わないものだ!」
空いた左手で、照れくさそうに頬を掻くフランクリー。そんな弟の姿を、姉はドワーフらしく豪快に笑い飛ばした。そして二人の従者であるメイドは、変態らしく豪快に噴出した鼻血の勢いで天井に突き刺さった。
「シャクヤクー!?」
先程まで威厳たっぷりに座っていたサンブリテニアが、血溜まりへ落下したメイドへ慌てて駆け寄った。
「嗚呼。わたくしの生涯に、一遍の悔いもありませんわ……」
「何言ってるんだ!?後100年は生きるって言ってただろう!?」
「僕の知る限りじゃ、ずっと台無しだったよ」
満足気な顔で気絶するメイドへ、フグリが呟いた。
「先程は、お見苦しい所をお見せしましたわ」
「ええ、本当にね」
「ネモも遠慮がなくなって来たなあ」
「お兄ちゃんには言われたくないけれどね」
僅か数分で復活したシャクヤクが、料理を運んで来る。血溜まりもいつの間にか無くなっていて、もう染みすら残っていない。気付けば5時を過ぎ、夕食の時間だ。
「ごはんー!?」
「騒ぐなよ、はしたないぜ」
「さて、ここでは我々の流儀に合わせてもらおうか」
全員に配膳し終えたメイドたちも席に座る。それを確認したサンブリテニアは音頭を取り、静かに目を閉じた。
「我らの闘争を見守るソートゥ神よ、勝ち得た糧を貴様にも捧げよう。——頂きます」
「頂きます」
領主の祈りに続いて、弟とメイドたちが乱れなく同じ言葉を紡ぐ。それに合わせて、冒険者たちも祈りの言葉を捧げた。
「農村の領主様の割には、随分荒々しい神を信じているのね」
「農業とは自然との戦いの連続さ。スローライフなどと巫山戯た事をのたまう奴には、無理矢理にでも鍬を振らせてやりたくなるよ。ああ、今更で悪いが、プリーストがいたのなら悪い事をしたな」
「私がそうだけど構わないわ。ホー=ロウ様は他の神へ祈る事を禁じていないもの」
静かに会食は進んでいく。時折ネモとサンブリテニアが互いの信仰する神について話し、フグリは興味深そうに滅多に食べられない手の込んだ料理を口に運ぶ。ライラックも元気ではあるが礼節は持ち合わせているようで、拙いテーブルマナーをフランクリーにダメ出しされながら美味しそうに食べている。そんな2人を眺めて鼻血をナプキンで拭いまくっているシャクヤクが、一番マナーがなっていないだろう。
食事を終えた冒険者たちがゆっくりしている時、月の光が差し込む窓の外から獣の遠吠えが聞こえた。
「この鳴き声は!」
「ああ、ウルフだ。嫌に近いな」
「よし、行こう!二人とも!」
フグリが立ち上がり、彼の予想をサンブリテニアが肯定する。その時ライラックは既に、座っていた椅子を転がしながら走り出していた。
「ライラックさん、先走らないで!」
「分かってるよ!」
「リラぁ!分かってんなら、ちょっとはスピード落とせーっ!」
「村のみんなに何かあったらどーするんだよ!?先行ってるよ!」
フグリとネモも全力で走るが、少女の背中はみるみるうちに小さくなる。さらに兄妹の後ろから、不格好なフォームでフランクリーが追いかける。
「はぁっ、はぁ……っ。あいつら早すぎる!」
「我々の足では、どうやっても分が悪いさ。それに、獣の遠吠えは威嚇行為。半端とは言え
「はふう……。お嬢様の太もも……、くるぶしぃ……」
息を切らせる少年の背後から、メイドにおぶられた姉が現れた。シャクヤクは姉と弟には聞こえないように小声で呟いているが、その内容は大変気持ち悪い。
「でもさ、お姉様!あいつ、冒険者の癖に弱そうだぜ!?ケガしたらどうするんだ!」
「ふっ、そんなにあいつの事が心配か?」
「はあ!?誰がリラの事なんか気にするかよ!」
「誰も半妖だとは言っていないがなあ?」
「うにゃあああっ!?」
「あぁんっ。弟様ったらお可愛い」
姉とその従者にからかわれて、顔を真っ赤にする少年。言葉にできない咆哮を上げ、涙目でプルプル震えている。ついでにメイドも、鼻を抑えて震えている。
「だいたい、あいつらが間に合ったところで勝てるのかよ」
少年は生暖かい視線から逃れるように、勢いよく前を向いて歩き出す。
「勝つさ。それどころか誰も殺す事なく、この異変の全てすら解決するだろうよ」
彼の疑問に答えるのは姉だ。運命でも見たかのように、力強く断言する。
「何でそんな事が言えんだ?あいつらとは、初めて会ったんだろ?」
「奴らの事など何も知らないよ。だが、奴らを送り出した所なら因縁があってね」
姉は懐から、可愛らしい花の模様がスタンプされた古い紙を見せた。
「『幸運の紫陽亭』。頭がイかれた
「それって、お姉様が家出してた時の話?」
嘗てを懐かしむように目を細める姉の顔を、少年は興味深そうに覗き込んだ。
「外の話はしてやらんと言ってるだろ?そんなに気になるなら、自分の目で確かめるんだな」
「だーっから、オレは外になんか興味ねえっての!」
「丁度、冒険者の戦いが見れる。終わってしまう前に少し急ごうか」
「弟様、後ろは塞がっていますので前にどうぞ。さあさあ、思いっきりぎゅっと抱き着いてください」
「興味ねえって言ってんだろ!話聞けよ!そんなに言うなら、あいつらのダッセエところでも見に行ってやるよ!」
「ああ、全人類の夢のロリショタサンドが……」
少年は屋敷の廊下をズカズカ歩み進む。言葉とは裏腹に、期待で爛々と紅い瞳を輝かせる。その後ろをメイドが沈んだ気持ちでトボトボ着いて行った。
「来るなら来い!オラの畑は襲わせねえだ!」
鍬を片手剣のように構え、守るべき畑の前で仁王立ちする農夫。彼へ5頭ものウルフが、じりじりと躙り寄る。戦いの心得のない一般人では、複数の肉食動物に食い殺されるのも時間の問題だろう。一頭のウルフが鋭い牙を光らせ、四肢に力を込める。今にも食らいつこうとしたその瞬間、1つの小柄な影が立ち塞がる。
「あたい参上!村は襲わせないよっ!」
それは、農夫が知る少女だ。小さな村で迷子になり、目的を忘れておやつを強請った年相応の幼い子供だ。然して、恐るべき獣たちと対峙してもニヤッとした笑みを崩さず、二刀のダガーで月光を反射させる彼女の姿は、昼の印象とは全く違って見えた。
「お嬢ちゃん、危ねえだよ!」
「お嬢ちゃんじゃないってば」
英雄譚の本の挿絵に描かれたような光景に目を奪われた農夫だが、すぐに我に返って少女へ呼びかける。少女は振り返って彼に答える。はち切れそうな緊張感の中で出された大声、背を向けた弱そうな敵。農夫の叫びが開戦の合図となり、ウルフが駆ける。
「冒険者、ライラック・シリンガーだよ。覚えておいてね!」
軽いステップで爪による攻撃を躱し、返す刀でダガーを一閃。空中で身を捻ったウルフだが、白銀の毛並みに赤い線が走った。
こんばんはも鈴木なんですッ!!!
小説を書いていて、物語を展開させる難しさに気付きました。他所様の作品を見てますと、およそ5〜10話もあったら起承転結までしっかり進んでいたりします。マジでどうやってるんでしょうか?
鈴木の場合、次回くらいでやっと承が終わりそうな気配を見せたところです。それもこれも、バカ話ばっかり書きたくなるのが悪いんです。我が家には、何故かシリアスさんがやって来てくれません。彼を迎える為に用意したお茶菓子は、腐海の如く腐り果てています。
そんなナメクジ展開な拙作ですが、またお目汚しに来てくれれば幸いです。