リムルが外に出ると、皆の変わり様に大層驚いた様だった。
村を挙げての、祝いの宴も終わり翌日にはリムルが改めて全員を広場に集めた。これから大事な話をみんなにするんだ。
これから皆で生活していく上でのルールを、リムルが告げる。
一つ、仲間内で争わない。
二つ、他種族を見下さない。
三つ、人間を襲わない。
何故人間を襲ってはならないのかと質問したリグルに、リムルが答えた。
リムルが人間を好きだから──単純だが、リムるらしいと言える答えに誰もNOとは言わなかった。
俺が物言いたげにリムルを見ると、
「……こっちが襲われた時は例外だ。その時は、命を守ることを優先してくれ」
こんなことを言っても意味がない、という事は現時点では俺しか知らない。
このルールは絶対に守られるべきである、と
この先どんなことが起ころうとも、みんなはリムルが好きだと言った人間を害する考えにはならない。
「まあ、時と場合によるけど、なるべく守るようにしてくれ!」
リムルの言葉に含まれるニュアンスが正しく皆に伝わることはない。リムルはこの村の者にとって、ある意味神にも等しい存在だ。その言葉は絶対でしかなく、"なるべく"なんてことは無理なんだ。
しかし、俺に何ができるだろうか。
あの厄災の日に介入しても、襲撃を防げたところでリムルは覚醒できないことになる。それではいずれ.....
それでも何か、何か出来るはずだ。
俺が備えなければならない、この先のあらゆる事態に
強力な軍事力、高い経済力、強固な政治力があれば、クレイマン達にも対抗できるはずなんだ。
その後紆余曲折あり、リグルドをゴブリン・ロードに任命し、上手く村を治めるようにと統治を依頼した。
...依頼というのは少々意地悪だな。俺たち二人が口を出さないように統治を丸投げしたに過ぎないんだ。ゴブリン達が独立するように仕向けたかったと言うのもあるが。
ただ、警備部隊や食糧調達部隊は普通に機能しているが、建築部隊になると、ゴブリン達では中々技術が足りないようだった。衣服、道具類の製作に関しても同じな様子だ。
.....俺が出張るのは、ドワーフ達と合流してからだ。今はまだ手を出すべきではない。自分達でどうにかさせるのが理想だ。
リムル視点
衣服や住居に関しては自分達だけではどうにもならない、ならば外部からの供給方法を探さなければ。
ということで、武装国家ドワルゴン、という国へ取引に行くことにした。
なんとそこはドワーフ達の王国で、英雄王の治める武装国家として有名らしい。この世界でもやはりドワーフと言えば鍛冶の達人であるらしく、ワクワクが止まらない。
エリゾを連れて行くかどうか悩んだが、今回は留守番してもらうことにした。
この森の中の脅威が、全てなくなったわけではない。敵がさらに出てくる可能性も否めないのだ。
「ドワーフ王国へは俺が直接行ってくる。エリゾは村に残っていてくれ」
「了解」
...意外にもエリゾは留守番役に何の文句も言わなかった。俺としてはありがたいことなんだが。留守番のご褒美に土産屋でも買っといてやるか
そばにいたリグルドにエリゾと村を託しておく。
「リグルド。俺のいない間、村のことを頼んだぞ」
「はっ! お任せ下さい、この命に代えましても村をお守り致します!」
出発の用意をしてくれているリグルドに言付けると、ムッキムキの筋肉を誇張しながら返事が来た。
じゃあ、行くとするか!ドワーフの王国へ!
エリゾ視点
リムルがドワルゴンへ行くことになった。
実際のところ俺も行きたかったが、行った先で逮捕されたり裁判になったりゴタゴタすることを考えたら、まあ留守番の方が良さげだな
それに一応リムルと二人で村の守護者?守護神?ってことになってるのに、両方ともいなくなるのは無責任な感じがする。
「ドワーフ王国へは俺が直接行ってくる。エリゾは村に残っていてくれ」
「了解」
「危ないことはするなよ? もし敵が来て、話し合いも無理でいきなり攻撃してくるようならこっちも問答無用でいいが、くれぐれも気をつけてくれよ?」
「分かってるよ、リムル」
心配性すぎる。それに甘すぎる。リムルらしいと言えばそうなんだが
敵が明確な意思を持って村に来るのならその時点で相手を消すしかない。村を守るためには必要な悪者をおれがやるんだ。
「お気を付けて、行ってらっしゃいませー!」
ドワルゴンへ行くメンバーはリムルと、リグルやゴブタの他に数人のホブゴブリン。そしてランガを始めとしたテンペストウルフ達が、皆を乗せて走る役目だ。
皆の出発を見送って、居残り組は村の立て直し作業に戻る。
ただ俺はその作業を手伝うわけにもいかない、どうしようかな
そこで俺は閃いた、直接手伝うのではなく、サポートなら大丈夫なはずだと。手始めに水を運んでいた子供に目をつける。
「頑張っているね、重くないかい?」
「少し重いですが、大丈夫です!」
子供には水の往復運搬は少し辛いだろう。俺は万能物質で、木製の台車の様なものを作った。
「これをつかえば、少し楽になるだろう?」
「ありがとうございます!、すごく楽になりました!」
子供の反応を確認して、次々に村の中を周り、ちょっとした道具を渡す。
万能物質で作成した道具は、普通に劣化する様にも、状態が変化しない様にも作れる。今回は普通の木材と同じ条件で台車を作ったが。
村を回っていると、ふと話しかけられる。
「エリゾ様。少々よろしいですか?」
「リグルドか? どうかしたかな?」
「ゴブリンの族長達が、面会を求めてきております」
リグルドの話を聞くと、確かにイベントがあったなと思い出した。
各地からゴブリン村の長達が来て、リムルの部下にして欲しいと言ってくるやつだ。
「リムル様がご不在の今、エリゾ様にお伺いを立てねばなりませんからな」
「...村長はリグルドだよな?」
「我らの主は、リムル様とエリゾ様でございます」
「リグルド、確かに俺も村の守護者なんだろうけど、村長は君だろう?
留守の間村を任されたのは君なんだ」
「しかし、彼らはリムル様に会いに来ました、守護者であるリムル様に会いに来たのならば同じ守護者のエリゾ様が対応なさるべきです!」
「んん...」
あながち間違いでもない。むしろ正しくもある。木は向かないが、対応しに行くとするか。
「...分かった、俺が行こう。」
「おお! ではこちらにお願いします!」
リグルドに案内され、俺は村の集会所に向かう。
「お待たせして申し訳ありません、私はエリゾ=テンペストです。村の主であるリムル=テンペストが不在のため、私がお話を伺いましょう」
各ゴブリン村からやってきた村長達と、そのお付きが待っていた。
俺はわざと、妖気を多めに滲ませながら挨拶をする。
「お初にお目に掛かります、偉大なる御方。 リグルド殿の治める集落の守護者となられた貴方様方の武勇の数々、聞き及んでおります。この度はどうか、我々を貴方様方の配下の末席に加えて頂きたく、参上した次第に御座います!!」
「.........」
目の前に並ぶ四人の族長……この四人は、ルグルド(予定)やリリナ(予定)ってことだよな。まだあまり個性がなくてわかり辛いな……体格も同じようだし、誰が誰になるんだ?
「あの、エリゾ様、何かお気に障ることを?」
無言でゴブリン達の顔を見つめすぎて、気付けば向こうの顔色が悪くなっていたのだ。しまったなコレは
「失礼、続けてください。」
村長達の話は、俺が知っているものと変わりなかった。
ヴェルドラが消えたため、大森林の各地で覇権争いが起き始めたこと。弱小種族であるゴブリン達では抵抗も出来ず、蹂躙される道しか残されていないこと。そこへ最近リグルド達の村が強大な守護者の庇護を得て台頭してきたという噂を聞き付け、ぜひその配下に加わりたいということ。
「お話は良くわかりました」
彼らも、テンペストには欠かせない人材となるんだ。
......前世から知っていることだが、俺が勝手に決めていい話ではない。
俺は改まって話す
「見ての通り、俺はあくまで村の主人ではなく、代理なのです。村の主人であるリムル・テンペストはスライムですが、それでもこの村の一員となり俺達に従う意思は変わらないのか、お聞きしたい」
ざわめくゴブリン達だが、俺が放出している妖気は先程から同じ量。さらに『威圧』も上乗せすると、俺の威圧感に震え上がるゴブリン達。
「もちろんでございます強き者よ! 我らをお認め下さった暁には、絶対の忠誠を!」
「その言葉が偽りでないことを祈ります。最終的に貴方達を受け入れるかどうかの判断はリムルが下しますが、それまではこの村でお待ちください」
妖気を引っ込め『威圧』を解くと、村長達は脱力し、ホッとした雰囲気になった。進化前のゴブリンを脅しすぎかもしれないが、裏切りは許さないと言っておくことは統治の上で重要だ。
客人を手厚くもてなすようにと、リグルドに頼んだ。
村の守護者も楽じゃないな、と改めて思うのであった。
ステータス
名前:エリゾ (工藤 匠)
種族:人魔族
称号:村の守護者(副)
魔法:地属性魔法 陽光魔法 太陽行使(格撃魔法)
加護:暴風の紋章
ユニークスキル:『万能物質』『抽出』『指導者シメスモノ』
エクストラスキル:『魔力感知』
コモンスキル:『念話』『粘糸、鋼糸』『麻痺吐息』『超音波』『身体装甲』『熱源感知』『植物操作』『超嗅覚』『思念伝達』『威圧』
耐性:物理攻撃耐性、痛覚無効、捕食無効