転生したらキングメーカーだった件   作:ヴァシレフスキー

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08.火焔

 シズ、静江井沢。この世界に、大きな影響を与えた存在

 シズさんが戦時中の、空襲で燃え盛る日本からこの世界へ召喚されたこと、俺やリムルが転生してきた経緯。リムルの『思念伝達』で戦後の日本の様子、復興した街の景色を伝えられ、シズさんは喜んだ。

 

 カイジンが来て、リムルは仕事の話のために行ってしまい、俺とシズさんが残った。

 具合が悪いシズさんを休ませてから戻ろうと、私は草の上に座り込んだシズさんの隣に佇む。シズさんの目は、街を向いているのに、どこか違う場所を見ている様な遠い目をしていた。

 

「あのスライムさんとは、ずっと一緒にいるの?」

「ああ、転生してきた洞窟で会って、今日までずっと一緒だったよ」

「じゃあ寂しくなかったね。羨ましいな...」

 

 ......母親と死に別れてこの世界に召喚されて、大事な人を炎で焼いてしまって。出会えた勇者に、信頼していた人に理由もわからず置いていかれて、離れ離れになって。

 この世の中の悲しみは、全て彼女のためにあるような、そんな事を今まで経験してきたのだ。

 そんな彼女に、私は何も言えなかった。

 シズさんは寂しくて、ずっと一人で苦しんできたのに

 

「シズさん、この街は気に入ってもらえたかな」

「...良い街だね。みんな生き生きとしていて幸せそうにしているよ」

 

 シズさんのあの目、望郷のような、手の届かない故郷を思う寂しそうな目。

 この世界はどうしようもなく理不尽だ。シズさんは何も悪いことをしていないのに。

 強い国が強い者が、力無き物を足蹴にし続けてきた結果、シズさんの様な被害者が生まれたんだ。シズさんの様な人を減らすには、やっぱり、あの手段しか......

 

「おーい! シズさーん!」

 

 エレンが手を振りながらやって来た。カバルとギドの姿もある。

 底なしの明るい声が、私の思索を止めてしまった。

 

「こんな所にいたんだな。おー、すげぇ見晴らしいいな」

「しかし、魔物が町を作ってるとは驚きやしたよねえ」

「リムルさんがねぇ、夕御飯もごちそうしてくれるって! 行きましょうシズさん、エリゾさんも!」

 

 シズさんが頷いて、私の肩を借りて立ち上がる。

 

「シズさん。楽しい仲間達だね」

「ええ。本当にいい子達...」

 

 こうして旅の仲間や俺達と出会えたことが、少しでもシズさんの救いになればいい。

 ...根本的には、何も解決していないんだ。原因から対処しないとシズさんの様な人はこれからも、

 

 

リムル視点

 

 

 翌日俺は、エリゾ、リグルド、リグルと共に、冒険者達の見送りのため町外れにいた。準備を終えたカバルとギドはもう来ているが、女性陣の到着がまだだった。

 三人組は元来た町へ調査報告に戻り、シズさんは自分の召喚主を探す旅を続けるらしい。

 

「お待たせ!」

「ったく、遅せぇぞエレン。シズさんもよ」

 

 エレンの元気な声に、カバルが肩を竦める。

 後ろから仮面姿で歩いて来たシズさんが、ごめんなさいと笑みを含んだ声を上げ、そして異変が起こった。

苦しげに呻いて身体を折ったシズさんの仮面に亀裂が走り、絶叫が響く。

 魔力と共に爆炎が立ち昇り、シズさんを巻き込んで巨大な火柱となる。

 

「な...何だありゃ! シズさん、どうしちまったんだ!?」

「待てよ、シズ、シズエ...? まさか..."爆炎の支配者"、シズエ・イザワでやんすか!?」

「そ、それって、五十年くらい前に活躍したギルドの英雄……最強の精霊使役者の...!?」

 

 なるほど、シズさんはその英雄本人なのだろう。

 そして恐らくこれが、シズさんの言っていた"呪い"なのだ。

 リグルドに皆を避難させるよう命令し、ランガを待機させる。

 吹き上がる炎が途切れた時、シズさんの姿はなく、出現したのは炎の巨人。

 

「炎の上位精霊、イフリート...!」

「あんなの、どうやっても勝てないんですけどぉ!」

「短い人生だったでやんすねぇ...」

 

 言いながらも三人組は戦う構えを見せ、逃げ出す気配はない。

 さっさと逃げろと忠告したが、元からそのつもりはないようだ。

 

「逃げるなんて、そんなわけにいくかよ!」

「俺達の仲間でやんす!」

「放っとけないわよぅ!」

 

 こいつら、

 不覚にもじんと来た。シズさん、あんたは仲間に恵まれてるな。

 

「エリゾ!、気をつけろよ!」

「分かってるさ!、リムルも無茶するなよ!」

 

 エリゾもここで引く気は無いようだ。二人でイフリートに向き直る。

 

「おい! お前の目的は何だ!?」

 

 話し合いの余地を確認するも、相手は無言。それどころか洒落では済まない規模の火炎球を次々と発生させ、攻撃してくる。シズさんが心配だが、イフリートにダメージを与えて無力化するしかなさそうだ。

 ランガの背に乗り、回避に専念しながら隙を窺うも、『水刃』では相手に届く前に蒸発してしまうし……水蒸気爆発なんて論外だ。

 

 三体の炎の精霊、サラマンダーには三人組が対峙していた。

 カバルが前衛で炎を防ぐ障壁を張り、エレンが後方から魔法攻撃。ギドは近接戦闘に備えて短剣を構えていて、連携の取れた良いパーティーだと感心する。

 エレンの魔法、"水氷大魔槍"は、サラマンダーに効果があるようだ。

 閃いた俺はその氷魔法を『捕食』し、解析と習得に成功した。早速使用した魔法は何故だか格段に威力が上がり、"水氷大魔散弾"となっていたが、これで俺も戦える。

 

 

エリゾ視点

 

 

 シズさんがイフリートを制御しきれなくなり、人格の主導権を奪われた。シズさんを取り込んで現れたイフリートから俺達へと向けられるのは、強い敵意。

 ...討伐はリムルに任せておけばいい。私にはやるべき事がある。

 

 エレンの"水氷大魔槍"がサラマンダーを貫く。反撃とばかりに吐き出された炎がカバルの魔法障壁に防がれると、サラマンダー達は連続で炎のブレスを吹き出し始める。

 

「あぢぢぢ! 複数攻撃は卑怯だぞ……!」

「ちょっとぉ、しっかりしてよカバル!」

 

 膨れ上がった炎がバリアの耐久を上回りそうだ。

そろそろ、戦闘に介入しよう。周囲に散布した万能物質を使い、サラマンダーと3人の間に真空を作り出す。炎は瞬く間に無力化される。

 

《教。サラマンダー及びイフリートの情報抽出が完了しました。》

 

 待ってましたと言わんばかりにサラマンダーに攻撃を仕掛ける。

 万能物質を水に変化させ、大質量の奔流にしてサラマンダーの周りを囲い込む。すかさず三体の直上に移動し、手を下にかざす。

 

 前回使用した"陽電子ビーム"を、更に参考元に寄せた魔法をお見舞いする

 新しく開発した"陽電子衝撃砲"を三体に浴びせる、凄まじい衝撃が地面を割り、三体の影は跡形もなく消え去った。破片が飛び散ったが、大質量の水がクッションとなり周囲への被害は最小限となった。

 無論、地面には数メートルの大穴が空いたが

 

 成功だ! 心の中で歓喜するが、威力を絞ってもこの威力では全力を出せば街くらい吹き飛ぶとんでも魔法になってしまう。使いどきは選ばなければ。

 

「あ、ありがとうエリゾさん!」

「怪我はないみたいだね」

 

 3人を安全な場所へ、ゴブリン達に移動させるように頼んだ。

 ゴブリン達が丁寧にカバル達を安全な場所へ降ろし、3人の傷の具合を確認する。

 その時、眼下の建設予定地に発生した、天を衝くほどの巨大な火柱。あれは、イフリートの"炎化爆獄陣"...その場の皆がリムルと私を心配してざわめき出す。

 私はイフリートから距離を取り、後をリムルに任せた。

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