バイオハザード:リサ・トレヴァー 〜怨霊と血濡れのトマホーク〜   作:ai試し

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Z級、序盤のお色気は欠かせない!


第2章 コードベロニカ
プロローグ


アンブレラ南極研究所から辛くも脱出したリサ達。

 

エンジンの轟音が機内に響き渡る。

脱出した飛行機の中、窓の外には凍てつく南極の景色が遠ざかっていた。

 

機内の空気は張り詰めていた。クリスやクレア、そしてスティーブが安堵と疲労に身を任せている傍らでリサ・トレヴァーは静かにしかし鋭い視線を膝の上に横たわる少女へと向けていた。

 

アレクシア・アシュフォード。

かつてはアンブレラ南極研究所の支配者として君臨し、自らを新人類と信じて疑わなかった傲慢な女王。だが今彼女の姿は見る影もなく衰えていた。外見こそ12歳の美少女に戻っていたが、その肌は青白く、呼吸は浅い。

 

リサの触手によって強制的に肉体を操られ、ついでにリサのウィルスに感染した代償かあるいは適合させたベロニカウィルスの暴走か。アレクシアの限界はすぐそこまで来ていた。

 

(……助けろ)

 

頭の中で、低く、重い声が響く。

インディアンの怨霊だ。リサの精神に深く根を張り、彼女の狂気を御している古の魂。

 

リサは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「……ぅ……」

言葉にならない呻きが漏れる。彼女にとって、この傲慢な小娘を救う理由はどこにもない。アンブレラの血を引く者。征服者の末裔。本来ならその細い首をトマホークで叩き切って終わらせるべき存在だ。

 

だが、怨霊の意志は固かった。

(この魂はまだ子供だ。汚れはあるが救う価値はある。更生の機会を与えよ)

 

リサは忌々しげに舌打ちをした。それでも抗えない。怨霊の導きは彼女にとって唯一の指針となるからだった。

 

リサはゆっくりとアレクシアを抱き寄せた。

かつてラクーンシティでGウィルスに感染したシェリーに施した方法を思い出す。自らの体液調整されたウィルスを再度直接注入し調整することで崩壊しつつある細胞を繋ぎ止める。

 

リサはアレクシアの肩口に顔を寄せ、鋭い牙を立てようとした。

 

「……っ! やめて! 痛いのは嫌よ!」

 

瀕死の状態でありながら、アレクシアは弱々しく、しかし明確な拒絶の声を上げた。女王としてのプライドだけは細胞のひとつひとつそしてウィルスのひとつひとつにまで刻み込まれているらしい。

 

リサは動きを止め、虚空(怨霊)に向かって問いかけた。

「……んぅ?(本当に助ける必要があるの?)」

 

(子供だ。誇り高き戦士は弱き子を切り捨てぬ。それが我らとあの傲慢なアングロサクソンどもとの決定的な違いだ)

 

その言葉にリサは深く溜息をついた。

 

わずかに無意識だろうアレクシアがママと声に出した気がする。

 

納得はいかない。だが不思議と嫌な気はしなかった。自分もまたかつては誰かにこうして手を差し伸べてほしかった子供だったはずだから。

 

 

機内の空気は逃げ場のない密室の中でじっとりと湿った熱に支配されていた。

リサは膝の上に横たわるアレクシアを、まるで獲物を品定めする猛獣のような眼差しで見下ろしていた。14歳の少女の皮を被った怪物は、白く節くれだった指先で、アレクシアの細い顎を強引に、そして逃げられないように固定した。

 

「……っ! やめてと言っているでしょう! この下等な……!」

 

アレクシアは鋭い声を上げ、小さな手でリサの肩を押し返そうとした。12歳の少女に戻った彼女の肌は死人のように青白く不健康に透き通っている。その瞳には、絶望的な状況にあってもなお、アッシュフォード家の血がもたらす傲慢な矜持が宿っていた。

 

だが、リサにとってその抵抗は心地よい刺激でしかなかった。

リサは低く唸り声を上げると、獲物を喰らうようにアレクシアの唇へと顔を近づけた。

 

触れる直前、互いの吐息が混じり合う。

そこにあるのは愛などではなく、ただの治療だ。

 

チュッ――。

 

リサの厚い唇が、アレクシアの薄く震える唇を強引に塞いだ。

最初のアレクシアの反応は激しい拒絶だった。彼女は口を閉じて抵抗し、リサの頬を叩こうとしたが、リサはその細い手首を片手で軽々と制圧しさらに深く無理やりに口内へと侵入した。

 

「んんーーっ!!」

 

鼻にかかった悲鳴が漏れる。

リサはむさぼるようにアレクシアの唇を吸い上げ口腔の隅々までを蹂躙し始めた。それは接吻というよりも細胞レベルでの強奪に近い行為だった。

 

リサの口内からどろりとした濃厚な唾液と共に調整されたウィルスの奔流が流れ込む。

始祖、T、G……そしてベロニカ。数多のウィルスたちがリサという特異点を通じて最適化されアレクシアの喉へ体と注ぎ込まれていく。

 

アレクシアは激しく身悶えした。口内をかき回される不快感と同時に押し寄せる未知の熱量。

拒絶しようとする意志とは裏腹に、彼女の身体は飢えていた細胞がリサの生命力を貪り始めたことで次第に戦う力を失っていった。

 

抵抗していた手から力が抜け、アレクシアの指先がリサの衣服を弱々しく掴む。

拒絶の色に染まっていた瞳が次第に熱に浮かされたように潤み焦点がぼやけ始めた。

 

口内の蹂躙はさらに激しさを増していった。

リサはアレクシアが抵抗を止めたことを悟ると、まるで飢えた獣のようにより深く、より濃厚にその唇を貪り始めた。ズチュッ、ジュルリと、密閉された口腔内で粘膜が擦れ合う卑猥な音が鳴り響く。

 

(……っ、あぁ……!)

 

アレクシアの脳裏で、火花が散った。

流れ込んでくるのは単なるウィルスではない。リサという怪物が持つ底なしの生命力だ。それがアレクシアの血管を駆け巡り死に絶えかけていた細胞の一つひとつを無理やり叩き起こしていく。

 

変化は劇的だった。

死人のように青白かったアレクシアの頬にじわりと赤みが差した。血の気が戻るというレベルではない。内側から沸騰するような熱量によって、陶器のように冷たかった肌が、しっとりと瑞々しい桃色へと染まっていく。

 

リサの舌が、アレクシアの口蓋を執拗に撫で上げ、歯列をなぞり、喉の奥までを侵食していく。そのたびに、アレクシアの身体は快楽にも似た衝撃に跳ね上がり腰が不自然に浮いた。

12歳の幼い肢体がリサの膝の上でなすがままに揺れる。

 

「んぅ……ふぁ……っ!」

 

もはや拒絶の声は出ない。アレクシアはただリサから注ぎ込まれる濃厚な生命力に身を委ねていた。

意識が混濁し自分が誰であるかさえ忘れそうになる。ただ、目の前の怪物がもたらす熱い奔流だけが世界のすべてとなり、彼女の身体は本能的にその快楽を欲してリサの首に腕を回し自ら深く吸い付こうとしていた。

 

それは、生物としての根源的な欲求だった。

弱者が強者の生命力を啜り、生き延びようとする生存本能。アレクシアは自分がリサという怪物に完全に依存し飲み込まれていく感覚に、抗いがたい快感を覚えていた。

 

やがて、リサがゆっくりと唇を離した。

 

銀色の濃厚な唾液の糸が、二人の唇の間で長くねっとりと伸びる。

アレクシアは口を半開きにしたまま焦点の定まらない瞳でリサを見上げていた。呼吸は激しく乱れ胸元が大きく上下している。

 

その瞬間、アレクシアの心に名残惜しさが突き上げた。

(……まだ、足りない……)

 

理性が戻る直前の空白の時間。彼女は無意識に、もう一度あの熱い侵食を求めリサの唇へと顔を寄せようとした。

 

ほんの一瞬、アレクシアの意識は空白に塗り潰されていた。

唇が離れたことによる喪失感。喉の奥に残る熱い余韻。彼女は無意識に自分を救った怪物の唇をもう一度求めようと吸い寄せられるように顔を近づけた。

 

だが、その直後。

脳内に停滞していた霧が晴れ、誇りという名の冷徹な理性が激しい衝撃と共に彼女の意識に回帰した。

 

(……っ!!)

 

アレクシアは弾かれたようにリサから身を引いた。

自分の身体がどうなっていたか。自分がどのような表情で、この怪物にすがりついていたか。その事実を自覚した瞬間羞恥と怒りが彼女の胸を突き上げた。

 

しかし、同時に身体に走る感覚はかつてないほどに研ぎ澄まされていた。

青白かった肌は見違えるほどに艶やかになり、細胞の一つひとつが活性化し内側から溢れるような力がみなぎっている。リサによる「治療」は完璧に近い形で完了していた。

 

アレクシアは荒い呼吸を整えながら乱れた衣服を指先で整えた。

潤んだ瞳には再びあの傲慢な光が宿っている。彼女は口端に付着した銀色の糸を手の甲で乱暴に拭うと不機嫌そうにリサを睨みつけた。

 

「……っ! 最悪よ! 本当に最低だわ!」

 

その声は、先ほどまでの弱々しさは微塵もなく、いつもの高圧的な女王の響きを取り戻していた。

 

「誰があなたのような化け物に、こんな破廉恥な真似をしろと言ったかしら!? 私を治療するにしても、もっと知的で洗練された方法があったはずよ! この野蛮な……っ!」

 

リサはそんなアレクシアの怒声を聞きながら、鼻を鳴らして不機嫌そうに視線を逸らした。

「……んぅ」

(助けてやったのに、文句ばかりだ)

 

リサにとって、この小娘の傲慢さはどうでもいいことだった。ただ、目の前の少女が再び不快なほどに生意気な表情を取り戻したことである種の安心感を覚えたのも事実である。

 

アレクシアはまだ顔を赤く染めたまま、ぷいっと横を向いた。

「勘違いしないで。あなたが私にしたのは単なる『処置』よ! 感謝なんてしてないわ。むしろ、私の純潔な口内を汚した罪は重いわね!」

 

そう言い放ちながらも、アレクシアは密かに自分の指先を見つめた。そこにはリサのウィルスが混ざり合い、以前よりも強固になった自らの生命力が宿っている。

 

彼女は小さく唇を噛んだ。

心の中で、あの濃厚な侵食がもたらした禁断の快楽を完全に消し去ることはできず、それがさらに彼女のプライドを逆撫でしていた。

 

機内に流れる奇妙な沈黙を破ったのは、クリス・レッドフィールドだった。

彼は複雑な表情でアレクシアを見つめていた。彼女はアンブレラという巨悪の核心に触れている人物であり組織を完全に壊滅させ、倒産に追い込むための極めて重要な鍵となる存在だ。

 

「……アレクシア・アシュフォード。話はできそうだな」

 

クリスの問いかけは真剣だった。だが、アレクシアにとってそれは路傍の石に話しかけられたのと同義だった。彼女は視線すら合わせず不快そうに鼻を鳴らし、足を組みなおした。

 

「ふん。私に質問をする権利があなたにあると思っているのかしら?」

 

冷徹な拒絶。しかし、アレクシアはふと口端を吊り上げた。自分をこの窮地に追い込み、あるいは救い出したこの状況を、一種の遊戯として楽しんでいる節があった。

 

「まあいいわ。私をここまで追い込んだご褒美に、一つだけ教えてあげる」

 

彼女は身を乗り出し馬鹿にしたようにクリスを見下しながら残酷な真実を告げた。

 

「Tウィルス……。抗体を持っていたとしても無駄よ。あの毒は狡猾なの。体内で静かに変化し続け、ある時宿主が最も油断した瞬間に再び牙をむくわ、ふふ、アンブレラの資料にもあるわ、確認は自分でなさい」

 

クリスの顔に戦慄が走る。絶望的な宣告だった。隣で聞いていたクレアが、思わず声を上げた。

「何を……! そんなことが本当なの!?」

 

アレクシアはクレアの動揺を愉しむように鼻で笑った。

「本当よ。まあ、あなたたちのような凡人が理解するには時間がかかるでしょうね」

 

そして、アレクシアはふいっと窓の外へ視線を移した。眼下には果てしなく広がる紺碧の海が広がっている。

 

「……さて、ここで降りることにしますわ」

 

唐突な宣言と共に、アレクシアは小さな拳を突き出した。

ガシャァァン!!

凄まじい音と共に機体の窓ガラスが粉砕され、猛烈な風が機内に吹き込んだ。クリスとクレアが驚愕して何かに摑まる、アレクシアは風に髪をなびかせ不敵な笑みを浮かべた。

 

「いい? よく聞きなさい。……『ファミリー』、『コネクション』。この言葉の意味が分かったなら、ラクーンシティへ来なさい。そこで待っているわ」

 

意味深な言葉を残すと、アレクシアは隣にいたリサの腕を強引に掴みそのまま機外へと飛び降りようとした。

 

だが、リサは動かなかった。

14歳の美少女の姿をしていながら、その体重と筋力は生物兵器のそれだ。地面に根を張った大樹のように微動だにせず、「なぜ貴様のようなアンブレラと一緒に行かなければならない」と言いたげな、冷ややかな視線をアレクシアに向ける。

 

「ちょっと! 何をしているのよ! 早く来なさい!」

 

アレクシアは必死にリサの腕を引っ張る。顔を真っ赤にして踏ん張る12歳の少女と、それを呆れたように見下ろす怪物の構図に、クリスが思わず口を開いた。

「おい……! 正気か! ここから飛び降りてどうする!」

 

クレアも必死に叫ぶ。

「リサ! 行っちゃダメよ! 戻ってきなさい!」

 

その時、リサの精神に深く沈んでいた怨霊が、深いため息をついた。

(……今はアレクシアに従え。彼女が口にした言葉には、アンブレラを根絶やしにするための重要な情報が隠されている)

 

リサは不承不承ながらも、隣にいたクレアに視線を向けた。

「……シェリー」

 

リサは諦めたように、アレクシアの手を握り返した。

直後、二人の身体は重力に従い、高度数千メートルから真っ逆さまに海へと落下していく。

 

「くそ! 逃げられた!!」

クリスの怒鳴り声と、呆然とするクレアの視線を背中に受けながら、2人の少女は空を切り裂いた。

 

風切り音がが響く空中で、アレクシアは当然のようにリサの肩に足をかけ、彼女を自分の下に配置した。自分が着水する際の衝撃をすべてリサに肩代わりさせようという、傲慢極まりない姿勢である。

 

「ふふん! あなたが先よ! 私のクッションになりなさい!」

 

空中で高笑いする小さな女王と、その下で「後で絶対に殺してやる」という殺意を込めた目で彼女を見上げるリサ。

二人は激しい風切り音と共に、紺碧の海へと突き刺さっていった。

 

 

猛烈な風が吹き荒れる機内は窓ガラスが砕け散ったことで混沌に包まれている。

リサとアレクシアという2人の少女が海へと消えた直後、そこには呆然と立ち尽くすクリスとクレアだけが取り残されている。

 

その喧騒をさらに切り裂いたのは、操縦席から響き渡る怒鳴り声だ。

 

「おい!! 何があったんだよ!! 今、機体に衝撃があったぞ! 」

 

スティーブ・バーンサイドの声が風の音に混じって激しく響く。彼は計器類が乱れたことに気づき、パニックに近い状態で叫んでいる。

 

クリスは砕けた窓の縁を掴み、空っぽになった空間を鋭い視線で見つめながら答える。

「……アレクシアが窓を破って逃げた! リサも一緒だ!」

 

「正気か!? こんな高度から飛び降りて生きていられるわけないだろうが!!」

 

スティーブの絶叫が聞こえてくるが、クリスはそれを遮るように冷静に指示を飛ばす。

「とにかく急いで高度を下げてくれ! 」

 

操縦席へと戻るスティーブの怒鳴り声が遠ざかる中、隣にいたクレアが不安げな表情でクリスに話しかける。

 

「……ねえ、兄さん。さっきアレクシアが言っていたこと……Tウィルスの話、本当のことかしら?」

 

クリスは沈黙した。抗体を持っていてもいずれ体内で変化し宿主に牙をむく。その言葉がもし真実であれば生存者たちにとってこれ以上の絶望はない。だが、アレクシアのあの心底人を見下した瞳に嘘をついている様子は見られなかった。

 

「……ああ。あの傲慢な女が、わざわざ『ご褒美』だと言ってまでくだらない嘘をつくとは思えない」

 

クリスの答えは短かったがそこには深い懸念が込められていた。彼は一度視線を窓の外へ向け海へと消えた二人の軌跡を追うように空を見つめる。そして、確認するようにクレアに問いかけた。

 

「……聞き間違いはなかったな。彼女が言った単語だ。『ファミリー』と『コネクション』。これで間違いないか?」

 

クレアはゆっくりとうなずく。

「ええ。間違いないわ」

 

二人の間に重い沈黙が流れる。

アレクシアという女が残した、あまりに不気味で不可解な招待状。それが何を意味するのか、そしてリサと共にどこへ向かったのか。

 

彼らはまだ、この一連の事件の本当の底が見えていないことを悟った。

 

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