バイオハザード:リサ・トレヴァー 〜怨霊と血濡れのトマホーク〜   作:ai試し

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幕間5

夕暮れ時。空が赤紫に染まり始めた頃、忠犬レッドは至福の心地に浸っていた。

 

シェリーと一緒に庭を走り回り、たっぷり運動をした後だ。この後は美味しい晩ごはんを食べて、大好きなシェリーの隣で眠るだけ。そんな充足した一日の締めくくりに向けて、レッドはいつもの習慣通り、マーキングをするためお気に入りの茂みへと向かった。

 

レッドがちょうど腰を上げ、マーキングを開始しようとしたその瞬間だった。

足元の地面が突然爆発したように弾け飛び、ぬるりとした太い触手が猛スピードで飛び出してきた。

 

「んっ!?」

 

反応する間もなかった。触手は電光石火の速さでレッドの口を完全に塞ぎ、そのまま強引に地下へと引きずり込んだ。

暗い土の中、混乱し、激しく足をバタつかせていたレッドだったが、やがて目の前に現れた人物を見て、その動きがピタリと止まった。

 

そこにいたのは、美しい装いをしてはいたが、懐かしい匂いを纏った少女——リサ・トレヴァーだった。

 

レッドの瞳が大きく見開かれる。

驚きと混乱で耳がピンと立ち、眉間にシワが寄る。喜びよりも先に、「なぜ!」という困惑がレッドの表情を支配していた。

 

しかし、リサに再会の歓談をする余裕はなかった。彼女はレッドの首根っこを軽く掴むと、鋭い視線で彼を見据えた。言葉こそ出ないが、その眼差しには明確な命令が込められていた。

 

(いいか、レッド。あの子——シェリーを、今お前がいたあの茂みまで誘い出せ)

 

リサの意思が、圧力となってレッドに伝わる。

レッドは絶望的な表情を浮かべた。

 

彼は激しく首を横に振り、拒否の意志を示す。目は涙目で、「おいしいごはん!」と全力で訴えていた。だが、リサには何も伝わらない。リサの手がわずかに力を強め、触手が彼の足元をじわりと締め付ける。その圧力は、生物兵器としての圧倒的な力の差を見せつけていた。

 

レッドは、諦めたように深く溜息をつき、耳を力なく垂らした。

 

観念した彼は、小さく「ワン」と短く絶望の返事をした。それは同意というよりも、ただの諦めの合図だった。

 

レッドは複雑な心境のまま、ゆっくりとシェリーのもとへと戻っていった。

 

「どうしたの、レッド? まだ遊び足りない?」

 

シェリーが屈んで彼に声をかける。レッドは申し訳なさそうに視線を逸らしながらも、優しく彼女の裾を引っ張り、先ほど自分が引きずり込まれたあの茂みへと誘導した。

 

「ふふっ、あそこに何かあるのね」

 

シェリーが茂みをかき分けて足を踏み入れた瞬間、彼女は目を見開いた。

そこには、地面にぽっかりと口を開けた穴があったからだ。

 

(……! 誰かいるの?)

 

シェリーが身を乗り出したときだった。穴の底からぬるりと一本の触手が伸び上がり、その先端でしっかりと「骨製のトマホーク」を握りしめていた。

 

鋭い刃先が目の前に突き出されたことに、シェリーは思わず息を呑んで後ずさりした。あまりに唐突な光景に、彼女は混乱して隣のレッドを見た。

(レッド、これ……どういうこと?)

 

レッドは困ったように眉を寄せ、視線を泳がせた。しかし、先ほどリサが見せつけた圧倒的な力と、「あの子を助け出したい」という切実な願いを知っている彼は、小さく「ワン」と頷いた。

 

その合図と同時に、トマホークを握っていた触手が静かに穴の中へと戻っていった。代わりに現れたのは、武器を持たない、滑らかで穏やかな触手だった。

 

その触手は、驚くシェリーにそっと寄り添い、壊れ物を扱うかのような丁寧さで彼女の身体を包み込んだ。恐怖を感じさせる強引さは一切なく、むしろ深い慈しみに満ちた抱擁のように、彼女をゆっくりと地下へと導いていく。

 

シェリーは不思議な感覚に包まれながら、暗い穴の中へと吸い込まれていった。

やがて足がついたとき、彼女はゆっくりと目を開けた。

 

そこには、見たこともないほど切なそうに自分を見つめている、一人の少女の姿があった。

 

「……リサ……!?」

 

シェリーの声が震えた。

そこにいたのは、かつてラクーンシティで共に地獄を生き抜き、自分を守り抜いてくれた、大好きなお姉ちゃんだった。

 

シェリーがその名を呼んだ瞬間、リサはたまらず彼女を腕の中に強く抱きしめた。

生物兵器としての強靭な筋力を最大限に制御しながら、ただひたすらに愛おしそうにシェリーを抱き寄せた。再会の喜びと、二度と離さないという強い決意が、その抱擁に込められていた。

シェリーは突然の出来事に戸惑いながらも、自分を包み込む懐かしい温もりに身を委ね、ゆっくりとその背中に手を回して抱きしめ返した。

 

二人の間に流れる時間は、外界の喧騒を忘れさせるほど静かで濃密だった。

だが、その甘美な沈黙を破ったのは、隣で見ていたアレクシアの冷ややかな声だった。

 

「……いい加減にしなさい。感動的な再会はそこまでよ」

 

アレクシアにとって、この感傷的な時間は耐え難いほど退屈なものだった。彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らしながらも、戸惑っているシェリーに向けて簡潔に事情を説明した。

自分たちが何者であり、なぜこのような強引な方法で彼女を連れ出したのか。そして、これからこの場所を後にし、ラクーンシティへと向かうことを告げた。

 

その間、リサは抱擁から解放された後も、静かに触手を伸ばしていた。

今度は向こう側に残されていたレッドを標的にした。触手が素早くトンネルの出口まで伸び、死んだ目をしていたレッドを捕らえ、そのまま自分たちのいる側へと引きずり込んだ。

 

泥にまみれて合流したレッドは、まず隣にいるシェリーが無事であることを確認すると、安心したように小さく鼻を鳴らして彼女の足元に寄り添った。

 

こうして、リサ、アレクシア、シェリー、そしてレッドという奇妙な一行が揃った。

 

「さあ、だらだらしている暇はないわ。すぐに後処理をするわよ」

 

アレクシアの声は冷たく、有無を言わせぬ響きを持っていた。だが追っ手が来るかもしれないという時間への焦燥感もあった。

 

「リサ、掘った土をすべて戻して埋めなさい。完全に塞ぐのよ」

 

命令を受けたリサは、迷いなく巨大な触手を穴に押し込んだ。重機が大地を砕くような轟音こそないが、その効率性は凄まじかった。周囲に積み上がっていた大量の土を、まるで呼吸をするかのように吸い込み、トンネルの中へと力強く押し込んでいく。

ただ蓋をするのではない。中身を土で完全に充填させる。リサは一心不乱にその作業を行い、ついにはトンネルは土で埋まった。

 

だが、アレクシアの表情にはまだ満足の色はなかった。彼女は視線を足元に落とし、静かに目を細める。土の下にはまだ、自分が張り巡らせた植物の根や茎が残っている。それをそのままにしておけば、後から掘り起こした者がその破片を回収し、分析することになるだろう。

 

「……消えなさい」

 

アレクシアが低く呟いた瞬間、地中で猛烈な熱が弾けた。

土の中で張り巡らされていた植物たちが一気に発火した。炎は瞬時に根の隅々まで走り抜け、あらゆる有機物を焼き尽くし、ただの灰へと変えた。

 

「ふん……どうせすぐに気づかれるでしょうけれど、何もしないよりはマシだわ」

 

アレクシアは満足げに口角を上げると、踵を返した。その足取りには、目的を完遂した女王としての余裕が戻っていた。

「リサ、シェリーとレッドを運んで。私は先導するわ」

 

リサは待っていましたと言わんばかりに触手を伸ばした。一本の触手が優しくシェリーの身体を包み込み、もう一方の手で、運命を受け入れたレッドをひょいと肩に担ぎ上げる。

「お願いね、リサお姉ちゃん」

シェリーが微笑みながらリサの腕に身を任せると、リサの胸の中で小さく、心地よい震えが走った。

 

先頭に立つアレクシアは、人目を避けるようにして疾走していく。舗装された道路ではなく、森や川沿いの自然の中を突っ切るルートだ。枝が肌をかすめ、湿った土の匂いが鼻をつく。

 

夕闇が深く降り、空が濃い紺色に染まる中、美しき傲慢な女王と、守るべき少女を抱いた怪物、そしてあきらめの表情で揺られる忠犬。

あまりに不釣り合いで奇妙極まりない一行は、静かに、だが驚くような速さで、因縁の地であるラクーンシティへと向けて深い自然の中へと消えていった。

 

深い山の中へと足を踏み入れた一行は、やがてある場所に辿り着いた。

 

そこを見た瞬間、シェリーの足が止まった。記憶の底に深く刻まれている、恐怖と絶望、そして希望の場所。

 

「ここ……私、知ってる」

 

震える声で呟いた彼女の視線の先には、山肌を切り裂くようにして道路へと繋がるぽっかりと開いたトンネルがあった。現在は立ち入り禁止を示す黄色い規制線が幾重にも張り巡らされ、風に吹かれて虚しくたなびいている。

 

シェリーは、あの夜のことを思い出していた。

混乱の中、警察署ついてきてくれたリサ、途中でレッドも合流し、無事、警察署までたどり着けた、そこでもクレアとレオンという頼もしい大人が自分を助けてくれた。そしてやっと会えたママ。今でも関係はぎくしゃくしている。

でもここから脱出したときリサはいなかった。

 

(……リサお姉ちゃんは、私たちを逃がすために施設に残ったんだ)

 

あの時、復讐に囚われた生物兵器へと成り果てながらも、リサは自分という子供を守るために、自爆するの施設の中でG生物の猛攻を一人で食い止めた。皆はあきらめていたけれど、シェリーは信じていた絶対にリサお姉ちゃんは生きていると。

 

隣を見ると、そこにはちょっと汚れているけれど自分を大切そうに見つめるリサがいた。そして足元には、あの時一緒に逃げ出したレッドがいる。

不思議なことだった。あの日、共に生き残ったはずの人はここにはいないのに、あの日、別れたリサがここにいる。

 

再会の喜びと、過去の記憶が交錯し、シェリーは言いようのない感情に胸を締め付けられた。

 

そんな感傷に浸る彼女を遮るように、アレクシアが冷徹な声を上げた。

「一旦待機よ。ここからNEST、あなたたちが脱出したアンブレラの地下施設に入れるか虫で偵察するわ」

 

アレクシアは周囲の地形を確認すると、触手からアリとハチを次々と解き放った。偵察用の虫たちが静かに大地を探り、空へと舞い上がる、周辺の偵察、規制線の向こう側、かつての地下施設へと繋がる闇の中へと潜入していく。

 

空が白み始め、夜明けが近づいていた。

 

旅の疲れと緊張からか、シェリーは意識が朦朧としていた。まぶたが重くなり、立っているのがやっとという様子でうつらうつらとしている。

そんな彼女に気づいたリサは、そっと地面に腰を下ろすと、自分の膝をポンポンと軽く叩いた。

 

(ここでお休み)

 

言葉はなくとも、その動作には深い慈しみがあった。

どこかの傲慢な女王様とは違い、シェリーは素直にその誘いに応えた。

 

「ありがとう……リサお姉ちゃん」

 

小さく礼を言うと、シェリーは吸い込まれるようにリサの膝の上に頭を預けた。安心感に包まれた彼女は、瞬く間に深い眠りに落ちていく。それに合わせてレッドも、リサの足元で心地よさそうに体を丸め、静かな寝息を立て始めた。

 

リサの顔には、今やすっかり板についた「控えめな微笑み」が浮かんでいた。アレクシアから教育された形だけの笑みではなく、心からの充足感に基づいた、穏やかで自然な微笑みだ。彼女は繊細な手つきで、壊れ物を扱うようにゆっくりとシェリーの頭を撫で続けた。

 

その光景を、少し離れたところから見ていたアレクシアは、ふと眉をひそめた。

なぜだろうか。どうしようもなくイラつく。自分に対して向けられていたあの屈辱的な優しさとは違う、本物の愛情に満ちた光景に、胸の奥がざわついた。

 

(……ふん。まあいいわ)

 

アレクシアは小さく鼻を鳴らし、不機嫌そうに視線を逸らした。

「リサお姉さま、シェリーが起きるまで休んでいていいわよ」

 

ぶっきらぼうな言い方だったが、それは彼女なりにリサへの配慮だった。アレクシアはそのまま、「周辺を見て回る」と言い残し、静かにその場を離れていった。

 

静寂が戻った森の中で、リサはただ一人、眠るシェリーの温もりを感じていた。

指先から伝わる小さな鼓動。南極から続く、ささくれ立った心が癒されていくのが分かる。

 

リサは再びゆっくりと、愛おしそうにシェリーの頭を撫で続けた。

 

リサは膝の上で安らかに眠るシェリーの寝顔を、慈しむように見つめていた。その指先は、かつての自分にはあり得なかったほどに優しく、ゆっくりとシェリーの金髪を撫でている。傍らではレッドが丸くなり、規則正しい寝息を立てていた。

 

そこにアレクシアが戻ってきた。

偵察から帰還した彼女は、リサの様子を一瞥したが、何も言わなかった。ただ、その瞳には言葉にできない複雑な感情——苛立ちに近い何か——が渦巻いていた。

 

二人の間に会話はない。しかし、そこには奇妙な均衡があった。かつては傀儡と支配者の関係だったが、今は共犯者としての沈黙が流れている。リサはアレクシアの視線に気づきながらも、あえて視線を外さず、控えめな微笑みを浮かべたままシェリーを守るように抱き寄せていた。

 

やがて、シェリーがゆっくりと瞼を持ち上げた。

 

「……ん……」

「おはよう、シェリー」

 

アレクシアの声は相変わらず傲慢だったが、そこには不思議と突き放すような冷たさはなかった。シェリーがぼーっとした様子で起き上がると、アレクシアは腕を組み、事もなげに報告を始めた。

 

「偵察の結果を教えるわ。ここからラクーンシティ内部へ侵入できそうよ」

 

シェリーの瞳に不安と期待が混ざり合う。アレクシアは指で道路の方を指し示した。

 

「トンネルは所々崩落しているけれど、今の私たちなら問題ないでしょうね。リサの怪力と私の能力があれば、瓦礫をどけて進めるでしょう」

 

リサが小さく「……ん」とうなずく。その表情には自信があった。

 

「ただし、一つだけ問題があるわ。トンネルの入り口は監視カメラが稼働している。正面から入ればすぐ誰かに察知されるでしょうね」

 

アレクシアは不敵に微笑み、リサを見た。

 

「だから作戦を変更するわ。入り口を避けて途中まで地下を掘り進め、トンネルの壁に穴を開けてそこから中に入る。……いいわね、リサ? あなたの出番よ」

 

作戦は迅速に開始された。

 

アレクシアの指示に従い、リサの強靭な触手が土を掻き分け、猛烈な速度で穴を掘り進めていく。その後ろを追うように、アレクシアがベロニカウイルスの力を操り、崩れやすい土壁に強固な植物の根を張り巡らせて補強していった。

 

やがて、コンクリートの硬い感触が伝わってくる。トンネルの壁だ。

 

リサは静かに集中した。GとTウィルスの適合者である彼女には、電気を操る能力がある。指先に凝縮された青白い生体電流がパチパチと音を立て、コンクリートの壁を熱で焼き切った。まるでバターをナイフで切るかのように、厚い壁に線が引かれ、やがて穴が開く。

 

アレクシアは穴の周囲の茂みを急成長させ、木を植え蓋代わりにする、木の洞の先に穴が広がっている、子供位しか通れないのでなかなか気づかれにくいだろう。

 

しかし、本当の苦行はここからだった。

トンネル内部は酷い惨状だった。施設の自爆によって所々崩落し、道は土砂と瓦礫で至る所が塞がっていた。

 

「リサ、あそこの岩をどけて!シェリーが通れるスペースを作るのよ!」

 

アレクシアの命令に、リサは唸り声を上げながら巨大なコンクリート塊や岩、土砂を強引に押し除けた。凄まじい怪力だが、その分、周囲からは泥と土砂が降り注ぐ。アレクシアも植物を生やして瓦礫を持ち上げ、通路を確保し補強し続けた。一行はその狭い隙間を、這いつくばるように進むことになる。

 

シェリーは少々の段差程度なら物ともせず自力で移動していた。高い段差はリサに運ばれていたが、息切れはほとんどせず体力もかなりあるようだった。アレクシアはそれを横目で確認しつつリサに手際よく指示を出していく。

 

衣服は泥と砂でひどく汚れた。リサに至っては、かつての美少女の姿が台無しになるほど全身泥まみれだったが、彼女は気にしなかった。ただ、シェリーには泥がつかないよう、最大限に配慮しながら進んでいた。

 

泥に塗れ、埃にまみれた長い行軍の末、ついに彼らの目の前に巨大な空間が現れた。

 

そこは、かつてアンブレラ社が誇った地下研究施設の心臓部——メインシャフトへと繋がる入り口だった。

 

冷たい金属質の壁と、静まり返った暗闇。

とうとう、3人の少女の形をした何かと1匹がラクーンシティに再び足を踏み入れる。

 

 

 

 

一方その頃。アンブレラ社に君臨する男、オズウェル・E・スペンサーは、執事から届けられた報告書を静かに眺めていた。

 

そこには、北米大陸での調査結果が記されていた。

まず、スペンサー自身が教えた「忘れ物」のある放棄施設の街にある人物が現れたこと。そして、シェリー・バーキンが軟禁されている邸宅の街にも同一人物と思われるものが現れたこと。

 

どちらの場所においても、目撃されたのは「金髪の少女」であった。

 

『……ふむ』

 

スペンサーは口角をわずかに上げた。

北米大陸に残る少ないアンブレラの工作員が写真の撮影に成功し、人工知能「レッドクイーン」により照合させた結果、その少女がアレクシア・アッシュフォードであることをほぼ確定していた。

 

だが、報告書の末尾にある一文がスペンサーの目を引いた。

【対象は単独ではなく、常に二人組で行動していた】という記述である。

 

スペンサーは手元のティーカップを置き、傍らに控える執事に問いかけた。

 

「……アルフレッドかね?」

 

彼にとってアレクシアに付き従う忠実な下僕といえば、あの兄しか思い当たらなかった。だが、執事は静かに首を振った。

 

「いいえ、違います。目撃証言によれば、同行者は少女のような外見であったとのことです」

 

スペンサーの眉がぴくりと動いた。

アレクシアと共に歩む、もう一人の少女。その正体を突き止めるのに時間はかからなかった。レッドクイーンが導き出した照合結果は、あまりにも意外な名前を提示していた。

 

「……リサ・トレヴァーだと?」

 

スペンサーの瞳に、好奇心と冷徹な光が混ざり合った。

忌まわしきラクーンシティでアンブレラの最高傑作を悉く葬り去った化け物、その化け物が、アレクシアという天才少女と行動を共にしている。

 

「面白い……実に面白い。アレクシアが何を考え、あの壊れた化け物を連れ歩いているのか」

 

スペンサーは低く笑った。

彼にとって、この事態は想定外の不確定要素でありながら、同時に最高に刺激的な実験場でもあった。二人の少女がどのような化学反応を起こし、どこへ向かうのか。彼は特等席からその顛末を眺めることに決めた。

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