バイオハザード:リサ・トレヴァー 〜怨霊と血濡れのトマホーク〜 作:ai試し
「先に行け! 早く!」
先住民の子孫である男性がシェリーを強く突き飛ばすようにして前へと促した。彼は懐からハンドガンを取り出すと背後から迫るG生物に向けて引き金を引き続けた。
ダァン! ダァン! ダァン!
銃声が路地に響き渡る。弾丸は正確に怪物の肉体に命中し、血飛沫を上げさせていた。しかし驚くべきことにG生物は痛みを感じていないようだった。弾痕など気にも留めずただひたすら執念深くシェリーの後を追っている。
「クソッ……全然効かない! シェリー、止まるな! 走れ!」
男性は時折振り返りながら必死に足止めを試みるがその表情には焦燥が滲んでいた。ハンドガンの火力ではこの怪物の再生能力を上回れない。彼が絶望的な状況で弾丸を撃ち込もうとしたその時だった。
――ガキィィィンッ!!
耳をつんざくような金属音が響き凄まじい衝撃波が路地に走った。
そこには信じられない光景があった。
どこで調達したのか、錆びついた太い鉄パイプを握りしめたリサがG生物の頭部をフルスイングで殴り飛ばしていたのだ。あまりに強烈な一撃だったため巨大なG生物の巨体が横方向に弾き飛ばされ壁まで転がった。
「リサ!!」
シェリーが泣きながら叫ぶ。その声を聞いたリサはゆっくりと振り返った。彼女の瞳には怒りが宿っていた。守るべき子供を泣かせ恐怖に陥れた存在への明確な敵意だ。
「……ふぅ。助かった……本当に助かったぞ」
男性は膝から崩れ落ちそうになるほど安堵し大きく息を吐いた。リサが来てくれたことで絶望的な状況が一変した。
リサは鉄パイプを肩に担ぎ直すとG生物に向けて低く唸った。その殺気はタイラントの時よりもさらに鋭い。
「……リサ、お願い。あとは任せていいかな」
シェリーが控えめに声をかける。シェリーはリサの戦い方を見て分かっていた。彼女にとって今の最大の障害は、自分のような「弱くて足手まといな人間」が近くにいることだ。
「シェリー、あの子の邪魔にならないように少し離れよう」
「うん……ありがとう、おじさん」
二人は安全な距離まで後退しようと足を進めた。レッドは不安げに耳を伏せながらもG生物から不意に触手が飛んでこないか時折振り返って警戒しつつシェリーたちの後をついていく。
リサは一人路上の中心に立った。
手にあるのは粗末な鉄パイプ一本。だが彼女の身体能力と怨霊の導きがあればそれはどんな名剣よりも恐ろしい処刑道具へと変わる。
リサはゆっくりと獲物を定めるようにG生物へと歩み寄った。
戦いは泥沼化していた。
リサは数本の鉄パイプを文字通り「使い捨て」にしてG生物を殴り続けたが、相手の再生力は想像を絶していた。潰したはずの眼球がぐにゃりと盛り上がり、砕いたはずの頭蓋がに塞がる。
(……しぶとい)
リサは不快感に顔を歪めた。周囲にある鉄パイプも底を突きかけ、次に拾えるのはただのゴミか、あるいは何も無い空虚な路面だけだろう。
G生物の方は絶え間ない猛攻を受けて動きが目に見えて鈍くなっていた。だがそれでも死んではいない。このままでは決定打を欠いたまま体力だけを消耗させられる。
『リサ、ここは引き分けでいい。殺せぬなら、遠ざけろ』
怨霊の声が響く。
彼らが今いる場所は橋の上だった。下には濁流となって流れる川がある。
『最後の一本を深く突き刺し、そのままで川へ落とせ。これの再生力を持ってしても負傷したまま激流に身を任せればしばらくは戻って来られまい』
リサは不承不承ながらも頷いた。
彼女は手元に持った一本の鉄パイプを握りしめ地を蹴った。G生物の胸部に深くパイプを突き刺しそのまま強引に身体を回転させ全力で川へ向かってぶん投げた。
ドガァァッ!!
凄まじい衝撃と共に巨大な肉塊が橋の欄干を突き破り真っ逆さまに川へと転落した。
激しい水しぶきが上がりG生物は濁流に飲み込まれて視界から消えていった。
「……ふぅ」
リサは肩で息をついた。あれほどの巨体を相手に全力の打撃を連発したためわずかに疲労が溜まっていた。
しかし休息の時間など与えられない。
突如怨霊の声が鋭い警報へと変わった。
『リサ! 急げ! シェリーたちのところで何かが起きたぞ! 嫌な気配だ……急げ!!』
その声にリサの疲労は一瞬で吹き飛んだ。彼女は弾丸のような速度でシェリーたちが待つ方へと駆け出した。
辿り着いた先でリサが見たのは絶望的な光景だった。
「……あ…………」
路上で先住民の子孫である男性が崩れ落ちていた。彼の胸は不気味な長い舌によって深く貫かれていた。一目でわかる致命傷だ。
その周囲には三体のリッカーが血塗れの姿で横たわっていた。レッドが必死に食らいつき男性が最期まで抵抗した結果の相打ちだったのだろう。
レッドは肩から血を流しながらも、主(シェリー)を守り抜いた誇らしげなけれど疲れ切った表情でリサを見た。
そして瀕死の男性が弱々しく口を開いた。彼にはもう時間がないことをリサは本能的に理解した。
静寂が訪れた路上の空気は、突如として凍り付いた。
リサの精神の中で、怨霊が唸った。それは悲しみではない。理性を焼き尽くすほどの純粋な「憤怒」だった。自分たちの誇りある血を絶やし、勇者を死に至らしめたこの街、この世界そしてすべてを仕組んだアンブレラへの底なしの憎悪。
(……許さぬ。決して、許さぬぞ!!)
その激昂に呼応するように、リサの身体が不自然にねじれた。
彼女は自らの意思ではなく、怨霊の強烈な衝動に突き動かされ、右腕で左腕を掴んだ。
「……ッ!?」
ミキリ、という鈍い音が響く。
リサは凄まじい膂力で自分の左腕を根元から力任せに引きちぎった。肉が裂け骨が砕ける凄惨な音が路地に響き渡る。シェリーが悲鳴を上げて口を覆った。
だがそこからが異様だった。
引きちぎられた左腕はおぞましい変貌を遂げはじめた。
Gウィルス、Tウィルス、始祖ウィルスの複合的な変異能力と怨霊の超常的な力が融合し肉と骨を瞬時に再構成していく。皮膚は剥がれ落ち筋肉は凝縮され中心にある強靭な骨格がねじ曲がりながら鋭利な刃へと研ぎ澄まされていく。
数秒後、そこには血に塗れたしかし芸術的なまでに美しく鋭い「骨のトマホーク」が完成していた。
それは単なる武器ではない。先祖の恨みと勇者の死を刻んだ復讐の象徴だった。
同時にリサの肩からはどろりとした肉塊が盛り上がり猛烈な速度で左腕が再生していく。失ったはずの肢体が瞬時に戻りその手には新しく作り出された白骨の斧が握られていた。
リサはゆっくりと顔を上げた。
その瞳にあるのは数百年の恨みを背負い、すべてを破壊し尽くそうとする死神の眼差しだった。
彼女は骨のトマホークを一度だけ地面に突き立てた。 l
アスファルトが砕け散る。
(次は……誰だ)
低く地獄の底から響くような唸り声と共にリサは再び歩き出した。その足取りは以前よりも遥かに重くそして残酷な決意に満ちていた。
ラクーンシティの惨状を遠隔監視していたアンブレラ本社の極秘会議室。そこには、冷徹なエリート研究員たちと幹部たちが集い、モニターに映し出された映像を凝視していた。
画面に映っているのは、市街地で繰り広げられた信じられない光景だった。
「……ありえない」
一人の研究員が絶句した。
映像の中では、アンブレラ社が誇る最高傑作の一つであるタイラントが、一人の少女によって文字通り「解体」されていた。攻撃をことごとく回避し、まるで遊び半分に実力を測るかのような余裕さえ感じさせる身のこなし。そして最後は凄まじい一撃で首を跳ね飛ばされた。
「タイラントが……なすすべもなく撃破されただと? そんなことがあり得るのか!」
幹部の一人が机を叩いて怒鳴った。最高傑作の敗北は彼らにとって耐え難い屈辱であり同時に計算外の恐怖だった。
しかし驚愕はそれで終わらなかった。
映像は切り替わり、もう一つの戦いを映し出す。G生物――ウィリアム・バーキン博士による究極の進化が特徴の生物兵器が同じ少女によって鉄パイプで何度も殴りつけられ最後には橋から川へと叩き落とされるまでだ。
「Gの進化と再生能力をもってしてもこの速度と打撃力には対抗できないというのか……」
会議室に重苦しい沈黙が流れた。彼らにとって不可解だったのは相手が正体不明の怪物ではなく「リサ・トレヴァー」という名前の失敗作として処理された実験体であったことだ。
「なぜだ。なぜ最高傑作たちが、あのような『失敗作』に敗北した?」
疑問が飛び交う中一人の鋭い眼差しを持つ研究員がモニターを一時停止させた。彼の視線はリサではなく彼女の傍らにいる小さな少女――シェリー・バーキンに注がれていた。
「……注目すべきは同行者だ。シェリー・バーキン。Gウィルスの開発者であるウィリアム・バーキンの娘だ」
その言葉に周囲の視線が集まる。
「アークレイ研究所から処分されたはずのリサ・トレヴァーという個体。……もし、バーキン博士が彼女を密かに回収し独自の理論で新たな実験を重ねていたとしたら?」
推測は現実味を帯び始める。Gウィルスの特性である「絶え間ない進化」と「肉体の再構成」をリサに適用させさらに別の何かを掛け合わせたのだとしたらあの化け物じみた能力の説明がつく。
会議室の空気はもはや驚愕から「執着」へと変わっていた。
もし仮に、リサ・トレヴァーがバーキン博士の手によって進化を遂げたのであれば、彼女の肉体はアンブレラ社にとって計り知れない価値を持つ「生きた財宝」となる。
「殺して処分するなど言語道断だ。あの能力を解析し、我が社の兵器体系に組み込めば、もはや世界に敵はいないだろう」
幹部の一人が冷酷な笑みを浮かべた。しかし同時に彼らは理解していた。タイラントですら太刀打ちできなかった相手に対し、並の生物兵器を送っても返り討ちに遭うだけだということを。
「……ならば、答えは一つしかない」
研究員がモニターに一つの機密ファイルを投影した。
そこには、黒いコートを纏い、巨大な触手と圧倒的な攻撃力を備えた究極の生物兵器――『ネメシス』の姿があった。
タイラントをも凌駕する戦闘能力に加え、高度な制御プログラムを搭載し、特定の標的を執拗に追跡・抹殺することを目的としたアンブレラの最高傑作。彼こそが唯一、リサという特異点に対抗しうる存在だった。
「ネメシスを投入せよ。ただし、今回の目的は『抹殺』ではない」
幹部の指示に従い、ネメシスの装備に特別な仕様が追加されることが決定した。
強力な拘束用電磁ネットと、神経系を一時的に麻痺させる高濃度鎮静剤を注入する捕獲用デバイス。リサの驚異的な身体能力を封じ込め、生きたまま回収するための特殊装備だ。
「ネメシスにリサ・トレヴァーの捕獲を命じる。サンプルとして本社へ連れ戻せ」
彼らはまだ知らない。
自分たちを追い詰めるのはもはや単なる「怪物」ではなく、アンブレラ社を滅ぼすまで追いかける「最強の追跡者」であることを。
オリキャラ犠牲になったのだシェリーへの説明と言う名の犠牲にな