バイオハザード:リサ・トレヴァー 〜怨霊と血濡れのトマホーク〜 作:ai試し
ラクーンシティの空は、不気味な紫色に染まり始めていた。
街を包むのは絶え間ない悲鳴と爆発音だが、時折訪れる静寂こそが、次に何が襲い掛かってくるか分からない恐怖を際立たせていた。
「……リサ、もうすぐ夜になるよ」
シェリーが不安げに空を見上げ、隣に立つ少女――リサに語りかけた。
リサはうつむき、自らの左腕から再生したばかりの骨のトマホークをじっと見つめている。先住民の子孫を失った喪失感と、それを上回るどす黒い怒りが、彼女の小さな肩を震わせていた。
「どこか、休める場所を探さない? このままだと危ないと思うし……お腹も空いたし」
シェリーの提案に、リサはゆっくりと顔を上げた。
その瞳には狂気が宿っているが、インディアンの怨霊が彼女の精神を繋ぎ止めている。リサは低く唸り声を上げながら、周囲を見渡し始めた。
(……守りやすく、逃げ出しやすい場所が必要だ)
リサの中にあるのは、戦士としての本能だった。
ただの家では不十分だ。入り口が少なく、敵の侵入経路を限定できること。そして何より、万が一包囲された際に屋根伝いに脱出できるルートがあることが条件となる。
(リッカーのような化け物は壁を登るだろうが、あの巨漢(タイラント)のような連中は、高所から落とせば時間を稼げるはずだ)
怨霊の導きと、生物としての直感がリサに方向を示した。
レッドが鼻を鳴らして先導し、三人は住宅街の外縁部へと足を進める。ゾンビたちがふらふらと道を塞いでいたが、リサは彼らに気づかれないよう、影から影へと滑り込むように移動した。
やがて、彼女たちの目に一つの建物が飛び込んできた。
それは少し変わった構造の住宅だった。一階部分が完全にガレージ(駐車場)になっており、居住スペースである二階へと上がるには、外付けの階段を上る必要がある。
「ここなら……」
リサは唸り声を上げ、シェリーに合図を送った。
一階は開けているため、敵が侵入すればすぐに気づくことができる。また、二階からは隣接する建物の屋根へと飛び移ることができそうな距離だった。
リサはまず、レッドを先に行かせて内部の様子を探らせた。
レッドが慎重に中に入り、しばらくして「問題ない」ことを示す短い吠え声を上げた。死者の腐臭も生者の怯える気配もない。今はただ、静寂だけが支配している場所だった。
「よかった……。リサ、ここを使わせてもらいましょう。」
シェリーがホッとした表情で微笑む。
リサは無言で頷きトマホークを構えたまま警戒して建物の中へと足を踏み入れた。
二階の居住スペースに入ると部屋の中には埃っぽさと、誰かが急いで立ち去ったような生活感が残っていた。レッドが心地よさそうに床に丸まり、リサは壁に背を預け鋭い視線で窓を見ている。
その静寂の中で、シェリーはふと、今日という一日を振り返っていた。
(……信じられない。全部、たった一日の出来事なの?)
あまりにも密度が濃すぎた。
朝まで、彼女はただ絶望の中にいた。広がる暴動、両親は仕事に没頭し自分を放置していた。それでも母親から「警察署に行きなさい」という短い電話だけが唯一の希望だった。一人で街を歩き見たこともない化け物たちに怯えながら必死に逃げてきた。
けれど、そこで出会ったのがリサだった。
真っ赤な血と泥にまみれ、唸り声しか上げられない不思議な少女。
最初は恐怖しかなかった。でも、彼女は自分を助けてくれた。足手まといのはずなのに、リサの瞳には時折深い悲しみと自分を守ろうとする強い意志が宿っていた。
一緒にシャワーを浴びたときの、あの奇妙な時間。
不器用ながらも自分を洗ってくれたリサの手の温もり。そして、自分の不安が爆発して抱きついたとき、リサは困惑していたけれど、決して自分を突き放さなかった。
そして、出会ったおじさんのこと。
彼が先住民の子孫であり、リサの中にある「魂」と繋がっていたこと。
彼によってリサの正体――アンブレラに人生をめちゃくちゃにされた悲劇的な少女であることを知ることができた。
(リサは……本当に寂しかったんだね)
シェリーは、壁際でじっと外を睨んでいるリサを見た。
見た目は自分とほとんど変わらない14歳の美少女。けれど、その体の中には数え切れないほどのウイルスと、何十年分もの恨みと悲しみが渦巻いている。
数多のを圧倒的な力で粉砕したときのリサは、悪魔のように見えた。
でも同時に、骨の武器を作り出し、絶望的な状況の中で戦い続けてくれるその姿に、シェリーは言いようのない親しみを感じていた。
静まり返った部屋の中で、シェリーは目を閉じ、今日体験した最も不可思議な出来事を反芻していた。
あの先住民の男性と出会ったとき、リサから発せられた不思議な声。何百人もの人間が同時に喋っているかのような、重層的で荘厳な響き。そして、その声と共に彼女たちの脳裏に直接流れ込んできた、断片的な「映像」のことだ。
それは言葉による説明ではなく、感情と記憶の奔流だった。
真っ赤な大地。どこまでも続く草原。
そこには誇り高く生きる人々がいた。しかし、あるとき彼らの世界に「征服者」たちが現れる。アングロサクソンの白人たち。彼らは銃と暴力で土地を奪い、抵抗する人々を崖から突き落とし、処刑した。
絶望と憎悪。大地に刻まれた深い恨み。それが渦巻く暗い底へと、リサ・トレヴァーという一人の少女が落ちてきた。
映像は切り替わり、リサの人生がフラッシュバックする。
アンブレラ社による非人道的な実験。肉体が崩壊し、再生を繰り返し、精神が狂気に塗りつぶされていく地獄のような日々。彼女がどれほどの孤独の中で叫び続け、それでも誰にも届かなかったか。
(リサは……ずっと一人だったんだ)
怨霊たちは、自分たちと同じように「理不尽にすべてを奪われた者」としてリサに同情したのだ。
征服者が先住民から土地と誇りを奪ったように、アンブレラという現代の征服者が、リサから人間としての尊厳と人生を奪った。
だからこそ、怨霊たちは彼女に力を貸し、導きを与えた。
復讐のためだけではない。この果てしない憎しみの連鎖の中で、リサがいつか救われ、再び「人間」に戻れるように。それが先住民たちの誇りであり、最後の慈悲なのだと感じた。
シェリーはゆっくりと目を開け、隣に座るリサを見た。
リサは今も何も覚えていない様子で、ただぼーっと外を見つめている。だが、その横顔には以前のような底なしの空虚さはなく、どこか静かな意思が宿っているように見えた。
(私は……この人の隣にいていいのかな)
自分はアンブレラ研究員の娘だ。リサにとって最も憎むべき相手の血を引いている。
それでも、リサは自分を守ってくれた。骨の武器を作り、身を挺して戦ってくれている。
シェリーはそっと手を伸ばし、リサの細い手に自分の手を重ねた。
リサはびくりと肩を揺らし、怪訝そうな顔でシェリーを見たが、拒絶はしなかった。
「……シャワー浴びよ一緒に、リサ」
小さな呟きに、リサは小さく鼻を鳴らした。それが肯定なのか否定なのかは分からない。けれど、二人の間に流れる空気は、先ほどまでよりも少しだけ温かくなっていた。
夜の帳が完全に下りた家の中で、二人は再び浴室へと向かった。
外では時折、遠くで絶叫や爆発音が響いている。しかし、閉ざされた浴室の中だけは、外界から切り離された聖域のように静かだった。
湯気に包まれながら、二人の少女は裸で向き合った。
リサの肌は白く、一見すればどこにでもいる14歳の美少女に見える。けれど、その皮膚の下には始祖ウイルスやGウィルスの驚異的な再生能力が潜んでおり、傷一つない滑らかな質感を持っていた。対してシェリーは、まだ幼さの残る小さな体で、不安げにリサを見上げていた。
「じっとしててね、リサ」
シェリーは小さな手でスポンジを持ち、丁寧にリサの体を洗い始めた。
リサは最初、不思議そうな顔で自分を見下ろしていたが、やがて心地よい温かさに身を任せ、ぼーっとした表情で立ち尽くしている。
シャワーの水音が心地よく響く中、シェリーのリズムはゆっくりとしたものに変わった。リサの肩を洗い、背中の汚れを落とす。その指先から伝わるのは、怪物としての強さではなく、ただの「女の子」としての柔らかい肌の感触だった。
(……この人も、本当は怖かったんだろうな)
シェリーは不意に胸が締め付けられた。
アンブレラという巨大な悪意に晒され、人間であることを奪われたリサ。そして自分は、その悪意を生み出した親を持つ娘。
けれど今、こうして肌を触れ合わせているときだけは、そんな複雑な関係などどうでもいいことのように思えた。
ふとした拍子に、シェリーは洗っていた手を止めそのままリサの腰に腕を回してぎゅっと抱きついた。
濡れた肌と肌が密着し、互いの心臓の鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「……ごめんね、リサ。私、怖くてたまらないよ……」
シェリーはリサの胸に顔を埋め、声を殺して泣き始めた。
絶望的な街、消えた両親襲い来る怪物たち。そして、自分だけが救われていることへの罪悪感。すべてが溢れ出した。
リサは困惑したように、空いた腕を宙に浮かせていた。
彼女には、人間としての「慰め方」など分からない。愛し愛された記憶さえ、ウイルスの変異と共に遠い彼方へ消えてしまったはずだった。
けれど。
(……あったな)
リサの脳裏に、断片的な記憶が蘇る。
まだ実験される前幼い頃に母親と抱き合っていたときのあの安心感。
そして、先ほどまで自分を丁寧に洗ってくれていたシェリーの手の温もり。
リサはゆっくりと、不器用な動きで腕を動かした。
そして、自分の胸に飛び込んできた小さな少女の背中に、そっと手を回した。
ぎゅっ、と。
力加減が分からず、少しだけ強い抱擁だったが、それは間違いなくリサからの「抱きしめ返し」だった。
シェリーは驚いて顔を上げた。
リサの瞳には相変わらず狂気が混じっていたが、そこには確かに深い慈しみのような色が浮かんでいた。
言葉は交わさなかった。
ただ、温かい湯気の中で二人の少女は互いの体温だけを頼りに孤独を分かち合っていた。
それは地獄と化したラクーンシティで見つけた、本物の「安らぎ」の時間だった。
湯気に包まれた安らぎの時間は終わり、二人は身支度を整えてリビングへと戻った。
シェリーは家の中から「拝借」してきた保存食や缶詰をテーブルに並べると、リサに一つ差し出した。
「ほら、リサ。たくさん食べて。体力つけないとね」
リサは差し出された食べ物をじっと見つめたが、口をつけることはなかった。空腹感はあるはずだが、今の彼女にとって食欲よりも優先すべきことがあった。それは、先ほどまで自分を抱きしめてくれていたシェリーの、あの穏やかな表情だ。
「どうしたの? 口に合わない?」
「……んぅ」
リサは短く唸ると、ふらりと立ち上がった。そして視線の先には、床でじっと二人を見上げていた番犬のレッドがいる。
(……この犬も、汚れているな)
リサはなんとなく、レッドを洗いたいと思った。
シェリーが自分を丁寧に洗ってくれたように、自分もまた、この旅の仲間であるレッドに何かしてやりたいという、不器用な親愛の情だった。
しかし、そこに割り込んだのはシェリーだった。
「あ! レッドも汚れちゃってるね。私が洗ってあげる!」
シェリーは嬉しそうにレッドを誘導し再び浴室へと向かった。リサはぽかんとした表情でその後をついていく。
「リサ、先に食べて待ってていいよ!」
シェリーに促されるがリサは頑なに動かず浴室の入り口でじっとその光景を眺めていた。
浴室ではシェリーが楽しそうにレッドの体をごしごしと洗っている。レッドはそれが心地よいのか、目を細め、尻尾を激しく振りながら、うれしそうに喉を鳴らしていた。
それを見たリサの胸に、奇妙な感情が湧き上がった。
(……不快だ)
なぜ自分が不快なのか、リサ自身にも分からなかった。ただ、シェリーがあんなに上機嫌にレッドを可愛がり、レッドがそれに心酔している様子が、どうしようもなく気に入らなかった。
(私の方が……お姉さんなのに)
そんな、生物としての本能か、あるいは失われた記憶の底にある「独占欲」のようなものがリサを突き動かした。
リサは不意に身を乗り出し、シェリーの手からスポンジをひょいと奪い取った。
「あ、リサ?」
驚くシェリーを横目に、リサは無表情のままレッドの背中を洗う。しかし、その手つきはあまりにも不器用で、力加減が適切ではない。
レッドは突然の変化に困惑し、「えっ、何この感じ……」と言いたげな珍妙な表情を浮かべて固まった。
それを見たシェリーが、思わず「ふふっ」と吹き出した。
「あはは! リサ、レッドがびっくりしてるよ!」
シェリーの笑い声を聞き、リサはさらに不機嫌そうに眉をひそめた。けれど、その表情にはどこか年相応の少女のような幼さがあり、見ているシェリーにとっては微笑ましくしかなかった。
結局、リサの「洗いたがり」はレッドの困惑顔で終わり、シャワータイムは締めくくられた。
真っさらになったレッドが満足げに体をブルブルと震わせ、水しぶきを二人に飛ばす。
「もう、レッドったら!」
笑い合う二人と一匹。リサは相変わらずな表情を浮かべていたが、その心の中にあるトゲのような不快感はシェリーの笑顔によって少しだけ丸くなっていた。
シャワーを終え、すっかりリフレッシュした三人はリビングに戻った。
外は完全な闇に包まれ、時折遠くで聞こえるゾンビの呻き声や、何かが崩壊する音が夜の静寂を切り裂いている。しかし、この小さな部屋の中だけは、穏やかな空気が流れていた。
シェリーはテーブルの上にかき集めてきた食料を並べた。
高級な缶詰ではないが、保存用のクラッカーや少し古くなったレトルトのスープそしていくつかのチョコレートバー。今の彼らにとってそれはどんな豪華なフルコースよりも価値のあるご馳走だった。
「はい、リサ。今度は本当に食べてね」
シェリーが温めたスープを器に盛り、リサの前に置いた。
リサはしばらくの間、その湯気に揺れるスープをじっと見つめていた。人間としての食事という行為から遠く離れていた彼女にとって、それはどこか懐かしく、同時に慣れない儀式のようだった。
リサはゆっくりとスプーンを手に取り、一口、スープを口に運ぶ。
(……温かい)
味覚はウイルスによる変異で鈍くなっていたが、喉を通る温もりの感覚はあった。彼女は無意識のうちに、隣で嬉しそうに食事を始めるシェリーを見た。
「美味しい? よかった!」
シェリーは自分の分のクラッカーを頬張りながら、屈託なく笑った。その横ではリサが特別に分けてやったドッグフードをレッドが夢中でムシャムシャと食べている。
(……変な光景だ)
もし誰かがこの部屋を覗いたなら、絶句したことだろう。
一人はアンブレラの失敗作である怪物。一人はその元凶の1部とも言える研究者の娘。そしてもう一匹はウイルスに適合した犬。
本来ならば相容れないはずの三者が小さなテーブルを囲んで肩を寄せ合っている。
リサはふと、自分の隣にいるシェリーを見た。
自分よりも小さく脆い存在。けれどこの絶望的な街で唯一、自分を「怪物」ではなく「リサ」として扱い手を握ってくれた少女。
(アンブレラ……)
胸の奥で憎悪が疼いた。この温もりさえなければ、自分はただの復讐の鬼として街を彷徨っていたはずだ。
リサはスープを飲み干すとふと思い出したように隣にあるチョコレートバーに手を伸ばした。そしてそれを半分に割るとぶっきらぼうにシェリーの方へ押しやった。
「……あ」
シェリーは驚いて目を見開いた後、パッと顔を輝かせた。
「ありがとう、リサ!」
小さな幸せがそこにはあった。
明日になればまた血塗られた戦いが始まり、正体不明の怪物が自分たちを狙っているかもしれない。それでもこの一夜だけは彼らはただの「家族」のような時間を過ごしていた。
レッドが満足げに大きなあくびをしシェリーが眠そうに目をこすり始める。
リサは最後の一口のチョコレートを噛み締めながら静かに決意した。
(この子は……守る)
それが怨霊の導きなのか、それとも自分の中に残っていたわずかな人間性の叫びなのか。リサには分からなかったが、その意志だけは胸に宿った。
食後、心地よい疲労感と満腹感が二人を襲った。
シェリーはあくびを噛み殺しながら部屋の隅にある小さなベッドに目を向けた。シングルサイズの簡素なベッドだが今の彼らにとっては最高の休息地だ。
(……眠い)
リサが意識を失うようにまどろみ始めたその時頭の中で低く荘厳な声が響いた。
『……今は休め、リサよ』
インディアンの怨霊たちだった。彼らはリサの精神的な支えであると同時に、彼女の五感を研ぎ澄ませる監視役でもある。
『見張りは我らが引き受けよう。外の気配、風の流れ、大地の震え……すべてを察知し、危うき時は汝を呼び覚まそう。今はその心を休め、隣にいる小さな命と共に眠れ』
そのささやきに導かれるように、リサはシェリーの手を引きベッドへと促した。
狭いベッドに二人で潜り込むと、自然と体温が混じり合う。シェリーは安心したようにリサの腕の中に潜り込み、数分もしないうちに規則正しい寝息を立て始めた。
リサは目を閉じたが意識だけは研ぎ澄まされていた。怨霊たちが張り巡らせた精神的な網が、家の周囲に潜むゾンビたちの足音や、遠くで咆哮する怪物の気配を彼女に伝えていた。
だがいつの間にか、リサは隣に眠る少女の小さな鼓動を感じながら深い眠りに落ちていった。
――翌朝。
カーテンの隙間から差し込む青白い光がリサの瞼を叩いた。
意識が覚醒した瞬間、リサは自分の胸元にずっしりとした重みと湿った感触があることに気づいた。
見ると、シェリーがリサに強く抱きついたまま眠っていた。
その頬には寝ている間に流れたであろう涙の跡が白く残っている。夢の中で再び恐怖を見たのかあるいは今の状況への不安が溢れ出したのか。
(……泣いていたのか)
リサは胸のあたりでもぞもぞと動くシェリーの頭を不器用な手つきでそっと撫でた。
すると、シェリーはゆっくりと目を開けぼんやりとした表情でリサを見上げた。
「……おはよう、リサ」
まだ眠気に包まれた声だったが、その瞳には昨日よりも深い信頼の色が宿っていた。シェリーはリサの腕の中で一度だけぎゅっと力を込めると、名残惜しそうに体を離した。
「よし、行こう。警察署まであと少しだね」
二人は身なりを整え装備を確認した。
レッドはすでに玄関先で行儀よく座っている。リサは自らの骨のトマホークを握り直し鋭い視線でドアを見据えた。
ここから先はさらなる地獄が待ち受けているだろう。
けれど、今のリサには守るべきものがいた。
リサがゆっくりとドアノブに手をかけ、静かに扉を開ける。
眩しい朝日と共に血の匂いと絶望に満ちたラクーンシティの街並みが再び彼らの前に広がった。