本作を見つけていただきありがとうございます。
本作は『ハイキュー!!』の二次創作小説です。
川西太一を主人公(視点)に、病室という不謹慎な場所から始まる、報われずとも美しい初恋と不器用な若者たちの人間ドラマを描いた連載になります。
⚠️作品の傾向・注意点
設定: 白布がすでに医師として働いている未来設定です。そのため、一部年齢操作(川西の2歳上)を行っています。
視点: 本編は完全に「川西太一視点」で進行します(※オリ主主役の作品ではありません。相手役としてオリジナルキャラクター(すず)が登場します)。
描写: リアルな病気や入院生活の描写が含まれます。
その他: 執筆補助にAIを使用していますが、物語の核やエピソードは自分自身の構成で書き上げています。
大学生の無茶が祟った太一の、自業自得のロスタイム。
最後までお付き合いいただけましたら幸いです。それではどうぞ!
「太一、次それ空ける? まだまだ夜はこれからヨ〜!」
天童さんの高く弾む声が、狭いアパートの一室に響く。
目の前には、空になったビール缶と、茶色い揚げ物の残骸。
白鳥沢時代の先輩たち……大平さんや瀬見さんに山形さん、それに相変わらずうるさい五色も加わった、いつもの「OB宅飲み」だ。
就活は終わった。
単位も問題ない。
経済学部の大学4年生にとって、今の時期は人生で最も自由な「無敵時間」のはずだった。
サークルでバレーをして、その足で深夜まで居酒屋のバイトに入る。
泥のように眠って、起きたらまた誰かと遊ぶ。
そのための軍資金を稼ぐために、シフトは限界まで詰め込んだ。
「大学生の当たり前」を謳歌している。 そう思っていた。
(……なんか、今日ずっと喉が熱いな)
数日前から続く、刺すような喉の痛み。
でも、「別に動けるし元気だし、風邪くらいなんてことない。」と自分に言い聞かせて、バイトも飲みも一度も断らなかった。
若さに任せた無茶が、少しずつ俺の肺を、免疫を、削り取っていることにも気づかずに。
「……太一? お前、さっきから顔赤いヨ。お酒のせいじゃなさそうネ?」
天童さんの細い目が、スッと鋭くなる。
「いや、大丈夫っす。ちょっと暑いだけで……」
答えようとした瞬間、喉の奥が焼け付くような熱に支配された。
呼吸が、浅い。
吸っても吸っても、空気が肺の入り口で弾き返されるような、得体の知れない恐怖。
「……っ、げほっ、……はぁ、っ」
一度出た咳が止まらない。 視界がぐらりと揺れ、俺は畳の上に膝をついた。
「おい、太一!」
「しっかりしろ!」
大平さんの太い腕が俺を支え、瀬見さんが慌ててスマホを操作する。
遠のく意識の中で、天童さんの「あーあ、これ本格的にアウトなやつだネ。賢二郎に連絡しよっか。」という声が、やけにクリアに聞こえた。
「……自業自得だ。バカか、お前は」
次に意識がはっきりした時、目の前には「これ以上ないほど冷めた目」をした白布が立っていた。
ここは、コイツが医者として働いている病院の処置室。
俺の腕には、いつの間にか点滴の針が刺さっている。
「急性扁桃炎。それに肺炎の併発だ。喉の炎症が酷すぎて、呼吸器までやられてる。」
白布はカルテをパチンと閉じると、ため息混じりに続けた。
「深夜バイトの詰め込みに、不摂生な飲み歩き。お前のその『大学生らしい生活』が、自分の体をぶっ壊したんだよ。」
「……厳しいなぁ、白布先生は」
掠れた声で返すと、白布は一切笑わずに言い放った。
「茶化す余裕があるなら、しばらく入院して治療されとけ。お前みたいな自覚のない馬鹿は、強制的にベッドに縛り付けとかないと治らないからな。」
車椅子に乗せられ、ガラガラと静かな廊下を運ばれていく。
シャバの自由が、指の間からこぼれ落ちていく感覚。 運ばれたのは、二人部屋の病室だった。
「……はぁ。最悪だ」
カーテンで仕切られた隣のベッド。
そこには、俺と同じように——あるいはもっと重苦しい呼吸の音を漏らしている「誰か」の気配があった。
これが、俺のキラキラしたはずの4年生、そのロスタイムの始まりだった。