TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる。 作:辻契約マスコット
ガバったらごめんなさい。
優しく教えてね。(厳しくてもいいよ。)
意識のない少女を抱え、『シン・アーク』本部に着いた私は、すぐに洗脳装置の元へ向かった。
「カイ!カイはいる?」
「……なんなのだ? 吾輩は洗脳装置の改良を繰り返してぐっすり眠っていたのだが。」
眠そうな声で文句を言いながら現れたのは、私と同じ『シン・アーク』幹部にして技術担当を任されている男、カイ・アークである。
「洗脳装置、今すぐ使えるかしら?」
「使えるが……ああ、適合者を連れて来たのか。」
「ええ、気絶しているうちに繋いでしまいましょう。」
カイの洗脳装置に、少女を座らせる。
「これでいいかしら?」
私の問いに、カイは何やら機械をいじりながら軽く肯定する。
「そういえば、改良って何したの?」
カイはなにかと改良を好み、ひとつの装置を何度も改良する癖がある。
時々改良することに意識が向きすぎるあまり、当初の目的を忘れることがある。
それで何度も失敗しているのだが……。
「ざっくり言うと、ダイ・アーク様に使えることに性的な快楽を覚えるように、映像と機械触手で刷り込みをできるようにした。」
今回は脱線しなかったらしい。
だがしかし。
「……この子、下半身不随で感覚もないみたいよ。 無駄に乱暴しないでちょうだい。」
「あーじゃあ機械触手はオフにするのだ。 せっかく作ったのに……。」
今回のように改良した結果、状況に当てはまらなくなることもある。
魔法と科学を融合させるなど当人の技術力は非常に高いのだが、なんとも不安が拭えない技術者である。
「各数値正常。悪の魔法少女爆誕超洗脳装置ver.1.27、起動なのだ。」
「…。」
口癖も似合わないし、ネーミングセンスも酷い。
……どうにかならないのだうか。
───〜○。゚〜───
夢を、見ていた。
前世の夢。
そこでは一人の男が魔法少女という存在に心うたれ、救われ、しかし何もなせぬままに呆気なく死んだ。
それ以外はもうあやふやだった。
この世界に転生した夢。
少女として二度目の生を迎えた男は、魔法少女が実在することを知った。
魔法少女への憧れは強まり、自分も魔法少女になることを夢見た。
だが、身体はそれに程遠かった。
病室のベッドが定位置。一人では何も出来ず、生きることの全てに周りの人の助けがいる。
父は働き詰めであまり見舞いに来なかった、母は見舞いに来ても目の前の娘の事など見ていなかった。
母が見舞いに来なくなってしばらくした頃、父が子連れの女性を連れて来た。
なんでも再婚するらしかった。
僕は実の両親が離婚していたことすら知らなかった。
僕の実母は父と僕を捨てたらしい。
義母は明るくおしゃべりな人で、義妹を連れてよく見舞いに来てくれた。
義妹は最初、僕に素っ気なかった。
僕は義妹と何を話せばいいか分からなくなって、あれこれ悩んで結局魔法少女を布教した。
これが効果てきめんで、義妹と仲良くなった。
お姉ちゃんと呼ばれた時は泣いてしまった。
義妹、
ダイ・アーク様に仕える夢。
あの方は僕に色々なものをくれた。
魔法の力、僕は一人で身の回りの事ができるようになった。
組織の仲間、僕は共に仕える仲間を得た。
魔法少女の力、僕が焦がれていた力。
それらをくれたあの方に仕えるのは幸せで、甘い炭酸飲料のように甘美で刺激的で。
そしてそれは永遠のようで……。
(…?)
なにか、強烈な違和感があった。
今まで見ていた夢は、本当にあった出来事なのか?
いいや、なにか違う気がする。
では、何が『嘘の夢』なのか。
『前世の夢』?
あまりにも簡潔で、仔細が分からない。
だが、これは僕を形作る基礎のはずだ。
これが僕の原点だ。
そういう実感がある。
『今世の夢』?
うんざりするような事ばかりで、まともに人間らしい生活が出来なかった。
でも、
あれを嘘なんかにしてはいけない。
僕の宝物は本物だ。
そういう実感がある。
『忠誠の夢』?
これは、いつ起きた出来事なのか?
『今世の夢』の後のような、しかし実感が薄い。
でも、望んでも手に入らなかったものが全て手に入る。
素晴らしい夢だ。
『シン・アーク』の一員として仲間と世界を闇に染めて、ダイ・アーク様に仕え、お褒めいただく。
最高じゃないか。
それでいいんだ。
だって、僕は一人で生きていけるようになったんだから。
その力をくれたダイ・アーク様に仕えるのなんて当たり前じゃないか。
『嘘の夢』なんかないんだ。
嘘にしていい事なんて、何一つないんだから。
だからもう、ずっとこのまま。
この消えてしまいそうな夢の泡に、浸っていよう。
ずっと、ずっと。
───〜☆〜───
激しい雨の音が、教科書をめくる音をかき消す。
それにどこか寂しさを覚えながら、授業を受けている。
教室の窓の向こう、どんよりと曇った空を見ながら思いを馳せる。
「お姉ちゃん……。」
時々、病室暮らしの姉が気がかりになる。
とくに雨の日は、気分が憂鬱になるからか、或いは外に出られない姉に近づいた気になっているのか、よく姉のことを考えてしまう。
(…いや、きっとあの日と重ねているんだ。)
それは、姉と出会った日のこと。
姉と出会った、というのは少し奇妙な言い回しかもしれない。
正確には、姉というのは母の再婚相手である義父の子。義姉である。
姉とは、4年前母に連れられて向かった病院で、義父と合わせての出会いだった。
その日、お出かけと聞いていたわたしはせっかくのお出かけの日に雨になって落ち込んでいた、だというのに目的地が病院だと知ってさらに酷く落ち込んでいた、というかいじけていた。
当時のわたしは病院が大嫌いだったから。
今思えば、少し悪い事をしたと思う。
いじけて素っ気ない態度をとるわたしに、姉は魔法少女の話をしてくれた。
最初、私はあまり興味をそそられなかった。
だって、そんなの教室でみんな話してるから。
毎週魔法少女の活躍がニュースになって、毎日何かしらで魔法少女を見かけるから、当たり前すぎてどうでもよかった。
でも、姉が話す魔法少女はなにか違った。
姉はまるでお姫様の物語を話すみたいにキラキラした目で、わたしの知らないキラキラした魔法少女の物語を聞かせてくれた。
わたしは姉と話す時間に夢中になった。
それからは何度も母にねだって姉の元に訪れた。
キラキラの魔法少女のお話を聞くためなら、大嫌いな病院のこともどうでもよかった。
ある日、わたしは姉の前で言った。
「わたし、お姉ちゃんが話してくれたみたいな、キラキラな魔法少女になりたい!」
その言葉に、姉は感極まって泣き崩れた。
栓が抜けたみたいに大泣きした姉は泣き疲れて眠ってしまって、なんだかわたしがお姉ちゃんみたいだな、なんて思ったのを覚えている。
たくさんお話して、姉のこともたくさん知った。
好きな魔法少女アニメがあること、好きな食べ物があること、色んな知識を知っていること、看護師さんと仲がいいこと、日の傾きで時間がわかること、ぬいぐるみと寝るとよく寝れること。
好きな魔法少女アニメの主題歌が歌えないこと、好きなものが食べれないこと、病室からあまり動けないこと、一人でトイレができないこと、いつも一人で窓の外を眺めていること、いつも枕を濡らしていること。
知っていく度、一緒に味わいたかった。
知っていく度、一人にしたくなかった。
知っていく度、姉がとても遠い存在に思えた。
知っていく度、姉がただの女の子だとわかった。
知っていく度、憐れに思えた。
こんな、魔法少女に憧れている普通の女の子が、一人では立てないことが。
知っていく度、その憐れみが失礼だと思えた。
姉はいつも笑顔で、わたしに夢を見せてくれたから。
いつしかわたしの中で義姉は自慢の姉になっていた。
わたしのお姉ちゃんはこんなに凄いんだぞって、誇らしかった。
だから、姉の自慢の妹になりたかった。
ボクの妹はこんなに凄いんだぞって、言って欲しかったから。
──キーンコーンカーンコーン♪
過去回想に終わりを告げるように、終了のチャイムが鳴る。
「はぁぁ、せっかくいいところだったのにー…。」
小声で文句を零しつつ、お別れのホームルームをテキトーに流す。
わたしはイライラを早急に解消すべく、素早く帰り支度をして、姉のいる病院に向かった。
今日はわたしの12歳の誕生日、両親はまだ仕事だから、先に姉に誕生日を祝ってもらおうと考えていた。
「あの子……凄い素質だクー! 絶対に勧誘成功させるクー!」
物陰からストーキングしているナマモノに気付かないまま……。
あとはいわんでもわかるやろ
詰みや()