TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる。 作:辻契約マスコット
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わたしは今日めでたく12歳になった女の子、日奈沫 夢愛。
放課後、わたしは大好きなお姉ちゃんに今日という日を祝ってもらうべく、姉のいる病院に向かっていた。
その時、突然スマホががけたたましい警告音を鳴らす。
同時に、街に放送が流れる。
─怪人警報!怪人警報!付近の方はすぐに避難してください。
怪人警報は、どこかしらの悪の組織が怪人などでの侵略行為を周囲に知らせる警報である。
日本全国毎日どこかしらで5回は鳴るそうだ。
だから、怪人警報自体は珍しくないし、付近の魔法少女が何とかするだろう。
……と思っていた。
「お、おねえさーん!助けて欲しいクー!」
目の前にこのナマモノが現れるまでは。
「……。」
「えっと今、近くに魔法少女が居なくて。」
「……。」
「だからえっと、おねえさん、クーと契約して魔法少女になろうクー!」
「……ええっと、今なんて?」
衝撃的な状況、夢にまで見た状況に呆然としてしまっていたが、今このナマモノ聞き捨てならないことを言わなかったか?
「クーと契約して魔法少女になって欲しいクー!」
つまり、このクークー言ってるぬいぐるみっぽいナニカは魔法少女のサポート役、いわゆるマスコットとという存在。
マスコットが、私に、契約を持ちかけている。
「やったああぁぁぁあ!!!!!!」
と叫びたいところだ。というか叫んだ。
「…び、びっくりしたクー。」
「ああ、ごめんね。 遂に魔法少女になれると思うと嬉しくって。」
憧れの魔法少女になれるという感動に水を差すように、破壊音を響かせながら怪人が現れた。
多分さっきの感極まった叫び声につられたんだろう。
「アァーーァァク!!」
と、叫んでいるところを見るに『シン・アーク』の怪人らしい。
『シン・アーク』は人的被害よりも物的被害を狙う組織だったはず。まぁ人的被害を避けてる訳でもないけど。
「は、はやく契約するクー!」
そうだ、ゆっくり分析している暇はない。
「えっと、契約ってどうやるの!?」
「理想の自分をイメージして、クーの手を握るクー!」
「う、うん!」
イメージ、イメージ。
理想のわたし。
希望を体現するキラキラの魔法少女、いつかお姉ちゃんが語ってくれたおとぎ話のヒーロー。仲間と結んだ絆で、みんなの応援で限界を超える少女。
それこそが、揺るぎない理想のわたし。理想の魔法少女。
もっと言えば、そこに…わたしの隣にお姉ちゃんが居てくれたら、一緒に魔法少女をできたらどんなにいいだろう。
きっといつか、その理想にたどり着く。たどり着いてみせる。
不可能を可能にする夢みたいな魔法少女、それがわたしの理想だから。
そうしてしっかりイメージしてから、マスコットの手をとる。
「契約完了だクー。」
マスコットがそう告げると、世界は光に包まれる。
光の中で、わたしの前に魔法のステッキが現れる。
わたしがそれを手にとると、光がステッキに集まって世界が元に戻った。
気がつけば、わたしはフリルがたくさんあしらわれた白とピンクを基調とした衣装に身を包んでいた。
変身した。そう自覚すると共に頭の中に魔法少女としての自分の名前が浮かんできた。
これはもう、アレをやるしかない。
「魔法少女アブソードスパークル! わたしのキラキラで、みんなを夢中にさせちゃうよ!」
魔法少女アニメでお決まりの名乗りをあげた。
前々から考えてたポーズもバッチリ決まって超カンペキ。
「…初変身からこんなノリノリな子、初めて見たクー。」
───☆
初変身&初戦闘を終えて、魔法少女のアレコレをマスコット──ヒックーという名前らしい。クーと呼ぶことにした。──に一通り教わりながら病院に向かっている。
「魔法少女には一人一人固有の魔法が使えるんだよね。」
わたしが一般に知られている情報を聞く。
「そうクー。 契約時の理想のイメージが魔法に影響するクー。」
クーが簡潔に答える。
「じゃあ、わたしが魔法を使えなかったのは理想のイメージと現実が離れてたから?」
わたしが質問をして。
「かもしれないクー。 でも、魔法が使えない子の話はあんまり聞かないから、正直よく分からないクー。」
またクーが答える。
という繰り返しをしていた。
「えー。 クーでもわかんないかー。」
「力になれなくてごめんクー。」
クーがすごくしょんぼりしている。ちょっとかわいい。
「大丈夫だって! さっきも気合いで怪人倒したし!」
そう、わたしはなんと初戦闘で魔法が使えないという大ピンチだったのだ。
しかし、わたしは慌てず
魔法少女になったのに魔法が使えないのはちょっと残念だが、怪人にされてた人も助かったし万事OKとする。
結果良ければ全て良し。過程尊ければマジ最高。(姉の言)
そんなこんなで、病院に着く頃には気づけば夕方になっていた。
顔なじみの看護師さん達に軽く会釈しつつ、姉の病室に向かう。
なんだか、看護師さんがいつもよりよそよそしい感じがして、少し嫌な予感がした。
「……おかしいクー。」
と言い、突然クーが走り出した。…実際は浮いてるんだけど。
「ちょっと、クー?」
わたしはクーを追いかける。
クーは慌てた様子で、なにかまずいことでもあったのだろうか。
「こっちクー!」
この棟、この階段、この階、この通路。
嫌な予感はどんどん大きくなっていく。
「ここだクー。」
「ここって……!」
そこは、姉の病室だった。
「スパークル、念の為変身するクー!」
とりあえず言われた通り変身した。
わたしが変身したことを確認すると、クーは病室の扉を開けた。
「お姉ちゃん!」
病室に入ると、そこはもぬけの殻だった。
「え………………どういうこと? クー、ちゃんと説明して。」
わけがわからなかった。
「ごめんクー。 闇の魔力を感じて、慌てちゃったクー。 この病室に、みんながこの病室のことをあんまり感じれなくなる魔法がかけられてたみたいだクー。」
違う、そんなことが聞きたいんじゃない。
「なんでお姉ちゃんが居ないの。」
…自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
「わ、わかんないクー。 ……ど、どこかに出かけたんじゃないクー?」
今ほどこのナマモノの語尾がウザイと思ったことは無いな。
「お姉ちゃんが私に黙ってお出かけするわけないでしょ。」
さらに低い声が出た。
「ごご、ごめんクー。」
ああいや、いけない。クーはお姉ちゃんのことを知らないんだ。それにクーにあたっても仕方ない。
心がぐちゃぐちゃだ。こういう時は、お姉ちゃんはなんて言ってたっけ。そうだ、深呼吸だ。
わたしは3回深呼吸した。
少し冷静になると、お姉ちゃんが居ない現実が実感を帯びてきて、辛くなった。
わたしは寂しさを紛らわせるように、姉が居たベッドに寄りかかった。
「……お姉ちゃん、どこ?」
思わず口から出てしまった。
「……多分、どこかの悪の組織に連れ去られたんだと思うクー。 もしかしたら──」
「それ以上いい。 言わないで。」
聞きたくなかった。
お姉ちゃんが怪人にされてるかもしれないなんて。
もう、二度と会えないかもしれないなんて。
「……。」
「さっきのも、独り言だから。 忘れて。」
「わかったクー。 ……この部屋の魔法は解除したクー。 変身を解いても大丈夫だクー。」
「……ありがと。 ちょっと、一人にさせて。」
わたしは変身を解き、クーは静かにどこかへ行った。
姉と夢見た魔法少女になった日、わたしは姉を失った。
姉妹2人とも、魔法少女になれてよかったね!
次話……ねてまて。