フロム・ゲヘナ   作:おぢさんX

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ぱぱー!ぼく、こっちの連邦生徒会長がいいー!!(2部を見て)


泣いちゃった。

 

 

ゆっくりとエレベーターが3階まで上がってくる。

 

開いた扉が閉じないようにとヒナちゃんが手で押さえてくれたので礼を言って中に入り、1階キーを尻尾の先を使って押し込む。

 

「……横着してる。」

 

「これは横着じゃあないよ。尻尾持ちの特権だぜぃ。」

 

閉じていく扉の隙間から廊下に転がっている局員の姿が僕の目に映った。下降し始めたエレベーターに少し揺られ、ムギちゃんを落とさないように壁に手をついてバランスを取る。

 

「ヒナちゃん。」

 

「…なに?」

 

「近いよ、君。三人しかいないんだからスペース空いてるだろう?」

 

僕の隣で壁に寄りかかり腕を組む彼女にやんわりと抗議してみる。

 

「気のせい。」

 

「そーぉ?くっつきそうな距離だと思うんだけどね。」

 

スンとすました顔でとぼけられてしまった。

 

「それにしても、僕を出してくれたゲヘナの政治家さん達には感謝しなくちゃいけないね。……そうだ!またブンガブンガを開こう!」

 

「……いつやるの?」

 

「僕とムギちゃんってゲヘナに着いたら風紀委員会地下の特別牢?それとも自由にしてもらえるのかな?それによっては日にちが変わるよね。」

 

「それは、ライの態度次第ね。」

 

そう言って組んでいた片腕を抜いて手のひらを向けてくる。

どうやら誠意を寄越せと言いたいらしい。

 

「…僕のズボンのポケットにソドムコインがいくつか入ってる。」

 

するりとヒナちゃんの手がポケットの中に入ってきてコインを全て掴むと離れていく。

 

「あっ!?全部持っていったな!」

 

「…1…2…3…4…5枚。『ソドム』への入場5回分ね。」

 

コインを数え終わると上着の内ポケットに仕舞うのが見えた。

 

「君、それ全部うちのクラブへの入場権にするの?」

 

「そんなわけないでしょ、使うのは5枚くらいよ。」

 

「1枚も残らないんだが?…まぁいいか、結局うちにコインは戻ってくるわけだし。」

 

「…ムギはゲヘナに着いたら解放してあげる。」

 

「ん?」

 

「今のはムギの分よ。」

 

「んー。……え?」

 

「貴方の分はまだ受け取ってないって言ったの。ムギは5枚にしてあげたけど。ライはコイン何枚分なの?自分の値段は自分で決めて?」

 

「っ!!? ヒナちゃん!君、今コイン全部持っていったじゃあないか!」

 

「ふふ、そうね。じゃあどうするの?」

 

彼女はティラノサウルスさんみたいなえっろい目でこちらをしっとりと見てくる。気のせいか紫色の瞳が妖しく光っているように見えた。

 

「…わぁ…ァ…」

 

く、喰われる。

 

「泣いちゃった。」

 

「言わせたいんだろぉ?わかったよぉ、体で払うよぉ。」

 

柄シャツの胸ポケットに仕舞っていた赤いハンカチーフもといギラギラおパンツで溢れた涙を拭う。

 

「そ。…ふふっ。決まりね。」

 

「………………僕、実は風紀委員長やってみたかったんだ!一週間くらい働こうか?」

 

「…え?ぁ、違う!それ欲しい言葉じゃないっ!最初だけでよかったっ!」

 

「クッハッハッハッ!!!今からライ風紀いいんちょーって呼んで欲しい。君は今からヒナ副いいんちょーだっ!!」

 

「わぁ…ァ…どうしよう…どうして。うまくいってたのに。」

 

「あーぁ、泣いちゃった。そのコート借りるよ?腕章付いてるし丁度いいや。」

 

シナシナに萎れていく彼女から羽織っていたコートを勝手に拝借してムギちゃんを担いでいる肩と逆に引っ掛ける。

 

『──1階です。』

 

アナウンスが会話に差し込まれ、僕は階層表示のインジケーターを確認する。

 

到着したみたいだ。おしゃべりしてると時間が経つのがはやいね。

 

僕は二股に分かれた舌先で人差し指をペロリと舐めると、その指で眉毛を撫でつける。

 

「どうだい?ヒナ副いいんちょー、僕の眉毛は凛々しいかい?」

 

シルエットを大きく見せていたコートが無くなり、より小柄に見えるヒナちゃんに身だしなみの最終チェックを頼む。

 

「地下牢で、ライと………うぅ。」

 

どうやらそれどころではないようだ。

危ないところだった。なんとかごまかせたな。

 

エレベーターの扉が左右に開いていく。

みなさんお揃いらしい。正面にずらりと人が並んでいる。

 

「やぁ!みんなおはよう!爽やかな朝だね?…ほら、ヒナちゃんも!このハンカチ貸してあげるから!メソメソするんじゃあない!」

 

矯正局員だけでなく公安局の知ってる顔が居るな。

おや?奥にいるのは風紀委員会か?ヒナちゃん1人で来ていたわけじゃあなかったんだ。

エレベーターの入り口をシールドで囲み、銃を向けてきてはいるが、口をポカンと開けてお間抜けさん達め♡

 

「「「「「「な、なにがあったぁぁあ!!!?」」」」」」

 

「今からリミテッド風紀いいんちょーの鬼怒川ライだ!よろしく頼む!よーし、グラウンドに集合してくれ!今から朝礼しようぜぃ!」

 

「ふざけるなバカ!今すぐ取り押さえろ!」

 

拡声器を持った金髪に吠えられる。

 

「あ、やっぱりダメ?…降参しまーす。」

 

この後すぐ、僕はミニスカポリスさん達に取り押さえられ、就任して3分も経たない内に風紀いいんちょーをクビになってしまう。……地下牢行きかなぁ、僕。

 

まだ肌寒い午前十時頃のことだった。

 




ソドムコイン 
ゲヘナ自治区で見かける純金のコイン。
どうやらヒノム火山で採れた金を使い、勝手に鋳造しているようだ。
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