次に紫が向かった先では、夏だというのに雪が降っていた
積もるそれらによって構成された白い景色の奥に、溶け込むように大きく白い屋敷が建っている
「彼処は氷雨さんの家。ちょっと気難しい人だから変なことしないように気をつけてね」
「あらまぁ、気難しいなんて酷い言い草だわぁ」
「ひゃぁ!」
注意を促したみさきの後ろに突然白い和服を着た女性が現れた
「ふぅん……沫囲さん家から電話で連絡が回ってきてたけど、その子がこの村を調査してる子であってる?みさきちゃん」
「あ、えっと、そうです……」
「そういったことの確認は本人にするものではないのか」
紫の言葉にみさきは固まるが、氷雨はコロコロと袖で口を隠して笑う
「いいわね、威勢の良い子。隠されてるものを知ろうとするんですもの、それくらいが合ってるわ。えーと、サインを書いたらいいのよね?」
「これまでの待遇から、なんの抵抗もされないのは違和を感じるな」
「此処の住民は排他的だものねぇ。沫囲さんも貴女が子どもじゃなかったら門前払いだったかもね」
サインを書きながらされたその発言にみさきが驚く
「沫囲のおじちゃんって皆に優しいと思ってた……」
「あらあら、子どもの夢を壊しちゃった。誰にでも裏表はあるものよ。自分に優しくしてくれてたら優しい人でいいの」
ふわりと氷雨はみさきを撫でる
紫はそれをどうでもよさそうに眺めていた
「自己中心的な考えだな。嫌悪感はないが」
「自分が中心でなければ世界は広くないわ。はい、どうぞ」
返された紙を受け取り、紫はその場を後にした
ーーー
「紫……私、何が正しいのか分かんなくなってきた。優しいと思ってた沫囲のおじちゃんは大人には優しくなくて、怖いと思ってた氷雨さんは紫に優しくて」
次の家へと向かう道中、みさきが突然切り出した
紫はただ淡々と答える
「正しいか否かというのは何時だって主観でしかない。私は正誤よりも自身を裏切ることがないように生きることを優先している。己は今までの自身に誇れる生き方をしているのかとな。まぁお前がどういった選択をしようが私の知るところではないが、一例にはなるだろう」
「自分を……裏切らない……」
少し思い悩んだ後、みさきは両頬を手で叩いた
「ありがと、ごめん、変に悩んじゃった!案内と監視されてるだけの紫にとってどうでもいいことだったよね」
「気にするほどのことでもない。道中の暇つぶしだ」
「じゃあ一方的に感謝しとく!」
ニッと白い歯を見せて、みさきは楽しそうに笑った
「私さ、同年代の友達がほとんど居なくて、だから今紫と話せてるのが実は楽しいんだ。友達って言うには変な関係だけど」
「……会話相手にならなってやる。友情などというものは感じていないが」
「なんかそういうところも紫らしいって思うようになってきたなぁ〜」
みさきの顔からは先ほどまでの暗さは消えていた