首に走る鈍い痛み
そっか、私、このまま死んじゃうんだ
「お母……さん?」
あぁ、ゆかりちゃん
ごめんね、守ってあげられなくなっちゃう
だめなお母さんでごめんね
「おや、子供が居たのかい。……復讐なんて目指すんじゃないよ、相手するのは面倒だからね」
よかった、かいくんはゆかりちゃんのことは殺さないでいてくれる
……どうして、泣いてるんだろう
あはは、最期まで心配しちゃうなんて変だよね
今更何もできないのに
……せめて、最期は、ゆかりちゃんのこと、抱きしめてあげたかったなぁ
ーーー
「……夢?オリジナルの、記憶。そっか、あなたの願いはそれなんだ」
造世が目を覚ますと、少し遅れて隣で眠っていた紫も起床した
慈しむように、造世は紫の頭を撫でながら声をかける
「ん……おはよ、紫」
「……おはよう、造世、さん?いや、どう呼べばいいんだ」
距離感に戸惑う紫に、造世は微笑みながら返す
「……無理に敬う必要はない。私は、貴女のお母さんの模造品。貴女の母親本人ではない…………敵意を示したくないというのは、伝わってるから」
「…………分かった。今後は造世と呼ぶことにする」
「あれ……?ほんとだ、昨日、一回も、私のこと呼んでなかった、ね」
たった今気がついた様子の造世に多少の居心地の悪さを感じながら紫は会話を続ける
「2つ、聞きたいことがある。まず、私が母と同じ『花』だと言うのなら、私にある植物の遺伝子はそれが影響か?」
問われた造世は紫の予想に反して困り顔を見せた
「遺伝子とか、科学のことは……私、分からない。私が知っているのは、『花』は、植物の声を聞いたり、自分の象徴となる花を操れたり……各々が、自分の花世界を持ってるということだけ。花世界は、自分の花をよく知らないと、開けないけど」
「……どういうことだ?声に心当たりはあるが、操ると考えた時、私が可能なのはこの毒結晶だけだ」
「……………………もしかすると、それ、植物の一部……?かも。解析してみて、毒の名前を教えてくれたら、貴女が何の花を操れるのか、分かる。だから、また分かったら教えて……えっと、2つ目はなあに……?」
紫が手に生み出した結晶を見て、造世は少し考えて仮説を伝え次の問を促す
すると紫はバックパックから機械を取り出した
「……私が入眠するとこれが周囲を警戒・録画するのだが、この映っている男は誰だ」
画面に表示されているのは造世が追い払った少年の姿だった
造世は少し悲哀の滲む目をして答える
「もう少し、順番を考えて伝えたかったけど…………紫が自分で気づいたんだから、ちゃんと言うね。彼は虚琴 海利(うろごと かいり)。外の世界の、たった一人の、生き残り。そして、貴女のお母さんを殺した男の人、だよ」