紫色の花が咲く   作:花咲@ただの花

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27話:世界を巡る

 

図書館から出てきた紫を、造世が迎える

 

「どう……?龍の居場所、何か、分かりそう?」

 

「火龍は火山の中を移動し続け、陰龍は姿を見たものが居ないという情報が手に入った。陽龍については手がかりがあった。陽龍の存在する付近では、様々なものが異常活性を起こすと記されていた。ドローンで撮影した映像からして、此処から西へ進んだ森林、大樹の森と呼ばれるらしいその場へ向かう」

 

紫が地図を開き、まっすぐと直進するルートに赤い線を引くと造世がそっと青いペンを取り出した

 

「……私は、こう通りたい。紫は、苦手かもしれないけど、人から、龍のことを聞いておくのも、敵対的、だった場合の、対策になるでしょ…………?……ダメなら、従うけど……」

 

何度も曲がり、いくつか観光地も含まれるそのルートを見て、紫は小さく溜息を吐いた

 

「いや、いい。そのルートを採用しよう。陽龍が水龍と同様に友好的だとは限らないということを失念していた。バイアスを排し考えれば妥当な経路だ」

 

「ありがと……お金は、私が、この世界に来てから集めたもので、払うから……紫も、この旅行、楽しんでね」

 

「それほど気楽なものだと捉えるつもりはないんだが……」

 

微笑む造世に、紫は返答に詰まった

 

ーーー

 

道中で紫と造世は互いの知識を交換していた

 

「……まとめると、異能力っていうのは、子供だけにある、不思議な力なんだね」

 

「そういうことだ。『花』の力との相違点は時間制限、コストや発生までのラグなどの有無という認識で構わないか?」

 

「うん、『花』の力は一生その身に宿り続けるし、コストは必要ないし、意識さえすれば使えるから、思考時間以上のラグはない。…………代わりに成長もしないけど。できることは最初から決まっていて、やり方に気づくかどうかだけ。其処は、異能力のほうが、優れてるかも……?」

 

情報をメモ帳に表としてまとめ、紫は解析完了を表示する機械を取り出す

 

「…………そして、この結晶の力は『花』としてのもので確定してよさそうだな」

 

「アコニチン……トリカブトの毒性成分……でも、どうして植物体じゃなくて、アルカロイドだけなんだろうね……?」

 

今まで見守ってきたどの『花』とも異なる紫の能力に造世は疑問を抱くが、紫は気に留めはしなかった

 

「何故そうなったかは幾つでも仮説を立てられるが、どれも証明できない以上考えたところで意味はない。それよりも、できることを解明していく。造世、再確認にはなるが『花』の力というのはその花の宿した伝承や言葉に由来するという認識で合っているか」

 

「あってる。……トリカブトなら、毒の生成、不老不死の妙薬、僧侶の被り物、嫌悪の象徴、騎士道など…………どういった感覚でそれを顕現させるかは各々によって違うけど」

 

「内面的なものであれば総当たり的に試すしかないな……結晶を生成する時の『自らの構成元素を結晶構造へDNAを経由し変換する感覚』や地から水などを吸収する時の『体内の濃度を一時的に上下させ、周囲から呼び寄せる感覚』は既に使用できるため、類似した脳の電気信号パターンを探るべきか。サンプル数が少なくはあるが」

 

脳波を読み取るための機械の設計アイデアをある程度メモして、紫はメモ帳を閉じた

 

「…………紫は、理屈っぽいんだね。感覚でしていることを、脳波から理論にしようとするなんて、初めて聞いた」

 

「そう生きてきた故だ。曖昧なままでは、いつ不都合が起きるか分からないので主軸には据えることがしたくなかった」

 

「それが、紫の生存戦略、だったんだね」

 

風が吹き、ふと紫が横を向くと造世は話を聞けたこと自体が幸福であるとでも言うような顔をしていた

 

「……私には分からない感覚だが、自分のオリジナルの遺した娘というのは、それほど愛らしく映るのか?出会ったばかりの子供へと向ける表情ではないと思うが」

 

「ん……私にも、よく分からない。でも、あなたのことは、とっても大切」

 

そう言いながら、造世は紫の髪を梳いた

 

「……造世は、私とは逆だな。ほとんど全てが曖昧だ」

 

「怪異だもん。曖昧であることが、本質」

 

胸を張る造世と共にしばらく世間話をしていると宿泊施設が見えてきた

 

「ん……着いた。白猫旅館」

 

視線の先には看板を掲げた古民家があった

 

 

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