紫色の花が咲く   作:花咲@ただの花

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29話:醜い人間

 

木霊種の老婆が去ったあと、紫は自身の脳波を解析再開しているとおかしな点を見つけた

 

「通常の人間種・人外種のどちらにも見られない波形……しかし病状症例などとも合致しないな」

 

「私の、脳波とも、合わない?」

 

問いかける造世の頭部に電極を当て、紫は首を横に振る

 

「思考パターンによる安定した脳波及び能力の出力は数値化できたが、新たな問題が増えた。これを解明しなければ、この波長を生成する分、無意味にエネルギーを消費しているようなものだ」

 

どうしたものかと紫が考えていると、部屋の戸が強く叩かれた

 

「誰か!助けてください!変な男に追われてるんです!」

 

溜息を吐いて、紫は警戒をしながら扉を開ける

 

「…………騒々しいな。私は宿泊客であって警備員ではないのだが」

 

「え、女の子?えと、なんでもいいので早く扉を閉めてください!」

 

慌てた様子の女性の後ろから、大柄な男が迫ってくるのが見えた

 

「とりあえず、止めれば、いいの……?なら、できる」

 

そう言って造世が小さく何かを呟くと壁や地面から造花が現れ、その蔦が男の手首と足首を捉えた

 

「なんだぁこりゃ。其処の女の仕業か?クソ、引き千切れねぇ」

 

「興味はないが、一応問うぞ。貴様は何の用であれを追っている」

 

男は気味の悪い笑みを浮かべる

 

「夢ン中で黒いガキが言ってたんだよ。心を折っちまえば人間なんて自分のものにできるってなぁ……オイラはそれに感動しちまったよ。壊しゃ手に入るなんて最高だろ」

 

男の発言が、天羽と重なり紫は不快感を示す

 

「……一方的に害し、意思を尊重もせずに他者を所持品へと貶める。理性の欠片もな下賤な振る舞いだな」

 

「自分で俺を止めれもしないガキが偉そうだなぁ。お前も痛めつけて俺のもんにしてやろうか」

 

造花に絡められた腕を無理に振り上げる男に、紫は指輪から紫電を放った

即座に男は意識を失い、造世の造花によって繭のように包まれた

 

「…………忘れていたが、人間とはこういったものだったな。造世、それは旅館の警備室にでも引き渡しておいてくれ」

 

「うん、任せて。紫、ありがとね。私は、攻撃手段はないから、助かった」

 

歩き出す時に軽く撫でられた頭に紫は「やめろと言っているのに」と呆れた

 

「それで、追われている以外に用がなかったという認識でいいか。ならば研究の邪魔なので速やかに去ってほしいのだが」

 

「え、えっと……ありがとうございました!あ、お礼のお金だけ置いていくので……」

 

紫の様子を見て女性は焦った様子で部屋を後にした

 

ーーー

 

夜、消灯前に造世が尋ねる

 

「紫は、温泉、浸からないの?」

 

「不要だ。身体から発生する汚れは全て結晶へ吸着させ、共に消すことで結晶全体の原子のリソースとなっている。衛生面で答えるとしても不必要な雑菌などもリソースへ取り込んでいるため問題はない」

 

「……器用な、使い方、するね。じゃあ、お布団敷くね」

 

備え付けられている布団を二つ繋げて広げ、造世はその上で紫を手招きした

それに従って紫は造世の隣に座る

 

「造世は……怪異というものはそもそも身体が変化するのか……?」

 

「ん……するタイプも居たし、しないタイプも居る。私は老廃物とかも生成しない、この世にあるだけの変わらない怪異」

 

「ほら……」と造世は自身の皮膚を掻いてみせるが、肌が削れる様子もなかった

 

「便利なものだな。身体の清掃の必要がないなら使える時間は大いに増加する」

 

「……たぶん、紫も成れるよ。『花』は世界の空想から生まれた存在だから、自分の意思で、自分の空想で、自分の身体を少し変えることができる」

 

「であれば、より解明を急ぐべきだな。今日はもう眠るが」

 

壁に立てかけたバックパックに視線を向けた紫を造世が優しく抱きしめる

 

「もう夜だし、難しいことは置いて、寝よ?」

 

「…………そうだな、睡眠前に思考していては翌日以降のパフォーマンスが落ちる。……………………なので、放してほしいのだが。待て、私を捕らえたまま横になるな」

 

抗議する紫の顔を自分の二の腕の上に乗せた造世が頭を撫でながら尋ねる

 

「こうしてたいの。……ダメ?」

 

「………………好きにしろ。私は眠るぞ」

 

紫の返事に造世は小さく微笑んだ

 

 

 

 

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